「剛太?誰?斗貴子さん」
「私の後輩。キミを海から引き上げてくれた──…剛太?」
カズキがあたりを見回してから、私の脚を指差した。
「いないみたい…ところで、ケガしてる?」
「ああ、戦士長にな……手当てしておくか」
追手がかかるだろうし、バルキリースカートの使用に支障が出ては困る。
流木に腰を降ろして、太股の患部に軟膏を塗った。
そして、ガーゼを当て、上から包帯を巻いていく。しかし、どうも、自分では巻きづらい。
「カズキ、すまないが、頼んでいいか?」
「ウン、いいよ」
カズキが私の前に回って続きの包帯を巻き始めた。
もう少し脚を開いた方が巻きやすそうだ。下着を見られるが、今は手当優先。そう思って、脚を広げた。
「!!」
カズキが驚愕した様子でスカートの奥を覗きこんだ。数瞬後、慌てて視線を逸らす。
「見るのはいいが、包帯優先で頼む」
「あ、ウン…ウン」
そう言いながら、顔が赤い。何か変だが、まあ、いい。
その後も覗きこんだり、そっぽを向いて横目で包帯を巻いたり、忙しない。
包帯の蛇行が激しくなってきたころ、やっと巻き終えた。
「ありがとう、後は自分でする」
そう言ってから包帯を固定した。
カズキが巻いてくれた部分がすこし不恰好だが、実害なさそうだ。
ふと、カズキが持っているHな本を思い出した。あんな本を見ているのに、下着であそこまで慌てるとは。
相手が私だから、意識してるんだろうか?そうならうれしい。ちょっとからかってみよう。
「下着で驚くとは、以外と純情なんだな?」
真っ赤な顔のカズキが、あさっての方向を見ながら小声で言った。
「斗貴子さん…はいてないよ…」
「!!」
慌てて立ち上がってカズキに背を向けた。
剛太に海から引き上げられた後、濡れたパンツが気持ち悪くて脱いだままなコトを忘れていた。
さっきまでの出来事を思い起こす。カズキに見られた。イヤ、私がカズキに見せたのか?
どちらにしても、はっきり見られてしまった。頭に血が上り、顔が赤くなるのがわかる。
心臓がバクバクしている。
そして、カズキのことを考えると、股間が海水以外の何かで湿り、今まで知らなかった感情を覚える。
体が何かを欲しがっている。それが何だかわからない。
カズキの方を振り返ってみた。
膨らんだ股間を手で隠しながら、前屈みで横を向いている。
そして、私が欲しいのはアレだとわかった。他ならぬカズキのアレ。
私は勇気を振り絞り、カズキに声を掛けた。
「そういうつもりじゃなかったんだが…その…せっかくだから…」──イヤ、そうじゃなくて。
「カズキとなら…その…」
「ウン…オレも斗貴子さんと…」
私たちは、おそるおそる近づき、抱き合った。
(終)