銀成市内のビジネスホテル。
明日の登校日のために、私たちは銀成市に移動した。
しかし、カズキが寄宿舎に戻るのをためらったので、
簡単な夕食を食べた後、ここに宿を取ることにした。
本隊の息がかかっているせいか、細かい詮索もなく、チェックイン完了。
部屋に入って、荷物から制服を出し、壁のハンガーに掛けた。
そして、2人分のコーヒーを作り、カズキのカップをテーブルに置いた。
自分のカップを持って、壁に体重を預ける。
部屋の真ん中できょろきょろしていたカズキが言った。
「なんだか、懐かしい感じがする」
「初めてホムンクルスを単独撃破した後、
眠り入ってしまったキミを連れて来たホテルだ」
ツインルームの分、広さはあるが、内装やつくりはあの時の部屋とほとんど同じだ。
「あ、やっぱり、年上なんだ」
一瞬、何の話かわからなくて、きょとんとする。
そして、思い出して、あの時と同じように答えた。
「年上だと嬉しいか?」
「なるほど、あの時のホテルか…」
「で、どうなんだ?」
「え?」
「年上だと嬉しいのか?」
「ええと、それもあるけど──
斗貴子さんが斗貴子さんだから嬉しいんだと思う」
まっすぐ、こちらを向いて真剣な顔で答えるカズキ。
「なんだ、それは?」
「うーん、オレも良くわからない」
そう言いながら、いつも通りの締まりの無い顔でコーヒーを飲むカズキ。
「もう1杯、飲むか?」
釈然としない気持ちのまま、ポットに残った湯量を確認しながら聞いてみた。
がばっ。
後からカズキに抱きつかれた。それ自体は望むところだが。
「シャワーくらい使わせてくれ。汗臭いだろう?」
「斗貴子さんは斗貴子さんだから問題なし!」
「なんだ、それは?」
「うーん、オレも良くわからない」
さっきと似たやりとりをしながら、重なり合ってベッドに倒れこんだ。
どちらからともなく開いた口を重ねた。
そして、舌を絡ませながら、互いの衣服を剥ぎ取っていく。
糸のような唾液を引きながら離れていった唇が、首筋を這い、乳首を吸った。
右手が胸を揉みしだき、左手が茂みを割って私の中を嬲り始める。
私は声を上げながら、カズキの頭を抱いた。
両手に抱いたカズキの頭が、舌を這わせてだんだん下に降りていく。
私はおヘソを舐められる前に、体を入れ替え、
カズキの股間に露出している粘膜にキスをして、その周りを舐め上げた。
一方、カズキは、私の股間に頭を埋め、太股を撫でながら茂みに舌を入れてくる。
これを早くそこにいれたい──そんなことを思いながら、
そそり立ったモノを咥え、そのまま口を窄めて頭を動かした。
そして、根元のあたりを両手で扱く。
カズキが舌を抜いて、呻くような声を上げた。
脚を大きく広げたら、舌をさっきよりも奥まで入れてくれた。
私も、カズキを奥まで含み、先を喉に当ててみる。
そのまま軽く歯を立てたら、お尻をつねられた。
互いに声にならない声を上げながら、そんなことをしばらく続けた後、
先走ったカズキの液が私の喉をわずかに濡らした。
恥ずかしそうな顔をしたカズキが、体を入れ替え覆いかぶさる。
私は唇だけのキスをしながら股間に右手を伸ばし、カズキを自分へ導いた。
たっぷり濡れている内襞をかきわけてカズキがゆっくりと入ってくる。
少しの間、声を堪え、カズキが奥に届くのを待って、声を出した。
膣壁全部が熱いカズキを感じている。
今度は舌で互いの口内をまさぐるようなキスをした。
汗ばんだカズキの下半身が、舌と同じように深部をまさぐる動きを始める。
私もそれに合わせて腰を前後に動かす。
腰が密着する度に、カズキの先端が奥深くを突き、
内なる突起とこすれる度に、私を高みへ近づけていく。
そして、だんだんとカズキの動きが速まってきた。
両手でカズキにしがみついた私も、ひたすら腰を動かす。
体の全部が性感帯に変わり、何も考えられなくなった。
私の状態に気がついたカズキが更に速度を上げていく。
ほどなく、頭の中が真っ白になった。
内壁が収縮して、カズキから粘液を引き出す。
私は、カズキの背中で両足を組み、体の奥に広がっていく温かい感覚を味わった。
私たちは、荒い息をしながら、しばらくそのままでいた。
カズキから流れた汗が垂れて私の汗と混じる。
少しして、私の中のカズキが大きさを取り戻した。
苦笑いしたカズキは、体を離して私を四つん這いにし、後から挿入し直した。
カズキが両手を私の腰に当て、後から突いてくる。
だんだんと腕に力が入らなくなり、前傾姿勢になってしまう。
すると今度は、カズキが挿入したまま腰を降ろし、後から私を抱き起こした。
さっきまでと違う当たり方に、大きな声を出した私は、
更なる刺激を求めて、子宮に食い込んでいるカズキを中心に腰を回す。
カズキがうなじを舐めながら、抱きしめてくれた。なんだかうれしい。
右手を握り締めると、左手が私の股間に伸びて、
カズキの分身が当たらない部分を刺激してくれた。
そのうちに、カズキが腰を突き上げ始めたので、それに身を任せることにした。
さっきよりも深くカズキを感じることができる。
しばらくすると、カズキの息遣いが激しくなってきた。
私もそれに合わせてまた動き始める。
互いの体中から流れた汗がシーツを濡らし、結合部から溢れた液が太股を濡らす。
最深部でほとばしるカズキを感じたので、動きを止めて、腰をカズキに押し付けた。
腰を震わせどくどく放ち続けるカズキを受け止めながら、頂点に達した。
脈動を終えたカズキが、後から耳をしゃぶった。くすぐったい。
私は充分に満たされたが、一応、顔を後に回し、目でカズキに問うてみる。
すると、満足そうに首を横に振ったので、頷いて体を離した。
しばらくベッドの上で膝を折って座ったまま、息を落ち着かせた。
カズキに視線を向けると、待ちかねたように言い出した。
「ええと…斗貴子さん、体、こっちに向けてくれる?」
わけがわからないまま、言われたように体を向ける。
やっぱり、もう1回?…と思ったら、
さっき以上に満足そうな表情で私の膝に頭を乗せた。
「まったく─」
膝の上でニコニコしているカズキをしばらく眺めた。
カズキが眠ってしまうまでこのままいようかと迷ったが、
頭を膝から枕に移してベッドを降りることにする。
「すまない、カズキ」
「斗貴子さん?」
「汗を流してくる」
背中に視線を感じながら、裸のままユニットバスに向った。
ヘッドを高い位置に着けて、お湯を頭から浴びる。2人分の汗と液が流れていく。
「ふう──」
すっきりしてくるにつれて、これからのことが頭を占めた。
カズキがどんな決断をしても、最後まで諦めずに道を探し共に歩む。
それはスタンスであって、アクションではない。
そして、とるべきアクションは未だ見つからない。
だが、それでも、できることの全てを共にしたかった。
突然、シャワーカーテンが開いた。
「斗貴子さ〜ん、オレもシャワー浴びていい?」
「カッ・カズキ!?」
全裸のカズキが目の前にいた。
さっきまで体を合わせていたのに、こうなると何故か恥ずかしい。
慌てて、タオルで胸を隠す。
「キミも前くらい隠せ!」
「あ、ごめん」
「いいから入れ、そして、あっちを向いてろ!」
バスタブの中で、背中合わせになり、
2人ともお湯がかかるようにシャワーの湯量を増やす。
ふと、カズキが入ってくる前に考えていたことを思い出した。
「斗貴子さん、シャンプー、そっちにある?」
「………」
「斗貴子さん?」
「カズキ、こっちを向くんじゃないぞ」
「うん、ちゃんとあっちを見てるよ」
ぐっ。ぎゅっ。
「!?」
私は、後ろから抱きついて、黒い核鉄が収まっている左胸に手を当てた。
シャワーの音だけが響いた。
先にシャワーを終えた私は、下着をつけて、裾が長めのTシャツを着た。
普段パジャマ代わりに使っているキャミソールはヘソが出やすいので、
カズキと眠る時は使っていない。
もっとも、行為の後に裸で眠ってしまうことも多いので、不要な配慮かもしれない
少しして、濡れた頭のままのカズキがトランクス姿で出てきたので、
髪をバスタオルで拭いてやった。
こそばゆそうにしているカズキが可愛い。
「明日の準備はできているか?」
「うん、大丈夫」
「なら、今日は、早めに寝て、体を休めよう」
「うん、そうだね。明日、まひろや六枡達に元気な顔、見せたいし」
じゃあ、おやすみなさい。斗貴子さん」
カズキはそう言ってベッドに入り、目を閉じた。
「ああ、おやすみ」
私もそれに答えてカズキの横に入った。
そして、カズキの腕を引っ張り、その腕に頭を置いた。
こんな仲になってからそれほど時間はたっていないのに、こうするととても安心する。
そんな安心した心地のまま、私は眠りに落ちていった。
半ば眠りに落ちた頃、頭を抱き寄せられた。
「カズキ!?」
私はカズキに抱きしめられていた。
少し顔を赤くしたカズキが、何も言わずに子犬のような笑顔を見せる。
私もカズキの背中に両手を回して抱きしめた。そして、再び眠りに落ちた。