第79話のラストから
お互いの体を抱き寄せながら、キスをした。
くちびるがそっと触れ合うだけのキスだったが、なんともいえない不思議な感触に、斗貴子はドキドキして頬を染めながら、しかし、わるくない感触だな、と思った。
そうしているとふいに、くちびるの先がむずむずするような感覚が走り、あれと目を開けた斗貴子の口の中に唐突に何かがぬるりと入ってきた。
「………!!!」ガチッ!「○×△◆―――ッ!!!」
舌を入れてきたカズキに驚いて思わず噛んでしまった斗貴子。カズキが口を押さえながら後ろに仰け反った。
「ば、馬鹿ッ!…い、いきなりなにを………」「え、…だめ?舌入れるの…」「駄目と言うか、な、なんだってそんなことをするんだ…?」「なんとなくしたいだけなんだけど…」
だめならいいよ、ごめんね、とカズキが素直に引き下がるので、そういわれるとさせてあげたくなる斗貴子。消え入りそうな声でべつにいいぞとぼそり。「ほんと?」やったーとでもいいだしそうにうれしそうなカズキを見て自分自身も少し嬉しくなる。
「それじゃあ…」と、またキス。が、さっそく舌を入れてくるカズキのそのぬるり、という感触にまたびっくりしてしまい、意思の力ではなく反射でガキッ!「―――◆$◎――!!!」
斗貴子さん、と涙をこぼしそうなカズキに「あ、う…すまない……」謝るがカズキは怒る様子ではなく、しかしもう噛まれるのは勘弁と「じゃあさ、今度は斗貴子さんがオレの口に舌入れてよ」と言ってくる。なにを、と思った斗貴子だが痛い思いをさせたという負い目
があるので気恥ずかしいが同意する。「ん、分かった…じゃあ……」三度目のキス。
唇が触れたところでかっとなり舌を進入させるなんてとてもできない。が、約束は約束。頑張ってそろそろと、のろのろと、ちまりちまりと舌を進ませる。長い旅路の果てようやく天竺に辿り着いたぐらいの思いで斗貴子の舌が到達したのはやっとカズキの口の入り口。
それだけで精魂尽き果てたような心持になりもう許してと言いたかったが約束は約束。最後の気力を振り絞ってその口唇を割って進入を開始する。と、そのやっと1ミリ入った斗貴子の舌先をカズキがぺろりと舐めたのでびっくりしてまたもやガチッ!「―――ッ
ッッ!!!」(自分の舌を)
口を押さえ蹲る斗貴子におたおたと寄り添うカズキ。なんとか回復した斗貴子と共に何かうまい方法はないかと考える。しなけりゃいい、という選択肢はなぜか出てこなかった。結果、お互いが少しずつ舌先を出し合って触れ合う二人の中心で舌を絡ませて見る
ことになった。そしてこれが結構うまくいく。
ゆっくりと濃厚に舌を絡ませる。口中に侵入したお互いの唾液をどきどきしながらのんでみたり相手の舌の裏側を舐めてみたり唇も動かしながら今日初めて出会った感触だが二人とも夢中になり、いつのまにか押せ押せのカズキの舌が斗貴子の口の中に全
部入っていたが自らも舌を絡み付けて斗貴子はもう噛んだりはしなかった。
肉体的な欲求が最高潮にまで高まったときカズキは思わずいつの間にかそこまで降りていた両手で斗貴子の尻をぎゅ!と掴んだ。
「―――――――――――――!!!」
ぐちゅッ………。
「――――――▲×%*◎◎◎――――――――――!!!!!」
(中略)
その後、昼食の時間となりまひろ達も含めて屋上でにぎやかに食事。まひろはさっきからハ行とラ行の言葉しか喋れない兄にに気付き「どうしたのお兄ちゃん」。またその隣にいる斗貴子の顔をまじまじとみつめると「そのあかいの、ミートソース?」と口の端に少
量付着しているものに目敏く気付く。二人の姿は実に対照的で妙に痛々しい様のカズキはしかしどこか満ち足りたような表情で、対する斗貴子は口の端を拭った後も終始赤い顔で妙にしおらしく時折給水等を見上げては更に顔を赤くしていたそうな。
おしまい。