「ヴィクター、好きなの…」
アレクの唇が、ヴィクターに触れた。ヴィクターは体を硬直させる。
長いようで短く時間が流れ、二人の唇が離れる。
ドクン、ドクンと心臓が脈打つ。「アレク…////」
ベッドの上で、ヴィクターはアレクの手を握り締めた。
100年を越す昔、後の悲劇など知りもせぬころ。
有望な戦士と呼ばれていたヴィクターだが、ホムンクルスとの戦いでらしくないミスをし、怪我を負った。
そのことで戦団に入って以来、自分に何かと世話を焼いてくれる存在、アレクと口論になった。
戦士が戦いに命をかけるのは当然で。
この程度の怪我で済んだのはラッキーだ。たいしたことじゃない。
そう言ったら、アレクは泣いた。
勝手なんだから。勝手なんだから。泣きながら、アレクは怒っていた。
ゴメン、と謝った。自分勝手だった。と。
そうしたら彼女は、自分のことを好きだといって。キス…してくれた。
「もっと…近くに寄っていい?」
「え、」と言ったか言わないか、アレクはベッドの中に入ってきた。
「え、えええええええっ!?」
「あら、どうしてそっち向いちゃうの」
どうしてって言ったって。僕だって男なわけだし。男女が同じベッドで…というのは。
今、多分耳まで赤い。心臓がバクバク言ってる。
「大きな背中…」彼女の手が背中に触れる。そして体全体も。
ズキン、ズキン
なんだか下半身がうずいてきた。何とはなしに前を押さえる。
少し硬くなっている。
マズイ。これは色々とマズイ。
そんな婚前交渉なんて…いや、それ以前にさっき告白したばっかだし!
「好きよ。この大きな背中も…優しい手も…」
アレクの声が甘く響く。頭が溶けそうだ。
「あなたの存在すべてが。今私の中でとても大きいの。」
頭の中のやましい思いを端に置き、僕はアレクに答えた。
「うん…今、アレクの存在が、僕の中ですごく大きい」
「君が好きだ。」
「勝手に…いなくならないでね。」
こっち向いて、と顔を引き寄せる。なんとか顔だけそちらを向ける。
アレクは僕に覆い被さるように、キスをした。
「おやすみ」
そういって、彼女はベッドから出て行った。
でもその日、ベッドの上で何度寝返りを打っても、悶々として眠れなかった。
「罪作りだよ、アレク…」
この恋心が消えなければいい、アレクはそう思った。
たとえ、100年時が過ぎても。この身体が朽ちるまでは…
『after100年の想い』
ヴィクターはその日以降、アレクのことを考えない日はなかった。
ちょっと他の女性と話をしなくてはならないときも、アレクのことが頭にちらつき集中できない。
最近ちょっとだらしないわよ、とアレクに注意されることもしばしばだった。
眠るのがつらくなった。ベッドではいつも悶々としていた。
(アレクアレクアレク…)
そしてある朝ー
「…?」ヴィクターは、フンドシの中の異常に気づいた。
「…」
(うわああああああああっ!)
ヴィクターは朝早くからフンドシを洗濯する羽目になった。
「うう…いい年こいて…」
若さゆえの過ちというやつか…。