『でも大浜は喜ぶよ、きっと』
『ガズギグン?!?』
「もう、大浜先輩ったら!」
ここは寄宿舎のまっぴーの部屋。
明日の海水浴の準備していたまっぴーが、手を止めてこちらを向いた。
「でもさ、スクール水着が好きってな男の人って、いろいろいるんじゃないかな?」
「いろいろ?」
「そう。そういう水着自体を好きな人とか、
そういう水着が似合いそうな小柄な女の子を好きな人とか」
「うーん」
前者なら引いちゃうけど、後者ならギリギリ許せるかも。
どっちなのか、確める方法、ないかな?
「よし、決めた!まっぴー、つきあって!」
「まだ準備終わってないよ〜」
「いいから!後でロッテリやでおごるから!」
「うん、行く!」
「すごい水着、買っちゃったね。なんていうか、ひも?」
「えへへ」
ここは駅前のロッテリや。
明日からの海に備えて、先週、フリルばっちりのワンピースの水着を買ったんだけど、
さっき駅前のデパートでまた買ってしまったのだ。
「スクール水着の対極だよね。
これで大浜さんがさーちゃんに注目すれば、スク水専門じゃないってこと?」
「うん、そういうこと!
津村先輩も小柄だけど、明らかに売約済みだから、対象外だろうし」
でも、そのせいで財布がすごく軽かったりする。
水着の値段って、布地の面積に反比例するのよね。
そういうわけで、まっぴーにセットメニューをおごった私は
100円セールのシェイクを飲んでいる。
「なんか、私だけ食べてて悪いなぁ」
「いいのいいの、私、お腹空いてないから」
ホント言うと、今にもお腹が鳴りそう。
寄宿舎の早い夕食のせいで、
普段なら買い置きのお菓子をつまんでいる時間だったりするし。
元々は車で海に行く話だったんだから、
突然海に管理人さんが現れて、せめて帰りだけでも電車賃がタダにならいなかな?
「おまたへー!」
そして、海水浴の日、水着に着替えて、先輩達と合流した。
津村先輩が武藤先輩におへそを見られて照れてる。
「だから見るな!」
「初々し〜〜」
って、余所のカップルを見ている場合じゃなかった。
なにしろ私たちはカップルですらないのだ。
大浜先輩の視線を追ってみた。うん、うん、ちらちらと私を見ている。脈アリ!
良い夏になるといいなあ。