なんとなく満たされたような気分になり、その日はカズキの胸に抱かれて眠り久しぶりに落ち着いたようだった。
こんな自分でも、カズキは、うけいれてくれるんだ。
そう思うと今までに覚えがないような安らぎが心を満たした。
だが、次の日になって、事態はなにも解決していないという事に気が付いた。
明け方近くになり、窓の外遠くに見える濃紺の空が次第に白んできたので、カズキを起こさないようそっとベットから抜け出した。
ここで下手にカズキを起こすと、もう一度、かかってくる。
あんなにしたのにまだ、と思うのだが、この位の年齢の子はみんなそうなのだろうか、あっというまに回復している。
夜明けの薄い光線の中、隆々とそびえ立つ独立したそのシルエットを見て、開いた口が塞がらないことが数回あった。
思うに、カズキは、特別なのかもしれない。
サイズもふくめて。
とにかく起こすとやっかいなので、気付かれないようカズキの拘束から抜け出し、部屋を出て、寮の浴場を使い体を流した後、自分の部屋に戻ってくる。
そのまま朝を迎え、起き出してきた寮生達のドタバタと慌しいざわめきを聞きながら身支度を整える。もともと遅刻の多かったカズキはあれ以来更に寝坊することが多くなり、遅刻の回数が更に増えた。
携帯を鳴らして起してやろうかとも思うのだが、昨日の今日だがなぜか妙に気恥ずかしく、電話もできないし、昨日散々攻められた腹いせもあるので無視して一人で登校してしまう。
その日も、始業ベルぎりぎりで走り込んできたカズキがぜーはーと息を切らしながら教室に入ってきて、友人たちに小突かれてへらへらしながら朝の挨拶を交わしていた。
カズキはクラスの人気者であるらしく、席に着くまでの間にもクラスメイトから色々と声を掛けられている。にこにこしながら一人一人に言葉を返し、最後、私の側まで来てから今気付いたという風にぱっとこちらに顔を向けて私と目が合うと、にっこりとしながら言った。
「あ、斗貴子さん!おはよー」
それだけでどっと濡れた。
じわり、と下着の中が熱くなる。どくどくと濡れていくのが分かる。
カズキの顔を見ただけなのに。
カズキはそのままストンと席に着いてしまった。私をこんなにしておいて。
顔では平静を装ってはいるが、頭は恐慌状態だ。席から立てない。どうしよう。
なんだか前より更にひどくなった気がする。こんな真昼間から。しかも学校で。
ぐしょぐしょだ。
カズキの顔を見ただけなのに。
担任教師が来てホームルームが始まる。
話なんか頭に入らない。それよりもこの現状をどうしよう。なんとかしなければ私は学校にも来られなくなる。人前を歩く事さえできなくなるぞ?
しかし、なんとかといってもどうしようもない。どうすることもできない。
だって、からだが勝手に反応してしまうんだ。
カズキに。
私がこんな大変な目に遭っているというのにカズキはどこ吹く風だ。なんにも気付いていない(当たり前だが)。私がこんなになってしまったのは、そもそも君のせいなんだぞ。君が、あんなに激しく攻めるから…。
いやそれよりもとどうしようもない現実に対して私の脳が逃げ道として別の原因を出してくる。
一番最初の時は、確かこんなに濡れたりしなかった筈だから。そもそも、あの、巨大過ぎるカズキの、その、あれが悪かったのではないのか、と思えてくる。
あんな巨大なものを押し込まれ、無理矢理開かされたせいで、私のからだは、あの時にどこかおかしくしてしまったのではないのか。だからあんなにたがが外れたように濡れてしまうのではないのか。
少なくとも以前はまだ普通の体であった私を、カズキが、それこそ力ずくで、変えてしまったのではないのか?
そこまで考えてみたが、すぐに否定した。
そんな馬鹿な話があるものか。それに。
物事を人のせいにするのは良くないことだし、それも………カズキのせいには、したくない。
…例えカズキのせいでこういうからだになったとしても、それによってカズキを受け入れられるようになるというのなら、それはそれで、いいと思えてしまう。
沢山濡れたほうが、カズキを受け入れやすいというのも事実だがでも。
それが日常生活に支障をきたすのは絶対に困る。
日常とはいっても、私は本来は錬金の戦士であるからこの学園生活というのはあくまで仮のものになるのだが、銀成学園にて待機というのが戦士長の指示、錬金戦団の命令になるのだから、それが実行できないのは大変に都合が悪い。
というか普通に恥ずかしい…。
周囲に気付かれないよう小さく溜息をつく。
まだ、下腹部が、じんじんと熱い。
これ以上意識しないようにカズキが視界に入らないよう目を逸らす。
と、逸らした方向にたまたまカズキの友人がいた。
名前はたしか…岡倉といったか。
なんといっていいのか分からない、その形容しがたい奇妙な髪型をみつめる。
…………………………。
その日の斗貴子さんは、なんかいつもと違っていた。
オレが風呂から上がって自分の部屋に戻ってきて、電気を付けて振り返ったら目の前に斗貴子さんが立っていたからものすごくびっくりしてぎゃあとか言ってしまった。
まだ消灯時間じゃないし、メールで呼んでないうちに斗貴子さんがくる事なんて、あんまりない。
「とっ………斗貴子さん!どうしたの!?」
別に、なんでもないぞって言うけど、なにかいいたそうな顔をしてオレをじっと見ている。
自信に満ち溢れている表情で、なんだか目がランランと輝いている。