「ふうっ……遅くなっちゃったわ」
早坂桜花は鞄をさげてとことこと歩く。
生徒会の仕事で時刻はすっかり夕方。
秋水はカズキたちと銭湯に寄って帰っている。
斗貴子やまひろとはとうに別れていた。
「ふふ、毎日がこんなに楽しいなんて」
最後の戦いから数ヶ月。
早坂姉弟は今も戦団の管理下にはあるが、自由な青春を謳歌していた。
もうホムンクルスに食い殺される心配も、LXEでの過酷な生き残りもない。
友達もできた。
一時は敵だった斗貴子も、今では桜花に友達として接してくれる。
しょうしょうぎこちなくはあるが。
まひろも「お姉さんができたみたい」と喜んで自分の相手をしてくれる。
もう二人だけで生きていくなんてことは思わない。
もちろん、秋水は今でも桜花にとって特別大切な人だが、
それでも桜花たちは前よりずっと強くなれた。
「秋水くん――」
「こんばんは」
不意に行く手を黒い影がふさいだ。
「!」
影は異形のものだった。
虫や動物の姿をして、二足で歩いている。
「ホムンクルス……!」
どう見ても人間ではなかった。
果たして、それはLXEの残党だった。
「早坂桜花だな……バタフライさまの敵討ちだ。死んでもらうぞ」
リーダー格の人間型ホムンクルスがいう。
影が桜花に迫った。
「ひっ……」
桜花は長い髪を振り乱して、後ろに駆け出す。
だが、その足に斬撃が打ち下ろされた。
「あうっ!!」
桜花が転倒する。――右足のアキレス腱を切断されていた。
恐怖のため痛みも鈍く感じる。
(これでもう、逃げられない……)
それでも桜花は這って逃げようとするが、
ホムンクルスが桜花を取り囲んだ。
「へへへ」
「いやぁあああああああああああっ!!」
桜花はLXEの残党が集う一軒家につれていかれた。
LXEがかつて銀成市に持っていた物件の一つである。
そこの地下室には拷問施設が完備していた。
鞭、蝋燭、三角木馬、電気ショック椅子、焼き鏝、鉄の処女。
あらゆる拷問器具が備え付けられている。
「ううっ……」
「おら、覚悟しろやあああああっ!!」
ホムンクルスの一体が、縛られて転がされた桜花の前髪をつかみ、
ひね上げる。そして猛烈なびんたを喰らわせた。
――バシバシバシバシバシ!――
「ああ、痛い!!」
鼻血をだしながら床を舐める桜花。
そこへリーダー格の人間型が桜花を見下ろす。
「まずは服を剥げ」
ホムンクルスたちが一斉に桜花の制服を裂いていく。
「いやあああああっ!!」
暴れるたびに、ホムンクルスの鉄拳が飛ぶ。
美しい顔は何度も殴られて、まぶたが腫れ上がり、鼻骨が折られる。
やがて下着まで剥がれて、桜花は真っ裸になった。
「へへへ……」
ホムンクルスたちが下卑た笑みを浮かべる。
桜花は絶望のあまり気が遠くなった。
だが、彼女には気絶することさえ許されない。
「お前は裏切り者だ。ただ殺すだけでは済まされない。せいぜい苦しんで死ね」
リーダー格が冷たく見下ろした。
「まずは……鞭だ」
ホムンクルスの一体が鞭をふりかざす。
裸になった桜花の柔肌に、容赦ない一撃がふりそそいだ。
――ピシャアッ!――
鞭が桜花の膚を裂き、鮮血が直線を刻む。
ホムンクルスは連続で鞭を叩き込む。
「あうっ!! あああああ、痛いいいいいっ!!」
桜花は泣き叫んだ。
鞭はますます盛んに、桜花の白い肌を赤く染めていく。
「ああ、痛いいっ! あうっ、うわあああああっ!!」
悲鳴が地下室に響く。鞭の音が響きつづける。
たっぷりと三十分は鞭打たれ続けた。
――桜花の美しい肌はもはや見る影もなかった。
乳房や背中、尻などの皮が剥がれて、赤身を覗かせている。
まさに完膚なきまでに。
薄汚い床には血だまりができて、その上で、桜花は気息奄々としていた。
「――塩をもってこい」
人間型がそういった。
意識が薄れかかっていた桜花の耳にも、その言葉は染みる。
絶望が心に染み渡っていく。
「いや……いや……もう、許し……」
大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼす桜花だが、その様子は
サディズムに酔ったホムンクルスどもを悦ばすばかりだ。
「うわあああああああああああっ!!」
ホムンクルスが数体がかりで桜花の肢体を押さえつけ、
傷口の皮がめくれたところに塩を塗りこんでいく。
傷口に塩が塗りこまれ、桜花の痛覚を残酷に刺激した。
「ぎゃああああああああ!! ぐぇげえええええええええっ!!」
桜花は美しい顔をみにくく歪めて絶叫した。
「ははは、こりゃ楽しいぜ」
「垢すりマッサージだ。ぜいぜい歌えや」
桜花は激痛のあまり白目をむいてのけぞった。
皮膚の下の赤身が塩でこさがれて、神経が剥き出しにされるのが分かる。
「ぐげええええええええっ! げえええええええええっ!!」
――やがて。
「へへへ」
ホムンクルスたちが哂いながらそれを見下ろす。
桜花は殆ど全ての皮を剥かれて、ずるむけになっていた。
ナイフで乳首やクリトリスも切除された。体中の筋肉があらわになり、痙攣している。
「さて」
ホムンクルスのリーダーは燃え盛る暖炉に近づくと、何やら焔の中からとりだした。
焼き鏝。
「おい、膣口を広げろ」
「はい、へへへ」
桜花の虚ろな目にシューシューと湯気を出す焼き鏝が移る。
(しゅう……すい……くん……)
「健やかなる時も、病める時も」
「喜びの時も、悲しみの時も」
「これを愛しこれを敬い、これを慰めこれを助け」
「死が二人を別つまで――」
――焼き鏝が桜花の膣に挿入された。
「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
(続く)