「まっぴー、お兄さん、戻ってきて良かったね!」  
 
登校日の夜、夕食中にさーちゃんが言った。  
お兄ちゃんたちは、少し離れたテーブルで大騒ぎしながら食べている。  
久し振りに見る光景だ。  
 
「へへ、ありがとう!」  
 
そう答えながらも、100%の笑顔になれない。  
私とさーちゃんと同じテーブルにいるちーちんがこちらを向いた。  
 
「気になることでもあるの?」  
 
ごまかせそうにない。  
 
「私、お兄ちゃんがウソつくと、なんとなくわかるんだ─」  
 
さーちゃんとちーちんが、にやにやと笑った。  
 
「まっぴーじゃなくてもわかるよ!」  
「津村先輩と武藤先輩、雰囲気、変わったね」  
「なんでもない…とか言ってけど、絶対、今日、なんかあったよ!」  
「噂なんだけど…屋上でね」  
「ウン、ウン」  
 
なんだか2人で盛り上がっている。  
それも明らにウソ。でも、私が気にしているのは別のウソ。  
 
『任務ってのは、無事終わったんだよね』  
『──…ああ』  
 
その時、私はわかってしまった。  
まだ大事な任務が残ってるんだ。  
今は、一時の休息なんだ。  
 
次の任務はいつ?  
どこに行くの?  
どれくらいかかるのかな?  
今度もちゃんと帰ってくるよね?  
 
何度も何度も考えたけど、答は出ない。  
一番最後の質問だけでも、お兄ちゃんに聞きたい。でも、聞けない。  
 
考えるのに疲れた私は、目の前の2人に意識を戻した。  
 
「だいたーん!学校でそんなことしたんだ!」  
「あくまで、噂だけど」  
「でも、先輩達なら、それくらい、しそうだね」  
 
さっきの話題がまだ続いてたみたい。  
これも答が出ない話。お兄ちゃん達に聞いても教えてくれないだろうし。  
でも、この話題は、いくら考えても辛くない。  
だから、今は、この話を考えよう。  
私は、無理矢理、さっきの疑問を忘れて、会話に入った。  
 
「ねえねえ、何があったの?給水塔がどうしたの?」  
「まひろ…聞いてなかったの?」  
「あのね、あのね。先輩達ったら、凄いんだよ!」  
「あ、教えて、教えて!!」  
(おわり)  
 

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