深い眠りだったのでだいぶ時間が経ったように思えたが、時計の針の位置を見てあれから一時間も経ってないことが分かった。  
目が覚めてからまだからだを動かしていないから、傷がどうなったのか、分からない。  
そうすると寝返りもうてなかったからだが苦しくなり、シーツの上でほんの少しだけ身をよじらせたのだが思っていたような痛みは感じられなかった。  
 
恐る恐る体を起こしてみる。  
 
なんとなく体全体がぼんやりとしているので断言はできないが、痛みはほとんどないといっていい。  
これも腹にあてている核鉄のおかげだろう。  
 
うん。  
やはり核鉄はきく。  
 
そんなことを考えている斗貴子には体の痛みよりベッドの上で起き上がったときの「べりべりばり」という音のほうが気になった。  
そっと振り返ってみて白いシーツに広がるどす黒い血の広がりを見てしまい嫌な気になった。  
ひどいなこれは。  
もはや固まって糊のようになっているがシーツに黒い海をつくるまぎれもない自分自身からの出血を見ていると胸が悪くなってくる。  
体を動かすとぼろぼろと剥がれ落ち、シーツの上に降り積もる。  
……………。  
風呂に入ろう。  
 
そう思い腰に巻きついている腕をはがしてベッドの上から降りて、散乱している自分の服を拾おうと一歩踏み出すと、ぐにゃりと地面が揺れたので、思わず床に手をついてしまう。  
 
なんだ?  
 
傷は癒えたと思ったのに。なんだかくらくらする。  
さては血を失いすぎたか。  
あまり動かないほうがいいということは分かるのだがこんな血でべとべとの体でいるわけにもいかずやはり湯を浴びることにした。  
 
服を着て、あまり急激な動きをさせないようなるべくそろそろと歩いていく。  
一度自分の部屋へ戻り、着替えを持って女子生徒用の大浴場へとむかう。  
深夜の誰もいない浴場でざっと湯を浴びて体にこびり付いている血の塊を洗い流し、しばらくためらったあと決心をつけて自分の秘所に指を入れる。  
お湯で流しながらなんとなく自分のこの行為を気恥ずかしく思いながらも指を動かすと、ぞっとすることにはあとからあとから血が溢れ出てお湯と混じり、排水溝へとおちていく。  
いいかげん流したのにまだ血が出てきて、それにもかかわらず痛みがないのが逆に怖くなり膣を洗うのを諦めて風呂からあがった。  
 
そのまま自分の部屋へと戻り、烏の行水だったが熱い湯を浴びてほてった体をベッドに落ち着けるとようやくため息をついた。  
 
なんだかいろいろあったな。  
 
ぼんやりとした疲労感の中で今日一日にあったことを思い出し走馬灯のように頭を駆け抜けてゆくそれら映像になにかしら考えを持とうとするのだが、疲れていることもあってまとまらない。  
 
さっきからずっとぼんやりしている頭に決着をつける。  
今日はもう寝よう。  
 
そうしてもそもそとベッドにもぐり込み、夏用の薄い掛け布団に埋まる様にして目を閉じる。  
そのまま眠りにつくために体も頭も休止させ、もう一度ため息をつくためにすうと息を吸い込んだところでふわりと目を開く。  
そのまま見開いた。  
 
忘れてた。  
 
カズキ。  
 
 
最初と同じように窓から抜け出し壁を伝ってカズキの部屋へと到達する。  
そしてベッドの中でぐっすりと眠りこけているカズキを見つける。  
安らかに眠るカズキの寝顔はあどけなくて、小さな子供みたいで、そんなカズキを見ているとなんとなく斗貴子は胸を締め付けられるようだったが、そう浸ってもいられず心を騒がせるのは天使の寝顔のカズキが絡まっているシーツからなにからが血まみれということだった。  
それになんだか血なまぐさい。  
ほんとうは自分の血なのだが、なんだかカズキが怪我をしているようにも見える。  
それも重症、といった感じだ。  
いやそれよりも、青白い月明かりの中で見ると寝ているカズキがなんだか死体のようだ。  
部屋にたちこめる血の匂いも、死臭のように感じられる。  
 
 
………縁起でもない。  
 
不安な気持ちを払拭するように、頬を叩いてカズキを起こした。  
頬を叩く、といっても痛くないようぺしぺしと優しく叩くのではなく、パアンと乾いた音が響き歯が飛ぶほどの力を込めて引っ叩いた。  
 
カズキは泣きながら起きた。  
 
「んぐ………ご、ごめん……………」  
と、寝惚けて舌を縺れさせながらもはや癖になっているのかまたもや謝る。  
もぞもぞと起き上がりながら斗貴子のほうをぼんやりとみつめて何の脈絡もなく殴られたのに怒りもせず、大好きな斗貴子がいたので涙目でにっこりと微笑んだ。  
微笑んだところでふと見ると自分が服を着ていないことに気付き、焦って体を、というより半分のぞいていた今はおとなしくしている自分のものを隠そうシーツを引き寄せて、それが血で真っ黒に染まっているのを見てわあなどと叫ぶ。  
恥じらう年頃の女の子のような格好で自分を隠す血濡れのシーツと、もはや服を着てさっぱりとした斗貴子を交互に見てようやくやっとさっきの出来事、自分のしたことを思い出す。  
見る見る間にカズキの表情が変化していき、斗貴子が逃げる間も無くその肩をがっと掴むと、  
「と、斗貴子さん!大丈夫!?」  
と聞いてきた。   
   
「うん。まあ、その、大丈夫だ。」  
 
またカズキが興奮してきたなと思い、落ち着かせようとそう言うのだが聞かず斗貴子の腹の辺りをまさぐるように手のひらを当て、さっき眠る前に自分の核鉄を使い斗貴子の傷を治そうとしたことを思い出しまたもや腰に抱き付くようにするのを何とか引き剥がし、  
「本当に、だいじょうぶだ」  
といって見せた。  
「ほんとに?」とまだ心配そうにこちらの様子を窺うカズキの純粋な優しさに胸が熱くなるがしかしそれを誤魔化すように、  
「私のことはいいから、きみも、その、風呂に行って体を流してきなさい。」  
と、斗貴子の返り血で、斗貴子よりも更に血を浴びたであろうカズキの体を見ながら言った。  
斗貴子に言われて自分の体の状態をしげしげとみたカズキは、「うん」と素直に頷くとぱっぱと服を着て、  
「じゃ、斗貴子さん、待っててね」  
というとあっという間に部屋から出て行ってしまった。  
 
 
………待っててね?  
カズキが戻ってくるまで、待っていろというのか?  
そんなことを言われたので帰るわけにもいかず、手持ち無沙汰になったのでとりあえず、二人の行為の後始末を始めた。  
血でほぼ真っ赤に染め抜かれたこのシーツはもはや洗っても完全な白には戻らなそうだ。  
捨てたほうが早いかもしれないなどと思いながら勝手にカズキの箪笥やクローゼットを開けて替えのシーツを探し、その下にまで染みた血はタオルを絞って持ってきてごしごしと擦った。  
 
そうしていくらもしないうちにカズキが戻ってきた  
多分軽く走ったのかハアハアと息を切らせていて、髪も少し濡れている。  
「風呂、はいってきた」  
子供みたいにいちいち報告して斗貴子が腰掛けているベッドのすぐ隣に座ってくる。  
いろいろ言いたいことがあるのにそれがまとまらず言葉にできなくて、それよりカズキの顔が近いなとどきどきしている斗貴子の顔をじっと覗き込みながら、  
「斗貴子さん。ほんとうに、大丈夫なの?」  
と、再度聞いてきた。  
大丈夫だ…となんだか掠れたような声でしか喋れない。  
そんな斗貴子をじっと見ていたカズキだったが、特に断りもせず斗貴子の体を抱き寄せた。  
 
あんなことがあった仲だが二人は決して恋人同士ではないし、付き合っているわけでもないのだからこんな風に簡単に抱きしめられても困るのだが、カズキの手が優しく腰の辺りをさすってくれるのが心地よくて、斗貴子はなにも言えなくなってしまう。  
「斗貴子さん…」  
唐突に声をかけられ陶然とした世界から引き戻された斗貴子が弱い心持で次の言葉を待っていると、  
「痛かったでしょ………ごめんね……………」  
と、腰をさする手に少しだけ力を込めながらそう言ってきた。  
そんな風にカズキが自分のことを気にしてくれるのが、うれしい。  
心配させないためにも否定するべきなのだろうが実際は痛い所の騒ぎではなかったし、またカズキの優しさに甘えたいような気持ちが起こり、その胸に顔をうずめながら、こくんとうなずいた。  
斗貴子の首がちいさく動いたのを感じたカズキは更にその小さな体を抱きしめる腕に力をこめ、そして体の中に怪我をしている斗貴子を気遣い、安静にさせるという意味でゆくっりとその体をベッドに押し倒した。  
先程の事もあるのでカズキのその行為に斗貴子の表情が強張るのが分かったので、  
「なんにもしないよ…」  
と言い、斗貴子を安心させると、いたわるように、半分抱くような体勢で寄り添った。  
腰以外にも頬や髪を撫でられて斗貴子がとろんとした表情になる。  
 
二人の顔は、ごくごく近かった。  
 
このままの状態で何も無いってのは無理な話だ。  
 
お互いに無言のまま、見つめあう。  
 
目と目が合い、体がぴったりと密着している。  
 
体温が、直に伝わる。  
 
吐息すら感じられる。  
 
斗貴子の顔を間近で見ているカズキのひとみが動き、斗貴子の目からくちびるへと移動する。  
もう一度戻り、その瞳の奥にあるものを見極めようとするかのように貫くような視線を向ける。  
そしてまた、斗貴子のふっくらとした淡いピンク色のくちびるを見つめる。  
焦点の移動を何度か繰り返すうちに、じょじょに、じょじょにだがカズキの顔が、そのくちびるが、斗貴子に近づいて行く。  
そうしようと理性で考えているわけではなく、カズキにそんなつもりはまったく無いのだがなんだか重力に逆らえず、磁石の対になる極が互いを引き合うかのように、斗貴子のくちびるへと徐々に降りていく。  
斗貴子も、顔を逸らすようなことはしなかった。  
 
ただ、カズキと同じで、そのくちびるが、気になる。  
 
ゆっくりと近づいてくるカズキの瞳とくちびるを、交互に見つめた。  
 
先端が微かに触れたのを感じると、反射的に斗貴子は目を閉じた。  
 
それと同時にカズキの動きも一瞬だけ止まり、また再開される。  
 
ほんの少し、首を傾けて、斗貴子の体を抱くようにして持ち上げると、深くくちびるをあわせる。  
 
その、柔らかい感触に一気に感情が昂ぶる。  
カズキは支えるように持っていた斗貴子の二の腕にぐうと力を込め、斗貴子は胸に持ってきていた両のこぶしをぎゅっと握り締めた。  
 
なんで唇をあわせるだけでこんなにも心が揺さぶられるのだろうと、その艶かしい感触に支配されながら二人同時に考える。  
 
うっすらと目を開き、唇をつなげたまま至近距離で、お互いを見つめる。  
 
斗貴子の全てを委ねてくるような目に耐えられなくなったカズキはいよいよその体に覆いかぶさり、背と頭の後ろに手をまわし、掻き抱くようにしながら斗貴子の口唇と歯を割って自らの舌を侵入させた。  
「…………ン………ッ!」  
口の中をぞろりと舐め取るカズキの舌の感触に思わず声が漏れるがカズキはやめない。  
舌で斗貴子の口の中を一頻り探った後、粘膜や歯の中心におどおどと固まっている舌を見つけると、自分の舌を絡み付けてくる。  
自分の口の中で力強く動くカズキに圧倒され、斗貴子は目を瞬かせるがそれ以上なにもできない。  
カズキは、初めてなんだよな。  
 
斗貴子はぼうとする頭で考えた。  
 
さっき交わるときも、初めてだって言っていた。  
キスも初めてなのかな。  
それとも、どうなんだろう。  
でも。  
だけど、なんだかすごく。  
激しいな。  
 
カズキの激しい舌使いに圧倒されながらそんなことを考える。  
   
「ン………は、あ………ッ……ン……」  
時々唇がずれると、声が漏れてしまう。  
時々口中に溜まったカズキの唾液をこくんと飲み込みながら、口の中に舌が進入してくるというなまなましい感触で男と女の性行為を連想してしまい、斗貴子は体の中心がじわりと熱くなるのを感じた。  
 
それはカズキも同じだった。  
二人同時に気付き、ようやくキスをやめ、顔を離す。  
 
服越しに、カズキの硬くなったものがあたっていた。  
 
斗貴子ではなく、カズキの顔が歪んだ。  
 
カズキはそれが悪いことであるかのように腰を引いて、自分のものが斗貴子のからだにあたらないようにし、その行為に気付いた斗貴子が何か言う前に体を起こすと「………ごめん……」とつぶやいてそのまま背を向けてベッドの反対側へと座り込んでしまう。  
自分と自分の勃起した陰茎が斗貴子にした仕打ちを考えるとそれ以上なにもできなかった。  
あれほど斗貴子を酷い目に合わせておきながら、今また更に臆面も無くむくむくと大きくなって服の中から飛び出さん勢いの自分のものが恥ずかしくて、俯きながらカズキは自分を責めた。  
 
そんなカズキの心境が斗貴子には痛いほどはっきりと伝わった。  
 
うなだれているカズキを見て、ある決心をする。  
 
うつむいているカズキは視線だけは脇へとずらし、自分の大切な人を傷つけたそのものと、そして自分自身をも憎んでいたが、気付くと何かがわき腹にあたっている。  
見ると、自分の腹と胸にそれぞれ白いなにかが巻きついてくる最中だった。  
それを見たのと同時にあたたかいものがふわり、と背中にあたった。  
 
斗貴子が後ろから、抱き付いていた。  
 
カズキの胴に巻きついている腕に力を込め、ぴったりと自分の体をあわせてくる。  
 
そうすると、斗貴子のちいさな胸がやわらかくあたり、その膨らみが薄いシャツ越しに感じられる。  
こてん、と斗貴子が頭を預けてきた。  
その感触に急にどきどきしてきたカズキが、しかし自分の股間のこともあるのでどうしていいのか分からず硬直していると、斗貴子がいままでにないくらい優しい声で言った。  
「大丈夫だ…。カズキ、大丈夫だから………」我慢しなくてもいい、と手のひらで腹の辺りを撫でながらものすごくおだやかな声で言ってくる。  
「で、でも………!」  
と振り返って斗貴子を見て、その表情に核鉄がぎくり、と鳴った。  
 
2ヶ月前の春の夜に、カズキの心が奪われた、あの、表情。  
 
同い年や、年下では絶対にできない、自分を導いてくれる存在。  
 
手を伸ばし、やさしく頬を撫でてくれた。  
 
「私も、もう一度、キミと、したい」  
 
そういってくれる斗貴子に対して涙が滲むほど深い愛情が込み上げてきて、躊躇いながらもそのまま強く、強く、抱き締める。  
 
胸にうずめた顔を持ち上げ、カズキを見つめてくる斗貴子の眼差しと視線が交差すると、目を閉じてもう一度深く口付けを交わす。  
 
そのままゆっくりとベッドに倒れこんだ二人だったが斗貴子は内心かなり焦っていた。  
 
あんなこといってしまった。  
 
どうしよう。  
 
うそじゃない。  
うそじゃないんだ。  
さっき言ったことは本当なんだ。  
 
でも。  
 
でもやっぱり怖い!  
 
 
斗貴子の運命や如何に。  
 
 
 
 
二人がベッドに倒れ込んでから最終的に体を交わらせるまでの間の行為には大分時間をかけたが、特記するような行為はなかったので割愛する。  
 
ただ一言付け加えるなら、カズキの手つきやくちびるがあまりに優しいので斗貴子の体の両足の間からは赤くない体液が大洪水を起こした。  
 
室温に戻したバターのようになった斗貴子の秘所から指を抜き去るとカズキは再度聞いた。  
 
「本当にいいの?」  
 
前戯の段階で散々なかされてぐったりとした斗貴子は今更なにを、と思いながらもなんとか頑張って頷いてみせた。  
それでもカズキは少しためらっていたが、斗貴子が覚悟を決めた表情でカズキを見つめて静かに待っているのを見るといよいよ決心をつけたようだ。  
足を開かせて、自らの先端を当てる。  
しっとりと吸い付くように当たるカズキのものを見ていると何故かは分からないが斗貴子の瞳には梅干を見つめた時湧いてくる唾液のようにじんわりと涙が浮かんでくる。  
 
だから。  
なんだってそんなにでかいんだ。  
 
血まみれのシーツにくるまって寝ている時はあんなに大人しく、いやそれでもかなりの存在感を放っていたが、それでもまだ  
大人しいと言えたものが、こうして実際隆々と首を擡げているのを見るとさっきまでおとなしく草を食べていたのに突如牙を振りかざし撮影隊の乗ったジープにむかって襲いかかってきた!という感じだ。  
 
せめてその半分くらいの大きさになってくれたってばちは当たらないだろうに。  
 
そんな恨みがましい思いで見てみたところでカズキのものが小さくなってくれるわけでもない。  
 
いっそ殺せ、といった感じで斗貴子は「………カズキ、きて……」と言った。  
 
そのままの体勢で固まってしまっていたカズキは斗貴子のその声で我に返り、なんともいえない表情で斗貴子を見つめた後、「じゃ………いくよ……?」といった。  
 
さんざん弄られてどうしようもないほど柔らかく濡れてシーツに染みをつくった斗貴子の膣だがじりじりとカズキが侵入を開始するとメリメリとにぶい痛みが走った。  
 
痛い、と思った。  
 
どうしても平静でいられなくて目をぎゅっと閉じてしまうがあからさまに顔をしかめたりすればまたカズキに心配をかけてしまうと思い、カズキの見えないところでこぶしを握り締める。  
 
そんな斗貴子の様子にカズキは落ち着かない気分になるが、かといって中途半端なところでやめるわけにもいかず一番初めとは異なりとにかくゆっくりを心がけて少しずつ進んでいく。  
 
額に汗の玉をつくりながらじっと耐えていた斗貴子だったがふいに、カズキの陰茎に膣の最も奥の部分を突かれぐうと体が上方に持ち上がったの感じて、え?と目を開けた。  
 
目の前にはハラハラしながら自分を見ているカズキがいる。  
 
恐る恐る、といった感じで「と、斗貴子さん…大丈夫?」とカズキが聞いてくる。  
 
………………  
………あれ?  
 
「斗貴子さん?」と心配そうに見つめてくるカズキに気づき、慌ててながらもうん、うん、と自分自身に確認するようにしながら頷いて見せる。  
 
入った?  
 
もう終わったのか、という感じだった。  
 
何故そんな風に思ったのか。  
 
だって、ぜんぜん痛くなかったぞ。  
 
全然痛くないというのは嘘である。実際はびりびりとけっこうな痛みがあるのだ。  
 
痛くないと感じたのはとにかく初めての時の痛みがあまりに強烈だったからで、ようするに、あやうく死にかけるほどの痛みを  
経験した後であり、またその痛みと同等のものがくるであろうと覚悟していたのでそれと比較すると今現在の痛みがあまりに矮小に思えてしまうというだけである。  
 
痛みなんてほとんど無いといっていい、と斗貴子は思った。  
 
だから痛くないなんていうのは嘘なのだが斗貴子自身がそう思い、またカズキにそう伝えたので、それを聞いたカズキは大分安心したようだった。  
 
とりあえず対面の問題は解決したが(してないのだが)かといって次にどうしていいのか分からなくなり困っているカズキを見た斗貴子はなぜ自分がこんなことを言わなければならないのかとかなり恥ずかしい思いをしながらも、「カズキ……うごいても、いいぞ………」と言った。  
 
うん、と頷いたカズキは斗貴子の体を優しく抱えるようにしながらゆっくりと動き始めた。  
 
ずるずると巨大なカズキのものが体の中を動くのを感じると同時ににぶい痛みが走ったので斗貴子の口からう、と声が漏れる。  
 
びっくりしたカズキが動くのをやめて「だ、だいじょうぶ?斗貴子さん。いたい?」と聞いてくるので、内心しまったと思いながらも、「…うん、大丈夫だ」と平静を取り繕いながら答える。  
斗貴子が少しでも痛がろうものならすぐにやめようとカズキが監視の目を張っているので迂闊なことはできないと思いながらも再び動き出したカズキを感じると体と心が熱くなった。  
 
カズキが体の中でゆっくりと動く。  
 
その痛みを堪えているとどこかから、形容し難い奇妙な感覚が襲ってくる。  
 
痛いのと、むず痒いのと、その中間にある、といったら一番近いかも知れない。  
が別の感覚に移行していく。  
 
カズキの腰の動きが徐々に速くなっていき、一定のリズムで腰を突き上げるようになる頃には斗貴子はのけぞって喘ぎ声を発していた。  
 
初めて突かれた時の痛みと同じくらいの量の快感に襲われる。  
 
耐えられないほどだった。  
 
そのウェイトが痛みからだんだんとむず痒い方へと移って行き、更に今度はそのむず痒さ  
 
が別の感覚に移行していく。  
 
カズキの腰の動きが徐々に速くなっていき、一定のリズムで腰を突き上げるようになる頃には斗貴子はのけぞって喘ぎ声を発していた。  
 
初めて突かれた時の痛みと同じくらいの量の快感に襲われる。  
 
耐えられないほどだった。  
 
「う…うああ………!あ、ぁああッ!…………あ、ん、んッ」  
部屋中に響く自分の声がものすごく恥ずかしいのだが、抑えることができない。  
こらえようとしても努力している斗貴子の自制心を、カズキ自身が与えてくる快感が、その大きさに物を言わせ力ずくで押さえつけているようだった。  
頭の中が溶けてしまい、おかしくなりそうだ。  
更に遣り切れないのは、カズキは斗貴子が鳴く度に「斗貴子さん、痛いの?」等と聞いてくることだ。  
そんなことを口で言うのは恥ずかしくて斗貴子が答えないでいると、ぴたりと動きを止めて「痛かったらやめるよ?」と言ってくる。  
本人は本当に心配して言ってくるのだが斗貴子にしてみればたまったものではない。  
カズキに最後までさせてあげたいという思いが半分と、途中で絶たれた快感を体が強烈に欲するのと半々で泣きそうになる。  
言わないといけないので羞恥をこらえながら結局言うことになるのだ。  
 
「…ん……カズ…キ……気持ち、いい………すご…く…ぁ、ああッ!」  
がくがくと体を揺さぶられながら途切れ途切れに言う斗貴子をみるとカズキ自身も汗だくになりながらも「俺も、気持ちいいよ……斗貴子さんの中…すごく、気持ちいい…」と斗貴子の耳元で囁き、更にきつく斗貴子を抱き締める。  
 
段々と上り詰めてきた二人はお互いの体をひしと抱き寄せて勢いのままに何度も唇を合わせる。  
すでに限界まできていた斗貴子が最後は声を漏らすことも出来ずに達すると、そのきつい締め付けに遭ったカズキもほぼ同時に果てた。  
 
それから後、夏休みに入るまで、錬金の戦士としての活動も無かったので二人はほぼ毎日のように体を重ねあった。  
いくらなんでもここまで、と斗貴子が思う程にカズキは斗貴子を求めたが、前戯の時間を多く取り、斗貴子を熱く柔らかく溶かしてからゆっくりと挿入すれば斗貴子の痛みを最小限に抑えられることを学んだので、そのようにして毎晩斗貴子を鳴かせた。  
 
そうして、毎晩のように二人仲良くしっぽりと濡れたが、一つだけ問題があったとすればこの期に及んで尚、カズキ自身、自らが巨根であるという自覚がないことであろうか。  
 
あの惨劇の夜の出来事も、自分がでかいから起きたことではなく、斗貴子が小さいかったからだと思っている。  
 
それはもちろん勘違いで、斗貴子はただの締りのいい女の子だが、カズキはただのデカチンではない。  
 
むしろ兵器といったところか。  
 
しかしこうして二人お互い害無く交わる方法も見つけることができたのでまあよしとする。  
 
 
(終わり)  
 
 
 

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