――カズキが帰ってきた。  
 
武藤カズキが月より帰還して三ヶ月。  
あれからいろんな事があった。  
斗貴子は正式に銀成学園に入学がきまった。  
ブラボーこと防人衛も正式に教師となり、カズキも勉強の遅れを取り戻している。  
早坂姉弟も生徒会に復帰し、みなの日常がもどってきた。  
「カズキ」  
斗貴子がつぶやく。  
今ふたりはふたりが初めて出会った廃工場に来ていた。  
「ここから全てがはじまったんだな」  
「うん」  
あれから三ヶ月。  
二人は日常を楽しんでいる。  
斗貴子は闘いから離れた生活に正直ぎこちなさを感じてもいたが、  
カズキの笑顔にホムンクルスへの憎悪もかつての忌まわしい記憶も消え去っていった。  
二人は休みになると何度もデートを重ねたが、今は二人の思いでの場所を巡っている。  
「あのとき斗貴子さんに出会って、助けられて、今こうしてここで  
斗貴子さんと一緒にいる。俺、すごく幸せだよ」  
「カズキ……」  
二人は見詰め合う。  
どちらからともなく唇を重ねた。  
「んっ」  
やがて唇を離す二人。  
こうして口付けを交わすようになって何度も経るが、あいかわらず二人は初々しい。  
 
「私もここに任務に赴いて、君と出会って、こうして一緒になれて本当に幸せだ」  
「斗貴子さん……」  
カズキは斗貴子を抱きしめた。  
「斗貴子さん好きだ。愛してる」  
「カズキ。私も……私もカズキが大好きだ」  
斗貴子はきゅっとカズキの手を握り締めた。  
「カズキ……」  
斗貴子は恥ずかしそうに下を向きながらささやいた。  
「ん、なに」  
「カズキが欲しい」  
カズキはその言葉の意味がしばらく分からなかったが、やがて真っ赤になる。  
「ととと、斗貴子さん、それって」  
「バカ、こんなこと何度も言わせるな!」  
斗貴子も真っ赤だ。  
「――分かった。ここじゃだめだ。街へ行こう」  
カズキは斗貴子の手をひいて歩き出した。  
 
――その背中を見つめる影がひとつ。  
「ムーン、若いっていいねえ……」  
 
やがて二人は銀成市の繁華街に来ていた。  
二人の目の前には白亜の建物が一棟。  
看板には「ご休憩5000円」「お泊り9000円」と書かれている。  
「ととと、斗貴子さん……」  
「…………」  
斗貴子は真っ赤になって俯いている。  
「そ、それじゃ入ろうか」  
「うん……」  
カズキは斗貴子の手をひいて中に入った。  
ぽけーっとベッドに座っているカズキ。  
斗貴子は「先にシャワーを浴びてくる……」と洗面室に消えていった。  
(斗貴子さん――)  
初めて会ったときから好きだった。  
一目みたときカからズキはこの戦乙女に心を奪われていた。  
そして今ふたりは恋人になり、ここでこうしている。  
カズキは何もかもが夢のような心地がした。  
ホムンクルスとの戦い。蝶野との決戦。武装錬金。最後のたたかい。  
すべてが煌く思い出で、そんな中一番輝いているのが――今いちばん愛しいひと。  
 
「カズキ……」  
後ろから声がした。  
そこには斗貴子が立っていた。  
湯気を体からたてながら、バスタオルで身を蔽っている。  
「――明かり、消さないか」  
「やだ」  
カズキはいった。  
「斗貴子さんの裸がみたい」  
「ば、バカ!!」  
斗貴子はまた真っ赤になる。  
「愛しいひとのすべてをしっかりこの目に焼き付けておきたいんだ」  
カズキは真剣な眼差しで斗貴子をみつめた。  
「カズキ……」  
斗貴子は観念したか、ためいき一つ。  
「じゃ、お姉さんのプロポーションをしっかり記憶するんだぞ」  
「えへへ」  
斗貴子はタオルを床に落とした。  
 
「――綺麗だ」  
カズキの口から嘆声が漏れる。  
「バカ、恥ずかしい!」  
カズキが声をうわずらせる。  
斗貴子の裸体は見事だった。  
胸のふくらみは優しく、腹は引き締まって、秘部には毛がふさふさと生えている。  
生まれたままの姿で、斗貴子は顔を上気させながら、愛しいひとの前にすべてを曝していた。  
「斗貴子さん」  
「あん」  
カズキが服を着たまま斗貴子の全身を抱きしめる。  
その感触に斗貴子は体がぞくぞくする。  
「か、カズキぃ」  
斗貴子はそれだけで体がどうしようもなく熱くなる。  
「待っててね」  
そういうと、斗貴子を離し、カズキは服を脱ぎ始めた。  
(カズキ――)  
斗貴子は頭をぼうっとさせながら、カズキの無駄がなくたくましい裸体を見つめる。  
やがてカズキは全裸になった。  
(! あれが、カズキの――)  
斗貴子の目が釘付けになる。  
カズキの男性は已に勃起していた。思っていたよりずっと大きくて太い。  
それが自分の中に入っていくところを想像して、斗貴子は全身がカーッと熱くなる。  
「斗貴子さん……」  
二人は今日二度目の口付けを交わした。  
「んっ……」  
カズキの舌が斗貴子の口の中に入り込み、かきまわす。  
岡倉から聞いていた知識を今ためしているのだが、カズキの積極的な態度に斗貴子は驚いている。  
「んん、カズキ!」  
カズキは斗貴子をベッドに押し倒した。  
「か、カズキ! ああっ」  
斗貴子は悲鳴をあげた。  
 
(吸っている! カズキが、私の乳首を――)  
カズキは斗貴子の胸に顔を埋めてむさぼるように斗貴子の胸を味わっていた。  
大きな手がやさしく膨らみを揉みしだき、頂点の蕾に激しくキスをする。  
それだけで斗貴子の体の奥から熱がでてきて下半身が濡れてくる。  
「ああ、カズキ、すごい……」  
カズキは愛しいひとが悦んでいるのを知ると、ますます勇んで、今度は下半身に顔を埋める。  
「綺麗だ……斗貴子さんのおんなのこ」  
「ああっ、あまり見ないでカズキぃ、ああっ!!」  
斗貴子の口からさらなる悲鳴がもれ。  
カズキは斗貴子の女性にキスをしていた。  
優しく秘裂を舐めあげ、クリトリスに口付けする。  
斗貴子のクリトリスは充血して包皮から飛び出している。  
カズキは斗貴子の中からでてくる液体に顔中まみれながら、必死でそれを舐めた。  
「ああ、カズキ、カズキぃ……」  
斗貴子はすすり泣くように喘いでいる。  
「カズキ、好き、好き!」  
「斗貴子さん、俺も」  
カズキは身を起こした。  
「来て、カズキ……」  
「うん……」  
カズキは逸物のきっさきを斗貴子の女性にあてがう。  
「斗貴子さん、痛かったらいってね。止めるから」  
「いい、止めないで。どんなに痛くても君とひとつになりたい」  
「斗貴子さん……」  
カズキは腰をつきこんだ。  
「ふぁ!」  
斗貴子の口からするどい声が漏れる。  
「と、斗貴子さん……」  
「ああ、入ってる、入ってる……」  
カズキの逸物はゆっくりと斗貴子の膣の中に沈んでいく。  
「うう、斗貴子さん、あったかい……」  
「カズキぃ!」  
斗貴子は泣いていた。  
「! い、いたいの斗貴子さん」  
「いや、違うんだ」  
斗貴子は首を振った。  
「君とようやく一緒になれて嬉しいんだ」  
「と、斗貴子さん……好きだ、好きだ!」  
カズキは猛然と腰を振った。  
「ああ、カズキ! ああっ!」  
斗貴子が身をピーンと反らせる。  
初めてなのにカズキを想うだけで、斗貴子は何度も達した。  
やがて意識が朦朧となる。  
カズキは初めてだけあって、無我夢中で、腰づかいもぎこちないが、  
それだけで斗貴子の体は幸せに満たされていった。  
やがてカズキが精を放つ。  
斗貴子とカズキは意識を失いながら、手と手を握り合った。  
 
 
 
(――カズキ)  
斗貴子は一人、夜の森を歩いていた。  
「女」になってから一週間。  
あれから斗貴子は寝ても覚めてもカズキのことだけを想う。  
そればかりで頭がいっぱいになってしまう。  
いまも眠れないでほてった体を冷やすため寄宿舎をぬけだしていた。  
「カズキ、愛してる――」  
斗貴子はぽつり呟いた。  
「ムーン、儚き哉人生」  
「!」  
斗貴子が咄嗟にふりむく。  
「貴様は……!」  
「やあ、久しぶり」  
果たして斗貴子の前に立っていたのはホムンクルス・ムーンフェイスだった。  
「貴様、なぜ」  
「月に満ち欠けはあっても消えることはないのだよ」  
ムーンフェイスは一週間ばかり前、戦団のラボから抜け出し、  
核金を奪回、行方をくらませていたのだ。――復讐の刃を胸に秘め。  
「あれから一週間、そろそろ限界なんだ。せめて戦士に殺される前に、  
ひとりくらい道連れにしようと思ってね」  
ムーンフェイスが近づく。  
「武装錬金……」  
斗貴子が手を動かそうとするが……  
「!」  
――核金はいつもの場所にはなかった。  
斗貴子はいまや非武装なのだ。  
 
「ムン!」  
ムーンフェイスが跳躍する。  
「おのれ」  
素手で立ち向かう斗貴子。斗貴子の手刀がムーンフェイスの顔を直撃する。  
だが、ムーンフェイスはびくともしない。  
「がはっ!!」  
ムーンフェイスの拳が斗貴子の鳩尾にめりこんだ。  
「武装錬金なしでホムンクルスに勝てるとでも思ったかい?」  
斗貴子は意識を失った。  
そして――  
 
(斗貴子さん――)  
 
(斗貴子さんに出会って、助けられて、今こうしてここで斗貴子さんと一緒にいる)  
 
(俺、すごく幸せだよ――)  
 
「カズ……キ……」  
斗貴子は目を醒ました。  
「ここは……?」  
「やあ、お目覚めかい」  
ムーンフェイスが目の前にいる。  
「ここはあの廃工場だよ」  
斗貴子は気がつくと、両手両足を拘束されていた。  
 
「く、離せ!」  
「離せと言われて離すバカはいないよ」  
ムーンフェイスは肩をすくめて見せる。  
(なにか、逃げる方法は――)  
斗貴子はあたりを見回すが、役にたちそうなものはない。  
両手足を確認するが、拘束は自力でとけそうにない。  
「私をどうするつもりだ」  
「死んでもらうに決まっているだろう」  
ムーンフェイスは月顔をぐにゃっと歪ませて。  
「もっとも、あっさり死なれても困るんだけどね」  
そういうと何かとりだした。肉切包丁。  
「!」  
「さあ、錬金の戦士はこれに耐えられるかな」  
ムーンフェイスが斗貴子の右腕に肉切包丁をあてがう。  
そしてぐいぐいと刃を押し付けた。  
「ぐがああああああああ!!」  
斗貴子の口から悲鳴が漏れる。刃は右肩にめり込んで斗貴子の筋肉を切断する。  
「ムーン、硬いね。まずは関節をはずそうか」  
そういうとムーンフェイスは斗貴子の肩関節を引っこ抜いた。  
ボキッ  
関節はあっさり外される。  
「あぐ、うぐわああああああああああああ!!」  
「それじゃ、いくよ♪」  
ムーンフェイスがのこぎりを引くように刃を滑らす。  
骨と骨をつなぐ靭帯が無慈悲な鋭い刃に切断されていく。  
「ぐぎゃああ、ぐげええええええええ!!」  
「ん、良い声♪」  
やがて――  
 
「あ、あ……」  
斗貴子の口からよわよわしく息が漏れる。斗貴子の右腕は完全に切断されていた。  
生生しい傷口から骨と筋肉の層が覗かせている。  
「凄い出血だ♪」  
そういうとムーンフェイスはガスバーナーを取り出した。  
焼いて止血するのである。――すぐ死なれては面白くないから。  
ブォオオオ  
青白い焔が斗貴子の肉を焦がす。  
「ぐぎゃあああああああああああああああああ!!」  
「よしよし、止血しようね」  
斗貴子の右腕の切断部は完全に炭化して、出血は治まった。  
「なにか言いたい事はある?」  
「あ、あ……」  
斗貴子の口から悲鳴が漏れる。  
 
(やだ)  
 
(やだ、死にたくない……)  
 
斗貴子はもとより死を恐れてはいなかった。  
――ホムンクルスに復讐する。そのためには自分の命をなんとも思いはしなかった。  
それが自分の戦士としての誇りでもあったはずだ。  
だが、今は違う。愛しいひとがいる。今までの自分になかったもの。  
やっと見つけた、死闘いがいの生きる糧。  
 
(……死にたくない、カズキと、カズキと一緒に生きていたい。ずっと生きていたい――)  
 
「こ、殺さないで……」  
 
斗貴子はよわよわしく呟いた。  
「殺さないでください……お願いします……」  
斗貴子は泣いていた。大きな瞳から涙をぽろぽろと溢れさせ、泣いていた。  
「んー、そうだねえ」  
ムーンフェイスはちょっと手をあごに当ててみせる。  
「やっぱり駄目♪」  
「ぐがああああああああああああああああ!!」  
今度は左腕の関節が外された。  
 
「やあ、見事だ」  
「あ……あ……」  
そこには四肢をあまさず切断された斗貴子の姿があった。  
 
「それじゃとどめを刺そうか」  
そういうともはや口をきかなくなった斗貴子の下着を引き裂き、  
秘所をあらわにする。ガスバーナーを手に取った。  
「これから何されるか……分かるねえ?」  
(カズキ、いや、カズキ――)  
ムーンフェイスは斗貴子の膣口を指で押し広げると、  
灼熱を誇るガスバーナーをすこし挿入する。  
そして炎を膣内に噴射した。  
 
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」  
 
斗貴子の膣は焼けただれ、腐臭を放った。もはや女としてのはたらきには二度とたえないだろう。  
「さて、この女を始末するか――」  
「月夜の悪ふざけは感心しないな、ムーンフェイス」  
ムーンフェイスが咄嗟に振り向く。  
そこには満月を背にたたずむ黒い蝶が立っていた。  
「お前は」  
「パピ、ヨン!」  
とっと床に降り立つ。――彼は超人・蝶野攻爵だった。  
「なぜ、君がここにいる!?」  
「武藤の遣り残したしごとを手伝いにきたんだよ」  
「!」  
ムーンフェイスが月顔を硬直させる。  
「まさか、ホムンクルスの分際で僕を狩るつもりなのか!?」  
「俺はホムンクルスじゃない。蝶人だ」  
そういうと、パピヨンは核金を取り出す。  
「死んでもらうぞ」  
「くっ」  
蝶野が迫った。  
「サテライト・サーティーン!」  
ムーンフェイスが分裂する。だが。全ての個体に黒死の蝶がまとわった。  
「ニアデスハピネス!!」  
「ぎゃああああああああああああ!!」  
 
(斗貴子さん、斗貴子さん――)  
あれから三十分後。パピヨンの知らせを聞いたカズキは、  
必死の思いでかけつけた。そこで見たものは――  
「うおおおおおおおおおおおお!!」  
斗貴子はすぐさまサン・ジェルマン病院に収容された。  
斗貴子の容態は思わしくなく、三日が経ったいまも意識は不明だ。  
「すまなかったな、武藤。おそくなってしまって」  
「お前のせいじゃないさ」  
カズキは力なくつぶやく。  
「俺のせいだ!斗貴子さんを守れなかった、俺の――」  
そこから先は声にならなかった。  
 
(私もここに任務に赴いて、君と出会って、こうして一緒になれて本当に幸せだ)  
 
(カズキが欲しい)  
 
(いや、違うんだ。君とようやく一緒になれて嬉しいんだ)  
 
もう、斗貴子の笑顔をみることはできないのか。  
そのとき――  
「んっ……」  
斗貴子はゆっくりと目を開けた。  
「と、斗貴子さん!」  
カズキが斗貴子の横たわるベッドに駆け寄る。  
「斗貴子さん、生きて、生きて、うう……」  
「…………」  
斗貴子は大きな目を開け、ゆっくりと辺りを見回し、愛しいひとの顔を認識して。  
そしてつぶやいた。  
「殺して」  
 
カズキの体が硬直する。  
「カズキ、私を殺して……」  
斗貴子は泣いていた。ぽろぽろと涙をこぼして泣いていた。  
「私はもう生きていても仕方がない。カズキに殺されるならそれでいい」  
そう手足を失った少女は語る。  
「……君は、私の事は忘れて、新しい女の子と恋をするんだ」  
「斗貴子さんのバカ!」  
カズキは泣き叫んだ。  
「斗貴子さんが好きなのに、誰よりも、何よりも、自分の命よりも、  
ずっとずっと斗貴子さんが大切なのに、なんでそんなことを言うんだ!!」  
そのままベッドシーツに崩れて涙を流す。  
「カズキ……」  
カズキは誓った。今度こそ、自分の命に代えても。  
「俺が守るよ。斗貴子さんを守るよ。二度と、誰にも、斗貴子さんを傷つけさせない。  
一生、一生ずっと斗貴子さんと一緒にいたい」  
「カズキ、私の女の部分はもう駄目になってしまったんだ……」  
カズキは叫んだ。  
「それがどうした!」  
ぶんぶんかぶりを振る。  
「それでも斗貴子さんを守りたい。一生そばにいたい」  
「カズキ……」  
 
それから人々は手足を失った少女と、少女を甲斐甲斐しく世話する少年のふたりを見るようになった。  
カズキは約束を守った。二度と少女を傷つけさせも、離しもしなかった。  
斗貴子の切断された腕と破壊された性器は二度ともとに戻る事はなかったが、  
それから30年間、食事から排便の世話まで受けて、斗貴子は生きながらえた。  
カズキは一生誰とも結婚しなかった。ずっと斗貴子のそばにいた。  
 
それがふたりの運命だった。  
 
(終わり)  
 

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