(まずい…………)  
カズキを叱咤しながら、秋水も内心焦りを覚えていた。  
元より無茶を承知の戦いとはいえ、状況は圧倒的に不利。カズキは既に劣情爆発寸前だし、自分だって  
これ以上欲望に耐え切れる自信は無い。  
いっそこのまま流されてしまえばミンナキモチヨクお風呂場乱交で上手くすれば取っ替え引っ換え〜の  
スワッピnいやいや落ち着けオレは姉さん一筋ナニを考えてる────  
 
「んぅ!? あ、ち、ちょっと待って秋水くん!」  
不意に桜花が、どこか切羽詰った声音で秋水を押し留めてきた。  
「ね、姉さん!? 何かまずかった?」  
益体も無い考えに耽っていた秋水は、面食らって愛撫の指を止め、姉の顔色を伺う。  
「そ、そうじゃないの。あ、あの……ね? 私たち随分ココに長居しちゃってるじゃない? そろそろ  
他のお客さんとか来るかもしれないし、…………だから、えぇっと……こ、この辺でお開きにした方が  
いいんじゃないかしら?」  
「………………姉さん?」  
「それに、あんまり帰りが遅いとブラボーさんたちも心配するし、ね? もう出ましょ秋水くん……」  
「…………ああ、成る程」  
態度の変わりように困惑していた秋水だったが、そこは流石に姉弟。すぐに原因に思い当たった。  
「トイレに行きたいんだね、姉さん。まぁ、あれだけ飲んだら無理も無いよ…………でも!」  
今の彼にとって、まさに千載一遇の勝機。ここを逃せば後は無い。冷たく笑って姉の腰を力強く抱える。  
「どうせならここで用を足しちゃいなよ。風呂場なんだから、すぐに洗い流せるよ」  
「!!!? し、秋水くんッ!?」  
ぐっと下腹を押さえられて、桜花が慌てた。  
「駄目ッ!! それだけは、それだけは絶対にイヤァッッ!!」  
弟の腕から逃れようともがくが、剣道で鍛えられた腕はがっちりとウエストを捕まえて離さない。  
「お願い秋水くん! それだけは許して! 武藤君や津村さんだって居るのよ!?」  
(だから、好都合なんだよ姉さん)  
「やぁ、出ちゃう!……ほんとに出ちゃうぅ…………」  
顔を顰め、額に汗の珠を浮かべた桜花が苦しさに上体を屈める。  
「我慢しなくていいよ。ほら…………」  
桜花を誘いながら、素早くカズキに目配せした。  
 
(秋水先輩…)  
カズキも、秋水のアイコンタクトの意味にすぐ気付いた。  
「斗貴子さん。斗貴子さんも随分お酒飲んでたけど、そろそろトイレが近いんじゃない?」  
「か、カズキ!? やぁ、止め……んうぅっ!!!」  
掌で下腹を圧迫され、唐突な尿意と共に斗貴子が我に返る。少年の手が肌越しに膀胱の張りを探り当て、  
包み込むように押さえてきた。  
「ココ、結構膨らんでるね。相当溜まってる感じがする。無理しないで出した方が身体にいいよ。ね?」  
「な、何を考えているカズキッ!? 公衆浴場でそんなハレンチ行為……で、出来るものか!!」  
さっきまでの甘え声から一転して厳しい口調に戻った斗貴子だったが、その声にはいつもの凛然とした  
強さは無い。おまけに、漏れるのを我慢して両脚を閉じようにも、股にカズキの怒張を挟み込んでいる  
状態ではそうもいかない。突っ張ったつま先が、プルプルと震える。  
「そんなに嫌がらないでよ斗貴子さん。ほら、旅の恥はナントカって言うじゃない」  
「か、かいて良い恥と、良くない恥があるだろう!!」  
「強情だなぁ……じゃあ、少し手伝ってあげる」  
「んひゃぁっ!?」  
下腹を押さえるのと反対の手が、斗貴子の秘唇に伸びた。指の腹で尿道口の辺りをクニクニと刺激する。  
「カズキ! よ、止せ! そんな所、触らないでぇッ!!」  
(うぅ…嫌だ! いくらカズキの頼みでも……そ、そんな醜態を晒すのは……)  
「ほら……斗貴子さん、早く……」  
ちょろり、と暖かい雫がカズキの肉茎に滴り落ちた。  
 
「や、やめろ…………やめてぇ……カズキィィ! 駄目! 漏れちゃうぅ!!」  
「し、秋水くぅん……もぉ……もぉ限界よぉ!!」  
 
 ぷしゃあああああああああぁぁぁぁ  
 
二人の哀願と、金色の飛沫が放たれるのは殆ど同時だった。  
「イヤアアァァァァァッ!!」  
「駄目エエェェェェェーーっ!!」  
最後の一線を越えた、絶望の悲鳴が上がる。同時に押し寄せる解放感に、斗貴子と桜花の肌が粟立った。  
「いやぁ…ぐす……カズキぃ……見ないでぇ……」  
「やだ、止まらない……お漏らし止まらないのぉ……」  
勢い良く迸る小水はパタタタ、とタイルの上で跳ね、太腿から足首へと流れ伝う。秋水とカズキの手や  
下腹部をも濡らし、飲酒後独特のすえた尿の匂いが湯気の篭る浴場内に広がった。  
金色の流れは尚も止まることなく、次第に勢いを弱めていく。  
「…………う……」「ああ…………」  
そして最後の一滴まで排尿を終え、少女達は力無く膝を突いて、ついにゆっくりと洗い場に倒れ伏した。  
 
「やったな、武藤!」「秋水先輩!」  
カズキと秋水は、お互いの健闘を称え合うようにピンコ勃ちのままガッチリと握手を交わす。  
「長く、そして馬鹿馬鹿しい戦いだった……」  
秋水が、万感の想いを胸に呟いた。  
「でも先輩。これで本当に、二人とも意地の張り合いを止めてくれるのかなぁ?」  
「そう願いたいな。なんにしろ、こんな恥ずかしい勝負はもう御免だ」  
「…………そうだね。とりあえず、この後始末どうしよう?」  
眼前の惨憺たる光景に、二人して苦い勝利を噛み締めた。  
 
「……フ」  
「……フ」  
「「フフフフフフフフフフフフフ!!」」  
 
突如湧き起こった笑い声に、少年達の心臓が凍り付く。  
「フフフフフ……。漏らしてしまうタイミングまでほぼ一緒とは……。あきれる程にしぶといですわね、  
ゼェゼェ…」  
「フフフ……。貴様こそ、あのあざとい恥じらい演技。往生際が悪過ぎるぞ腹黒女め、ハァハァ…」  
ゆらり。  
意識を失っていたはずの桜花と斗貴子が幽鬼のようにその身を起こした。  
「って、嘘ーーーーーーーーーッ!?」  
「まさか!? あれだけ弄られ倒して、まだ立てるというのか!!?」  
驚愕する秋水達を尻目に、不屈の闘志で立ち上がる。  
「ここまで決着が付かないとなると(ゼェゼェ)、残された方法は(ゼェゼェ)、唯一つ!」  
「よ、よろしくてよ(ハァハァ)! こうなったら(ハァハァ)、トコトンやってやろうじゃないの!」  
既に彼女達には恥も外聞も無い。あるのは“コイツなんかに負けたくない”という妄執のみ。  
「どちらがより深い絆で結ばれているか、ガチンコの愛の営みを!!」  
「今!! この場で見せ付けて差し上げますわ!!」  
「エエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!?!?」  
「………………姉さん……」  
数センチの距離まで顔を突き合わせ睨み合っていた斗貴子と桜花が、呆然と立ち尽くすカズキと秋水に  
同時に振り向いた。  
「カズキ! 君のサンライトハートで、今こそ私を貫け!!」  
「秋水くん! 貴方のソードサムライX、存分に振るってちょうだい!!」  
 
「「なんでそうなるのおおぉぉ!?!?」」  
 
 * * *  
 
その頃。  
混浴場からやや離れた貸し切り小露天風呂にも、別の泊り客の姿があった。  
夜気に濃さを増す湯気の向こう。岩場を掘り抜き、檜で四辺を囲った湯船で身を重ね合う若い男女の姿。  
否、その体格差は大人と子供。  
 
「あんっ。あんっ。あんっ。あっ!」  
膝上辺りまでを湯に沈め、檜の縁に両手をついた少女が、背後から犯されていた。  
濡れた金髪。陶磁器のように滑らかで白い肌。わずかに膨らみかけた胸の先には、小さいながらも性の  
悦びに淡く色づいた突起。その肢体は斗貴子より更に細く小柄で、顔の輪郭や指先に見て取れる幼さの  
名残は、少女が肉体的に未だローティーンである証だ。  
殆ど無毛に近いピンク色の秘唇は、血管の浮き出た赤黒い剛直によって無残に押し広げられている。  
突かれる毎に甘い啼き声を上げ、その一方で、男によって開発された蜜壺は懸命に剛直を包み込む。  
そして、年端も行かぬ少女の腰を両手で掴み、荒々しく突き上げる痩身の男。風呂場だというのに  
トレードマークの蝶々マスクを外そうともせず、薄笑いを浮かべて久々に触れる柔肌を愉しんでいた。  
 
「どうだ、やはり地球は良いだろう。こうして大自然の懐に抱かれていると、母なる星の鼓動と魂とが  
一体化して涅槃の境地へと旅立ち、恍惚の内に身も心もリフレッシュできるというものだ」  
ゆっくりとしたストロークで抜き挿しながら、男──パピヨンが少女に話し掛けた。腰の動きに合わせ  
波立つ湯の上で、ゆらゆらと月も一緒に踊る。  
「な、何がリフレッシュよ! んっ。こんな……こんな誰かに見られちゃうかもしれない場所でエッチ  
するなんて……。あふっ。ヘンタイよ、ヘンタイ!」  
切ない表情のままパピヨンをなじるのは、父とともに月面へ移住したホムンクルス・ヴィクトリア。  
新たなホムンクルス移民団を迎える使者として地球に戻ってきており、タイトなスケジュールの合間を  
縫っての二人きりの逢瀬だった。  
「やれやれ、侘び寂びの分からんヤツめ。貴様が食人衝動を気にしているというからこそ、こうして  
わざわざ鄙びた温泉宿を選んでやったのだぞ」  
「あぅんっ! …でも、一度くらいディズニーランドとか行ってみたかったもん! んっ……その後で、  
夜景の見えるホテルのレストランでお食事して……スイートに泊まって……もっと、優しく…ひあぅ!」  
「食事なら、ここの宿だって結構なものだったろう」  
「んっ…。んっ…。だって……私、日本食あんまり好きじゃないし……」  
「船盛りのッ! マグロと鯛を独り占めしておいてッ! 何を言うかッ!」  
「やぁんッ!? 激し、んっ! か、替わりに、タコとイカ、あげたじゃない」  
「そんなレートで釣り合うかたわけ!! ククク、どうやら貴様にはオ・シ・オ・キが必要だな」  
ヴィクトリアの中に怒張を根元まで突き入れて、パピヨンは円を描くように腰を捻る。  
「!? ひぁああっ!! やめてぇっ! お腹の奥、グリグリされるぅ……んあああぁっ!!」  
金髪の少女は、ここが屋外であることも忘れて大声で喘いだ。パピヨンは口の端を笑みの形に大きく  
歪めながら出し入れと円運動を交互に繰り返し、次第に責めるピッチを速めていく。  
「ダメッ! そんなにされたら、んぁっ! 私! もうイッっちゃう……イッっちゃうよぉ!」  
白いお尻に男の腰がぶつかると自然とヴィクトリアの身体も前後に揺さぶられ、湯船の波紋が幾重にも  
ぶつかり合ってチャプチャプと飛沫が跳ねた。  
「食い意地の張った貴様の事だ、こっちの口も物欲しかろう。たっぷりと受け取れ!」  
言うと同時に、パピヨンは一際深く怒張を捻じ込んだ。  
「や、バカ! 中は……中は嫌だって言ったのにぃ……ん……」  
胎内に広がる熱い感覚に、ヴィクトリアが身を震わせる。少女の一番奥で射精したパピヨンは、名残を  
惜しむかのように二度、三度とヴィクトリアの膣内を行き来して、それからゆっくり剛直を引き抜いた。  
 
「………………………………ふう…………」  
一瞬駆け抜けた風が心地いい。  
大きく息をついて、湯船の端に腰掛ける。温泉の効能か、体力を使った割には特に病魔の兆候も無く、  
パピヨンは満足げに夜空を仰いだ。  
その隣ではヴィクトリアが上体をぐったりと投げ出し、トロンと潤んだ瞳で荒い呼吸を整えていた。  
少し息が落ち着いたところで起き上がり、男の両脚の間に身を割り込ませる。そして、二人の粘液に  
塗れたまま、まだ半勃ち状態を保つペニスに顔を寄せた。  
「────ん……」  
小さな舌を伸ばし、肉茎の先端から垂れる精を零さぬよう、そっと舐め取る。両手を軽く添え、子猫が  
ミルクを舐めるようにチロチロと、満遍なくペニスに舌を這わせて性交の名残をこそげ取っていく。  
パピヨンはそんな少女の奉仕を満足げに見下ろしながら、優しく彼女の頭を撫でた。  
「いい子だ。よ〜く味わって舐め取れよ。…………それにしても……」  
顔を上げ、耳を澄ます。人間の聴覚を上回る“蝶・パピヨンイヤー”に、先刻からあられもない女の  
嬌声が届いていた。  
「方角からすると混浴場からか……しかも複数。やれやれ、公共の場でお盛んな事だな。もう少し  
マナーという物をわきまえてもらいたいものだ」  
(………人の事、言えないと思う)  
軽く先端に口付けて中の残りを吸い上げながら、ヴィクトリアは心の中で呟いた。  
 
 * * *  
 
「んあぁっ! あひっ! あひっ! あっ! か、カズキぃ!!」  
「んふぅっ! んあっ! んあっ! 秋水くぅん!!」  
湯船の中央で、妖しくくねる二つの裸身。  
桜花と斗貴子が、立ったまま向かい合わせに抱き合っていた。  
 
斗貴子の右手と桜花の左手。互いの掌を合わせ、指を絡ませて、反対側の腕を互いの腰に回して。  
桜花より幾分背の低い斗貴子の額は、桜花の肩に。桜花は斗貴子の頭に自分の頬を押し当て、喘ぐ。  
そして二人の後ろから、  
「まったくもう! 斗貴子さんはッ! 酒癖悪いんだからッ!」  
「姉さん! 悪ふざけもッ! 程ほどにしてくれよッ!」  
カズキと秋水が、少女達のトロトロに熱くなった花弁の奥へ、容赦なくペニスを突き入れていた。  
「んぁうぅん! ら、らってぇ、桜花が先に挑発するんだもの……」  
「人のせいに、しない!!」  
「あぅんっ!?」  
幾重もの襞がぬるぬると絡み付く膣の奥までカズキの先端が届く。いつもと違う立ったままの行為で、  
当たり所の違う怒張が斗貴子の行き止まりを小突いた。  
「やぁ! それ、スゴ……んん! カズキので、お腹の中身……持ち上げられてるぅ!」  
倒れそうになる身体を、桜花の腕が支えてくれた。  
「はぁん、秋水くぅん!」  
「姉さんはホントに! 次から次へと俺に面倒事を押し付けて! 俺が困るの見て楽しんでるだろ!」  
「あんっ! んっ! ゆ、許してぇ! 姉さん、秋水くんに構って欲しかっただけなのぉ!」  
単純な突き上げとは違う、捻りを加えた秋水の切先は、膣の内壁を右、左と擦り所を変えながら抉る。  
「あん! ソコぉ! ソコ、もっとしてェ!」  
膣壁の一番感じる部分を、カリの部分が擦り上げる。あまりの気持ち良さに意識が飛びかけるのを、  
絡め合った斗貴子の指が強く握って引き留めた。  
 
「斗貴子さんも、桜花先輩も! どうしてもう少し仲良く出来ないのさ!」  
「武藤の言う通りだよ! 出会いの経緯はともかく、一緒に戦った仲間だろう!?」  
「はっ。はぁっ。ん、そ、そんなコト言ったってぇ…」  
「んぅっ! き、気が合わないものは……合わない──ひゃああぁん!! 秋水くん駄目ェ!」  
乱暴気味な少年達の腰使いに揺さぶられる度、桜花と斗貴子は相手の身体に縋り付き、支え合う。  
「っく! そうやって、最初から無理って決め付けるなんて……ん……斗貴子さんらしくないよ!」  
「!? んああああっ! やめ、あ、あ、あ、あ、あ、…………」  
 にちゅ、にちゅ、にちゅ、にちゅ、  
小刻みなカズキの動きに合わせて、斗貴子が切れ切れに啼く。二人の繋がった部分が粘ついた音を立て、  
無意識のうちに斗貴子も自分から腰を動かし始める。  
「ハァハァ……姉さんも、もう少し素直になりなよ。……っふ! どっちも、似た者同士じゃないか!?」  
「う、嘘……わ、私と津村さんが……似た者同士なんて……どこを見たら……ヤァッ!! クリちゃん  
弄らないでェェェェッ!」  
姉の膣を自分のペニスで一杯にしたまま、秋水が敏感な芽を指先で転がした。刺激に呼応するように  
入り口が締め付け、奥がうねって亀頭部分を吸い上げる。  
「探せば幾らでも似てるじゃないか! そうやって意地っ張りなところとか!」  
 パシン!  
「ぃやぁんっ!?」  
桜花の桃尻に、秋水が腰を叩き付けた。  
「斗貴子さんだって、目的の為には手段を選ばないところとか!」  
 パシン!  
「っんあぁ!!」  
カズキも同様に、斗貴子を突き上げた。  
「なかなか他人を信用しないところとか!」  
「真面目ぶってて計算高いところとか!」  
「孤高ぶってるけど、ホントは寂しがりやなところとか!」  
「そのくせ一度心を許した相手にはベッタリ甘えるところとか!」  
 パシン! パシン! パシン! パシン!  
「あはぁっ! あはっ! あっ! あっ!」  
「やっ! んぅんっ! んっ! んんっ!」  
一層激しく揺さぶられ、少女達はより強く抱き合い、手を握り合う。まるで互いを庇い合うように。  
(そんな……わ、私と……津村さんが…………似てる?)  
「近親憎悪ってヤツだよ姉さん。自分自身の嫌な部分を、相手の中に見てしまう……」  
(ま、まさか……確かに桜花とは……子供時代の境遇とか…………似通った部分はあるけど……)  
「ただ嫌いなだけの相手なら、無視すればいいだろ!? そう出来ないってことは、斗貴子さん自身が  
桜花先輩を気にしてる証拠じゃないか!!」  
カズキの言葉に、斗貴子が顔を上げた。ぼやけた視界の中で、桜花も同様に斗貴子を見つめている。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ………………お……桜、花……」  
「はぁ、はぁ………………津村、さん………」  
同じように上気した目元。熱い吐息。上下する肩。相手の瞳の向こうに、自分と似た何かを覗き込む。  
「はぁ、はぁ………──んむっ!?」  
突然唇を塞がれて、斗貴子が目を白黒させた。ふっくらと温かい、桜花の感触。  
「ん、んん────ぷはっ。よ、よせ桜花! 女同士で何を────んん〜〜っ!?」  
顔を背けて逃れるが、桜花は執拗に斗貴子の唇を追い掛けて再び自分のそれと重ね合わせた。同時に  
慣れた調子で斗貴子の口を割って舌を挿し入れる。  
「んんんんんっ!?」(!? え? 嘘!? なんで?)  
桜花の舌にそっと自分の舌を撫でられただけで、斗貴子の力が抜けた。桜花は戸惑う斗貴子の口蓋を  
くすぐり、唇を啄ばみ、的確に斗貴子の感じる部分を探り当てながら、より大胆に舌を絡み付かせる。  
 
「ん、ぷ………津村さん………んむぅ」  
「ぷぁ……ふはぁ………桜、花……んん」  
いつしか斗貴子も陶然とした顔つきになり、自分から進んで舌を絡ませ始めた。  
鼻に掛かった甘い声と共に、少女達は唾液を交換し、啜り合う。寄り添うように上体を密着させて、  
乳房と乳房が擦れ合い、高鳴る鼓動さえも一緒に感じ合う。  
「んぁ────桜花ぁ! あ、私………わたしぃ……」  
「ん、ふぁ。……大丈夫よ、津村さん。大丈夫……」  
 
姉と斗貴子の痴態に背後から見入っていた秋水だったが、その間にも蠢く蜜壺に包まれていた剛直は  
そろそろ限界に近付いていた。  
「姉さん。取り込み中悪いけど、こっちも動かせてもらうよ」  
「ひっ、ん!! やだ、秋水くん……ん! さっきより、中で大きくなってるぅ! あはぁ!!」  
斗貴子とのキスを解いて、再び桜花が喘ぎ乱れる。  
「斗貴子さん! 俺も、今の桜花先輩との絡み見てたら……くぅ!」  
「ああああぁん! カズキぃ! 凄っ! 大きいよぉっっ!!」  
既に四人とも汗びっしょりで、飛び散る雫がポタポタと湯船に散る。  
加えて斗貴子と桜花の秘唇から溢れた愛液が内腿に筋を成し、湯の中へと溶けていった。  
「そろそろキメるぞ、武藤。タイミングは任せる!」  
「応ッ! エネルギー全・開!! サアアァァァンライトォォオオオ!!!」  
「ソオオォォォウドサムライィィィ────」  
「アッ! ダメッ! カズキ、飛んじゃう! 私、飛んじゃうぅぅ!!」  
「ンッ! いいのよ、津村さん! それでいいの!! 私も……私もぉ!!」  
身体を貫き暴れる恋人の体熱を感じ取りながら、斗貴子と桜花は一緒に昇りつめていく。繋いだ手に、  
我知らず力を込めて。  
 
「「X(クロス)ハートオオォォォォッッ!!!!!」」  
「「アアアアアアアアアアアァァァァッッッ!!!!」」  
昂りが弾け、胎内に迸る。  
熱い精を膣に浴びて少女達が果てるタイミングも、やはり同時だった。  
 
 * * *  
 
「まったく…………何を考えているのかしら」  
腕組みを解き、こめかみを指で押さえながら、千歳は一つ溜息をついた。  
普段あまり感情を表に出さない“クールビューティー”は、今は珍しく柳眉を寄せて半ば困惑、半ば  
あきれた風に少年二人を見下ろしている。  
「はぁ、その……なんと言うか……」  
「面目次第もありません」  
彼女の前で、神妙な顔で正座している浴衣姿のカズキと秋水。そして彼らの後ろでは、濡れタオルを  
額に乗せた斗貴子と桜花がそれぞれ布団に寝かされ、ウンウンと唸っていた。  
 
女の意地とプライドをかけたバトルは、『深酒』『風呂』『激しい運動』のトリプルアタックによって  
両者とも湯当たりノックダウンという何とも締まらない形で幕を下ろした。  
絶頂と同時に失神してしまった二人にカズキと秋水は大慌てとなり、風呂場から抱きかかえて連れ出し  
身体を拭き、苦労しながら浴衣を羽織らせて、それから血相を変えて千歳に助けを求めに来たのがつい  
先程の事。  
それから千歳が急いで二人の容体を診て宿の従業員に連絡すると、こちらは流石に慣れているらしく  
てきぱきと薬や氷枕を用意してくれて、取り合えず一段落着いたところだった。  
 
「お風呂で気分転換なさいと言ったのは私だけれど、それで混浴に入っちゃうのは問題でしょう。  
思春期だからいろんな事に興味あるのも分かるけど、もう少し節度をわきまえてちょうだい」  
いろんな意味で見透かされている状況に反論の余地も無く、秋水とカズキはただ畏まって頭を垂れ、  
千歳の小言に耳を傾けるしかなかった。  
「はっはっは。まぁ、若いうちは多少の無茶も経験のうちさ。そうしょげこむな。俺がお前らぐらいの  
年頃には、それこそ千歳と抜かずの七発────ふぐぉっ!!!!」  
鳩尾に的確かつ鋭い肘打ちを食らい、フォローに入ろうとしたブラボーが崩折れた。  
「とにかく! 今後は錬金戦団関係者という自覚と責任をしっかり持つこと。特にこういう集団行動の  
時は周囲に迷惑を掛けないよう慎重に! いいわね!?」  
心なしか頬を赤らめた千歳の締めの言葉に、少年二人は「ハイ」と真摯に頷いた。  
 
「いよぉし! 千歳の説教も終わったようだし、少し早いがそろそろ就寝時間とするか」  
それまで腹を押さえてうずくまっていたブラボーが、何事も無かったかのようにすっくと立ち上がる。  
「とはいえ、斗貴子達にはまだ看病が必要だろうな。そんなワケでカズキ、秋水。お前達はこっちの  
部屋で休め。俺と千歳は向こうの男部屋で寝ることにする。二人を頼んだぞ」  
「えぇ!? 斗貴子さん達と一緒に?」「しかし、それでは……」  
「防人君! 私が注意した端から貴方がそんなじゃ、この子たちに示しが────きゃあッ!?」  
問答無用で腰から抱き上げられ、千歳が可愛らしい悲鳴を上げた。  
「フッフッフ……。せっかくの慰安旅行だ。千歳には日頃の感謝を込めて、幻の十四番目の必殺技  
“昇天! ブラボーマッサージ”を存分に堪能してもらおうか」  
ブラボーは鼻息も荒く千歳の身体を肩に担ぎ直し、浴衣の上から柔らかな丸みを描く尻を撫で回す。  
「ば、バカ! 子供たちの前で何言ってるのよ。貴方もまだ酔ってるでしょ!? ねぇ、ちょっと!  
降ろして、降ろしてってば」  
ポカポカと背中を叩かれるのを意にも介さず、彼女の鞄を左手に提げて部屋の出入り口に。  
「お前達の鞄と足りない分の布団は、後で届けてやる。朝食の時間には遅れるなよ」  
 
──バタン。  
 
ドアが閉まり、静寂の訪れと同時に、ようやくカズキと秋水は肩の力を抜いて息を吐いた。  
「なんか、もう……ドッと疲れた…………」  
「姉さん、大丈夫? 水とか欲しくない?」  
のろのろとした動作で立ち上がると、思い足取りで少女達の傍まで歩いて座り直す。カズキは斗貴子の  
首筋を濡れタオルで拭いてやり、秋水は団扇で桜花を扇いだ。  
 
「……フ」  
「……フ」  
「「フフフフフフフフフフフフフ!!」」  
 
再び沸き起こった笑い声に、またしても少年二人が凍り付く。  
「き、今日のところは痛み分けですわね、津村さん。…………でも、覚えてらっしゃい。  
いつかきっちり、勝負を付けさせてもらいますわよ!」  
「ふ、フン! こ……こちらこそ、望むところだ。…………その時になって吠え面かくなよ桜花!」  
互いに横になったまま相手を睨みつけ、火花を跳ばし合う。  
 
「「もう勘弁してください!!」」  
カズキと秋水は、そろって枕元で土下座した。  
 
(おわり)  
 

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