『番外の番外』
今日はおにいちゃんと一緒に街で買い物をしてた。
それなのに、こんなことになるなんて。
お兄ちゃんが御手洗いに行って私が一人になってすぐに、あきらかに不良と分かる人にからまれて。
無理やり路地裏に連れて行かれてしまった。
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「まひろっ!大丈夫か!!」
お兄ちゃんが来てくれた。それだけですごく安心した。
「てめぇら、まひろになにした!!」
ものすごい怒気をはらんだ声。
不良たちはそれでもへらへらしている。
「へっ、まだなにもしてねぇよ。これからだよ。これから」
「そうそう。あんまりうるせぇから、一発殴ってやったけどな」
私は痛む頬に手を当てる。
「そうか、なら、半殺しで済ませてやるよ」
怒気が殺気に変わる。いつもの優しいお兄ちゃんじゃない…
「へっ、なにいきがってやがんだ。この人数相手に勝てると思ってんのかよ」
「やればわかるさ」
そう、会話を交わす。それからは、あっという間だった。
あっという間に、お兄ちゃんは不良たちを倒してしまった。
そうして、どこからともなく出した大きな槍を手に持って。
倒れて起き上がれない不良たちに言葉を投げる。
「俺は半殺しにするといったな。サァ、準備はいいか、ボケナス共」
「ひぃっ」
「大丈夫、たいして痛かーねぇさ」
「お兄ちゃん!!」
お兄ちゃんが槍を振り上げた。
怖くなって目をつぶる。
何かが刺さる、ザクリという音。
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「うっく、ひっく、えっ、えっ」
「泣かないでよ、まひろ。悪かったからさー」
「本当に悪いよっ!ホントに刺し殺しちゃうかと思ったんだからっ!!」
……そう、結局、お兄ちゃんは地面を刺しただけだった。
「いやだなー、もー。ホントに刺すわけないじゃんか。俺まだ犯罪者にはなりたくないし」
ネッ、なんて言いながら、オロオロしてる。
本当にお兄ちゃんてば。
すごく怖かったけど、お兄ちゃんが私を守ってくれたのは、嬉しかったかな。
〈終〉