一学期が終わりに近づいたある日。  
いつものようにカズキと共に帰宅した私は、私服に着替えてからいつものようにカズキの部屋に向かった。  
 
カズキの部屋の前に到着。部屋の中から微妙に人ならざる者の気配を感じる。  
ホムンクルスか!?  
廊下に人通りがないのを確認後、武装錬金を無音無動作で待機状態に発動させた。  
制服と同じくらいに短いミニスカートをはいてきて正解だった。  
カズキがその気になりやすいとか、生足で膝枕してあげたいとか、そういう趣旨ではなく戦士としての嗜みなのだ。  
 
カズキの部屋の扉を一気に開けて、部屋の奥まで踊りこむ。  
案の定、何者かが飛び掛ってきた。バルキリースカートを展開させて斬りかかる。  
「臓物をブチ撒け…ん?」  
まったく殺意が感じられないので、攻撃を止めた。  
すると、目の前の生物が私の顔を舐め始めた。よく見ると、それはカズキの顔をしている。  
「カズキ…なのか?」  
「ワン…ワン!ワン!ワン!」  
犬っぽい耳のカズキ(?)が、犬そのものの鳴き声で答え、犬のようなフサフサのしっぽを大きく振った。  
 
あまりの事態に硬直した私の顔をカズキ(?)が舐めまわした。なんだか唇を集中的に舐められている気がする。  
激しいキスをされた時のように頭がぼ〜っとなってきたが、なんとか我に返った。  
「カズキ…その、なんだ…座ってくれ」  
「ワン!」  
カズキ(?)がそう言って…もとい、そう鳴いて、ちょこんと床にお座りをりした。  
額に紋章がないので、動物型ホムに寄生されたのではない。  
それがわかって一安心した私は、じぃーっとカズキ(?)を観察した。  
 
カズキの顔をしている。服装も普段のカズキと同じだ。しかし、犬っぽい耳、犬っぽい舌、犬っぽい手足、犬っぽいしっぽ。  
暑さのせいか、犬のように舌を出してハアハアと息をしている。  
大きく振り回しているしっぽは、ズボンの背中側の上から出ているようだ。  
どうすべきか考えていると、カズキとの情事に備えてマナーモードにしていた携帯が震えているのに気づいた。  
取り出して見ると、戦士長からのメールが一通。本文はわずか一行。  
「ヴィクター化は、一時的な動物化を伴う可能性アリ」  
 
 

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