娘の部屋から出てきた夫に声を掛けた。  
「ヴィクトリアは?」  
「やっと眠ったよ─最後、少し泣いてたな」  
「…子供なりにわかるのかもね」  
「ああ」  
そして、訪れた2人の時間。  
いつもの場所に並んで座り、出合った頃の話に花を咲かせる。  
どういうわけか、この1週間、毎日、あの頃の話だ。  
 
話が尽きた頃、いつもの出撃前と同じように、私たちは体を重ねた。  
夫の逞しい体が私の上で動きを速める。頂点に近づいた夫を見て、私は言った。  
「…ぁ─私…ん─2人目が欲しい─」  
驚いた顔をした夫が動きを止め、荒い息をしながら言った。  
「…例の研究は?」  
「私が抜ければテストが少し長引くかも──でも、それだけ。  
 一番の難所は過ぎてるから」  
「そうか──なら」  
再び動き始めた夫は私の中で果てた。  
 
「明日からまた前線ね」  
「ああ、このチカラで─」  
核鉄を取り出した夫の言葉に続ける。  
「より多くの人が幸せになれるように──ね。  
 ヴィクトリアにはあの厄災がない世界を。  
 2人目の子供にはあの厄災を知らない世界を」  
「キミも幸せになって欲しい一人だよ」  
「私はもう充分幸せよ」  
「ん?」  
「だって、錬金術のおかげであなたと出会えたから」  
私はそう言って、夫にキスをした。  
 

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