「いつかの夜に言った通り…キミが死ぬ時が私が死ぬ時」  
(キミと私は…一心同体だ――…)  
 
甘く長いキスの後、口を押さえて照れていると、カズキが恐る恐る制服の上から胸に触った。  
それを待ちかねて敏感になっていた私の体が反応した。声が出て、背が反る。  
安心したように、カズキの手が私の胸を揉みしだき、別の場所へ伸びていく。  
いつの日からか、この時を待ちわびていた。  
なんだか、すごく大切なことを忘れている気がするが、とりあえず、それは無視しておく。  
周囲の音が消え、そして(略)  
 
「と…斗貴子さんっ!」  
「あん…あぁん…カズキぃ〜」  
トランクスと制服のズボンを少し下ろして、腰を下ろしているカズキ。  
パンツだけを脱いで、カズキの足の付け根にまたがっている私。  
そして、初体験を終えて抱き合っている2人の周りに音が戻った。  
 
「あの女子の制服…2−Bの転入生だよな?」  
「じゃあ、男子の方は、4バカの…武藤だっけ?」  
「津村さんも武藤君も大胆過ぎ!」  
「声まで聞こえたよ…津村って、あんな声、出すんだな…」  
 
おそるおそる声が聞こえた方に顔を回すと、校庭のたくさんの視線がこちらを向いていた。  
男子の多くは前屈みになっている。中には前を膨らませたまま、唖然としている者もいる。  
この給水タンクは、周りの視線を遮る物がない。そのことをやって思い出した。  
そして、校庭の人影が増えていく。知った声も聞こえた。  
 
「お兄ちゃん、お義姉ちゃん、おめでとう!」  
「カズキ!!!テメぇ…ちきしょう…」  
 
ガンガンガン!突然聞こえだした別の音。  
「武藤!津村!…ここを開けろ!」  
屋上の扉の向こうから、巳田の後釜の生活指導教師の声が響いた。  
「先輩のためなら……」  
大粒の涙を流している剛太が、屋上側から扉を押さえている。  
 
蕩けていた頭がやっと通常に戻った。  
「カズキ、ここを離れるぞ!」  
「ウン…って、どこへ?」  
「いいから、立て…おい、そっちじゃない!」  
私の中でまた大きくなりだすカズキを感じ、嬌声を堪え、怒声を上げる。  
「ゴメン。でも、斗貴子さんが先にどけてくれないと…」  
まだ蕩けていたようだ。とにかく、立ち上がった。  
体を離した拍子に、白濁した粘液が秘所からこぼれて太股をつたった。  
その余韻に浸っていたい気分だが、我慢して、手早く処理した。  
カズキも、既に半立ち以上になっていたモノを無理やりズボンに収めて立ち上がった。  
 
「ここを降りて、裏庭に着地。そのまま離脱する」  
真剣な面持ちでカズキが頷く。武装錬金を使えば、屋上からでも問題なく着地可能だ。  
更なる盛り上がりを見せる校庭を無視し、給水タンクのハシゴを先に降りる。  
「あ、斗貴子さん!」  
「なんだ?」  
何かに気づいた様子のカズキに答えながら、先へ急ぐ。  
体捌きに自信はあるが、股間に激しい異物感を感じ、以外に手間取る。  
風が急に強くなった。足がもつれ、手はハシゴを握るので精一杯。  
 
そして、スカートが舞い上がった。  
 
「…はいてない…よな?」  
「…ああ…はいてない」  
「津村さん…」  
「お義姉ちゃん、お尻、すべすべ…」  
「きゃあああああ」  
校庭から聞こえる、数々の声。  
 
「先輩……」  
振り向くと、剛太が大量の鼻血を出しながら、こちらを見ていた。  
その向こうで、扉を突破して屋上に入ってきた生活指導教師が硬直している。  
 
「斗貴子さん、ゴメン…」  
見上げると、まだタンクの上にいるカズキの手に私のパンツがあった。  
脱がしたカズキがそのまま持っていたようだ。  
 
私はどうすることもできず、吹き続ける強い風に身を任せた。  
 
(おわり)  
 

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