七月も終わりに近いその日、俺は、とある山中を歩いていた。  
今日の目的地の町まではあと少しの筈だ。  
『では秋水君。身体に気をつけて』  
そう剣術の師匠に見送られて修行の旅に出た俺は、足腰の鍛錬の為、敢えて山道を  
選んで歩いてきた。今日も上り下りの繰り返しで、かなり汗ばんでいる。  
しかし国道沿いを歩けば、アスファルトの輻射熱と自動車の排ガスでもっと酷い目に  
あっただろう。まだこの山道の方が涼しい筈だ。  
この時期だと学校はもう夏休み、皆は何をしているだろう。そんなことをふと思う。  
桜花姉さんは元気だろうか。それに武藤カズキも。  
病院を退院して直ぐにこの修行に出てしまった為、武藤にはあの夜以来、会っていない。  
――いや、顔を合わせられる立場じゃないな。  
もちろん携帯電話は持っているが、あの日以来、姉さんを含め誰にも電話をしていない。  
表向きは里心がつくから。実際は――  
そんなことを考えていた所為だろうか。道に迷ってしまった。  
 
日が沈むまであと2〜3時間だろう。未舗装路の両脇は木ばかり。通る人もいない。  
そういえば今までの山道では大抵何人かとすれ違ったものだが、今日は覚えがない。  
仕方ない、最悪は野宿だ。山とはいえ、高山では無い。懐中電灯もあるし、荷物の中の  
着替えや剣道着をかき集めれば、夜の冷え込みも越せるだろう。  
なまじ夜道を歩いて崖下に転落、となったら目も当てられない。  
心配なのは野生動物、特に熊や野犬だが、そのときは木刀を頼るとしよう。  
歩きながら、そう腹を括った時だ。  
前方に廃墟とも思える門が現れた。  
きちんと手入れがされていれば随分、立派なものだったろう。  
それはやがて見えてきた門内の洋館にも言えることだ。  
人が住んでいるか怪しいところだが、道を教えて貰えれば野宿を避けられるかもしれない。  
とはいえ門に呼び鈴らしき物も無く、といって門内に入るのもちょっと躊躇われる。  
それに――嫌な感じがする。俺はこの感じを知っている。  
そのときだ。後ろから声を掛けられた。  
 
振り向くとそこに声の主である男の子がいた。まだ八歳位だろうか。  
こんな子供が近寄ってくる気配に気付かないとは。修行が足りない。  
密かに絶望する俺にその子は同じ言葉を繰り返した。  
「どうしたの、お兄ちゃん?」  
にっこりと微笑んだ。可愛い声。  
「道に迷っちゃってね。町まで行きたいんだが――君はこのおうちの子かい?」  
つられて俺も微笑を浮かべて答えた。  
人が住んでいるならラッキーだ。それに会えば嫌な感じが当たっているか判るだろう。  
「それならこっち――ついて来て」  
「おっ、おい?」  
返事も待たずに駆け出していった。案外、早い。俺も慌てて後をついて行く。  
 
「おい、そんなに走ると転ぶぞ」  
「平気ッ!」  
やれやれ。では  
「実は荷物が重くて走れないんだ。ゆっくり歩いてくれないかな?」  
お願いしてみた。――通じた様だ。  
それでも俺の周りをぐるぐる回っている。まるで仔犬に懐かれた様だ。悪い気はしない。  
黒目勝ちの大きな眼が好奇心でキラキラしている。  
「お兄ちゃん、どこの人?」  
「埼玉県。東京の北の。知ってる?」  
「うん!」  
「君はあのお屋敷に住んでるのかい?」  
「…うん」  
「おうちの人は?」  
「…お母さんは僕が産まれた時に死んじゃったって。お爺ちゃんがいたけど、何年も前に  
 やっぱり死んじゃった。今は世話をしてくれる人達がいるけど」  
悪いことを訊いてしまったようだ。では父親は?――いや、訊くまい。  
「お兄ちゃんは?」  
「お姉さんが一人。双子だから同い年だけどね。お母さんは俺達が君よりも小さい時に  
 死んじゃったよ。病気でね」  
 
俺達の母は産みの親ではない。  
父親と不倫関係にあったらしい。別れ話のこじれからか、まだ乳児だった俺達を誘拐  
した。どうしてそんなことをしたのか、もはや判らない。  
判っているのは、唯一つ。俺達を愛してくれたこと。  
朝から晩まで働いていた。おそらく身元を隠した為、低賃金の仕事しかなかったのだろう。  
その結果が、過労による心不全で死亡。俺達三人家族の世界は崩れ去った。  
母がアパートの扉に幾重もの厳重な錠前をつけた為、いや何より周囲の無関心の所為  
で残された俺達姉弟は死にかけた。  
すんでの所で救出された俺達は、だが収容された病院を抜け出した。  
誰も信じない。俺達二人だけで生きていこう。だが幼児二人にそんなことは出来なかった。  
結局、俺達はL・X・E―超常選民同盟―の最底辺の構成員、信奉者となり生き延びた。  
共にホムンクルスになることだけを目的として。  
錬金術により作り出された人喰いの怪物、ホムンクルス。  
同じ錬金術の産物である武装錬金か、ホムンクルスによる攻撃でしか葬り去れない  
半不老不死の怪物。L・X・Eはそのホムンクルスの共同体だった。  
手柄を立てれば、俺達は望みを叶えてホムンクルスになれる。  
やがてその機会は訪れた。  
ホムンクルスと敵対する錬金戦団の戦士が、俺達が通う学校――私立銀成学園高校  
に潜入してきた。それを排除すれば!  
そして俺達は錬金の戦士――武藤カズキ達に武装錬金で戦いを挑み、敗れた。  
敗北は死を意味する。筈だった。  
だが武藤は  
「かわいそう……寂しかった?」  
あの子に話し掛けられて我にかえった俺は答えた。  
「……うん。でも俺には姉さんがいたし…それに助けようとしてくれた人もいた」  
 
助けようとしてくれた人。武藤のことだ。  
だが俺は彼を、俺達姉弟の『扉』をあけようとしてくれた彼を後ろから刺した。  
「でも俺は自分の弱さから、その人を傷つけてしまった」  
「…お兄ちゃん…」  
いかん。子供に聞かせる話じゃない。  
「だから、その弱さを断ち切る為に、こうして剣の修行をしているのさ」  
担いだ袋入りの木刀を示しながら、出来るだけ明るい声で告げた。  
「…でもいいな。お兄ちゃんにはお姉さんや友達がいるんだ」  
友達。彼は俺をそう思ってくれるだろうか、この俺を。  
「君にだって学校の友達、いるだろう?」  
「ううん、学校は行ったこと無い。絵本やマンガで見たことあるけど」  
何か理由があるのか、それともさっきの嫌な感じが――  
「…それに学校に行ったって、きっと僕は一人…」  
「そんなことはないさ。必ず誰かが君に手を差し伸べてくれる。武藤のような――」  
そのとき、周囲の木々の中にホムンクルスの気配を感じた。三体、いや四体はいる。  
 
武装錬金を発動しようにも核鉄は持っていない。退院時に錬金戦団に渡してしまった。  
どうする?背負った木刀では役に立たない。  
この子を抱えて逃げるか?無理だ、追いつかれる。  
そう考えながらも、奴らに気付いたことを悟られぬ様、何よりこの子を怯えさせない様、  
歩く速度は変えない。  
すると道を遮る様に大男が立っていた。――こいつもホムンクルスだ。囲まれたか。  
自然、足が止まり、その大男と睨み合うことになった。だが  
「このお兄ちゃんが道に迷ったから案内してただけ」  
脇にいたあの子が俺の前に飛び出すと、大男へ言った。  
「もうちょっと行った所に大きな木の生えてる別れ道があって、左の道を行けば町に  
 出られるから。……さよなら」  
振り返り、今度は俺にそう言うと返事も待たず、今来た道を小走りに戻って行く。  
大男の動く気配にそちらに眼をやった。  
こちらへ歩いてきたが、俺の方を見ることなく脇を通り過ぎた。  
まるで俺がいないかの様な振る舞いだ。  
そして木々の中のホムンクルスの気配も消えた。  
数歩進んでから振り返った。あの子も一瞬振り返ったが、そのまま戻ってしまった。  
 
あの子の指示通りに歩き、なんとか日暮れ前に町に着くことが出来た。  
運良く宿―小さいが感じの良い民宿―も取れた。学生はもう夏休み時期なので心配  
していたのだが。  
風呂に入り、夕食を済ませて部屋に戻り、一息つく。  
やはり気になるのは、山道で会ったあの子のことだ。  
あの大男はホムンクルスだ。俺は長年L・X・Eで間近に見てきた。間違える訳がない。  
そして、あの子の言っていた『世話をしてくれる人達』とは奴らのことだろう。  
奴らの雰囲気からして『心優しきホムンクルスが身寄りのない子供を育てている』という  
美談ではない。  
考えた挙句、俺は携帯電話を取り出した。銀成学園高校・寄宿舎の管理人室の番号  
を呼び出す。キャプテンブラボーに相談しよう。  
 
キャプテンブラボー。武藤達の直接の上司。戦士長という役職らしい。  
そして武藤達との戦いの結果、入院した俺と姉さんの事情聴取と、おそらくは護衛も  
してくれたのだろう。L・X・Eが口封じを考えない訳がない。  
いつも身に着けている目深に被った帽子と襟が目元まで覆うコートの所為で、顔貌も  
表情も判らないが、信奉者であった俺達姉弟を親身に扱ってくれた。  
そして俺が退院した朝のことだ。挨拶をして出て行こうとする俺を呼び止めた。  
帽子を取りコートの襟を下げ、素顔を見せて言った。  
「俺の表の顔は寄宿舎の管理人だ。もし困ったことが起きたら連絡をくれ。  
 ただしこのことは他言無用だ。――何故ならその方がカッコイイから!!」  
組織としては俺達信奉者崩れに正体を明かしてはならないのだろう。  
そのとき、武藤に似ている気がしたのを覚えている。顔ではなく、人柄が。  
 
だが電話に出たのは別の声。その声が管理人は都合により長期不在と告げた。  
礼を言って電話を切ると、俺は途方に暮れた。  
仕方ない。俺は定期連絡を入れる戦団の電話番号を呼び出した。  
俺を尋問した戦士に言い忘れたことがある。直接、話したいので連絡して欲しい。  
既にL・X・Eが壊滅したことは、以前の定期連絡時に聞いていたので無理があるとは  
思ったが、他に手が無い。  
幸い途中で電話を替わった女性―若いが少し冷たく感じる声―が約束してくれた。  
俺は念の為、この民宿の名前と電話番号を伝えておいた。  
 
翌朝、もう一泊する事と電話があるかもしれない事を頼んでから宿を出た。  
町であの子と洋館について尋ね歩くつもりだった。こんな時、L・X・Eの信奉者時代に  
身に付けた人を惹きつける力が役に立つ。所詮、上っ面の力だが。  
だが日暮れまでかかって判ったことは、そう大したものではなかった。  
まず、あの子については存在自体、誰も知らない。  
洋館についても戦争前からあり、それでも10年位前までは人が住んでいたようだが、  
今は判らない。  
そもそも、あの洋館へ至る山道は現在では全くといって良い程、使われていない。  
 
収穫の無さに疲れて民宿に戻ると、なにやら奥の方が騒がしい。そこへ宿のおばさんが  
通りかかり、俺を訪ねてきた人がいると告げた。  
後をついて行くと、ツナギ姿のキャプテンブラボーと宿の主人や他の泊り客達による宴会  
の真っ最中だった。なんか盛り上がってるし。  
本当に武藤に似ている。真に人を惹きつける力とはこれだろう。  
 
部屋に戻ると、挨拶抜きでブラボーにあの山道での出来事を説明した。  
先程とは打って変わり、真剣な表情で話を聞くブラボー、だが妙な翳りを感じる。  
何かあったのだろうか?  
「――以上から理由は不明ですが、あの子が危険な状態にあることは間違いないと  
 考えます。至急、助けに向かうべきです!」  
俺はそう話をまとめた。  
だがブラボーは頷きつつも、こう言った。  
「成る程。だが秋水、その子供もホムンクルスである可能性は考えたか?」  
 
「その可能性はありません」  
俺は即座に否定した。  
「俺はL・X・Eでホムンクルスを散々、見ています。見間違いはありません。  
 それにあの子がホムンクルスなら、囲まれた際に襲われていたでしょう。  
 お願いです、助けたいんです!!例えあの子が俺達みたいな信奉者であっても」  
そう言うと俺はブラボーの眼を見詰めた。  
しばしの間の後、ブラボーはにっこり笑った。  
「判った。実は、最近あの場所にホムンクルスの共同体があるという情報を掴んでな。  
 最も子供の情報は無かったが。その為、こうして直接来たんだ。  
 …それにしても千歳の情報は無駄がない。たまたま戻っていた時で良かった」  
最後の千歳という名に覚えは無かったが、きっと電話を受けてくれた女性のことだろう。  
「ブラボー、もう一つお願いがあります。  
 俺も連れて行って下さい。核鉄が無くても、陽動位は出来ます。  
 俺はあの子を助けたい。……武藤が俺達にしてくれた様に」  
そういって俺はその場に平伏した。  
ブラボーは黙って懐から何かを出した様だ。核鉄だった。シリアルナンバーはLII(52)。  
「宿の人達が寝入ってからここを出る。それまで少しでも身体を休めておけ。  
 …さてと、先に風呂に入らせてもらうぞ」  
「ありがとうございます!」  
俺は再度、平伏し礼を述べる。そしてふと思いついた事を訊いた。  
「そういえば武藤は元気ですか?あれ以来、姉さんにも連絡を入れていないもので」  
翳りが濃くなった気がした。  
「さあ、俺もしばらく戦団本部にいたので判らないが、あいつらのことだ。…大丈夫だ」  
 
洋館の門前についたのは午前三時少し前だった。  
建物の構造や相手の人数が判らないままでは危険だが仕方ない。  
まず周囲を一回りして僅かでも情報を集めようとしたときだった。  
玄関が開き、誰かが出てきた。俺とキャプテンブラボーは即座に物陰に隠れる。  
大人が8人。全員かなり大柄だ。  
前から3番目の一際大きな男―あの山道で会った男―が何かを肩に担いでいる。  
あの子供だ。動かない。――眠っているだけだと思いたい。  
そして最後尾の二人は大きな箱―事務机位の大きさ―のようなものを運んでいる。  
大きさの割に重くはなさそうだ。あるいは運び手の体力の問題か。  
彼らは門を出ると、町とは反対方向に歩いていった。もちろん追跡だ。  
やがて道を外れて森の中へ、斜面を降りていく。着いた先はかなり広い窪地だった。  
草野球位なら出来そうだ。周囲は木々に囲まれているが、妙なことにその窪地だけは  
雑草も生えておらず、土が剥き出しになっている。  
彼らは窪地に出ると、そのまま真っ直ぐに進み、ほぼ反対側の端に生えている大木  
の手前で停止した。  
大男がその肩に担いでいた子供を降ろし、木に縛り付ける。  
そして最後尾の二人が運んでいた箱が、その手前3m位のところに置かれた。  
運んできた二人以外の者も手伝って箱を開けようとしている。  
そのとき、肩に手が置かれた。  
 
キャプテンブラボーだった。小さな声で言った。  
「秋水、お前は森の中を迂回して、あの木の後ろに回りこめ。俺がここから飛び出して  
 奴らの注意を引く。その間にあの子を助け、後はかまわず逃げろ。奴らは俺が全て  
 始末する」  
「いえ俺が囮になります。森の中の移動はあなたの方が早いでしょう?」  
同じく小さな声で答えた俺にブラボーは一拍の後、静かに頷く。行動開始だ。  
 
キャプテンブラボーが移動してから、木々に隠れるギリギリまで前進する。  
少しでも早く飛び出す為、また体育館や校庭と違い、地面から露出する木の根の凹凸  
に脚を取られる危険を防ぐ為だ。  
次に俺は核鉄を右手に握り、武装錬金を無音発動させた。  
核鉄が異なるので、武藤達と戦った時の物とは若干デザインが異なる。  
日本刀の武装錬金、ソードサムライX・アナザータイプ(SSX・AT)。  
そのとき、大きな音が響いた。箱は側面が開いて倒れる構造だった。  
その為、中の物が丸見えになった。だがそれは―  
 
まさか。あれはホムンクルス本体の培養器?しかしL・X・Eで見た同じ目的の装置と比べ、  
大き過ぎる。  
ホムンクルス本体。それは胎児を戯画化したような外観を持つ全長3cm程度の物だ。  
生物の細胞をベースに作られる。  
それを人間の脳に寄生させ、ホムンクルスへと変貌させる。  
寄生された人間はその精神を殺され肉体を乗っ取られる。唯一つの例外を除いて。  
それはベースに自分の細胞を使うことだ。その場合のみ精神は殺されない。  
 
俺と姉さんはホムンクルスになろうとして、L・X・Eの手先となり武藤達と戦った。  
二人ぼっちの世界が死で壊されるのが怖かったから。  
世界から見捨てられた二人が、二人だけで、永遠の命で永遠の時を生きる。  
だがそれは自分の弱さを『相手を庇う』ことで誤魔化していたに過ぎない。  
俺達は傷つけられるのが嫌で怖くて、扉に鍵を掛けて部屋に閉じこもっていた。  
扉はあかなかったのではなく、あけなかったのだ。  
その扉をあけて手を差し伸べてくれたのが、戦っていた武藤だった。  
扉の外には冷たさだけではなく、暖かさもあることを教えてくれた。  
だが俺はその武藤を殺そうとした。  
彼の仲間である錬金の戦士から俺達を守ろうとしていた彼を背中から刺した。  
負けるのが、扉をあけられるのが、二人だけの世界を壊されるのが嫌だったから。  
だがそうなってもまだ、彼は俺達を助けようとしてくれた。  
――負けた。弱い心が打ち据えられた。  
だから自身を鍛え直し強くなる為に、弱い自分に勝つ為に、この修行の旅に出た。  
武藤に勝つ為じゃない。俺も彼と同じ世界で生きたい。そして苦しむ人々を助けたい。  
だから俺もあの子に手を差し伸べる。武藤が俺達にしてくれた様に。  
扉をあけて、この世界で一緒に生きていこう!!  
 
先程の箱が開いた音で、あの子も眼を覚ましたようだ。あの大男―奴がリーダーらしい―  
もそれに気付いた。  
妙に芝居がかった動作と、俺にまで聞こえる大声で喋りだした。  
「おお、眼を覚まされましたかな。丁度、準備が整った所です。  
 これより我らが創造主復活の儀式を執り行います!」  
右手を胸の前に置き、上半身を軽く前傾させる。  
「創造主、すなわちあなたのお爺様により作られた我々が命じられたことは唯一つ。  
 若き肉体を用い、復活せしめるよう万全の手配をすること。  
 本来ならもう10年程と思っておりましたが、どうやら錬金戦団に嗅ぎ付けられた模様。  
 そこで今宵、御言い付け通り、この呪われし不毛の『荒野』にて儀式を執り行う次第に  
 ございます!」  
そういうと箱の中にあった装置から何かを取り出した。フラスコと核鉄。間違いない。  
だが復活とは?  
大男が右手のフラスコを高く掲げる。  
「このフラスコの中のホムンクルス本体は我らが創造主の細胞により作られております。  
 これを今からあなたに寄生させます。さすれば我らが創造主は復活します。  
 あなたの身体に創造主の魂が宿るのです!!」  
 
「ふざけるなッ!!」  
貴様ら大人の都合で子供の生命を弄ぶな!  
先程の手筈も忘れ、気付いた時には大声で叫び、奴らの前に飛び出していた。  
手前の四人が変身した。動物型―熊型のようだ。胸部に人間の頭部が残っている。  
手近の一体の、額にある章印を目掛けて掠めるように斬る。  
ここがホムンクルスの急所、動物型は人頭部の額に、人間型は左胸にある。  
ここを破壊されるとあっけなく分解、というより蒸発してしまう。  
まず一体!  
こいつを踏み台に、右手から突っ込んでくる一体を跳んでかわし、その背後に降りる。  
振り向いたソイツの懐に飛び込み頭を横に薙ぎ払う。  
蒸発しながら倒れてくる残骸を避けながら、残りを探す。  
左手から咆哮が轟き、一体が突進してくる。章印目掛けて突きを繰り出す。  
が、直前で身体を沈められ章印の上、熊の喉部にSSX・ATが突き刺さる。  
引き抜く前に熊型ホムンクルスの強力な両腕でSSX・ATを掴まれた。  
反対側からもう一体が突っ込んでくる。  
「かかったな、アホが!」  
喉にSSX・ATが刺さったままの熊が吠えた。  
だが  
「武装解除!」  
SSX・ATを核鉄に戻す。  
何が起きたか理解できない相手の章印の前に核鉄を握った右手をかざし、  
「もう一回!武装!!」  
再発動されたSSX・ATがそのまま章印に突き刺さる。  
そして反対側から突っ込んでくるもう一体の頭部を、引き抜き様に斬り捨てた。  
残り四体!  
 
ここでやっと作戦を思い出した俺は残りの奴らに気付かれない様に子供の方を窺う。  
闖入者にあっという間に半数の仲間を倒され呆然としていた。あの大男もフラスコと  
核鉄を持ったまま、こちらを向いてあんぐりと大口を開けている。  
あの子は?やはり呆然としている。  
そのとき、後ろの木立からキャプテンブラボーが飛び出し、大男を蹴り飛ばした。  
10m以上は飛ばされただろう。  
あの子を木に縛り付けている縄を木ごと叩き切り、戒めを解いた。  
あのシルバースキンというコート状の物がブラボーの武装錬金らしいが、一体どんな特性  
なのだろう?SF小説に出てくるパワードスーツのようなものなのだろうか?  
そんな疑問を持ったことが隙を生んだ。  
一体が俺に突進してくるのに気付くのが遅れた。  
逆方向に自ら跳んで衝撃を和らげるのが精一杯だった。  
「秋水!!」  
キャプテンブラボーがあの子を小脇に抱えながらこっちへ走ってくる!  
来るな!その子を連れて逃げて!!だが叩き付けられた衝撃で声がでない。  
残る二体が進路上に立ち塞がった。  
まずい!  
だが次の瞬間、その二体は既に蒸発し始めていた。片手の突きだけで仕留めたようだ。  
……戦士長とは凄いな。目の前にいるホムンクルスのことも忘れ、そんなことを思った。  
だがそのホムンクルスも俺のことを忘れたようだ。あるいは当面の敵はキャプテンブラボー  
と判断したのかもしれない。  
そのとき、視界の隅で動くものに気がついた。ブラボーに蹴り飛ばされた大男だ。  
こいつはまだ人間体のままだ。  
執念というべきか、ホムンクルス本体の入ったフラスコは無事のようだ。  
目の前のホムンクルスがキャプテンブラボーに飛び掛る。同時に大男が何かをブラボー  
目掛けて投げつけた。  
あれは……フラスコ!!  
ブラボーが突きを打ち込むのと、その反対側の肩でフラスコが砕けるのが、同時だった。  
 
その瞬間に何が起こったのか、良く判らない。  
気付いた時には、キャプテンブラボーは弾き飛ばされ、あの子がこちらに背を向けて  
立っていた。  
「創造主よ!お受け取り下さい!!」  
大男がもう一度、投げた。核鉄だ。  
あの子が右手を伸ばし、受け取った。そしてあの子の声のままで叫んだ。  
「武装錬金!」  
絡み合う茨の卵形の檻。それが第一印象だった。  
その檻の中心にあの子――いやあの子だったものがいる。  
そこに駆け寄ろうとしていたホムンクルス―あの大男が変身したもの―の足が止まる。  
「なんだこれは…?違う」  
それが奴の最期の言葉だった。素早く伸びた茨の一本が奴の章印を貫いた。  
「お母さんの仇……それとオマエラ、嫌いなんだよ。獣臭くて」  
嘲りを含んだその声は、それでもやはりあの子だった。  
 
そして振り向いた。  
「有刺鉄線の武装錬金、エクスパンション・マッドネス」  
そう言って、にっこりと笑う。笑顔も変わらない。  
「お爺ちゃん、いや同時にお父さんでもあるのかな……失敗したみたいだね。  
 僕の精神を殺せなかったみたい。でも記憶と知識はちゃんともらったよ」  
そして俺とブラボーを交互に眺めると続けた。  
「お兄ちゃん達、錬金の戦士でしょ、錬金戦団の?  
 お爺ちゃんも錬金戦団にいたんだよ。  
 ホムンクルスの研究をしてたんだけど、永遠の命に取り付かれちゃったみたい。  
 戦団を抜けて研究を続けて、けど完成した時には歳を取り過ぎていて。  
 それで僕がもっと大きくなるのを待って蘇るつもりだったみたい。僕の身体を使って」  
笑い顔を収める。  
「結局――錬金術に進んで関わる者もまた、悪人か狂人のどちらかだけ」  
そして再びにっこりと笑う。  
「今でも人間に戻ることは出来ないんでしょ?だから、お兄ちゃん達。僕を退治しないと。  
 さもないと、これから町へ降りていって……食事をするよ?お腹空いちゃったし。  
 ――さ、 ど う す る ?」  
 
一度ホムンクルス化した人間を元に戻すことは出来ない。そんなことは俺でも知っている。  
そしてホムンクルスは人間を喰らう。それは止められない。それも知っている。  
だから――だから人間に害を成すホムンクルスは殺さねばならない。それは判っている。  
けれど  
この子を殺す?自分の意思でホムンクルスになった訳じゃない。この子も犠牲者だ。  
しかし、このままではこの子は人間を襲うだろう。その人達を守らなければならない。  
俺はその力を、戦う力を持っている。でも  
逃げられない、檻の中に閉じ込められた子供。この子には扉すら無かった。  
……俺は、どうしたら良い?武藤、お前ならどうする?  
 
「秋水」  
キャプテンブラボーの声。  
「後は俺がやる」  
決意を込めた声。そしてあの子に向けて言った。  
「キミの所為じゃない。だがキミはもはや人々に死と恐怖を与える存在になってしまった。  
 一人でも多くの命を守ること。その為に俺は戦っている。だから――キミを殺す」  
声が泣いている。  
「待って――」  
俺が言い終わる前に、彼の姿は消えていた。  
上空より声が響く。  
「流星・ブラボー脚!!」  
おそらく落下速度により破壊力を増した蹴り技。それが茨の檻を目掛けて打ち込まれた。  
猛烈な衝撃に檻がたわむ。  
「なにッ?!」  
だがそれだけだった。たわむことで衝撃を吸収したのだろう、檻の中のあの子は無傷だ。  
そしてブラボー目掛け、無数の茨―通常の数倍の太さの有刺鉄線―が飛びかかった。  
 
ブラボーはその全てを弾き返した。  
が、突然地面を割って出た別の茨に手足と胴体を絡め取られ、持ち上げられた。  
即座に茨を引きちぎろうとしたブラボーだったが、様子がおかしい。手足を動かすことは  
出来るのだが、動きが鈍い。先程までの眼で追いきれないスピードが嘘のようだ。  
「この人の攻撃は純粋に物理的な、って言い方でいいのかな?パンチやキックだよね。  
 それなら緩く押さえればOKだよね?がっちり押さえると引きちぎられちゃうけど。  
 身体が浮いているからさっきの猛烈なジャンプも出来ないし。  
 いわば『北風と太陽』、はちょっと違うか」  
そして俺に顔を向けた。  
「さあ後はお兄ちゃんだけ。  
 その刀ならこの有刺鉄線を切り裂けると思うけど、捕まらずにここまで来れるかな?」  
そういって自分の左胸を軽く叩いた。章印の位置だ。  
……やるしかないのか。もう俺しかいない。この子を止め――殺せるのは。  
無数の茨が、鎌首を持ち上げ獲物を狙う蛇の様にこちらを向く。SSX・ATを構えた。  
 
襲い掛かる茨の群を凌ぎながら、それでもまだ迷っていた。  
あの子も疲れてきたのだろうか。有刺鉄線どもの動きは鈍い。とはいえ俺の方も先程  
叩き付けられた衝撃から回復していない。仕掛ける機会は一度だけだろう。  
「どうしたの、お兄ちゃん?さっきアイツラと戦っていたのと随分違うじゃない?  
 手加減して僕を殺し損なったら大変だよ。町へ行って大暴れしてやる。  
 僕の居場所のない世界だ、みんな壊してやろうか?!  
 そして何もない誰もいない世界で唯一人、嘲笑ってやる。この世界の全てを!」  
あの子の声に怒りと――悲しみが満ちる。  
「…さっきアイツを突き刺した時、『お母さんの仇』っていったけど、あれは嘘。  
 お爺ちゃんの記憶にあったけど、お母さん……僕なんて産みたくないって。  
 こんなの自分の子供じゃないって、ずっと言ってた!!」  
その言葉がきっかけになった。俺はあの子目掛けて切り込んでいった。  
同時に心の奥に捻じ伏せていた声が蘇る。  
『もう私の子供じゃないわよ!!』  
俺達が早坂の扉を出てから聞いた産みの親の言葉だ。  
そうだ。その通り。俺は、俺達姉弟はお前らの子供じゃない。  
お前らのことは知らない、知りたくもない。俺達の親は早坂の母さん唯一人だ。  
最初の理由はどうあれ、母さんは俺達を愛して、抱きしめてくれた。  
あの扉の錠前は俺達を閉じ込める為じゃない。  
俺達母子を引き裂こうとする手から守る為のものだ。  
最後の檻を左下から袈裟斬りにし、跳び込む。もう俺とあの子の間を遮るものは無い。  
おだやかで素直な笑みを浮かべて、あの子が言った。  
「もう――殺して」  
俺はどうすればいい?  
俺はどうしなければならない?  
誰か助けてくれ!……お母さん!!  
 
違う。  
俺がどうしたいのか。それが全てだ。人間もホムンクルスも錬金術も、善も悪も関係ない。  
だから  
 
SSX・ATを核鉄に戻した。  
「それは、出来ない」  
俺は答える。  
「君は町へ行く気も、俺達を殺すつもりもないだろう。  
 例え、どんな姿になろうと、君が君である限り、君にそんなことは出来ない。  
 なにより俺は君を殺したくない。だから……  
 だから、一緒に生きていく方法を探そう!  
 きっとある。どれだけ時間が掛かろうと必ず見つかる、いや見つける」  
あの子の顔に戸惑いが浮かんだ。  
「……ありがと。ありがと、お兄ちゃん」  
そして今にも泣き出しそうな顔になる。  
「でもね。誰も殺さなくても、何も壊さなくても、例え人間に戻っても、  
 僕に居場所は無い。  
 誰も僕を必要としない。  
 ――だから」  
 
そのとき、俺の脳裏にある光景が浮かんだ。懐かしい匂いと共に。  
だから俺は右手を伸ばし、それを掴んだ。  
あの子の左胸の章印を打ち抜こうとした有刺鉄線、あの子自身の武装錬金。  
棘が右手に食い込み、血が流れてきた。  
「!お兄ちゃん?!」  
有刺鉄線が消えた。武装解除した様だ。  
「ごめんね、ごめんね!痛かった?!」  
駆け寄ってきたあの子を、俺はひざまずいて抱きしめた。  
「大丈夫」  
こんな痛み、たいしたことは無い。君が、いなくなってしまうことに比べれば。  
「君を必要とする人間はここにいる。――俺がいる」  
あの子が泣き出した。  
 
何時の間にか、太陽が昇り始めていた。足音が近付いてきた。  
あの子から身体を離して立ち上がり、そちらを向く。  
「キャプテンブラボー。お願いです、この子を助けて下さい!  
 ホムンクルスを野放しに出来ないのは判っています。  
 俺も人々を守りたい、でもこの子の命も守りたい!どちらかを選ぶなんて出来ない。  
 何かを守る為に、別の何かを犠牲にするなんて、出来ない!  
 俺達――俺と姉さんは、武藤が助けてくれた。扉をあけて新しい世界を見せてくれた。  
 だから今度は俺がこの子の扉をあけて、新しい世界に連れ出してあげたい!!」  
その場に平伏した。  
「お願いです!キャプテンブラボー!!」  
長い、沈黙。  
「秋水」  
苦しげな声が聞こえる。  
「キミ達姉弟は人間だ。だが、その子はもう――ホムンクルスだ」  
「――ブラボー……」  
俺は力無く顔を上げた。そんな……  
 
「大丈夫。まかせて」  
思いも寄らぬ方向から声がした。  
俺達は声のした方を向いた。神父のような格好をした男が歩いてくる。  
「照星さ――いや、大戦士長!!」  
ブラボーが驚きの声を上げた。そして俺に説明するように続けた。  
「錬金戦団の戦闘部門の最高責任者だ」  
そんなお偉いさんが何でこんな所に?  
俺がその疑問を発する前に、大戦士長は言った。  
「ホムンクルス本体に精神を殺されなかったのは興味深いことです。  
 戦団で保護しましょう。研究中のホムンクルスの再人間化に何らかのヒントをもたらす  
 かもしれません。……表向きは、ね。私を信じて下さい」  
最後の一言でウィンクしたかも知れない。サングラス越しなので良く判らなかった。  
「何故、ここに?」  
ブラボーが問う。  
すると大戦士長は俺の方を向いた。  
「彼に用がありましてね。……早坂秋水君ですね?キミに尋ねたい事があります。  
 丁度良いので、キミもその子と一緒に来てもらえますか?」  
一応、要望の形だが、選択の余地はあるまい。黙って頷く。もとより断るつもりも無い。  
「宜しい。少し歩いた所にヘリを待たせてあります。宿の方は心配なく。  
 それとあの装置も回収しておきましょう。しかし随分大きいですね」  
「あれはホムンクルス本体を20年近く保存するつもりだったから、その為の補器類が  
 嵩張ったみたい。  
 それとここは早く離れたほうが良いよ。ここは良くない場所。  
 お爺ちゃんは復活したらここで何か呼び出すつもりだったみたい」  
何時の間にか俺に隠れる様に立っていたあの子が答える。  
「成る程。『良くない場所』か…。  
 …ああ、装置は私がヘリまで運びますから。大型ヘリにしておいて良かった」  
大戦士長のその言葉と同時だった。巨大な腕としか言いようのない物が中空に現れ、  
例の装置を掴み上げ、運んでいった。  
きっと俺は阿呆のように大口を開けていたのだろう。説明してくれた。  
「あれは私の武装錬金です。それと、防――キャプテンブラボーに核鉄を返して、  
 代わりにその子の核鉄を預かって下さい。キミの傷も治さないといけませんし」  
さっき有刺鉄線を掴む時に落とした核鉄を拾い、ブラボーに返した。  
「ありがとうございました。……色々と」  
「いや、俺は何もしていない。……出来なかった。全てキミの働きだ。ありがとう」  
そう言って、軽く俺の肩を叩く。  
「では元の任務に復帰します」  
そう大戦士長に言って立ち去った。二人の顔に表れた哀しみは何だったのだろう。  
後ろから手を突付かれて振り返ると、あの子が核鉄を差し出していた。  
それを右手で受け取り、左手を差し出す。  
手を繋ごう。  
 
俺達は大戦士長の後に続き、ヘリまで歩いていった。  
「俺に尋ねたい事とは?」  
かつて俺の所属していたL・X・Eの件だろうか。だが俺の知っている事は全て話してある。  
「……武藤カズキについて、キミの口から聞きたいのです」  
その言葉の真意が判ったのは後になってからだった。  
 
ヘリは瀬戸内海・某島の錬金戦団の施設に到着した。  
そして大戦士長は嘘をつかなかった。  
俺はあの子に言った。  
「そういえば名前を聞いてなかった。俺は早坂秋水。君は?」  
「僕の名前は――」  
 
あの時、俺の脳裏に浮かんだ光景は  
  遺体の無い墓に刻む名前を知らず、立ち竦む俺の姿。  
そして匂いは――母さん。俺と姉さんを抱きしめてくれた時の母さんの匂い。  
 
それから大変な事態となり、だが武藤のお陰で錬金戦団100年の闇が払われた。  
その結果、錬金戦団は『ホムンクルスの再人間化の研究』、『核鉄の管理』の二つを  
残して活動を凍結した。  
そしてその時点で残ったホムンクルスはかつての大戦士ヴィクターと共に月へ渡った。  
 
翌年の一月。部活を終え、姉さんと家路についた。  
夜空にあれから何度目かの満月が浮かぶ。  
あの子も月へ行ってしまった。  
「仲間がいるから大丈夫」  
元気に笑うあの子に、それ以上の言葉は不要だった。  
しかし――ヴィクターの娘のヴィクトリアという少女、えらく気が強そうだったが、  
あの子は大丈夫だろうか。  
だが、まあ――  
「どうしたの、急に笑って?」  
姉さんに訊かれた。  
「いや……女性の尻に敷かれた方が幸せなのかな、って」  
「アラアラ。――どういう意味かしら?」  
……まずい。  
「いや別に深い意味は……」  
「本当?どういう意味なの?」  
「いや別に……」  
「そう。――どういう意味?」  
「いや……」  
 
―了―  
 

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