斗貴子さんはどうしていいのか分からなかくてそのまま立ち尽くしているオレを見るとだんだん怪訝な表情になっていった。  
「か…、カズキ……?」  
しないのか…?と、聞いてきた。  
「え?なにを?」  
といったら斗貴子さんは真っ赤になってもじもじもごもご言い出した。何て言ってるのかぜんぜん聞き取れない。なに?と聞き返しても、むにゃむにゃ、うにゃうにゃと言っているようにしかしか聞こえない。ぜんぜん分からない。意味不明だ。  
その代わりにそろそろと手を伸ばしてオレの手を取ると、赤い顔をしたままベットの脇まで引っぱってきた。  
いったい、何がしたいんだろう?  
ぽかんとしているオレを見ると、今度は斗貴子さんの顔にさっと怒りがみなぎるのが分かった。なんで分かったかと言うと、いつもオレに目潰し食らわせる時の顔だから。と思ったところでオレの視界の中から斗貴子さんが消えた。  
ほぼ同時に足になにかものすごい重さを持ったものががーんとあたり激痛と共に足を掬われてちょうど脇にあったベットに引っくり返ってしまった。  
いたい、と足を押さえながらなんとか起き上がると、ベットの隣に斗貴子さんがじりじりと這い登ってきた。  
一瞬にして上体を沈み込ませた斗貴子さんが自らの体を支柱に足を回転させ、オレに足払いをかけてきたのだと今になって理解できた。  
でもなんで?  
ベットの上に膝をついて起き上がっている斗貴子さんはオレのほうをものすごく怖い顔して睨んだ後、スカートの中に手を入れた。  
ぺろり、となにかを降ろした。  
トキコサンガパンツヌイダ。  
とようやく分かったときにはすでに斗貴子さんは足首からショーツを引き抜いているところだった。びっくりしているとさらにものすごいことが起こった。  
斗貴子さんは体をうしろに倒すと、肘を使いじりじりとベットの真ん中へ移動して仰向けにころんと寝転がり、そのままゆっくりと足を持ち上げた。  
そ、そんなことしたらみえちゃうよ、と思った時にはもう遅く、斗貴子さんのそこが丸見えになっていた。  
 
斗貴子さんの白い足の付け根の、内側の部分。  
うすい陰毛のなかに隠れて見える、ほんのすこし赤みがかかったピンク色の肉。  
ふっくらとした小さな二対のふくらみには、まじめに隠す気あるのか?と聞きたくなるくらい薄くて、ちょっとしか生えてなくて、しかもなんだかふにゃふにゃの毛しかない。その毛に形だけ守られるようにちいさな裂け目がある。  
いつも触ったりはしてたけど、こうして電気の付いたまま、明るいの光の中で真正面からはっきりと見るのは初めてだったので思わず見入ってしまった。すごくどきどきする。  
でも、ここってこんな風になってたのかと思う反面、なにか違和感があった。  
なにかへんだ。なにか違う。  
オレが思っているのは、斗貴子さんのここは………。  
分かった。なにが違うのか。  
 
今日は斗貴子さん、ぜんぜん濡れてないんだ。  
 
 
ものすごく誇らしい気持ちだった。  
自らの足を抱え、カズキに私の濡れてないところを見せながら、ついにやった、とうとうやったと勝利の喜びの余韻に浸っていた。  
私は、ついに、見つけたぞ。  
 
カズキを思うだけで大量に濡れてしまうこの体を鎮める方法を、ついに見つけた。  
キーワードは“岡倉”だ。  
朝のホームルームの時間、カズキと目が合っただけで濡れてしまい、困り果てて、視線を投じたその先には偶然カズキの友人である岡倉の席があった。  
何とはなしにそのリーゼントントを見つめる。  
暫くして、自分のからだの変化に気が付いた。  
とろとろと濡れていたのがぴたり、と止まっていた。  
頭に昇っていた血がすうー…と降りて行くのが分かる。  
熱く疼いていた下腹部があっという間に冷めて最初に濡れた下着が冷たくなり、気持ち悪いとさえ思った。  
 
さっきまでカッカしていた自分の精神状態を、何を馬鹿なことをしていたんだと静かに分析できる。カズキのことばかり考えていたからこんなことになるんだ。  
なぜかは分からないが、岡倉のことを考えるだけで、いや、頭の片隅にそのリーゼントの存在をおいて置くだけで、血の気が引くというか、理性を保つことができて、冷静でいられる。  
これはすごいものを発見してしまった。  
これはいい。  
これならいつでも、私は冷静でいられる。  
そんな訳で、その日は一日中岡倉のリーゼントを頭の片隅にいれておいた。  
おかげで、体が勝手に濡れてくるということは、それから決して、一度たりともなかった。  
休み時間等、カズキが私に話しかけて来たり、何かの拍子にふと目が合い、にっこりと微笑まれたりして、カズキのやさしい表情に  
ぐらりときそうになったことがあったが、そういう時は即座に私の中に“岡倉”を呼び出して、カズキとだぶらせるようにしてその場に配置すると、燃え上がりそうになった炎があっという間に鎮火するのが感じられた。  
その状況は、マッチの炎を琵琶湖に投げ込む、と形容したら近いだろうか。  
じゅっと消えて無くなる。  
とにかく、カズキとの間に“岡倉”を割り込ませると、跡形も無くなるのだ。  
岡倉のことを考えるだけで、なんだか怖いくらい冷静になれる。冷静になると、カズキのことを思いひとり熱くなることの多かった自分自身を侮蔑の眼差しで見ることさえ出来る。  
大変に便利だ。  
もう濡れることは無かった。  
そうして一日が終わり、その日は無事、帰路につくことができた。  
今日はものすごくすがすがしい一日だった。思い通りにならない自分のからだに振り回されることのない、大変に良い一日だった。夕焼け空のオレンジ色の光に包まれながらそう思う。  
これも“岡倉”のおかげだ。  
ありがとう。岡倉。  
前を行くカズキとなにやら肩を組み合ったりして談笑しながら歩く岡倉に、私はそっと、視線だけで礼を言った。  
ただ、あんまり嬉しかったので、学生寮の自分の部屋に着いたところで今度は別の衝動がふつふつと込み上げてくるのが抑えきれなかった。別の意味で頭に血が昇り、我慢できない。  
 
カズキにいいたい。  
冷静になった自分をみせたい。  
もう、私は、あんなに大量に濡らす淫靡な女じゃないんだぞとカズキに報告したくなった。  
 
そうして今に至る。  
 
カズキの部屋で風呂に行ってしまったらしい当人を待ちぶせ、戻ってきたのは良いが今日はなんだかおかしい。いつもは私を見るなり待てと言うのも聞かず押し倒してくるのに今日はなにもしてこない。なに?等と私に聞いてきて手を出そうとしない。な…なぜだ…?  
しょうがないから分かりやすいようにベットの端まで手を引いてきてやったのにまだぽかんとしている。とたんにカッとなった。足払いをかけてカズキをベットに押し倒して、とにかく早く変化した私自身を見て欲しくて自分から下着を脱いだ。  
足を開き、乾いている私のその部分をカズキに見せて、もう私はあんなぐしょぐしょに濡らす恥ずかしい女じゃないんだぞとアピールした。  
恥ずかしくないんだ。恥ずかしくない…。あれ?  
 
「…………ッ」  
 
途端に恥ずかしくなった。  
なんで私はこんな恥ずかしい体勢を、こんな明るいところで、しかも、自分から。  
ああ馬鹿みたいだ。馬鹿なんじゃないのか私は?頭に昇った血がいったん下がって今度は頭の別の所に昇ったらしい。自分からこんなことして、しかも、カ、カズキが、思いっきり見てる………。  
慌てて足を閉じようとした所でさっきから微動だにせずかなりの至近距離で私の足の間を見ていたカズキの変化に気が付いた。  
カズキ……?  
な、なにをしようとしているんだ?  
 
カズキが、くちを、あーんと開けている。  
 
それが何を意味するのか分からなくて一瞬動くのが遅れた。後になってあの時もっと早く足を閉じておくべきだったと後悔した。  
 
ぱくり、とかぶりつかれた。  
 
「は…、はひゃ………ッ!」  
からだの中でも神経が沢山集まっていて、最も敏感で、刺激を防ぐような厚い皮膚が存在しない一番弱い所が、とてつもなく大きく不気味な感覚に襲われ思わず歯の無い老婆のような声が出てしまった。  
そのままカズキが、もぐもぐむしゃむしゃと、食べようとでもしているかのように舌や唇や顎を動かす。  
「ば、馬鹿ぁッ!…そんなとこ、ろ、なッ舐めるな………ひ………ッ!」  
抗議しても、カズキはやめない。  
 
 
ぜんぜん濡れていない斗貴子さんのそこを見ているとなんだか不吉な感じがした。  
いつもはあんなに濡れているのに。  
乾いていて、少しも濡れていない。  
心配になってきた。濡れていない斗貴子さんのココは、なんか嫌だ、と思った。  
濡らさなきゃ。なんとかして。  
それで舐めようとおもった。  
濡らすっていうのが半分だけど、もう半分は、実は、前からここ、舐めたいと思っていたっていうのもある。  
電気を消した暗闇のなかでも、足を開かせてじっと見てると斗貴子さんが恥ずかしがって嫌がるから、あんまりちゃんと見たことはなかったんだけど、時々ここ舐めたいって思うことがあった。  
でも、そんなことしたら、斗貴子さんびっくりするかな、いやがるかなって思うと、なんとなくできなかった。  
だけど今こうして間近で、そのちいさなピンク色の割れ目を見てると無性に、舐めたい、食べたいという衝動が込み上げてくる。  
我慢できなくなり斗貴子さんのあそこに覆いかぶさった。  
 
最初にくちに触れたやわらかい斗貴子さんの陰毛を舌で掻き分けて今はまだぴったりと閉じているその裂け目に舌先を合わせる、ぬるぬると動かすと斗貴子さんがなんとか言ってきたけど、聞こえてたはずなのに何ていったのかよく分からなかった。  
それだけ、くちびると舌に触れるあたたかい感触に心を奪われていた。  
斗貴子さんの足ががじたばた動いて口が外れそうになったので、その太ももに腕を回してがっしりと押さえ込む。押さえ込んだ腕  
に力を込めて逃げられないようにしながら同じようにいりぐちを上下に行きつ戻りつ探る舌先に力を込める。ちょっとずつちょっとずつ舌を埋めていく。  
「やぁ…やあぁ…………」  
オレの攻めに呼応するかのように斗貴子さんから甘い声が漏れてくる。動かす速度を速くしながらどんどん奥まで侵入していく。尖  
らせた舌を持ち上げるようにして中のぬるぬるした粘膜を激しく擦るとオレの頭を乗せたまま斗貴子さんの腰がぐうと浮いた。同時にほっそりとしたももがオレの耳を両脇からぎゅうと締め付けた。  
「だめ………そこ……だめぇ………」  
そう言われると、もっとしたくなる。  
普段は斗貴子さんの嫌がることなら絶対にしたくないと思うけど、セックスの時は逆だ。斗貴子さんがいやだって言うところは攻  
めるとすごく感じるところらしい。だから嫌がるところほどもっと攻めたくなる。  
一心不乱に斗貴子さんのなかを舐めているとじわり、じわりと濡れてくるのが分かった。ほどなくしていつもの斗貴子さんらしくあそ  
こから愛液がとろりとろりと流れ出してきた。それに、いつも通り身悶えして泣いているような声をあげる。もうやめて、と言ったのが分かった。一旦口を離す。  
「……あうぅ………」  
ぐったりとなってしまった斗貴子さんの口から声が漏れる。は、は、と息が荒い。でもまだ終わらせるつもりはない。  
 
離した口をもう一度、今度は膣の少し上、クリトリスにそっと付けた。  
「ひゃ……あ…あ………あぁん……んん…」  
今度は軽く吸いながらその小さなぷにぷにした突起を舌で少し強めに弄るとまた斗貴子さんが声を上げて腰をもじもじしだした。ぐりぐりと押し込めるように舐めていた舌を今度は少し離して突起の一番先端だけに触れるように細かく刺激すると体全体がびく、びくと震えた。  
「カズ………カズ………も……や…ぁ………だ…だめえぇ…………」  
暴れる力が強くなった。斗貴子さんイキそうなんだ。更に舌の動きを早くしながら絶対逃がさないぞとしっかりと斗貴子さんを押えつける。  
ぴちゃぴちゃ、くちゅくちゅと水っぽい音が激しくなる。斗貴子さんが足をじたじたさせると、あそこからやわらかい肉同士が触れ合う微かな水音が聞こえてくる。  
たくさんの液体がおしりまで伝っていた。  
いっちゃう、というちいさな震える声がオレの頭の上から聞こえた。  
汗ばんだ斗貴子さんのふとももが最後にありったけの力でオレの頭を締め付ける。  
そのままぴくん、とちいさくはねた。  
締め上げられたまま暫く時が止まったかのように静止していたけどほどなくして、ゆるゆると斗貴子さんの足の力が抜けていった。その拘束からそっと抜け出す。  
斗貴子さん、ものすごくぐったりしている。オレの頭があったのと同じだけの隙間を残したまま、自分で足も閉じられないらしい。斗貴子さんいっつも足開くの恥ずかしがってたよなと思い出して閉じてあげた。  
体を横たえたまま深呼吸を繰り返すだけだった斗貴子さんがようやく動いた。もぞもぞと、ゆっくりと体を起こした。  
まだ、はあはあと荒い息をつきながらベットに力なく座り込んでオレの方をじっと見ている。  
目に涙が溜まってるので手でそっと拭ってあげた。  
やりすぎたかな、怒られるかな、と目潰しを覚悟したけど斗貴子さんはあいかわらず何も言わない。  
ちょっと怖くなった。  
 
ハアハアと息の荒かった斗貴子さんがオレの方をじっとみつめながらズルズルと移動した。  
ベットの端まで到達すると、その細く白い足を一本ずつ床に降ろす。おしりもずらして床の上の敷物の上にストンと膝をついた。  
腰掛けたままのオレを正面から見つめる。  
なんだろう…。  
ふいに、じっと見つめていた視線を下に投じた。  
服の上からじーっとオレの足の間をみつめている。  
と、おもむろに手を伸ばしオレのベルトに手をかけたかと思うとチャックをジ、ジ、ジ、と降ろした。あっけにとられている内に斗貴子さんはオレのものを取り出してしまっていた。  
しかし、そのまま何をするでもなく、ギチギチに硬くなっているオレのものに目を合わせたまま硬直している。  
「と、斗貴子さん!」  
その場の沈黙と斗貴子さんの凝視に耐えられなくなり思わず声をかけると、斗貴子さんはハッとしたようにオレの方を見た。  
妙に心細げな表情だったがやがて何事かを決心したかのように一瞬、口をキュッと結ぶと、なにやら口元をモゾモゾしだした。  
ふわ、とあくびでもするかのように口を開ける。  
そのままジリ、ジリ、と近付いて来た。  
 
 
 
間近にあるカズキのそれを見て、軽く意識が飛んでしまった。  
チャックを半分も降ろさない内に自らの力でよっこらしょと顔を覗かせるその力強さにものが言えない。。  
そうして、私の鼻先に現れた彼と、また目が合ってしまった。  
なんにしてもでかいな。  
視界一杯に広がるカズキのそれを見ているとあることを思い出してしまう。  
 
 
 
初めて交わった次の日の夜、カズキに呼び出された。  
カズキの部屋でなんのかんのと色々話しかけられ、私もそれに答えていたが、要するにカズキは、また私としたいらしかった。それで呼び寄せたらしい。  
会話が途切れると、私の腰をそっと抱き寄せて、  
「だめ…?」  
と聞いてきた。  
駄目とは言えなかった。あそこまで許しておいて一回きりというのもどうなんだろうと思ったというのもあるが、ねだるような目で私を見つめてくるカズキを否定できなかった。  
しかし、目の眩むようなキスのあと、ベットに押し倒されたところであることが気になった。  
私の口ばかりでなく耳や首筋を吸い、体を絶えず撫でながらどんどんと服を脱がせていくカズキから身をよじって体を離す。  
カズキの動きがピタリと止まった。  
「…だめなの?」  
「………駄目じゃなくて…その………」  
半分脱がされたシャツの前を合わせながら言った。  
あれがないだろ……?  
私は当然持っていないし、カズキが持っているとも思えなかった。  
昨晩は仕方なかったとは言え、これ以上体の中に放たれて、もしそれが、生を享けることになったら。  
そう思うと正直怖かった。  
カズキなら分かってくれるだろう。無理矢理する、なんていうことはしないだろうと信じたからこそ、そう言った。  
きょとんとしていたカズキだったがあ、と合点がいったという顔をして、体を離してくれたのでほっとしたが、その時私は、カズキとの間にできた空間にがっかりしている自分もいることに気が付いていた。  
しかし、その後カズキは一度えへらーと笑うと私の肩にぽんと手を置き、なにやらベットの下を覗き込んでごそごそ探り出した。  
そこから小さな箱を取り出す。  
そ、それは…?  
私の顔を見てカズキはとびきりうれしそうな顔をした。  
「今日ね、買ってきておいたよ」  
ほめて、という感じで得意そうに私にそう告げた。  
…キミねえ………。  
昼間の内から私とやることを考えていたのか?  
 
 
まっててね、というとまず私の服を脱がし、自らの着ているものもぽいぽいと脱ぐ。  
全裸になったところでカズキの勃起した巨大な陰茎が姿を現し、昨日も見たがそのサイズの甚だしさに眼も心も奪われてしまった。  
しかしカズキは気にするでもなくすでにその避妊具が入った箱に取り掛かっている。  
パッケージを破ると中から小さな袋を取り出し、初めて見るのか物珍しげにそれを見つめていた。私だって現物を見るのは初めてだ。  
一緒に入っていた取扱い説明書を見ながら袋を破る。  
そうして、くるくると丸めてあるそれが姿を現した。  
カズキがつまみ出したそれを、ふたりとも無言で見つめた。  
 
異様に小さい。  
 
と思った。恐らくカズキもそう思ったのであろう。あれ?という顔をしていたから。  
こんなに小さいものなのか。すぐ真下にあるカズキのそれと比べると、だいこんの隣に置いた膨らませる前の水風船のゴムのようだった。  
なんとなく、ふたりで顔を見合わせる。  
おかしいな、と思いながら説明書を見るが、そこにはさしてうまいとは言えない絵と荒い印刷で“装着方法”が記されているだけだ。  
これでいいのか?と私は思ったが、素直なカズキは取り合えず書いてある通りにはめようとする。  
 
はまるわけなかった。  
 
カズキの先端に当てたそれとは根本的に直径の幅が違う。普通にかぶせることはまず無理だ。  
しかしカズキはそれがはまるものと信じているので無理矢理入れようとする。  
 
それでどうしたかというと、カズキは思いっきり引っ張って伸ばした。  
 
大丈夫かな、入るのかなと普通にハラハラしてしまっていた自分がまだその時にはいた。  
 
ぎゅーーーーーっと引っ張って限界まで引き伸ばし同時にぐっと腰を出して腕を引き強引に突っ込む。  
有り得ないほどに引き伸ばされたそれは薄い着色があったのにほぼ透明無色に変化しカズキの皮膚が透けて表面に浮き出た太い血管の形がはっきりと確認できるまでに変化させられた。  
限りなく薄くなった膜の下のカズキのものを息を詰めて見ていたが、ふいにその膜が消えた。  
 
ぱちん。  
 
と小さな音が後から聞こえたように思う。  
 
 
あっという間に裂けてしまった。  
 
「あ、あれ…?」  
破けちゃった、とカズキの戸惑ったような声が遠くから聞こえたが、その時の私は全く別の事を考えていた。  
入り口から先端に至るまで真一文字に大きな裂け目が深々と走り、そのままくたくたぽとりとシーツの上に崩れ落ちたゴム製の避妊具のことが他人事とは思えなかった。  
カズキの無理な進入によって自らがこの世に生成されたその本懐を遂げることなく破壊され短い命に終焉を迎え、ベットの上に横たわり無残な姿を晒すぼろぼろの物体が私にある感傷を齎した。  
 
わたしも、はじめていれられたとき、こんなだったのかな。  
 
「………さん?………………斗貴子さん!」  
はっとして我に返るとカズキが心配そうに私を見つめていた。  
「どうしたの?」  
と聞いてくるが喉が強張ってうまく喋れない。うう、などと返事とも呻きともつかない声が漏れた。カズキの真下でくしゃくしゃになった小さな残骸から、目を逸らせない。  
なんだか、胸が詰まる。  
と、また更に先程と同じぱちん、という音がしたかと思うと私が見つめるその目の前に同じ残骸がもうひとつくたりと加わった。  
更に続けてもう一度ぱちん。くたり。  
ようやくのろのろと顔を上げる。そこには袋から次々とそれを取り出しては破壊していくカズキの存在があった。  
 
もうやめて。  
 
声にならない私の声を聞き取ったのか、カズキがその動作をやめた.こまったな、という顔をして言った。  
「これ、はいらないよ。」  
 
それに対し私はうん、うんと頷くことしかできない。  
再度説明書と箱と個装されたままのそれをじーっと見ていたカズキは最後にこう結論付けた。  
 
「不良品だ。」  
 
 
どっちが不良だ、と金縛りの解けた私は言いたかったが、そんなことはできなかった。  
カズキと、カズキ自身を否定したくない。  
どうしよう?という目でカズキが私を見てくる。  
私を頼ってくる。  
そうだ。私がなんとかしないと。  
 
いいか、カズキ。それはだな、そんなに無理に引っ張るからいけないんだ。物体のひとつの場所、ひとつの位置にだけ続けて力を加えるから破壊が起こるんだ。そんな不器用に一方向に引っ張るからいけない。もっとこう、まんべんなく………。  
カズキの手に残った最後のひとつをひったくると私自身がはめようとした。  
ゴムの、その行為をするためだけにこの世に存在するそれを手に持ち、今度は私がカズキの先端に当てた。  
薄い膜とともに初めて指に触れたカズキ自身のそのじんわりと熱い感触に一気に頭に血が昇り手が震えそうになったがそれを誤魔化し、カズキが私の名を呼ぶるのをうるさい黙ってろと遮って作業に集中するため指先の神経を研ぎ澄ませる。  
少しずつ少しずつ膜を伸ばしながら破れないように細心の注意を払い被せていく。  
なんだか綱渡りをしているかのようでいつ失敗するか、壊れてしまうかの限界の状態だが、かろうじでカズキのそれを押し込めていく。  
まだなにか言おうとするカズキを黙ってろというのが分からないのか?と怒鳴りつけ、だんだんとその作業に没頭し指先に触れるカズキの感触が与えてくる動揺も押さえ込むことができた。  
そうしてうまい具合に半分ほど被せることができた。  
なんだ、やっぱりはいるじゃないかとほっと一息ついて一時作業を休止する。  
そこで気付いた。  
 
カズキの陰茎が変形している。  
ようやく半分詰め込んだその先端部分が異様に小さく縮められて紫色に変色して、なんだかなすみたいだ、と思った。  
思ったところで私の頭の上にぽとり、と何かが落ちてきた。  
カズキの股座にかがみこんでいた顔を上げると…。  
 
た、たいへんだ。  
 
カズキが泣いてる。  
 
「か、カズキ………どうした?」  
聞くと涙目になったまま小さくいたい、と漏らした。  
 
無理矢理詰め込んだのが相当痛かったらしくカズキはぽとぽととシーツの上に大粒の涙をこぼした。  
慌てて半分ほど被せたそれを取ろうと指をかけると限界状態だったそれはほんの少し入り口を持ち上げただけでぱーんと弾け飛んでどこかに消えてしまった。  
カズキが股間を押さえ、まるくなってうずくまってしまった。  
痛いなら痛いとなぜもっと早く言わないんだと叱りつけてから、そういえば何か言おうとしたカズキに黙ってろと言ったのは私だったなと思い出した。  
どうしていいのか分からずにとりあえず泣き続けるカズキの背中を摩ったが他にどうしようもない。  
しょうがないので動けないカズキの代わりに私が服を着て深夜のドラッグストアへと向かった。  
そこで日本製ではない、パッケージに書かれている言葉はどうもドイツ語らしいそれを見つけた。  
ドイツ語なので内容はよく分からないが、箱の裏には輸入元が別に貼り付けたシールがある。  
そこには、  
 
SIZE : X X X  
 
と記されていた。  
 
 
カズキの痛そうな顔を思い出し大き過ぎる分には問題が無いだろうとそれを購入してカズキの部屋へと戻った。  
溜息が出た。  
箱の中からずろずろと出てきた、おばけか、はたまた突然変異か、とでもいうような巨大なそれは、カズキの回復したものにしっくりとはまったからだ。  
 
 
カズキは喜んでいた。  
 
「さすが斗貴子さん」  
 
ぴったりだよ、と。  
 
 
 
特別製でなければ入らないカズキの巨大過ぎるそれは、今は、なにもつけていない。  
 
私は、ベットに腰掛けているカズキの正面に膝をついている。  
 
やるべきことはひとつだ。  
そう、私だって、世の中にはそういう行為があることくらいは、知っているんだ。  
カズキがしてくれたように、私も、するんだ。  
カズキが舌で、私を満たしてくれたように。  
私も、カズキに、してあげたい。  
 
そう思い、口を開けて、ゆっくりとカズキのそれに近付いていく。  
 
周囲の音が消えた。  
視界がどんどんと遠ざかっていく。  
頭の血かすうーっと下に降りていく。  
指先が、冷たい。  
唇が震える。  
膝が戦き、腰が砕けそうになった。  
私は、カズキを目の前に置いたことによって、どうしようもないほど悲しい事実に気が付いた。  
じわり、と視界がよどんだ。  
 
 
カズキ。  
 
 
でかすぎてくちにはいらないよ。  
 
 
 

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