ある、一つの結末
ドクン
ホムンクルスの残党が、目の前にいる。
ドクン
ぼろぼろのカズキを守らないと
ドクン
処刑鎌をだそうとする
「武装…」
いけない、私の核鉄はもう…
「逃げろカズキ、ここは私が食い止める!」
カズキだけでも助けないと
「逃げろって、斗貴子さんもう核鉄もってないでしょ!」
そういって彼は私をかばうように立ちふさがる。
駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ!
「なにをする気だカズキ!キミの核鉄はもう武装錬金に耐えられない!!」
錬金の力に抗せるのは錬金の力だけ。
だけど斗貴子さんはもう核鉄を持っていない。
なら、やることは一つだ。
胸に手を当てる。
掌握、決意、そして咆哮!!
「武装…」
体中が痛む。関節が悲鳴を上げる。死に向かって確実に進む。
…それでも念じる。
「錬金!!」
俺の武装錬金、突撃槍が現れる。
でも、それは、刃先は欠け、柄は半ばから折れ、そこらじゅうにひびが入っている。
かざり布すら破れ、ちぎれ、半分以下になっている。
これではもう槍としては使えない。それでも……
「打ち砕け!オレの武装錬金!!」
棍棒代わりくらいには、なる!
ホムンクルスはあっさりと倒された。
そして、カズキの命もあっさりと、終わる……
「カズキっ」
倒れこむ彼を支えるべく走る。
「斗貴子さん、大丈夫だった?」
どうしてそう、人の心配を先にする。
「うん」
うなずくことしか出来ない。
「うん、最後に斗貴子さんを守れてよかった。失敗してたら死ぬに死ねない」
「最後とか、死ぬとか言うな!!」
気が付くと叫んでいた。
「なぜこんな無茶をする、普通に過ごせばあと数日はもったのに」
涙で視界が曇る。
「せめてキミとの思い出を作り、たかったの、に」
これ以上は言葉にならない
カズキの手が頬に触れる。
「この数日が十分に思い出だよ、斗貴子さん。…なんて、ちょっとキザだったかな」
おどける彼の手は、しかし、氷のように冷たかった。
動いたのはどちらが先だったろう…
私たちは唇を重ねていた。
それきり、カズキは、動かなく、なった。
あれから何度目かの春。
あれからしばらくは、何度も死のうと思った。
でも、カズキは私に生きていてほしいから、いろいろ無茶をしたと思うから。
彼を裏切るのは私には出来ないから。
大切な人の思いを裏切ることは出来ないから。
それに……
「おか〜さん」
「ん?どうしたの」
彼の子供が出来たから。
元気いっぱいの男の子。
好きな女の子を守るやさしい子。
もちろんこの子の名前は……
武装錬金SS『彼の名は』
END1 この子の名前は