なんでこんなことになったのか、自分でも分からない。
なんで私はこんな風になってしまったんだろう。
夜風に吹かれ、空に広がる星を見ながら思う。
今日は寮を抜け出して、銀成学園高校校舎の屋上の給水塔に来ている。
晴れ渡った夜空にぽっかりと浮かぶ月が綺麗だ。
ここなら少しは考えが纏まるかと思ったのだが…。
……………駄目だ。
ちっとも纏まらない。
本当に、どうしていいのか、分からない。
私は。
私は、なんで。
なんであんなに、濡れるんだろう。
最初はどうだっただろう。いや、最初は、とにかくあれは、その、なんというか、その、
それどころじゃなかったと言うか、いあやま、もう終わった事だからいいのだがそれにしてもあやうく殺さ…いやだから、もういいのだが、とにかく初めての時はそれどころじゃなかったから置いておくとして、その次はどうだったか?
その次は………。
………そうだ。
あの時からすでに、私の体は、おかしかった。
核金により体の内の傷が癒され、そのままカズキともう一度、行為に及ぶことになり、まあいろいろされて、その後カズキの手が再度私のその場所に伸びてきた時、ぬるりと滑るその感触に私自身が驚いたのだ。
ものすごく、ぬれていた。
そこはどろどろでまるで氷が解けたようになっており、驚いて腰を動かしてその時初めて私の足の間からの分泌液がおしりを伝ってシーツまでぐしょぐしょにしてしまっている事に気付いたのだ。
一瞬なんだか分からなかったが、その液体がなんであるか、そういった方面の知識がさほどない私でもぼんやりと思い当たった。
分かった。
これはきっとあれだ。
分かって良かったがそれから死にたくなるほど恥ずかしくなった。
なんなんだ一体。
なんだってこんなに濡れるんだ。
明らかに量が尋常ではない。
カズキもびっくりして顔をあげた。
何も言わないが(言えないのか)これはナニ?という顔をして私を見てくる。
………ものすごい羞恥だ。
カズキを殺して私も死のう、と思ったくらいだ。
こんなに濡れるなんて。
私はそんなに、そんなに、その………。
エロスなのか。
私の体がこんなに濡れるということは、それは、その…、私が本質的にエロスい、ということか。
その結論に達するたびにガーン、と頭に衝撃が走る。
カズキの友人達にエロスはほどほどに、などといっていた自分が恥ずかしい。
エロスなのは私のほうじゃないか。
自分では気付かなかっただけで、私は、生まれつきエロスな性分を持った女だったというのか。
………………………………。
……………恥ずかしい。
………泣きたい。
でも情けなくて泣くに泣けない。
……………。
頭が真っ白になり、固まって何も言えないでいる私をカズキはじっと見つめた。
が、たいして間を置かずにまた下に目を向けると指先で確かめるように私の秘所を弄り始めた。
「ぁ、…ぁあん………」
あれほどの衝撃を受けたというのに、カズキがほんの少し指を動かすだけで私の体は簡単に反応してしまう。
身を捩じらせながら声を立ててしまうが、頭の中のほんの少し残った理性は私に絶望的な考えをもたらす。
こんな私をカズキはどう思っているのだろう。
こんなに濡らして、いやらしいおんなだと、思っているだろうか。
節操のない、淫靡な女だと思っただろうか。
あの時。
どうしようもないほど濡らしている私をじっと見つめた後、また視線を下に向けたカズキ。
その目の動きで、私の心は深く傷付いた。
心臓まで凍りついた。
目を逸らされた、と思った。
給水塔の上。
襟をはためかせる夜の冷たい風が肌を撫で、嫌な汗を冷やし体を震わせる私の服のポケットでまた、携帯が短く振動したのが感じられた。
斗貴子さん、今日は来るの遅かったなと思って聞いたら学校の給水塔にいたんだって。
なんでそんなところにいたのかな。
斗貴子さんって本当にあの場所が好きだよね。
「寒かったの?」
抱きしめたらなんだか体が細かく震えている気がしたからそう聞いたけど、斗貴子さんはオレの胸の辺りをじっとみながら小さく首を振った。
ほんとかな、と思いキスする前に斗貴子さんのほっぺたに自分のほっぺたをくっつける。
そこはひやりと冷たかった。
やっぱり、と思い腰に回していた手を持ち上げて斗貴子さんの両耳を包んだ。
みみたぶを摩りながら顔を覗き込む。
斗貴子さん、耳もつめたいよ?
温めなきゃ、と思ってもう一度斗貴子さんの体に腕を回して摩擦するようにして背中やおしりをさすった。
「………ン」
何か言ったような気がしたので斗貴子さんの目を見たけどオレに気付くと何でもない、とでもいうように首を振ったので続けることにした。
そうした方がやりやすいから斗貴子さんの体をベットに横たえる。
腰や足も撫でるようにすると、だんだん斗貴子さんの体が欲しくなってくる。
直接体を触れ合わせたいと思ったので服を脱がし始めた。
今日は落ち着いている。
ちゃんと前戯をして、斗貴子さんもきっともう十分に濡れたはずだ。
そう思って、いつの間にかうつ伏せになった斗貴子さんに覆いかぶさっている(なんでだろう?)オレは体の下で斗貴子さんの小さな胸を掴んでいた手をおへそよりもっと下に伸ばす。
「………やぁ……」
おしりをもじもじさせるみたいに動いたけど逃げられないようにオレが押さえつけているから斗貴子さんはどこにも行けない。
そうして無事、斗貴子さんのその場所にたどりついた。
指が触れた瞬間びく、と斗貴子さんが反応したのがオレの体にも伝わった。
やっぱり。
斗貴子さん、今日も、ものすごく濡らしてる。
「…だめぇ」
腰を引くような感じでオレの指から逃れようと、斗貴子さんが弱弱しく抗議するような声を上げた。
でも、ここまできたらもう大丈夫だってことは知ってるから、やめない。
なにが、だめなんだろう?
斗貴子さん、せっかくこんなに濡れているのに。
そう考えると、斗貴子さんの背中に乗せた顔が、微笑んでしまう。
斗貴子さんが濡れてくれると、すごくうれしい。
それだけ斗貴子さんが感じてくれたってことだし、あと、オレが入りやすいように斗貴子さんの体がそう反応してくれてるってことだから。
斗貴子さんがオレを受け入れようとしてくれてるってことだから。
だから斗貴子さんが濡れれば濡れるほど、うれしくなる。
もっと、いっぱい濡れて欲しい。
そんなふうに思うから後で斗貴子さんに「やりすぎだ!」って怒られるくらいに攻めてしまうんだけど、でもやっぱり斗貴子さんには、もっともっと感じて欲しい。
そうすれば、最初の時みたいに………。
…………………………。
………最初の時みたいに、斗貴子さんを苦しめずにすむ。
もう、ぜったい、斗貴子さんに苦しい思いを、させたくない。
悲しませたくない。
痛い思いを、させたくない。
斗貴子さんの白いきれいな背中に耳をつけて、指の動きをじょじょに速くしながらだんだん漏れる声が高くなっていくのを聞いた。
斗貴子さんの胸はちょっとちいさいけど、そのおしりはむちむちしててすごくかわいい。
小ぶりなんだけど、肉付きがいいと思う。
その、おしりがもぞもぞ動くたびにオレのものをぐにぐにと刺激する。
オレ自身も、気持ちがいい。
斗貴子さんはオレの指だけイキそうになったのかほんとにもがいて逃げようとした。
このままイッても構わないのに斗貴子さんは自分一人だけイクことに抵抗があるみたいだ。
それにオレが体重をかけているのが重たいかもしれないと思ったので一旦指の動きを停めて覆いかぶさっていた体をどかした。
斗貴子さんは荒い、というか不規則な息をしながらぺたりとつぶれていた体をほんの少し起こして、でもそれ以上力が残っていないのか横向きにころんと転がってしまう。
焦点が合わないようだった目がのろのろと動いて、オレを見る。
やっぱりちょっとやりすぎたかな、またあとで怒られるかなと思いながらこんどは正面から覆いかぶさって、キスする。
心配になったが、オレがキスしながら斗貴子さんの足をゆっくりと大きく広げるのに気付くと、背中に手を回してきてくれた。
唇を触れ合わせたまま、今日初めて繋がった。
斗貴子さんの様子を見ながらゆっくりと挿入していく。
その時はいつも、絶対に「痛い」とは言わないけど、よく見ているとやっぱり痛いのか顔をくっとしかめる。
斗貴子さんのあそこ小さいからな。
でも、心配になったからといって途中でやめたりするとかえって怒る。さすがに目潰しまではでないけど、やめて抜こうとすると「馬鹿ッ、そのままでいろ!」って怒鳴られる。
だから今日もやめずに最後まで、膣の一番奥まで入れる。到着したらそのまま斗貴子さんのからだがこなれてくるまでしばらく
待った。この時、ヘタに動くと繋がっている部分がずれて痛くなるってことを知っているのでオレも動いちゃダメなんだ。じっとしている。
誰も動かないので部屋の中が静かになった。
目を閉じてほんの少し眉間に皺を寄せている斗貴子さんの顔を見つめる。なんだか今日は元気がないみたいだけど、だいじょうぶかな。
まだ斗貴子さんのからだが慣れてくるまでもうちょっと時間がかかるはずだし、だからといって他にすることもない。斗貴子さんも何も言ってこない。
暇というか、手持ち無沙汰だ。なんとなく思いついたことをする。
からだがズレないように気を付けながらオレと斗貴子さんが繋がっている部分に手をやる。そこに触ると陰唇が俺のイチモツ
によってパンパンに引き伸ばされているのが分かる。ああ、これは痛いだろうなとあらためて実感する反面、だからあんなに、斗貴子さんのなか、気持ちいいのかとも思う。入れるといつもいつもぎゅうぎゅうに締め付けられて痛いの一歩手前
なんだけど、その中はぬるぬるしたヒダが絡み付いてくる感触で、気を付けないとあっという間に斗貴子さんをおいて一人でイッてしまいそうになるくらい気持ちがいい。
オレが触っている感触に気付いたのか斗貴子さんがふと目を開けた。
シーツに溜まっていた液体を手で掬い取る。
掬い取れるほどに、そこは、濡れていた。
その手を持ってきて、斗貴子さんに見せる。
顔の前にかざすとそれは、自らの重さに耐えかねてオレの手首を伝い、腕へと滴り落ちていく。
とろとろだ。
流れていく自分の液体を目で追った後、オレを見た。
そんな斗貴子さんを見つめながら言う。
「こんなに濡れてる」
「斗貴子さん、いやらしいよ…」
そのカズキの一言で頭の中がうつろになる。そしてからっぽになった心の中で重たい鐘が鳴り響くようにじわりじわりと絶望が押し寄せてくる。
やっぱり。
やっぱりカズキは。
私のこと、いやらしいおんなだと、思っていたんだ。
給水塔の上にいる私をカズキは携帯で呼んだ。
いきたくない。
これ以上カズキに私のあさましい性質を見せたくないから。
でも………。
結局、カズキの部屋に来ていた。その時点で決定じゃないか。私が淫乱であるということ。
カズキに抱き締めてもらっても、心は冷たいままだ。でも、いくら心が冷たくても、淫靡な肉体は反応してしまう。体を撫でてくれるカズキの手がおしりに移っただけで、声が漏れた。
あの時すでに、濡れていたんだ。
私が、セックスの割と早い段階で性器に触れられるのを避けるのは、何もしていないうちからすでにぐしょぐしょに濡れていることをカズキに知られるのが怖いからだ。
前戯の結果、濡れるんじゃない。
最初から濡れていたんだ。
カズキを思っただけで濡れる。なにもしていなくても、カズキがやさしくキスしてくれる感触や、撫でてくる手の感触、それに、私のうちに深く突き刺さる熱いカズキ自身。それらを思い出すだけで体と心がかっと熱くなり、下着の中がじわりと濡れてくる。
夜が訪れ、暗闇の中一人でいると、月明かりの中で自分を押し倒し、じっと見つめるカズキの顔が思い出される。思い出そうとしなくても、追い払おうとしても、まるでそれ自身意思があるかのように蘇って来て私の体を甘く切なく苛んでくる。
そうして、下着をしとどに濡らしてしまう。
途方に暮れている私を何も知らないカズキは呼んでくれる。
行くな、と押し留めようとする理性を逆に本能が押さえ付ける。
そうだ。私も。
カズキがほしいんだ。
私は、いやらしいおんなだ………。
そして。
………カズキも、そう、おもっていたんだな。
さっきからずっとカズキと目を合わせている。
カズキが私のことをどう思っていたのか分かった。
その事実がもたらしたのは、ショックというか絶望感というよりも、なんでそんな風に思ったのか自分でも分からなかったが。
さびしい、と思った。
カズキの表情が動いた。
そのことには気付いたけど、ぼんやりしていたのでそれがなんなのか分からなかった。
………わらっているのか?
そうだ。私を見て、カズキはわらっている…、でも。その表情は。
私を蔑んで、馬鹿にして笑っているんじゃない。
私が好きな、あの、カズキが本当に嬉しそうにしてわらう、あの………。
「斗貴子さん…」
「いやらしい斗貴子さんも、だいすきだよ」
って言ったら斗貴子さんが変な顔をした。
えーとこれ、なんていう表情だろう。なんか微妙な表情で、なんだろう。怒ってるのでもないし、笑っているのでもないし、困っている?うーんそれもちょっとちがうかなー。
痛がっているようには見えないし、悲しんでいる…っていうのもやっぱりちがう。一番近いのが………。
無表情、かな?
あれでも無表情って表情なのかな?“表情”が“無い”んだから…えーと表情がない表情……あれ?
「カズキ」
「えっ?な、なに?」
馬鹿なこと考えてたら斗貴子さんに呼ばれた。馬鹿みたいなこと考えてたのがバレたかな、と思ってドギマギしてしまった。
斗貴子さんがなにか言うんだと思って待ってたけど、何にも言わない。不思議に思っていると斗貴子さんが手を持ち上げて、オレの頭の後ろに乗せた。
その腕にちょっとだけ力がこもる。オレの頭を引き寄せようとしてるみたいだ。
斗貴子さんのしたいように、と思ったのでその力に逆らわずにいると当然、斗貴子さんの顔にオレの顔が近付いていく。
あ。
斗貴子さんのほうから、キスしようとしてくれてるんだ。
こんなこと初めてだ!
すごくうれしくなったので、唇が触れると同時に斗貴子さんの体の脇に添えていた手をすかさずその背中に回し、ちからいっぱい抱き締めた。
すぐに舌を入れるとびっくりしたみたいだったけど、斗貴子さんもオレの舌に舌を絡めて答えてくれた。
いとしさがこみ上げてきて、このまま二人でひとつになりたいと抱き締める力にさらに力を込めると「ン、ンン…」と斗貴子さんから声が漏れた。
そういえばもうひとつになってたんだ。
動いたから結合部がズレたみたいだ。でも。
斗貴子さんのその声は、痛がっている声じゃない。気持ちいい時、感じた時に出す、あの声だ。
もう大分、こなれてたみたいだ。
よし。
オレは、斗貴子さんをもっともっと鳴かせるために、ゆっくりと動き出した。