休みの日の夜の寄宿舎にて、カズキ達は各自菓子と飲み物を持ち寄り、小規模のコンパを開いていた。  
人形サイズの斗貴子さんは、かきピーの種を完食するのに苦戦していた…  
「か、辛い…」  
「お茶どうぞ、斗貴子さん」と言って、ペットボトルの蓋に入ったウーロン茶を渡すカズキ.  
「す、すまない////」  
「しかし斗貴子さんがそんな大きさになって帰ってきたときはびっくりしたけど」  
「この二人のストロベリっぷりは変わらずだな」  
「ひゅーひゅーvおあつい二人ー。」  
「あ、あまり年上をからかうもんじゃないっ////!」  
「ちーちんどうしたの?あんまり食べてないね。」  
「そ、そんなことないよ、まひろ。そのミニ大福取って」  
コンパはそれなりに盛り上がっていた…  
 
「武藤くん、この青汁ウーロンハイ美味しいわよ、どうぞv」  
「お、桜花先輩…」  
コンパには3馬鹿とガールズのほか、早坂姉弟も呼ばれていた…  
「理解不能なものを作るな早坂桜花ぁっ!それに何故高校生のコンパで酒が出てくる!」  
「すまん、俺が持ち込んだ。」「戦士長っ!」  
「もう津村さんったらカタイコトいわないの…うふふふふ」  
そういう桜花自身、目が潤み頬は赤く、かなりできあがっていた…  
「あ、けっこう美味しい」「カズキも飲むなあ!」  
「うふふ、もっとお酌してあげるわ武藤クン…」「カズキから離れろ!」  
ちいさい体で桜花の髪を引っ張る斗貴子。「津村さんがいぢめるう武藤くーん…」  
明らかにこの場になじんでいない秋水は、無言でウーロンハイを飲んでいた。  
結構酒に強いのかもしれない。  
 
そんなこんなで夜はふけて、コンパはお開きになり…  
「大丈夫ですか?桜花先輩…」  
むろん、大丈夫とは思えない酔っ払いぶりなのだが…  
「うふふっ、送ってって武藤くーんv」  
「さっさとこの女を連れて帰れ早坂弟!」  
「姉さん…まっすぐ歩ける?」  
寄宿舎に残るものもいれば、休みなので家に帰るものがいるわけだが…  
「じゃあ、私の代わりに若宮さんが武藤くんに送ってもらえばどーお?くすくす」  
ちーちんこと若宮千里は、最近一人暮らしがしたいとアパートに移り住むようになった。  
「あ、大丈夫ですよ、近いし」  
「でも俺らはみんな逆方向だし…」と岡倉。  
「女の子の一人歩きはあぶないよー。」とまひろ。  
「じゃやっぱ、俺が送ってくよ。ちょっと夜風に当たりたいし」  
「お前も飲みすぎだぞ、武藤…」「戦士長が酒を持ち込んだんでしょうが!」  
ブラボーの指摘どおり、カズキは桜花ほどではないがけっこう酔っていた…  
「すぐ帰るよ、斗貴子さんv」「ったく…」  
 
秋水は酔っ払いの姉を連れての帰り道、深くため息をついた。  
「姉さん、もうあの二人にちょっかいを出すの止めてほしいんだけどな…」  
「うふふ、津村さんは幸せ者だから、意地悪したくなるのよ〜」  
「幸せもの?」秋水にはさっぱり飲み込めなかった。  
ふつう、あのサイズで一生過ごさねばならないのは不幸だろう…  
「そうよ、だってあんなに武藤くんに愛されていれば、幸せよ。武藤くんはどんな姿でも津村さんさえ居てくれれば何も望まないから…」  
 
「だから、津村さんに少しぐらい意地悪しても、バチは当たらないわ」  
 
そのころちーちんこと若宮千里は途方にくれていた。カズキが突然苦しそうに動かなくなったのである…  
 
カズキは息も荒く、先ほどまで赤かった顔が、今は青く変わっていた。  
く、苦しい…これって急性アルコール中毒?やっぱり高校生がお酒飲んじゃいけなかったのかな…  
どこかに運ばれてベッドに寝かされる。と言ってもふらふらしてまったく実感が湧かない。  
水を少し飲まされる。少し気分が楽になった。  
「もう…大丈夫。」一体誰の声だろう…  
 
寄宿舎のカズキの部屋のドールハウスで、斗貴子はカズキの帰りを待っていた。  
「…少し遅いな…」  
 
 
白い天井が見える。ここは天国?ていうか俺、死んだの?  
「先輩!良かった…気が付いたんですね。」誰かの声が遠く聞こえる。誰だろう。  
「死ぬ前にもう一度斗貴子さんとキスしたかった…」かなりなさけなくつぶやく。「先輩…」  
おもむろに唇が触れた。  
「斗貴子さん…?」そこには、斗貴子さんがいた。いつのまにか元の大きさに戻っている…  
「斗貴子さん…!」俺は斗貴子さんを抱きしめ、もっと深く口づけ、舌を絡めあう。  
その細い肩を抱き、短い黒髪にも口づける。「大好きだよ…」  
 
「先輩、好きです、斗貴子さんの代わりでもいいから、思い出をください…」  
斗貴子さんは少し涙ぐんでいた。怒っているのかもしれない。  
(錬金の戦士が酒に溺れるなんてなさけないぞ!早坂桜花にデレデレしているからそうなるんだ!)  
そう言いながら斗貴子さんは俺の服のボタンを外す。だ、大胆だな…////  
俺も斗貴子さんの服を脱がせ、胸元にキスの雨をふらした。  
(私だけだからな、君とこんなことしていいのは…)  
俺は斗貴子さんの下着をも脱がせ、一匹の獣となり、斗貴子さんの体を貪った。  
(ほかの女と浮気したら、許さない)  
斗貴子さんの体は熱く火照り、俺は愛欲に狂った自分の雄を流し込んだ。  
 
 
目がさめると、俺は愛しい人を抱きしめて眠っていた。ベッドの上、朝日が窓から差し込む。  
満ち足りた気分だった。どうしていきなり斗貴子さんが元に戻ったのかはわからなかったけれど。  
斗貴子さんは憔悴しきって眠っていた。  
ちょっと激しくヤリすぎたのかもしれない。あ、ゴムすら付けてない…  
俺は愛しい人の顔を覗き込んだ。  
 
それは妹の友人…若宮千里の顔だった。  
 
斗貴子さんの髪は短かった。斗貴子さんの肩は細かった。  
そして彼女の髪も短く、昨夜抱いた…肩は細かった。  
俺はパンツも穿かない間抜けな格好で、昨夜の後始末を終えた。  
シーツに飛び散った自分の精液。そして染みになった…血痕。  
「コーヒーです…どうぞ」  
彼女はもうすでに着替えていた。上下ツナギの紺のロングスカート。斗貴子さんはこんな服装はしない…  
気づく機会は、あったはずだ。  
俺は、彼女の様子を見た。足取りはややふらつき、涙を流したのか目が少し赤い。  
そこまで考えて、ある可能性に思い至った。俺は酔っ払い、彼女を強姦したのではないか?  
俺は血相を変えて叫んだ。  
「ゴメン!俺、酔った勢いで君に無理やり酷いことを…!」  
彼女は少し驚いたように俺を見つめた。  
「先輩、私からキスして服を脱がせたこと、覚えていないんですか…?」  
 
「本当に酔っていたんですね…」  
 
「ずっと、好き、でした。」  
たどたどしく、そう言った。  
いつからだったろう。初めて会った時は、まっぴーのお兄さんって可笑しな人だなあ、位に思ってたのに。  
いつも見つめていた。学校を襲ってきた化け物に助けられた時は、胸が熱くなった。  
想いに気付いたときには、彼の隣には、斗貴子さんがいた。  
二人の絆は、どんな障害にも負けぬほど、堅かった。  
それでも、彼を見つめているだけで、幸せだった。  
 
他人に言わせれば、それは恋ではない、ただのアコガレにすぎないと言われるだろうか。  
 
「心配しないで…私もうすぐ、2年になったら、転校するんです。あなたの前から、消えます。」  
もうすぐ会えなくなるとわかると、どうしても隠してきた想いを伝えたくなった。  
「ただ、ふられてもいいから、想いを伝えたかっただけだったのに」  
「どうしてこんな卑劣なことをしたのか…自分でもわかりません」  
 
 
俺は彼女の告白を、どこか遠い世界のことのように聞いていた。  
俺が起きた時、どこにも逃げられないよう裸の彼女を抱きしめていた。  
彼女の顔とキスマークの付いた胸元を見て、パニックに陥った。  
気が付いた彼女は、俺を見て頬を染めた。その身体には紛れもなく俺が女性として開花させた痕が…  
俺の下半身はそのときまた勃起してしまった。  
そして昨夜の情事を思い起こし…  
 
自分の馬鹿さ加減に、腹が立った。  
「朝食…食べていきますか?」  
「いや…もう、帰らないと…俺。」  
逃げ出したかった。現実の全てから。自分が幻の『斗貴子さん』とセックスしたという事実から…  
 
その日俺は寝込んだ。  
俺が朝帰りしたことに、斗貴子さんは気付いていたのかどうか。  
問い詰められることはなく、俺からも何も話せなかった。  
幻の『斗貴子さん』を愛したという事実は、ただ性欲処理のための浮気より、ずっと明白な裏切りのように思えたから…。  
 
現実の斗貴子さんは、やはり小さいままだった。ちまちまと具合の悪い俺の世話を焼いてくれる。  
「君が二日酔いで具合が悪いのに、私は何もしてやれないな…」  
「俺は斗貴子さんがそばにいてくれたら、それでいいよ…」  
俺が好きなのは、この現実の斗貴子さんだ。  
それはどんなことがあっても、変わらない。  
 
 
若宮千里は、風呂場の鏡で自分の裸を見つめた。  
胸元や、それ以外の場所にも散らされたキスマーク。ふくらはぎが筋肉痛で痛む。  
口元に手をやり、彼との舌を絡めあったキスを思い出す。  
こんにゃくゼリーみたいな感じがしたな。  
どうしてこんなことになったんだろう。ただ、彼に告白するだけだったはずなのに。  
「早坂桜花先輩が、彼に告白できるよう、二人っきりにしてあげる、と言ってくれて…」  
でも、私が武藤先輩と寝たのは、彼女の預かり知らぬところだ…  
いまだ脚には、彼を受け入れた感覚が残っている。おもいきって、秘部に指を入れてみる。  
まだ温かい彼の精液が、とろりと流れ出た。  
「ここを、武藤先輩に何度も突かれて…」  
たくましい胸板に抱かれ。彼の愛撫はとても大胆で、やさしかった。  
太くて硬いペニスをひぃひぃ言いながら受け入れた。3回も射精されて、頭は真っ白になった。  
「先輩…」千里はカズキを思い出し、とろとろの秘部を指でかき回した。  
「あんなすごいセックスをするのは、恋人にだけですよね…」  
彼が今後性欲処理に誰かを抱くことがあっても、「恋人」に対するセックスを受けたのは彼女だけになるだろう…  
 
 
それから、以前と変わりない日々が続いた。  
斗貴子さんはあいかわらず小さくて。俺は斗貴子さんを愛していて。  
時折、小さな斗貴子さんに欲情してしまう自分に、少し困った。  
そして彼女―若宮千里は、彼女の言葉どおり転校し、俺の前から姿を消した。  
 
俺が幻の『斗貴子さん』を愛した事実が消えるわけでもなく、俺が彼女の事を忘れることもないだろう。  
彼女を見送ってからしばらく、心なしか、斗貴子さんの元気がなかった。  
ひょっとして…何もかも見透かしている?  
「斗貴子さん…消えたり、しないでね。」  
「何だ、ヤブカラボウに。私を怒らせるようなことでもしたのか。」  
「ううん…ただ、斗貴子さんが、いつもより小さく見えたから…」  
 
「…私は、消えたりしない。」  
「君が浮気しない限りな。」  
(終)  
 

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