「38度か……これは学校に行くのはやめておいた方がいい」
「はい……ケホッケホッ!」
ベッドに横たわる少女、毒島華花。
彼女は前日、下校中に突然降り出した雨の中を走って帰ってきたためずぶぬれに、そして風邪をひいた。
「しかし参ったな…」
華花の看病をしていた防人は呟く。
「これから戦団の仕事で出なければならんのだが………仕方ない」
防人は携帯を取りだし電話をかける。
「もしもし、俺だが…………あぁ、仕事が…毒島が………あ」
どうやら電話がきれたらしい。
防人は携帯をしまい立ち上がる。
「多分一時間くらいで代わりのヤツがこっちに来るからそれまでちゃんと寝てろよ」
「ケホッケホッ……はい……」
防人は部屋を出る。
三十分もすると華花はウトウトしだす。
(しばらく寝よう……)
華花はそのまま布団をかぶり夢の中へ。
一時間くらいだろうか、華花の額に手の感触。
(誰……)
「………まだ熱は下がらねぇか」
(え………)
聞き覚えのある声、華花は目を開けた。
そこにはタバコをくわえた男がいた。
男は華花の顔をのぞきこむ。
「起きたか、毒島」
「火渡様………」
防人から看病を継続していたのは火渡だった。
「防人から聞いたぜ?雨の中を濡れて帰るとは………バカか」
「す、すいません……」
「とにかくお前が治るまではここにいるつもりだから心配すんな」
実は防人からの電話を受けた火渡はすぐに大戦士長、照星に掛け合い休暇をとった(お仕置きされたが)。
まさに先日と真逆の展開である。
火渡は華花の額に濡れタオルを乗せる。
「しばらくは無理すんな。食いもんは……誰かにつくってもらうか」
「迷惑…かけてすいません……ケホッケホッ!」
「バカ、咳するなら喋るな!」
火渡は華花に軽いでこピンを入れ、体温計を取り出す。
「起きれるか?」
コクリ、とうなずく華花。
火渡は枕元に腰かける。
起き上がった華花の肩をささえ、パジャマに手を入れる。
「ふぇ……火渡様……?」「脇あげろ、体温計が入らん」
強引に腕を持ち上げ体温計を脇に挟む。
華花は真っ赤になりながらされるがままである。
「37度6分……防人が言ってたより下がったな。ん?」
火渡は華花の肩をささえていた手を離す。
手はじっとりしていた。
「おいおい、汗かよ」
「あ、すいません……パジャマ……取ってください……」
「これか?」
火渡は指示された棚からパジャマを取り出す。
「はい……」
「ちょっと起きろ」
「え…?」
火渡は起き上がった華花のパジャマのボタンを外し始める。
「ひ、火渡様………」
「じっとしてろ、着替えさせてやる」
どうやら彼なりの好意らしいがいかんせん相手は少女、華花はとまどう。
「だ、大丈夫です………」
「無理すんなバカ!」
「あの………恥ずかしい……です…」
「今更恥ずかしいもクソもあるか!」
そこで火渡の動きが止まる。
先日、火渡は華花の処女を奪ったばかりである。
それを思い出した火渡の股間がウズく。
「火渡様?」
「な、何でもねぇ!」
火渡は作業を再開、パジャマの上半分を着せ終えた。
火渡は下に手をかける。
しかしさすがに華花は拒絶する。
「あ、あの!ホントに一人で出来ますから!だから下着だけは……」
「うるせぇ!さっさと着替えさせてやるから恥ずかしくねぇだろ!」
抵抗むなしく華花は火渡の手によって着せかえられた。
「ふぇ………」
「はぁ……はぁ……抵抗すんなバカ!」
「で、ですが……」
火渡の顔は心なしか赤くなっていた。
その後小一時間ほど寝ていた華花だが、
『くぅぅ』
というお腹のなる音が聞こえた。
「…………」
「お腹……すきました…………」
「おかゆでいいか?」
「はい……」
火渡は部屋を出て食堂へ向かう。
食堂には岡倉、六升、まひろ、剛太の四人が昼食を取っていた。
「ぁん?テメ、防人んとこの……」
「げっ!火渡戦士長…………」
「んだぁ?その、げっ!てのは」
「剛太、知り合いか?」
岡倉が横槍を入れる。
「あ、あぁ。ほら、前に言ってた俺らのいた戦団ってとこの上司で毒島はこの人の直属の部下……あ」
灰になる岡倉。
無理もない。
「貴様が華花ちゃんのストロベリぶはぁぁぁ!」
と叫びながら火渡に殴りかかり燃やされた。
「厨房借りっぞ」
「あ、こっちです」
火渡を厨房に案内するまひろ。
「岡倉、大丈夫か?」
「…………」
六升は岡倉をつついていた。
「卵……これか」
食材を取り出していく火渡。
独り暮らしなのでこれでも一応料理は出来る。
「あの、華花ちゃんの恋人なんですか?」
灰に……ならなかった。
一瞬燃やそうとも思ったが明らかな興味の眼差しで見つめてくるまひろに敵意は感じなかった。
つまり岡倉は敵意を剥き出しにしていた。
「……そんなんじゃねぇよバカ」
「でも華花ちゃん、いつも話してましたよ?私の上司に炎のような男の人がいる、私はその人に憧れてるって」
卵をわる火渡の手が止まる。
「そうか……」
「もしも華花ちゃんの事が好きならちゃんと好きって言わなきゃダメですよ!」
まひろに説教を食らう火渡。
しかしそうは言われても愛の告白は既に終了、既に他の人間に知られずお付き合いがスタートしていた。
最初はごまかしていた火渡だがまひろの意をつく質問に耐えきれなくなった火渡が怒鳴る!
「るせぇ!もうすでに付き合ってんだよ!」
もちろん食堂にも響く。
灰になった岡倉の目には涙が溢れる。
「泣いてる……」
まひろは笑いながら続ける。
「じゃあもっと素直にならなきゃダメですよ!」
「素直もクソもあるか!」
「えー、だって華花ちゃんが可哀想ですよ!剛太さんだってちーちゃんと付き合ってますし」
「ほぅ……」
「だからもっと素直になるべきですよ!」
笑いながら主張するまひろにふっ、と軽く笑う。
「俺にはんなキャラ似合わねぇよ」
いつのまにか出来たおかゆを持って厨房を出る。
「頑張ってください!」
「何をだよ…」
食堂を出るときに黒い塊が見えたが気にはしなかっあ。
華花の部屋に戻る。
「おい、毒島……寝てんのか?」
ベッドでは寝息をたてる華花がいた。
火渡はテーブルのうえにおかゆを置き、枕元に腰かける。
「ちっ、幸せそうにしやがって…」
顔をのぞきこむ火渡。
すると華花がなにか喋った。
「火渡…様ぁ………大好き…です……」
一瞬ビクッとなる火渡。
しかしそれは寝言、すぐに寝息をたてる華花。
「びっくりさせやがって………」
火渡は華花の頬をなでる。華花は目をさます。
「おかゆ冷めちまうぞ」
「あ、火渡様……」
華花の熱はひいたが、二人の心はいつまでも燃え続けていた。
「好きだぜ、毒島」
「私もです…火渡様」