夏真っ盛りのある日、私はまっぴーを誘って、新しいお菓子屋を偵察に来た。
最近のまっぴーは元気がなくて、誘ってもノリが悪い。
だから、今日は無理やり連れ出してきた。
クラスの男の子のこと、最近借りたCD、いろんな話をしながら、目的地に到着。
持ち帰りが主だけど、店内でも食べれるみたい。
早速、気に入ったお菓子をいくつか買って、店内で食べてみた。
「これ、おいしい!」
「さーちゃん、ホントに新しいお菓子が好きね」
「えへへ。新しくておいしいのはサイコー!」
そんな話をしているうちに、話題が途切れた。
まっぴーが窓の外を見ながら小さな声で言った。
「…あの『任務』、どうなったかな──」
やっぱり、それが心配だったのか…
「どうなんだろう─
ねえ、まっぴー、学校が襲われた時のあの2人のこと、覚えてる?」
「うん、2人とも、凄かったね」
「みんなで応援したらどんどん強くなるの。特に武藤先…槍の人は凄かったよ──!」
「うん、おに…じゃなくて、知らない人らしいよね」
他の人が居る場所では、武藤先輩と津村先輩の名前は出さないようにしている。
正義の味方の正体は秘密なのだ。何故ならその方がカッコイイから!
「私ね、友達に『あの時の2人が困ってる』って噂を流したの。
そしたら、応援するって友達がすごくたくさんいた。
みんな、どうやって応援するのかわかんないみたいだけど」
「どこに居るかもわかんないもんね」
「でも、みんなちゃんと心の中で応援してるよ。
だから、あの2人は誰かを助ける『任務』を終えてちゃんと帰ってくると思う。
応援を力に変えられる2人だから、きっと大丈夫!──まっぴー?」
まっぴーが窓の外を見たまま涙を流していた。
「まっぴー、ごめん、変な話、しちゃって──」
まずい──逆効果だったかも。
「…あ、うん。平気──
お兄ちゃん、無事に帰ってくるよね?斗貴子さんも一緒だし…」
「そうだよ!お兄さんがまっぴーや津村先輩を悲しませること、するわけないよ!」
「…うん、そうだよね、そうだよね──あれ?泣いたら、なんか、お腹空いちゃった」
「あはは、まだ、まっぴーの分、あるよ?」
「うん、食べようっと。いただきま〜す」
…武藤先輩、津村先輩、私も応援しています。だから、早く帰ってきてください。
真っ赤な目のまま、半ば無理やりの笑顔で、お菓子をぱくつくまっぴーを見ながら、
私は強く願った。