真夜中を目前にした時刻になると、銀星学園寄宿舎では毎夜何かが軋む様な音が響く。
「はぁっ、はっ、はぁ………」
「ふぅー…良かったよ…斗貴子さん」
「………バカ」
そう言いながら、斗貴子はカズキの頬を撫でた。
キスをせがまれたものだと思った彼は静かにくちびるを重ねた。
斗貴子は一瞬目を丸くさせたが、すぐにその目を瞑り柔らかい感触を楽しんだ。
日に日に寒さが増す十二月の夜、武藤カズキとネームプレートが掲げられた部屋での事である。
情事の余韻も残る中、二人は一枚の羽毛布団の中で縮こまっていた。
「もう本格的に寒くなってきたね」
更に強く斗貴子を抱き寄せながら、カズキはそんな事を言った。
斗貴子は心音を確かめるかの様に彼の胸に横顔をくっつけて、答える。
「そうだな…私はもう、夜はキミが抱いてくれないと寒くて眠れないぞ」
「とっととととと斗貴子さん!?」
「フフッ、キミに抱き付いてないと寒いという意味だったんだが、何か別の事でも考えたのか?」
カズキは自分の頬に血が集まってゆくのを感じた。曖昧に笑いながら、答えをはぐらかす。
「あは、はは……斗貴子さんがからかってくるなんて珍しいね」
「偶にはこれぐらい言ったっていいだろう?まぁ聴いてるのがキミだけだから言うんだが」
斗貴子の方は朗らかに笑っていた。
「でも…本当の事だぞ?キミに抱いてもらっていないと眠れないというのは」
今度は、斗貴子が照れだす。
「ここ一年はキミといっしょに寝てばかりだっただろう?それに慣れてしまってな……」
「…俺で良ければ、いつでも一緒に居てあげるよ」
カズキが彼女の背中をさすりつつ言う。
「もう斗貴子さんに悲しい思いはさせないって決めたし」
「…ありがと」
斗貴子は嬉しそうにカズキにしがみ付いた。
しかし流石に裸では寒いのか、斗貴子は軽く身震いした。
「寒い?斗貴子さん」
「ああ、いや平気だ」
そう言う斗貴子から、何故かカズキは視線を逸らす。
「………寒いならさ……その、もう一回…シない?」
思わず呆気に取られた斗貴子だったが、すぐに柔らかい表情になった。
「もう…ホントにしょうがないコだな」
カズキは斗貴子の僅かな膨らみを弄んでいた。
控えめな胸ではあるが、なめらかな玉の肌の感触と乳房独特の弾力が同時に楽しめるとあって、
カズキ個人は大変気に入っている。
「斗貴子さん、心臓バクバクしてる」
カズキの両手の平が、二つの盛り上がりを押し潰す。
「ンン……し、してない方がおかしいだろう……」
「それに、乳首もすっごく硬くなってる。ヨロコんでくれてるんだね!」
「ヨ、ヨロコんでっ…………!」
ヨロコんでない、と強がりたかった斗貴子だが、余りにも今更な気がして止めた。
「…………ヨロコんでる…に決まってるじゃないか……分かってる癖に意地悪言わないでくれ」
「え?別に意地悪してるんじゃないけど」
「……もういい」
「…?………何か腑に落ちないなぁ」
納得出来ないという表情を浮かべつつも彼の奉仕は続く。
親指と人差し指の腹でくりくりと突起を刺激すると、斗貴子の体が僅かに跳ねた。
この姿をもっと見ていたい。
そう思ったカズキは、斗貴子の右の突起にしゃぶり付いた。
「ひゃぁぁっ!?」
「んむ…ちゅぅー……」
「あんっ、は………あっ!」
胸の先端は舌の上で転がされ、上下のくちびるで食まれ、前歯で甘噛みされる。
彼の右手は左胸を覆って動き続けている上に、彼の左腕に腰を捕まえられて逃げる術も無い。
更に、カズキの硬いシャフトが下腹部に押し付けられているので気が気ではない。
斗貴子を取り囲む甘い熱は、彼女に眩暈を起したかの様な錯覚を与えていた。
「…カズ、キ……カズキ?」
名を呼ばれたカズキはにこりと笑って、右手を斗貴子の内股に滑らせた。
べとついた斗貴子の分泌液が、カズキの指全体に付着する。
「うぅぅ…」
「斗貴子さん、また一杯濡れてるね。シーツまでぬるぬるにして感じてくれて……俺…嬉しい」
「キ、キミが胸に色々した所為じゃないか…!」
「そうそう、胸触っただけでこんなに濡らしてくれるんだもん。斗貴子さんってビンカンだよね」
「そんな事無――はひっ!きゅ、急に撫でるなぁ!!」
内股全体に馴染ませるかの様に、カズキは愛液を伸ばしていく。
「はっ、はああ、ぁああん……そこ、は……」
「ここは気持ちいい所、なんでしょ?大丈夫、ちゃんと分かってるよ!」
「バッ、違う!あっ、ふあ、ぁ…」
カズキの手が内股を這う度に、斗貴子の小さな花弁が幾度もひくついた。
斗貴子は何とか快感に耐えようと顔を真っ赤にして全身を強張らせている。
だが彼女は、その様子の愛らしさがカズキの情欲を掻き立てる一因になっているとは知らない。
「あぁっ、やぁあ……ひゃんっ!………ふひゃ…」
「………そろそろ…入れて、いい?」
斗貴子のその場所には、未だに毛が生えていない。無毛症というやつだ。
だから、カズキの視線を遮る物は何もないのだ。
「あ、斗貴子さんのお汁に混じって俺の精液も流れ出てる。さっきのヤツだね……
斗貴子さんのビラビラしてるとこ、ピンク色に充血しててキレイ…だけどエロスい………
そう言えば、もう何回もシてるのに割れ目も殆ど閉じてるなんて、斗貴子さん凄いよ!」
「ッのバカ!!いちいち実況するな!何でそーゆー事平気で言うんだ……」
「ハハハ、ゴメンゴメン。じゃあ早速……」
カズキの亀頭が斗貴子の中に侵入を始める。
「カぁ、カズキぃ…もぅ……やぁあん……」
「まだまだ入れ始めたばっかりだよ、斗貴子さん?」
子宮口に先端が到達すると、斗貴子の背中が小さく反れた。
「……ここが一番感じちゃうんだよね、斗貴子さん?」
「え!?どどどうしてそれを!!!」
「斗貴子さんの反応見てたらバレバレだって」
羞恥に染まる斗貴子の顔を見て、カズキは心が満たされた様な気分になる。
別に嗜虐趣味がある訳でなく、単に彼女のそういった表情が好きなのだ。
「恥ずかしがらなくてもイイって。斗貴子さんのそんな所も可愛いから」
「キミがそう思ってくれるのは…嬉しいがっ………!」
「が……何なの?」
「…私が…エロスな女みたいじゃないか…キミにそんな事言われたら…………」
別にいいじゃない、と真顔でカズキが答えた。
「俺は斗貴子さんの事が好きだから、エロスな斗貴子さんも大好きだよ」
「ッ!!………そ、そうか?」
「ウン、キレイだし可愛いし。
それに、エロスっていっても斗貴子さんは他の人とこんな事しないでしょ?」
当たり前だ!と斗貴子は叫んだ。
「キミ以外の男と寝るなんて……考えただけでも吐き気がする!」
斗貴子は眉間に深い皺を刻みつつそっぽを向いた。
カズキは背中に冷たいものが流れるのを感じていた。
カズキの知る限り、嫌悪感を前面に押し出した時の斗貴子程恐ろしいものは無い。
「と、とにかくさ。俺は斗貴子さんのそんなところも好きだから、気にしないでよ」
緩々と顔の緊張を解しながら、本当にか?と斗貴子は聞いた。
「当たり前じゃない!」
「…ありがと……」
斗貴子は熟れたリンゴの様な色を宿しつつ、カズキに抱きついた。
「じゃ、じゃあ早くしてくれ……私…もう」
「あぁゴメン、入れたまま動いて無かったね……よし、動くよ」
カズキも斗貴子の背中に手を回し、がっちりと斗貴子を固定すると、徐々に腰を動かし始めた。
「うぁぁ…カズキの……熱いな…」
「斗貴子さんの中もね…滅茶苦茶押し付けられて、凄く気持ちいい」
「バカァ…ふ、はあぁ…」
カズキの背中に爪が立てられる。しかし別に痛くは無い。
カズキももう慣れているし、彼女が気持ちよさに堪らずそうしているのだと思えば、
それもまた彼にとっては嬉しい事だ。
「斗貴子さんの奥、きゅんきゅんしてるのが分かるよ…もうイキそうなんだ?」
「んあ、だっだってぇ!キミが、キミの動きが激しいからぁ!!ひゃっ、くあぁ!!」
「それじゃあ一緒に、ね?」
「んん、分かった……」
斗貴子の返事を聞くや否や、カズキはピストン運動を速めた。
粘液の音が部屋中に響いている。
「きゃっ!?カッ、カ…ズ……ゥ…」
斗貴子は最早声を出す事も出来ないらしい。その代わり、斗貴子の蜜壷は一段と強く締まった。
「っ…と、斗貴子さん…そんなにされたら………出ちゃうよ斗貴子さん…」
カズキの我慢空しく、丁度肉茎が全て収まる位置で精は放たれてしまった。
それを受けて、斗貴子も無言のまま達した。
斗貴子の中が精液を欲しているかの様にカズキのペニスを搾る。
「斗貴子さん……やっぱり一番奥の子宮の所……感じるんだね。
射精の勢いが当たっただけでイッたんじゃない?」
斗貴子は息も絶え絶えだったが、ジト目でカズキを睨め付けると、
「私が…その前から……声も出なかったの……知ってて言ってるだろ…」
とだけ言った。それから、ふっと微笑んでカズキにキスをした。
くちびるが離れた時には、二人ともが微笑んでいた。
「…これで温かく眠れそうか?」
「えへへへ、気持ち良かったよ」
「……………やっぱりキミはバカだ」
やはりお互いに抱き締めあいながら、二人は語らう。
「全く、キミの元気さときたら……。ピルを飲んで無かったらもう何人子供が出来てる事やら」
「斗貴子さんとの子供!?」
「はしゃぐな!」
だってぇ、とカズキは明るく続ける。
「斗貴子さんとの子供なんて…嬉しすぎるよ!」
「まだ早い!私達は高校生だ!」
「じゃあいつになったらいいの?」
率直にそう問うカズキに、斗貴子は答えに詰まってしまう。
「そ…それは…………………とにかく今は駄目だろう!育てる場所もお金も無い!」
「…それは……そうだけどさ…」
やっと言いよどむカズキを見て、斗貴子は内心ほっとする。
「まぁその話は置いといて、だ。カズキ」
「ん?何?」
「……最初の話に戻るが、もういいのか?」
「え?どういう事?」
「……もうシタくは無いのか、と聞いてるんだが?」
カズキはぎょっとして、耳まで真っ赤になった。
「と、斗貴子さん…」
「ちゃ、ちゃんと正直に言いなさい。………我慢は体に良くないぞ」
「じゃあ…もう一回だけ……」
カズキは後頭部を掻きながら斗貴子の肩に触れた。
「それしても……斗貴子さんって、ホントにお姉さんっぽいよね」
「急になんだ…と言うか、どういう意味だ?」
「んー、普段は色々俺の面倒見てくれたりしてくれるのに、
ベッドの上とかここぞという時には俺の好きにさせてくれる所とか!
斗貴子さんって俺の事しっかり立たせてくれてるなぁって」
「………」
表情にこそ出さなかったが、斗貴子は心中で呆れていた。
斗貴子はカズキを立たせようと思って身を引く訳では無いからだ。
カズキは自分自身の意志の硬さというものが分かっていないらしい。
「……まぁいいか」
「? どうしたの斗貴子さん?」
「なんでもない」
好意なのだから文句は言うまい、と斗貴子は決めた。
何よりも――
「そう。じゃあ、始めよっか」
眩しい程に笑っているカズキに、興が殺げる様な事を言いたくなかったのだ。
「ああ」
つられて、斗貴子も笑った。
暑すぎず、寒すぎず。二人が居る部屋の温度は、常にそれぐらいに保たれている。
冬の夜に―――了