だんだんとのぼりつめてきたようだった。  
 
舌先に触れるカズキの状態からそう悟る。  
 
カズキの握り締めたこぶしには更に力がこもり、腕の筋肉がすうと浮き上がるのを横目で確認できた。  
もはや声を発しなくなり、息をも止めているカズキは、ほどなくして達することだろう。  
そして、そうなった時。  
このままいけば、私は、カズキの精液を飲むことになる。  
だが、それもかまわない。  
恐らくそれは、なんら抵抗なく私の喉を通るだろう。  
私は、カズキを受け入れるつもりだ。  
 
攻める場所を一箇所に絞り、陰茎の先端、尿道の辺りを懸命に舌で刺激する。早くカズキに果てて欲しい。  
カズキ、我慢しなくてもいいんだぞ。  
出しても構わないんだぞ。  
そんなことを考えながら動かし続けた舌はもはや付け根が強張り、擦りすぎて表面の感覚が無くなってきた。  
 
もう少し、あと少しとただひたすらに舌を動かしていたが。  
その時、唐突に。  
何かがふわりと私の顔を包み込んだ感触にはっとして動きを止めた。  
 
何だと思って見たら、さっきまで岩より硬く握り締められていたカズキのこぶしがいつの間にか広げられ、私の両の頬を包み込んでいた。  
そのままそっと私の顔を持ち上げてくるのでカズキから口が外れてしまう。  
これではもう終わりだ。  
そしてカズキと目が合う。  
その表情はさっきまでの悩ましげな、困ったようなものではなく、ひどく落ち着いたものだった。  
 
急激な状況の変化に私はついていけない。何が起こったのか、どうしていいのか分からず戸惑いながらカズキを見上げる。  
静かに私を見つめ続けるカズキから発せられた声は、その表情と同じく冷徹に感じられるほどに抑揚のないものだった。  
 
「もういいよ」  
 
 
………あまり、よくなかったのかな。  
 
私はカズキを感じさせているつもりでいたが、実際はそんなに良くなかったのかもしれない。私の舌や唇をカズキが感じてくれているのだと思うと、すごくうれしかったのだが、本当は、それほどたいしたことはなかったのか。  
一心不乱に口を使っていたせいで私の下顎は零れ落ちた自らの唾液で冷たく濡れている。それがたまらなくむなしく感じられた。ここまでしなくてもよかったのかもしれない。たいしてうまくできないのなら、こんなことしなくても。  
カズキに報いることができたというよろこびで熱くなっていた胸が、どんどんと冷めていくのが感じられた。なんだかカズキに対して申し訳ないという思いが心に満ちてくる。  
やはり、私は、カズキには、なにもしてあげられないのかな。  
 
 
あやうくもうすこしで出してしまうところだった。  
危なかった。  
斗貴子さんがオレのものに口をつけて舐めてくれるという感触は、すごいを通り越して、とんでもないともいえるものだった。  
やさしく触れる斗貴子さんの柔らかい唇と、まるでそれ自体が別の生き物のように蠢き這い回る熱い小さな舌の感触は、オレにとって初めての経験で、頭の芯に真っ赤に熱せられた鉄の棒を突き刺されたかのような衝撃を覚えた。  
絶えず動き続けながら、なにかちいさな虫がオレの陰茎の上で悪戯して動き回っているような、そんな艶めかしくてどこかくすぐったい様な奇妙な感覚と、それに加えて恐ろしいほどの性的な高まりを覚えて一気に果ててしまいそうになったが、必死に堪えた。  
射精感を堪えようと斗貴子さんに弄ばれているオレの分身から必死に意識と感覚を逸らせて、なにか別のことを考えようとするのだが、それでもふと、斗貴子さんが視界に入ってしまうとつい見てしまう。  
 
ちいさな唇からほんの少し覗く舌先が斗貴子さん自身の唾液で艶やかに光り、しっとりと押し付けられたそれは休むことなくくにくにとオレの上で動き続け、時々目を閉じてはその感触に浸っているのか「ん………」となまめかしい声を発する。  
それは、ぞくりと震えが走るほどに官能的な光景だった。  
くるしい、と思えるほどの快感に全身が支配される。  
このまま出してしまいそうになる。  
イッてしまいたい。  
ぜんぶ出して、それを、斗貴子さんに受け止めてほしい。  
でもそれは、ぜったいに、だめだ。  
だって今出してしまったら、斗貴子さんの顔に、それがかかってしまうかも知れない。  
そんなの、ぜったいに、だめだ。斗貴子さんの顔には……………。  
 
そう考えたらようやく体を動かすだけの気力が戻ってきた。  
斗貴子さんの顔をオレから離す。  
急に止めさせたから斗貴子さんが驚いたよう顔をした。でも今はそれどころじゃない。オレにそこまで考えて行動する余裕はなかった。  
もういいよと言って、それからとりあえず斗貴子さんの顔をはちきれそうになっている危険なオレの性器から遠ざけようと、さっきみたいにひざに抱っこするつもりで  
持ち上げようとした。妙にしおらしくなっていた斗貴子さんだったが、オレが脇に腕を入れ抱き上げようとすると身を捩って嫌がった。脇を締めて俺の腕から逃れるようにして身を引く。  
なんだか下のほうをひどく気にしているようだった。顔を赤くして俯いている斗貴子さんと同じようにその足元を一緒に覗き込んで、ひざの辺りに何かが溜まっているのが見えた。  
 
「…………すまない……その…。」  
 
汚してしまった……、と斗貴子さんが恥ずかしそうな、消え入りそうな声で言った。  
 
オレのを舐めている間もずっと濡らしていたらしい。足の間からとろりと溶け出した液体が太腿の内側を伝い流れ落ちて床の上の敷物にシミを作っていた。  
斗貴子さんはひどく動揺した様子であたりを見回し、それから思い当たったようにポケットに手を入れ探ると、そこからハンカチを取り出した。  
何をするんだろうと思って見ていたが、床にできたシミをふき取ろうとしているんだということに気付いてびっくりして、かがみこんでハンカチを広げる斗貴子さんを慌てて止めた。腕をつかんでこっちを向かせる。  
「そんなのあとでいいから…」  
でも、と妙に歯切れの悪い斗貴子さんを無理矢理引き上げるとオレの上に座らせた。斗貴子さんは今のオレの状態が分かっててそういうことをしてるのかな。  
だが、膝の上、オレのものに乗せた斗貴子さんはさらに動揺を見せた。なんだかもじもじしてオレから逃げようとする。  
「だめ…だ…カズキ…………。」  
腰を引いて逃げようとするのはどうも斗貴子さんの太股に付いた液体がオレの服の股の部分にぺっとりとつくのが気になるようだった。  
「よごれる………」  
 
「だから、そんなのいいってば」  
服がぬれることも、床にみずたまりができることも関係ない。逃げようとする斗貴子さんをぎゅっと抱き締めたが、んッという短い声を発しそのからだが仰け反った。  
オレのさおの上で斗貴子さんの熱く濡れた陰唇がぬるりと滑った。  
声を出してしまったことが恥ずかしいのか俯く斗貴子さんを見てると、あまり深く考えず、後先考えずに言ってしまう。  
 
「気持ちいいなら、腰、もっと動かしてごらんよ。」  
 
驚愕の表情を浮かべてオレを見た斗貴子さんは、いやだ、とかそんなことできないとかいって抵抗した。オレはただ斗貴子さんに気持ちよくなってほしいだけなのに。  
そうしてくれるとオレ、すごく気持ちいいんだけどなと言ってみると斗貴子さんの表情が変わった。そうなのか…?と聞いてくる斗貴子さんをじっとみつめて黙って  
その細い腰をちょっと撫でた。  
かなり長い時間斗貴子さんは逡巡していた。  
が、やっと顔を上げると、おずおずと腕を持ち上げてオレの肩に乗せて体を支え、そして、こっちはもっとおずおずと、腰を動かし始めた。  
 
オレの肩に回した腕で体を支えながら、ほんのちょっとだけ腰を前後に動かす。  
ぬる、ぬる、とよく滑る。  
たくさん濡れているので斗貴子さんの陰部は滑らかに、抵抗なく、オレの硬く張ったさおの上を滑った。ときどき、くちゅ、くちゅ、と小さな水音が響く。  
その音だけでも恥ずかしそうな斗貴子さんは真っ赤になって俯きながらそれでも懸命に、ただしゆっくりと前後に腰を振る。多分オレは下から動かないほうが  
うまくいくだろうと斗貴子さんの小さく揺れる肩を見ながら思うのだが、もじもじと控えめにちょっとしか動かない腰がじれったくなり、そのおしりをぐっと掴んで、  
オレ自らが陰茎に押し付けるようにしながらもっと大きく前後に動かした。  
「んッ!?…ぁ、や………あッ!」  
オレの腕でぐいぐいと強く腰を揺さぶられ、あそこが、ぐちゅっ、ぐちゅっ、と卑猥な音を立てた斗貴子さんの声が一気に昂ぶる。  
「もっとさ、こういう風に動かしてくれないと、オレ、気持ちよくないよ?」  
そう言って手を離すと、斗貴子さんはぐったりとオレにもたれかかって、そのまま動くのを忘れてしまったかのようにはあはあと息を荒げながら静止してしまう。  
しょうがないなとおしりを指でとんとんと叩き、ほら、ちゃんと動かしてと言うと、思い出したようにまた腰を動かしはじめた。  
 
さっきよりは大きく、腰を前後に振る。  
もっと強く、とオレが注文をつけると、くう、と呻きのような声を発しながらきゅっと腰を押し付けてくる。  
 
くちゃ、くちゃ、と静かな室内にオレと斗貴子さんの性器が触れ合う音が響く。  
ゆっくりとだが強く大きく、次第にその動きは確実さを増し、しっかりと外陰部を押し付けて、それがぬるぬると熱く擦れ自らを刺激する。明らかに自らの行為で  
快感を得ている斗貴子さんの目は焦点が定まらなくなっていった。とろんとしてどこを見ているのかよく分からず、徐々にまぶたが下がり、  
ついには閉じられてしまうが、そのかわりのように唇がゆっくりと開き、白い歯がちいさく覗く。は、は、と息があがってきたが、その腰の動きはさっきまでのぎこちないものから  
滑らかな動きへと移行されていた。  
「…ん………くぅ……。」  
少しずつ、斗貴子さんの嬌声が漏れ出した。  
おそらくそこが一番感じるのだろう、オレの上にただぺたりと腰を下ろすのではなく、ほんの少し体を前に傾けて、クリトリスが擦れるように自分で体を動かした。  
初めのうちは、ただ言われたから動かしている、というようなまずい動きだったものが、今は滑らかに、斗貴子さんが自らに快楽を与えるために動かしているというのがよく分かった。  
斗貴子さんが自慰をしているようなものだ。  
二人の間から響いてくる水音はさらに激しく大きくなる。  
ぐちゅッ、くちゅッ、くちゅッ。  
「……ん………ん………んッ………くぅ………ッ!」  
上体はオレにもたれかかって首に手を回し、縋り付いているようだが、その下半身はオレの眼下で激しく前後に揺れる。  
抱き締めた斗貴子さんの肩越しに、よせてはかえす波のように一定の動きを繰り返す小ぶりなおしりが見えるが、それをたいした感慨も無くオレはただ見つめている。  
耳元で、斗貴子さんの苦しげな囁きが聞こえてきた。  
 
「は、あぁ………ッくぅ……カズキぃ……………」  
 
オレの名前を呼んでいる。  
 
「…んッ………き、もち…いいか……………?」  
 
なんてこといわれたのでせっかくオレが必死になって意識をそっち方面から逸らしていたのに全部もどってきてしまったじゃないか。  
斗貴子さんのバカ。  
 
限界だった。  
もう駄目だ。漏れそう。イキそうだ。  
いよいよ最後の崖っぷちに追い詰められ爪先一本立ちで辛うじて踏みとどまっている状態なのに(ちょうちょがとまったらその重みで海に落ちる)、オレは、  
「斗貴子さんがイクまでイッたらだめだ!」とそれこそ死ぬる思いで出そうなのを我慢してたのに、斗貴子さんのために我慢してたのに、その斗貴子さんの  
せいで痛恨の一撃を食らってしまった。  
そんなかわいい声出して聞かないで欲しい。  
ぐっと来る。  
 
「…カズキ……ん……きもち…よく…………ないか………?」  
さっきから健気に一生懸命に腰を動かす斗貴子さんは、気遣わしげにそう聞いてくるが、オレの方は答えるどころじゃない。  
 
だめ。  
もう限界。  
 
“…オレはもう…だめだ…”と挫けてしまいそうな自分(肉体)を、もう一人の自分(精神)が“まだだ!まだ諦めるな!”と叱咤する。  
けどほんともう限界。  
イキそう。  
てか、逝きそう。  
我慢し過ぎて、魂がどっかに飛んで行きそうだ。  
額に血管が浮き出て、目が真っ赤に充血する。  
顎が震えだすほど力を込めて歯を食いしばる。  
そんなオレの命がけの努力を灰燼に帰すかの如く、斗貴子さんの容赦の無い攻撃が繰り出される。  
複雑な起伏をみせるあたたかくてぐしょぐしょに濡れている斗貴子さんのその部分がオレの上をなんともいやらしく舐めまわす。  
さっきは舌で局地的に攻められていたのが今度は性器で、それも普通に入れるのではなくそのいつも使っている進入口のほうがもっと広い範囲をカバーしてオレをしごきあげる。  
そして、斗貴子さんが、顔を真っ赤にしながらオレのために一生懸命腰を使ってくれるというこの事実。  
失神しそうなほどすごい感覚だ。  
ただそれを、頭の血管が切れそうなほど必死こいて我慢しているから、だんだん体がおかしくなってきた。  
 
心と体がバラバラになる。  
魂がどっかに飛んでいってしまい、心の無い言葉が平気で、そしてなんの脈絡も無く口をついて出てくる。  
 
そんなわけで、気が付いた時、オレはとんでもないことを言ってしまった。  
 
「………斗貴子さん………………………おっぱい小さいね。」  
 
ぎくり、と斗貴子さんの体が震えた。  
ショックを受けたのかはう、と息を呑む音がする。  
 
うわわわわなななんてこと言うんだ――!と思うオレもいるのに、その意識が行動として表層に出てこない。  
自分自身が言ってしまったことにかなりの衝撃を受けたが、下半身がそれどころじゃないので大きなリアクションがない。なんか無表情だ。  
そんなオレの内面に関わらず、口は勝手にふてぶてしく「ねえ。小さいよねえ。」そう思わない?などと言っている。  
あーもうなんてことを!  
やめろー!と言いたいところだけど、口が勝手に動いてしまう。止められない。  
 
くう、と呻いてから斗貴子さんはか、か、か、と三回つっかえた。  
「かッ…カズキは………やっぱり………ッ……むッむねは………………」  
おおきいほうがいいのか…?と消え入りそうな声で聞かれた。  
え………?  
えーと…。  
そう言われるとどうなんだろう。いつも岡倉からエロ本借りるときは、無意識の内に“Hでキレイなお姉さん”系の  
おっぱいの大きいひとが載ってるのばかり借りてたなあ。でも、斗貴子さんのちっちゃいおっぱいもかわいくて好きなんだよなあ。  
どっちなんだろ。  
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…………・ん?」  
よく分かんない返事をしてしまったので斗貴子さんが「?」という顔をした。そりゃそうだ。  
 
でも考えたら分かったぞ。  
 
オレは、おっぱいが好きなんじゃなくて、斗貴子さんが好きなんだ。  
斗貴子さんが好きだから斗貴子さんのおっぱいも好き。大きくても小さくても関係ないよ。  
でも、斗貴子さんのおっぱいが大きかったらそっちのほうがいいのかな?  
……いやいや、おっぱいの大きい斗貴子さんなんて冗談でも想像できないよ。そんなの笑っちゃうねハハハ。  
斗貴子さんのスラッとした細身のからだにはやっぱり今のままのちっちゃめのおっぱいが似合うと思うよ。  
そんなわけでオレは斗貴子さんのちっちゃいおっぱいが大好きだよ。  
 
…うん、これはオレにしては珍しく論理的な考えだ。じつに理路整然としているじゃないか。  
さて、これをどうやって斗貴子さんに伝えようか。  
ところでさっき考えてる時ずっと自分の口がぱくぱく動いていたような気がする。  
………ぜんぶ同時進行で喋ってたような気がするのは気のせい?  
斗貴子さん、耳まで真っ赤だねえ。なんだか目がウルウルしてるよ。  
でもオレ、今、それどころじゃない。ほんと大変なんだ。  
股間が爆発しそう。  
これ以上我慢したら、死ぬかもしれない。オレの大事な息子が。  
もう、イってもいいかな?  
斗貴子さんには悪いけどさ。  
ごめんね斗貴子さん。  
 
そして、結局肉体の欲求に逆らえず、一切の抵抗を諦めたオレは、この身のすべてを委ねようと、斗貴子さんのその細い体を抱き寄せて目をつぶった。  
 
でも、オレの決着がつくその前に、「きゅう」とゴマフアザラシの赤ちゃんのような鳴き声をたてて斗貴子さんが先にイってしまった。  
 
いろいろタイミングが悪いな。  
 
ぐったりと脱力して、オレがちゃんと支えていなかったせいでそのままぐずぐずと崩れ落ちてしまう。  
このまま斗貴子さんを休ませてあげたほうがいいかなとも思ったけど、下のほうがもう限界だからそうも言っていられない。横向きに倒れている  
斗貴子さんの腰を持って挿入しやすい体勢にしようとしたが、なんだかうまく体に力が入らなかった。よいしょと持ち上げたら裏返しになり  
斗貴子さんを四つん這いにしておしりをオレのほうにむけるようなかたちになった。  
 
こんな体位でハメたことないけど、ま、いいか。  
 
いつもは斗貴子さんが痛がってないか見ながら入れるから、正面からしかやったことなかったから、そのほかの体位ってそういえばしたことないな。  
バックから入れるのも初めてだ。でも、ま、大丈夫だろう。きっと。  
そう思って先に進めようとするが、ぐったりしていた斗貴子さんはいつもと違う格好をさせられたことに驚き弱弱しい声をたてた。  
「………んぁ……カ……ズ…キ……?」  
おずおずと、心細そうな顔をして、それでも首しか体を動かす余裕が無いのか、肩越しに振り返ってオレを見る。  
斗貴子さんの、もうぐじゅぐじゅになっているあそこの入り口にオレのものをぐっと当てた。  
「あ………?や、やだ……ぁ……………ッ!」  
後ろから入れられることに抵抗があるのか斗貴子さんが抗議の声を上げた。  
が、もう止まらない。  
構わずずぶりと進入を開始した。  
 
「ッ―――――――――あうッ……………くぅ…ッ」  
ずぶ、ずぶ、と進めていく。こぶしを握り締めた斗貴子さんは背中を丸くして、んっんっと呻きながらいつもと違う感覚に耐えているようだった。  
ゆっくり、ゆっくりとぬるぬるの熱いヒダの中にオレの陰茎を沈めていく。  
「………だめ………だめぇ…………」  
進入が深くなるにつれ斗貴子さんがおしりを動かすので、じっとしてて、と背中に手を当て静かにさせる。  
しかし今日はいつもにも増して締め付けがきついなと思ったら、斗貴子さんが足を閉じてるからだと気が付いた。  
いつもは足を一杯に広げさせてから入れるけど、それでもきゅうきゅうと苦しいのにこれじゃあツラいや。  
わき腹から回した手で内腿を擦りながら「キツいから、足、もっと広げて」と頼むと顔を枕に埋めたまま素直に足を開いてくれる。  
ぐ、ぐ、と進めていき最後に先端が奥に突き当たった。  
「………ぁぅ」  
小さく声を漏らし、ふるふると体を震わせる斗貴子さんを見ていると我慢ができない。  
おしりを掴むと前後に腰を動かし始めた。  
 
「ふゎッ………?…ま…待ッ……ぁ……あんッ!」  
もうちょっと慣れるまで待たないととも思うけど、下のほうが待ってくれない。  
少し強すぎるかと思うくらいの力で後ろから何度も突いた。  
 
力強く、激しく突き上げる。  
ぐちゅッ、ぐちゅッ、と卑猥な音が響く。  
「ッ……だめ…ぇ…………あんッ…」  
「……カズ……ッ……つ…よい……よぉ………ひ…くぅ!」  
後ろからどんどん突かれた斗貴子さんが途切れ途切れになりながら泣き言を言う。  
カズキ、と俺の名前を呼んでくる。  
 
だけどその時、オレは、またしても「それどころじゃない」状況に陥っていた。  
 
腰を使いながらもオレの顔は真っ青だ。  
脂汗が滲んでくる。  
ものすごく苦しい。  
たいへんだ。  
どうしよう。  
 
さっき我慢しすぎたせいで、こんどは、でなくなった。  
 
 
 

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