「先輩、本気かよ!」
ぐわしっ、と肩を掴む。
その瞬間に華奢な体が手に伝わってくる。
「戦団は本気で先輩を殺そうとしてるんですよ! 何だってあんな奴に……」
「離せ、剛太!」
その手を斗貴子先輩は振り払った。
強い瞳でこっちを見つめ返してくる。
「先輩……」
「……あの核金を渡したのは私なんだ。私にだって責任はある」
戦団を離脱して逃げ込んできた山奥。
星空の下、あいつが寝込んだのを確認して、俺は二人だけで最後の説得にかかっていた。
「ヴィクター化を避けられる可能性はあるかも知れない。まだ、諦めるには早い」
そうは言っても、あくまで可能性に過ぎない。それ以前に追っ手が迫っているのだ。
「殺されますよ――」
戦力差は圧倒的。いくら斗貴子先輩でも、戦士長も含めた複数人に勝てる見込みはない。
守りきれる自信がなかった。斗貴子先輩がなぶり殺しにされる、そんな光景だけは見たくない。
「……それでも、私はカズキと一緒に戦う」
決意を込めた声で、先輩は言った。
分かっていた。この人は何があっても自分を枉げたりしないって。
それでも、俺は――
「……じゃ、駄目なのかよ」
「剛太?」
俺は震える拳をぎゅっと握った。
「俺じゃ、駄目なのかよ……っ」
――そのとき、
激しい物音が夜空に轟いた。
「!! カズキ……」
爆煙が上がる。砂利の上のテントが敵の襲撃を受けたらしい。
俺は――斗貴子先輩の手首を掴んでいた。
「剛太!? 何をする、離せ!!」
暴れる斗貴子先輩の手から核金を奪い取る。
そしてそのまま、先輩をその場に押し倒した。
「ちょ……何を!」
「死ねばいいんだよ、あんなバケモノ」
じたばたと暴れる、先輩の体が止まる。
「あんな奴、勝手にバケモノになって死ねばいいんだ!!」
「剛太……」
なぜだか、俺はいつの間にか泣いていた。
「俺、斗貴子先輩が好きなんだ。守りたいんだよ……っ」
「――……」
ずっと憧れていた。家族の記憶も無い中、斗貴子先輩だけが、俺の心を潤してくれていた。
斗貴子先輩だけが――
「――剛太、どきなさい。私はカズキを助けに行く」
……返って来たのは冷たい声だった。今度は俺が、そのまま凍りつく。涙はそのままで。
――心の中で「何か」のタガが外れた。
「……バカ、何をっ!!」
核金を思い切り放り投げる。闇の中、カランと音を立てると、石に紛れて見えなくなった。
「行かせませんよ」
そのまま、両手を押さえつけて馬乗りになる。
武装錬金さえなければ、斗貴子先輩は非力だ。
「何を……やっ!」
そのうなじにそっと唇を当てた。
「行かせない」
「剛太やめ……いやっ!!」
香しい匂いに包まれる。先輩の首筋を下から上へと舐め上げていく。
細いうなじから先輩の汗の味が伝わってくる。――暗闇の中、真っ赤になっていることも。
「先輩は騙されているんすよ。だから、あんな奴を」
馬乗りになったまま身を起こす。ふっきれたように、自然と口元が釣り上げっていた。
涙はとうに乾いていた。
「はうっ!!」
びくんと斗貴子先輩の体が跳ねた。へその辺りをつつっと指で弄くってやる。
「先輩があんな奴のこと、好きなわけないじゃないですか。だって……」
「あ、はああっ!!」
細い体ががくがくと震える。
服の下から手を差し入れて、ブラの上から突起があるあたりを軽くつっつく。
指先でくすぐるように。それだけで、戦士としての意思とは裏腹に、体は反応するのだ。
「先輩だって、悦んでるじゃないすか」
「剛太……さっきから何を言って、ああっ!!」
俺の下で先輩がきゅっと体を硬くしたのが分かった。耳をぺろぺろと舐めてあげている。
「先輩、俺を受け入れてくれますよね?」
力ずくで犯そうとしながら、とぼけたことを言っていた。
戦火はもうもうと上がっている。或いは複数の追っ手の襲撃を受けたか。
俺は口元が歪んで、胸が弾んでくるのを抑える事ができなかった。
――武藤はこれで死ぬ。死ななきゃ、勝手にヴィクタ−にでも何にでもなればいい。
そして死ね。そして斗貴子先輩は、俺が……
「カズキ、カズキ――たすけて!!」
――その言葉に、俺は再び硬直した。
「カズキ……たすけ……て……」
先輩はわずかに泣いていた。細い体を震わせて。あの「先輩」が、一人の少女になって。
一心に唱えていたのだ。あの――、あの――、あの――……
「畜生! 畜生! 畜生――っ!!」
雄たけびが爆音をさえぎってまで響き渡る。
月の明かりの下で、俺はけだもののように叫んでいた。
「そんなに、そんなにあいつが好きなのかよ! 俺じゃ駄目なのかよぉ!!」
俺はおたけぶと、荒々しく先輩の衣服を破き捨てた。
「剛太、やめて――やめなさい! ああっ!!」
泣き叫ぶ先輩を一顧だにせず、押さえつけたまま、上半身と下半身の着衣に手を伸ばした。
――穢してやる。
俺の心の中に黒い情念が涌きあがってくるのを感じる。
自分ではっきりと狂っていくとはこういうことなのだなと、自覚しながら俺は斗貴子先輩の着衣を引き裂いていた。
やがて露わになった純白の下着に指を這わせると、引っつかんで横にずらした。
――穢してやる。どうしたってあいつのものになるなら、せめて――穢してやる。
俺は着衣のチャックをずらした。心は妙に冷静なのに、不思議と体は思春期の年相応に興奮している。
こんな初体験もありなのかもな知れないな――
なんて心に思いながら、露わにされた先輩の綺麗なヴァージンに照準を合わせた。
「先輩……っ!!」
「あうぅっ!! あっ!!」
斗貴子先輩の体がしなやかに反りかえった。
ピンク色にぴっちり締まった斗貴子さんの女性。
そこに”ランス”がつき立てられようとしている。
処女膜は存外固く、一止めの突きでは先っぽしか入らない。
俺は息を吸い込んで、二撃三撃と腰を打ち込んだ。
「ああっ……痛っ!! ふああああああっ!!」
斗貴子先輩の泣き叫ぶ声が突き上がってくる。
それでも壊れてしまった俺の心には何も届かない。
剛直は鮮血とともに根元まで斗貴子さんの中に入り込んでいた。
「はあっ、はあっ!!」
「うっ、くっ……」
そのまま正上位で猛烈に腰を打ち込む。その度に恥骨同士がぶつかって音をたてる。
斗貴子先輩はじっと身を固くして、目をつぶり、衝撃に耐えている。
きつい処女の圧迫が俺の剛直を包み込む。
十分に濡れていないそこは、鮮血が潤滑油のかわりとなっている。
「ああっ……剛太……どうし……て……」
「うう、先輩……先輩……」
壊れた心と裏腹に体はびくびく反応する。
きゅっきゅっと締め付けてくる先輩の女性自身が、俺を頂へと押し上げていく。
「先輩……先輩……」
(剛太、守りたいものができたときのために、キミは強くなっておくんだ)
守りたいものなんて、とうに――
「あうううッ!! ああっ!!」
「先輩……っ、先輩……っ!!」
先輩、斗貴子先輩――
(先輩――ごめん――)
俺の剛直が斗貴子先輩の中で爆ぜた。
寒風が闇夜を吹きすさぶ。俺は呆然と、近くの石に腰掛けていた。
見るとも無しに見ていた、闇の奥から影が現われた。
「――どういうことだっ」
奴――武藤カズキがランスを引っさげて立っていた。
息を切らし、服は汚れ、多少破けているが、見たところ致命傷はない。
それどころか、かすり傷さえ負っていなかった。
――化け物。
並の戦士ではもはや束になっても倒せない。
こいつは正真正銘の化け物になったのだ。
そして、恐らく――俺でも勝てはし無いだろう。
そう、俺は何もかも負けたのだ、この降って涌いたような野郎に。
「――俺がさ、犯したんだよ、斗貴子先輩を」
ちらっと、裸同然で血塗れの裸体を顎で示してやる。
みるみるうちに奴の顔は険しくなっていく。見てて面白いくらいだった。
俺は口元を歪めた。
「なぜだっ――!!」
頭を抱えて叫ぶ。この単細胞の野郎にはちょうどいい。
「まだ分かんねえのか? 俺は戦団のまわし者なんだよ。初めからそのつもりだったんだよ」
言い捨てると、核金を手に立ち上がった。モーターギアを起動させる。
「お前――お前――」
「さあ、決着をつけるとしようぜ――」
もはや俺に守るものなんてない、俺は闇の中、最後の戦いに命を燃やした。
(終)