白熊スキー場から戻って2週間が経過した。
季節は3月の初めに入り晴れの日中は春の暖かさを感じるようになった。
金曜日の授業は14時までで生徒達は早々に寄宿舎に戻っていた。
「カズキ。今日と明日、明後日暇か?」
「ん?別に用事はないけど何?」
寄宿舎の廊下でカズキは斗貴子にいきなり質問されてきょとんとしながら答えた。
「いや、ちょっとした旅行に行こうと思ってな。」
「旅行?この前みんなでスキーに行ったばかりじゃん。それに今の俺の小遣いじゃあまり遠出できないよ?」
「金の心配はするな。私のわがままだ。全額出す。」
「でも女性におごらせるってのも・・・。」
すると斗貴子は少し自慢げに言い放った。
「金?フフフ。私には津村家の遺産と錬金戦団の給料でこう見えて結構財産があるんだぞ?」
「ん〜。じゃあどうせならみんなも誘って行こうか?」
「いや、二人だけで行きたいんだ。嫌か?」
考えてみれば二人だけの旅行は始めてであった。
「わかった。じゃあ二人だけで旅行に行こうか。」
「よし!!じゃあ早く準備を!!すぐに出るぞ!!」
カズキは急いで自室に戻って荷造りを始めた。
30分で支度を終えて二人は寄宿舎を出発した。
寄宿舎から歩いて2分の銀成学園寄宿舎前バス停からバスで20分で銀成駅まで移動。
二人は東京方面への列車に乗り継いだ。
二人を乗せた列車は夕焼けの中東京を目指して進んでいく。
「そういえば斗貴子さんまだ聞いていなかったけど今回の旅行って目的地はどこなの?」
「そういえばまだ言っていなかったな。このあと列車を乗り継いでJR浜松町駅まで行くんだ。それから今度は
歩いて東京竹芝桟橋まで行って、そこから夜行で運航する船に乗ることになる。」
「ってことは行き先は島なの?」
「ああ。目的地は伊豆諸島に浮かぶ赤銅島。私の生まれ故郷だ。」
赤銅島・・・。それは津村斗貴子の故郷にしてホムンクルスによる捕食行為と、その武装錬金の特性により
引き起こされた土石流などの災害によって小学生の子どもを中心に人口の半数が亡くなった悲劇の島だ。
カズキはその島で起きた悲劇を12月の寒い晩に照星から聞いていた。
だがまさか斗貴子本人にその島に案内されるとは夢にも思っていなかったのでビックリした。
「何で俺と二人で斗貴子さんの故郷へ行こうと思ったの?」
「毎年お盆にお墓参りに戻っていたんだが、去年のお盆はヴィクター騒ぎでそれどころじゃなかっただろ。
それでお墓参りがてら君を亡くなった家族の墓前で紹介したいと思ってな。どうだろう。」
「えぇえええええええええ!!」
「列車内で騒ぐな。他の乗客の迷惑だ。」
「俺を紹介って・・・・。」
「生前貴蔵ひいおじい様は『斗貴子が運命の人と決めた男性にあったならばすぐにわしに紹介しなさい。』
とよく言っていたしな。つまり私は君を運命の人と思っているわけだが・・・。嫌か?」
カズキは顔を真っ赤にして大声で答えた。
「いえ!!大変光栄であります!!」
「だから列車内でさわぐな!!」
すでに日も暮れた夜10時過ぎに東京竹芝桟橋から赤銅島へ行くの船に乗り込んだ。
斗貴子は一番安い2等の3倍近い運賃を取られる特等室の乗船券を購入していた。
2等はいすに座ったまま眠るか床に雑魚寝することになるが、特等室は非常にグレードが高い。
定員二人の個室でありベッドルームにシャワー、ベランダまでついている。
カズキは本当に斗貴子は金銭的余裕があるのだと感心した。
「見て見て斗貴子さん!!東京がもうあんなに小さく見えるよ!!」
カズキはベランダから東京湾を眺めて言った。
「カズキ!!明日の早朝には赤銅島に到着するから早く眠ったほうがいいぞ。」
「すぐに寝ちゃう?それとも・・・・」
そういいながらカズキはカバンからコンドームの箱を取り出した。
「馬鹿・・・・。明日は早いから少しだけな・・・・。」
真っ暗な海の中、船は一路赤銅島へ向けて進む。
午前6時過ぎにカズキと斗貴子は目を覚ました。
二人とも昨夜の行為の途中に眠ったらしくふとんの中で全裸だった。
時間が早いのでまだ船内の食堂は開いていないので、昨晩浜松町駅のコンビニで購入したもので朝食をとる。
カズキはサンドイッチと500mlパックの青汁、斗貴子はおにぎり2個と500mlパックのコーヒーだ。
「斗貴子さんっておにぎり好きだよね。」
「ああ。一番好きなのはやはり梅だな。日本的なおにぎりには一番合う。」
「俺はえびマヨネーズが好きだな。えびの食感とまったりとしたマヨネーズが最高!」
「最高か・・・。私の最高は遠足や社会見学の日にお母様が作ってくれるおにぎりだったな。なんというか
娘に対する愛情がこもっているようで美味しく感じた。今となっては二度と食べることが出来ない味だ。」
「斗貴子さん・・・・。」
「お客様にご案内いたします。当船はあと10分ほどで赤銅島桟橋に到着いたします。」
翌朝午前7時過ぎに船内に案内放送が流された。
「カズキ。私は着替えるから少し部屋から出ていてくれないか?」
「何を今更。今まで何回も夜を共にして裸が恥ずかしいわけじゃないでしょ?」
「いいから!!出ていないとぶちまけるぞ!!」
そういうと斗貴子は先日スキー場で再び手に入れた核鉄を取り出した。
本当にぶちまけられそうな恐怖を少し感じたカズキは大人しく部屋を出た。
5分後に斗貴子から入室許可が下った。
部屋に入ったカズキは斗貴子の姿に目を奪われた。
白い蓮の花の模様の入った藍色の和服に赤い帯、白い足袋に黒い草履。
まるで赤銅島に住んでいたころのような純和風の服装だ。
「赤銅島に戻るときはなるべく和服を着るようにしているんだがどうだろう?」
「斗貴子さん・・・。きれいだ。まるでお人形みたいにかわいいよ。」
「そうか、ありがとう。でも顔に傷のあるお人形は売り物にならないぞ。」
「斗貴子さんは俺のものだからそんなこと関係ないよ。」
そういってカズキは斗貴子にやさしく微笑んだ。
斗貴子もその言葉に思わず顔を赤くする。
「そろそろ下船の準備だ。ほら島が見えてきたぞ。あれが私の故郷の赤銅島だ。」
午前7時15分に船は赤銅島桟橋に到着した。
船はこのまま伊豆諸島の島を回って八丈島まで運航する。
「ここが赤銅島か。なんだか静かな島だね。」
「当然だ。赤銅島は現在は600人程度しか人口がないからな。」
「それに空気も澄んでいるし車の音もしない。」
「この島には自動車はないからな。周囲6kmだから自転車か徒歩で事足りるんだ。」
「へ〜。車で溢れかえってる首都圏とは大違いだ。」
「だから私は今でもこの島が大好きだ。さあ行くぞカズキ。」
二人は桟橋から東に歩いた。
少し歩くと商店などの建物が見えてきた。
「おや?斗貴ちゃんじゃないか?お盆に帰ってきてないからもう帰ってこないのかと思ったよ。」
「あ、木村のおじさん!お久しぶりです。お盆には事情があって帰れなかったのでさっきの船で帰ってきたんです。」
斗貴子に話しかけてきたのは木村と言う地元の漁師のおじさんだった。
がっちりした体つきでちょうど戦部が50代になったらこんな感じになりそうだ。
「おやぁ?今回は男連れかい?斗貴ちゃんも大人になったねぇ。」
「はじめまして。武藤カズキと言います。」
木村のおじさんにカズキが自己紹介をする。
「ハハハ。少年!いい顔をしているな。若い頃の貴之にそっくりだ。」
「貴之?誰ですか?」
カズキが不思議そうに尋ねる。
「私の父だ。7年前の例の事件で亡くなった。」
「で?二人はどこまでいったんだ?キスか?それとももうヤったのかな?」
突然そんなことを聞かれたのでカズキも斗貴子も顔を赤くした。
「とりゃぁああああああ!!」
ドカァ!!ザパァアアン!!
豪快な声と共に家の中から飛び出してきた女性の飛び蹴りが木村のおじさんの背中に炸裂し、蹴り飛ばされた
おじさんはそのまま勢いで海へ落ちてしまった。
「いきなり何するんだかぁちゃん!!ペッペッ!!海水飲んじまった!!」
「若い女の子にそういうことを聞くもんじゃないよセクハラオヤジが!!」
出てきた女性は木村のおじさんの奥さんらしく恐らく40歳代後半くらいだが、それよりも若く見えた。
「全く!!さっさと漁にでちまいな!!他の家の男達はとっくに出かけてるよ!!」
「へ〜い!!じゃあな斗貴ちゃん。みやげに俺が捕った魚をやるから帰りには寄りなよ。」
そういうと木村のおじさんは海水をポタポタたらしながら水浸しで漁に出て行った。
喧嘩をしていてもどこか生き生きとしている。都会ではあまり見る事の出来ない光景だ。
「悪いね品のないオヤジで。それにしても大きくなったね。斗貴ちゃん今いくつだい?」
「今年の8月で19になります。」
「そうかい。うちの息子もあの事件で死んでなかったらとなりの彼氏さんくらいなんだろうけどね。」
よそ者のカズキでも木村夫婦の息子が7年前のホムンクルスの事件で亡くなったことは理解できた。
それだけにあの事件で理不尽に息子を奪われたこの明るい夫婦を思うとやるせなかった。
「ごめんね湿っぽい話をして。ところでこれからどこへ行くんだい?」
「彼に島を案内して、最後に家族のお墓参りをしようと思っています。」
「そうかい。じゃあ気をつけてね。」
二人は木村家の家を後にしてさらに東に進んだ。
二人は島の東にある赤銅村役場から山手に坂を上り始めた。
集落から少し上に上がると草木も生えない土がむき出しの更地が見えてきた。
更地のど真ん中に石でできた慰霊碑があり花が供えてある。
「ここが赤銅島小学校の跡地だ。ここで多くの子どもが犠牲になった。」
「斗貴子さんの母校・・・。跡形もない・・・。」
「全校生徒42人のうち41人がホムンクルスの捕食とホムンクルスが武装錬金の特性で発生させた土石流
が原因で死亡した。もちろん生き残った1人というのは私のことだがな。」
「あの木村のおじさんとおばさんの息子さんも?」
「木村の夫婦の息子さんはあの事件のとき4年生。生きていたら君と同い年だ。生徒数が少ないので複式学級
だったから私が2年生のときと4年生のときは同じクラスで勉強したよ。おじさんのように豪快で力強く、
それでいて君のように明るくてやさしいとてもいい子だった。頭は少し悪かったけどな。」
「あの事件は斗貴子さん以外にも多くの人に悲しみを残しているんだね。」
「7年前の事件で島民1285名中672名の命が失われた。島民の約半分にもなる犠牲者数だからな。
あの事件の悲しみを知らない者はこの島にはほとんどいない。大抵誰か肉親を失っている」
カズキは怒りで歯をかみ締めた。
「さ、カズキ。いっしょに手を合わせよう。」
「うん。」
1分ほど二人とも無言で手を合わせた後に慰霊碑に書いてある死亡者名を指して斗貴子は言った。
「ここに小学校での犠牲者の名前が書いてあるだろう。」
「うん。教員3名と生徒41名だね。」
「ここに書いてある5年生の西山君が首謀者の人型ホムンクルス、私が最初に殺したホムンクルスでもある。
北原君、南野君も人型ホムンクルスだ。牛部君、氏家校長先生、比留間先生は西山君によって生まれた動物型
ホムンクルスだったそうだ。惨劇のショックによる記憶障害でまったく覚えていないがな・・・。」
「この西山、北原、南野の3人が全てを狂わせて悲しみを振りまいた張本人・・・。」
「もっともあの惨劇を覚えていないから私の記憶の中の彼らは少しマセた子どもたちなんだけどな。」
カズキは12月のあの晩赤銅島での悲劇の話を聞いたときから思っていたことを思い切って斗貴子に尋ねた。
「ねぇ・・・。斗貴子さんは島の人たちを救えなかったブラボーたちを恨んだことはないの?」
「恨む?何故?」
「だって例えば火渡が山奥に1人で木に登っていたホムンクルス西山を不審に感じたり、千歳さんがホムンクルス
西山を核鉄で治療しなかったりしたら運命は絶対にもっと良い方向に変わっていたはずでしょ?」
「だが彼らがいなければ島民や完成していたであろうリゾート地の観光客はみんなホムンクルスに食い殺されて
いた。それにもし大戦士長がバスターバロンで土石流を止めてくれなかったら被害はさらに大きくなっていた。
戦士とて全てを救えるとは限らない。パピヨンの件で救えなかった蝶野の屋敷の21人に苦悩した君なら
よくわかるだろう?私が彼らを恨む筋合いはない。彼らは精一杯やってくれたのだから。」
だがそうは言うものの斗貴子の顔はどこか悲しげに見えた。
「さぁ。行こう。お昼までにお墓参りを済ませたい。」
「うん。わかった。」
二人は元来た道を折り返した。
途中桟橋でお線香と花を買って島の西側を目指す。
歩いて15分ほどで雑木林の中に古いお屋敷が見えてきた。
「あの古いお屋敷ってもしかして・・・。」
「ああ。私の生家の津村家の屋敷だ。少し入ってみるか?」
津村家の屋敷は7年以上放置されたせいでガタガタに痛んでいた。
屋根瓦が落ち、窓が割れ、建物自体もゆがみ、庭は草ボーボー、柱にはつたが巻きついている。
「ここが居間だ。ここにいつも津村の主だった貴蔵ひいおじいさまが腰掛けていた。そこにあるタンスは
お母様の嫁入り道具だったものだそうだ。ここの床板をはずすと掘りごたつになっているんだ。」
「あれ、これは・・・。」
柱には家族の身長を記録した線が引いてあった。
線の横には身長を図った人間の名前と年齢、ちょっとした文章が書いてある。
『貴之18歳高校卒業直後。173cmになりました。そろそろ成長が止まりそうです。』
『斗貴子6歳。121cmになりました。クラスで2番目に大きいです。』
『防人衛20歳。185cmです。本日からこの屋敷で働かせていただきます。』
津村家の人、その屋敷で働いていた人がこの家で生きていた証がそこには確かにあった。
斗貴子は7年前まで母斗志子が炊事をしていたであろう台所から桶を持ってきた。
「カズキ!!これにそこの井戸から水を汲んできてくれないか?」
「OK!!」
カズキが水を汲んでいる間、斗貴子は再び屋敷の中に入った。
この屋敷に入ると家族たちと幸せに暮らしていた頃を思い出す。
斗貴子はもう戻ることは出来ないあの幸せだった日々を思い出して涙を流し始めた。
普段人前では涙を見せない斗貴子だが、1人になると話は別だった。
居間で寝てしまい父におんぶされて寝床まで連れて行ってもらったこと、母を手伝っていっしょに夕食を作っ
たこと、祖父とお風呂に入って体を洗ってもらったこと、祖母と生け花の練習をしたこと、曽祖父の植木鉢を
ふざけていて落として割ってしまって怒られたこと、曾祖母に昔の赤銅島の話を色々と聞かせてもらったこと、
G3ズに庭でおにごっこをして遊んでもらったこと、牛部のおばさんといっしょに曽祖父貴蔵への誕生日
プレゼントのぬいぐるみを作ったこと、牛部少年と使用人屋敷のテレビでウルトラマンのビデオを見たこと・・・。
今でも鮮明に思い出す楽しかったあのころ、突然に理不尽に奪われた幸せな日々、それを思い出すとどうしても
涙が出てきてしまって仕方がなく、カズキに聞こえないように我慢しながら静かに泣いた。
「斗貴子さん!水汲んだよ!!」
カズキの声がして斗貴子は顔を伝っていた涙をふいた。
「よしカズキ。じゃあお墓参りに行こう。墓地はここから少し高台に上がったお寺にある。」
「斗貴子さん。目が赤いよ。泣いていたんでしょ?」
「ああ、まあな。」
「俺の前では無理しないで泣いてもいいよ。俺達は一心同体だろ?」
「泣いて・・・いいのか・・・。ありがとう・・・。」
そういうと斗貴子の目から再び大粒の涙が流れ始めた。
今度は大声今まで我慢していた涙を一気に開放するように泣き始めた。
カズキは泣きじゃくる斗貴子を自分の胸で抱きしめた。
そういえばヴィクターの件で月へ行ったときは斗貴子にこんな悲しみを再び味わわせ、まひろや海外で働く
両親、岡倉、大浜、六舛といった仲間にもこんな悲しみを与えたのだと思うとカズキは少し反省した。
「斗貴子さん。お墓で眠る家族の前では笑っていられるようにここで思いっきり泣いておこう。」
カズキは自分の胸の中で泣く斗貴子の頭を優しく撫でた。
斗貴子は小一時間泣き続けた。
「ありがとう。もう大丈夫だ。そろそろ行こう。」
二人はお墓のあるお寺を目指して出発した。
津村の屋敷から歩いて5分ちょっとでお寺に到着した。
「おや、津村のお嬢さんじゃないか?お盆に帰ってこなかったから心配していたんですよ。」
話しかけてきたのはこのお寺のご住職だ。
細身の体にめがねでとても温和そうに見える。
「ご心配をおかけしました。」
「貴蔵さんたちも喜んでいますよ。おや、今日は殿方を連れてきたのですかな?」
「ええ、家族の墓前で紹介しようと思いまして。」
「ホホホ。彼は凛々しい顔をしておられる。生前の貴蔵さんを見ているようだ。彼とは恋仲ですか?」
「ええ、まあそんなところです。」
「そうですか。きっとご家族の皆様も歓迎しておられますよ。さて、島の東で法事があるので私は失礼します」
そういうと住職は荷物を抱えて寺を出て行った。
津村家の墓はお寺の墓地の一番奥の海の見渡せる場所にあった。
隣に牛部家の墓とG3ズこと長谷川3兄弟のお墓も立っている。
カズキが先ほど井戸で汲んだ水で3つの墓石を洗い流し、斗貴子は花を供えて線香を焚いた。
それを終えると二人はお墓に手を合わせた。
1分ちょっとの沈黙の後に斗貴子は家族達の墓前でカズキを紹介し始めた。
「ひいおじいさま、ひいおばあさま、おじいさま、おばあさま、お父様、お母様、それにG3ズ、牛部のおばさん、
牛部君。去年のお盆は来ることができなくてごめんなさい。彼は私の恋人の武藤カズキです。以前報告した通り
錬金の戦士となって任務をこなしている時に彼を巻き込んでしまったのが最初の出会いでした。彼は太陽のように
明るくて他人のために自らを犠牲にするくらい馬鹿で優しい人です。彼は私に突然理不尽に奪われてしまった
みんなとこの島で平和に楽しく暮らしていたあの頃と同じくらいの幸せを与えてくれました。今の私と彼は一心
同体です。」
斗貴子がカズキを紹介し終えるとカズキが大声で叫んだ。
「武藤カズキと申します!!斗貴子さんは俺がこれからも絶対に幸せにしてみせます!!」
そう言ったカズキの顔は何よりも力強くたくましく斗貴子には見えた。
「ねぇ斗貴子さん。キスをしよう。」
「え!?いきなりどうしたんだ!!」
突然そんなことを言われて斗貴子は驚いた。
「ご家族のみなさんに俺達が幸せだって事を見せて安心させるんだ。」
「・・・・。そうだな。家族の前ってのも少し恥ずかしいが。」
そういうと二人は熱く長いキスを交わす。
『斗貴子。幸せになるんだぞ。私たちはお前の幸せをいつでも願っているからな。』
キスを交わしている最中斗貴子には亡くなった家族の声が聞こえたような気がした。
「みんな、彼とまたお盆に来ます。さあ行こうかカズキ。」
「うん。」
二人はお寺を後にして再び島の東を目指した。
時間はもうすぐ12時だ。
二人は役場の向かいにある食堂で昼食をとった後、赤銅ヶ嶽に登り始めた。
「斗貴子さんどこへ行くの?」
「この上に私の好きな場所があってな。今日は天気が良いから最高だぞきっと。」
赤銅ヶ嶽を登ること1時間ほどでその場所へ到着した。
そこは島を一望できる展望場となっており一面芝生が生えている。
「ここってもしかして?7年前の事件の少し前に写生大会をしたっていう・・・・?」
「そうだ。見ろ。あそこに見えるのが三宅島だ。」
「すごい。島を一望できるし遠くには水平線が見える。」
「ここからの景色は美しくて空にも近く、私の一番好きな場所だ。さてと・・・」
そういうと斗貴子は突然和服の帯をほどきだした。
突然のことでカズキのほうが赤くなってしまう。
「斗貴子さん!!何やってんのいきなり!!ここ外だよ!!」
「心配しなくてもこのあたりは7年前の事件で道の状態が悪くなってからは滅多に人は来ない。」
そういうと斗貴子は着ていた和服を脱ぎ下着姿になった。
そのまま下着にも手をかけようとしている。
「いや、そういう問題じゃなくてそれでもここ外だからね!!ってああ裸!!」
そういう間に斗貴子は生まれたままの姿になっていた。
「君は一度野外で日光を浴びながらしてみたいって言っていただろ?」
「マジすか!!本当にいいの!?」
「ああ。君が望むなら。ただし今回一度きりだぞ。」
それを聞いてカズキはルパン3世のように一瞬で服を脱いで斗貴子を芝生の上に押し倒して乳房を舐め始めた。
「ん・・・。あぁ・・・・。」
斗貴子が感じている様子を確認するとカズキは今度は斗貴子の陰部を刺激し始めた。
「んあぁあ!!あ!!あぁあああ!!」
「斗貴子さんのここピンク色ですごくきれい。あ、ここのお豆がものすごく硬くなってるよ。」
「そ・・・そういうことを・・・あぁあ!!言うな・・・・。」
「このままクリトリスを思いっきりつねったらどうなるかな?」
「やめ・・・ひあぁああああ!!あっあっああああ!!!」
カズキが斗貴子のクリトリスをつねると同時に斗貴子はおしっこを噴出した。
「斗貴子さんおもらし。そんなに気持ちが良かった?」
「馬鹿・・・・。君の手もおしっこまみれじゃないか。」
「ごめんごめん。でも斗貴子さんのおしっこなら汚くないから飲んでも大丈夫だし・・・。」
「そんなわけあるか!!そんな手で私に触るなよ?そこに水道があるから洗って来い!!」
形勢逆転。カズキは調子に乗りすぎたかと少し後悔した。
全裸で水道までトボトボ歩いていく姿は非常に格好悪い。
「失敗したな。斗貴子さん怒ってるから今日はもう駄目だな。」
カズキが水道で手を洗っていると後ろから斗貴子がやってきた。
「斗貴子さん?」
「ここを洗ってきれいにしないとな。おしっこまみれのところに挿れるわけにもいかないだろ。」
そういうと斗貴子は水道で陰部を洗い始めた。
全裸の少女が野外の水道で体を洗っている。何とエロい光景だろう。
「さて、お互いきれいになったところで続きをしようか。」
「うん。」
再び芝生の上に戻った二人は続きを始めた。
「じゃあ挿れるよ。」
「ああ。ん・・・・ん・・・あぁ!!」
「斗貴子さんの入口はさっきの水で冷たかったのに膣内はとっても暖かい。」
「私も・・・・君のものがとても暖かいぞ・・・。」
「じゃあ動くよ。」
カズキは前々から考えていた性行為での必殺技があり、それを試して見ることにした。
「必殺!!カズキスペシャル!!うおぉおおおおお!!」
「うわぁ!!ちょ・・・早い!!あぁあああああ!!」
カズキスペシャルとは錬金の戦士の身体能力を最大限に駆使して超速で腰を動かしてピストン運動する技だ。
しかも腰の動きを単純な前後ではなく色々とパターンを変えてランダムに行うことで相手を一気にイカせると
いうものであるが、実はカズキを鍛えたブラボーもブラボー技の裏奥義として全く同じ技を持っている。
ちなみにそちらは性感ブラボー乱打と言い、千歳のお気に入りである。
「うおぉおおおおお!!どう斗貴子さん!!」
「あぁあああ!!は・・・激しすぎる!!うあぁあ!!あんあぁあ!!」
「そんなに気持ちが良い?」
「はぁ!!ち、膣内で色々な方向に・・・あぁ!!打ち付けられて・・・んはぁ!!」
「ヤバイ!!俺そろそろ限界だ!!あぁああ!!」
必殺カズキスペシャルだが、当然体力の消耗が激しく10分ほどで射精と同時に力尽きた。
「ハァハァ・・・。ごめん斗貴子さん。バテてしばらく動けそうにない。」
「ハァハァ・・・。馬鹿を言うな。こっちだってたった10分で7回もイカされて動けない。」
「はぁー太陽の光が気持ち良いね。」
「全裸で芝生の上に寝転がって日光浴ってのも妙な気分になるな。」
「俺外でしたらいつもよりも興奮した気がする。」
「そうだな。たまには野外でするのも良いかもしれない。」
「斗貴子さんの変態。公然わいせつ。」
「言いだしっぺの君に言われたくないなエロスめ。」
「あ!!しまった!!ゴムつけるの忘れた!!」
「何だと!!妊娠したらどうするんだ!!」
怒った斗貴子と逃げるカズキ。
全裸の追いかけっこのスタートだ。
「バテて動けないんじゃなかったのか!?臓物をぶちまけろ!!」
「ひやぁあああ!!そっちこそ動けてるじゃん!!」
カズキに追いついた斗貴子は今度は逆にカズキを押し倒す。
「ふふふ。今日は大丈夫な日だ。安心しろ。さあ第2ラウンド開始だ。」
そのまま二人の行為は日が暮れるまで続いた。
「やりすぎたなカズキ。激しすぎて腰が立たないぞ。」
「じゃあ俺が連れて降りてあげる。よっこいしょ。」
カズキは斗貴子を抱きかかえて持ち上げた。
「どうお姫さまだっこ?」
「君の腕に抱えられて気持ちいい。けど少しだけ恥ずかしい。」
日没後の暗い赤銅ヶ嶽の登山道をカズキは斗貴子を抱えて下山した。
下山した二人は魚をもらいに木村夫婦の家を訪ねたが、そのまま成り行きで夕食までご馳走になった。
メニューは赤銅島近海で取れた魚介類の刺身、生野菜のサラダ、味噌汁、漬物だ。
「さあさあ。斗貴ちゃんも少年も腹いっぱい食べろ。若いうちは遠慮なく満腹まで喰うもんだ。」
「あんたデリカシーって物はないのかい?斗貴ちゃんくらいのお年頃の女の子は食事量とか気を使うんだよ。」
「ほぉ。お前にもそんな時期があったのか?今じゃあ47の中年ババアだが。」
「失礼な人だね全く!!そんな可憐だった私に求婚してきたのは誰だい?」
「ハハハ俺のことだなそりゃあ!!」
本当にこの二人は面白い夫婦だなとカズキは感じた。
「おい少年。斗貴ちゃんを幸せにしなたっから津村家のご先祖様に祟られるぞ。気をつけろ。」
木村のおじさんはふざけた調子でカズキに言ってきたがそれに斗貴子が切り替えした。
「ご心配なく。私は今十分幸せですから。」
「それに俺と斗貴子さんは一心同体です。だから彼女が幸せなら俺も幸せです。」
「ハハハハ。武藤君も斗貴ちゃんも青春しているね。うらやましいよ。」
「ギャハハハハ!!一心同体と来たか!!そらすげぇな!!」
木村夫婦と話している時間は本当に楽しく、あっという間に帰りの船の出港時間が近づいてきた。
「斗貴ちゃんもう帰っちゃうのかい?津村の屋敷はさすがに無理だろうしうちでよかったら泊まってきなよ。」
「ありがとうございます。明後日には高校がありますから今日の便で帰らないと間に合いませんので。」
「ありゃ?斗貴ちゃん今年で19ってだろ?留年したか?ギャハハハハハ!!」
墓穴を掘った。本当なら数日前に斗貴子は高校の卒業式を終えているはずだ。
木村のおじさんは大爆笑した。このおじさんは本当によく笑う。
「失礼だろあんた!!」
おばさんに頭をひっぱたかれて怒られる木村のおじさん。
「斗貴子さんはテニス部のキャプテンだったから色々と引継ぎとかがあるんです。」
そこへカズキがすかさずフォローを入れた。
「何でぇ。びっくりしたじゃねぇか。」
「本当にね。斗貴ちゃん小学校で成績優秀だったもんね。」
斗貴子は二人をだましている罪悪感を感じたが、自分が高校2年生をしている真実を話すと7年前の事件の
真相まで話さなくてはならなくなる。それは息子を失ったこの夫婦に新たな悲しみを植え付けることに他ならない。
うそをついてごめんなさいとあやまりたい気持ちをぐっとこらえる。
「それでは船が来ますからこれで失礼します。」
「おじさんもおばさんもお元気で。お魚ありがとうございます。」
「おう!!斗貴ちゃんも少年もまた来いよ!!じゃあな!!」
木村夫婦に見送られ二人は桟橋へ向かった。
出航は午後10時30分ごろ。東京竹芝桟橋には翌朝8時に到着する。
「斗貴子さん。赤銅島っていい島だね。」
「それはそうだ。なんていったってここは私の故郷だからな。」
「お盆にまた二人でお墓まいりに行こうね。」
「そのときは水着を持って泊りがけで行こう。津村の屋敷の近くの砂浜は泳ぐのには最高だぞ。」
「それは楽しみだね。あ、船が来たみたいだよ。」
汽笛の合図と共に東京行きの船が入港してきた。
八丈島からいくつかの島を経由して赤銅島に来た船はここを出たらノンストップだ。
翌朝お昼前に二人は寄宿舎に戻ってきた。
玄関の扉を開けるなり岡倉のいつもの声が飛んできた。
「カァアアアズキィイイ!!二人で泊まりでどこに行ってやがった!!」
「どこって斗貴子さんの故郷の島。ご家族に挨拶してきた。」
それを聞いていたまひろが飛び出してくる。
「きゃぁああ!!ついに結婚目前!?ついに斗貴子さんがお義姉ちゃん!?」
斗貴子の胸に飛びついてくるまひろ。
カズキはそこは俺のポジションだと言う目でまひろを見つめる。
「お前ら!!家族って言ってもお墓に手を合わせただけだぞ!!私の肉親は全員災害で亡くなってる!!」
「でも島ってことは離島だろ?墓前でもそんな場所まで紹介しに行くならそれ相応のことだと思うが?」
六舛と大浜もやってきて六舛がさらに煽りだす。さらに岡倉は大声で叫ぶ。
「貴様道中でヤったのか!!何回ヤったんだ!!俺に報告しろ!!」
「んー。まずは船の中で1発、それからその後山の中腹の野外で・・・」
「カズキぃいい!!そんなことを人に報告するな!!脳漿ぶちまけるぞ!!」
「野外プレイだとぉおお!!この最恐エロスが!!わいせつ物チン列罪め!!」
二人の性行為の報告をしようとするカズキに蹴りをお見舞いする斗貴子、恥ずかしい内容を大声で叫ぶ岡倉。
「野外プレイ・・・過激だ・・・・。」
大浜は顔を真っ赤にして呆然としている。
そのころ二階の千里の部屋では剛太と千里がストロベリっていたが、玄関の大騒ぎはこの部屋にも聞こえていた。
「あんの野郎共!!大声でなんて会話してやがるんだ。」
「剛太さんもしかして野外に興味あるの?なんだったら今からそこの林でする?」
「え!?マジ!?いいの?」
「ウソで〜す。恥ずかしいから明るいうちからは嫌よ。」
「なんだウソか・・・。って明るいうちからは!?夜中なら野外プレイOKですか!?」
「声がでかい!!」
顔を真っ赤にした千里の張り手が剛太の顔に炸裂する。
隣の部屋の沙織は剛太と千里の会話を聞いて顔を真っ赤にしている。
そのころ管理人室でも玄関の大騒ぎは聞こえていた。
「青春って良いな俺も・・・。」
そういうとブラボーは携帯を取り出して千歳に電話をかけた。
「もしもし千歳?俺だけどもし今暇だったら・・・」
「任務中!!じゃ!!プツッツーツーツー」
「・・・・。」
今日も埼玉県銀成市は晴天。気候は春らしく温暖で暖かい。
この日からしばらくストロベリーな二人への嫉妬に狂った岡倉エロ大明神閣下様の暗躍によりカズキと斗貴子は
野外プレイ大好きの変態ヤリ魔という噂が寄宿舎中に流される。
同時にほとぼりが冷めるまでまひろに「斗貴子さん」ではなく「お義姉ちゃん」と呼ばれることになる。
さらにブラボーは千歳のそっけない態度にこの日は一日飲んだくれ、翌朝2日酔いで苦しむ羽目になる。
そしてこの日の晩は寄宿舎裏の林で剛太と千歳の声が聞こえてきたのはいうまでもない。