12月24日クリスマスイヴの夜の深夜23時15分。
クリスマスパーティーも終わって静まり返った斗貴子とカズキは銀成学園高校寄宿舎の玄関にいた。
斗貴子はズボンが無くミニスカ状態の女の子仕様のサンタの衣装を身にまとっている。
対してカズキはトナカイの格好の全身タイツで、鼻に赤鼻のかざりをつけている。
この二人がこんなコスプレまがいの格好をしているのにはわけがあった。
時間は数日前、12月20日の夕食の時間までさかのぼる。
その日の夕食は海のときのメンバー+転校生の剛太と華花の10人で食べていた。
「ねぇねぇみんな!サンタさんにお願いする今年のクリスマスプレゼント決めた?」
まひろの無邪気な発言に周りにいた人間は夕食に出ていた味噌汁を盛大に噴き出した。
「まひろ・・・あなた何年生?高校1年生で間違いないわよね?」
「高1でそれはないってまっぴー・・・。」
千里と沙織があきれながらまひろに言う。
当のまひろは頭の周りに?マークを浮かべて不思議そうにしている。
「え〜?だって今年1年良い子にしてた子にはサンタさんはプレゼントを持ってきてくれるんだよ〜。」
これは我々をからかっているのか、それとも本気で言っているのかとみんな考えた。
だがまひろの性格上本気で言っている可能性が極めて高い。
「まひろちゃん。もう高校生なんだから言っておくけど・・・」
岡倉がサンタの真実について話そうとしたのをカズキがさえぎった。
「いる!!サンタはいるぞまひろ!!きっとお前のところにプレゼントを持ってきてくれるさ!!」
「本当に?やった〜♪わ〜い楽しみ〜♪」
本気でノリノリのまひろにこれ以上みんな何も言えなかった。
食後カズキが自室でくつろいでいると斗貴子がやってきた。
二人でカズキのベットに座って先ほどの件について話し始めた。
「カズキ?妹にあんなことを言って何のつもりだ?あの娘はもう高校生なんだぞ?」
「まひろのああいう純真で無邪気なところを俺は尊重してあげたいんだ。」
「しかしサンタクロースって本当には・・・・」
「プレゼントなら俺が用意する。そうだ、どうせなら俺と斗貴子さんで仲間みんなにプレゼント配らない?」
「ん〜。まあたまにはそういうのもいいか。でもさすがに来年は真実を話したほうがいいと思うぞ。」
そんな感じでカズキと斗貴子がみんなにないしょでプレゼントを配ることになったのだった。
いつのまにかカズキの提案によってサンタとトナカイのコスチューム、大きくて白い袋まで用意された。
時は流れて再び12月24日の深夜。
「・・・・でカズキ?何でサンタが私なんだ?サンタは普通老人だから君だろ?」
「何でって野郎のサンタよりも女子高生のミニスカサンタのほうがかわいいからさぁ。」
「男共はこんな格好の女がいいのか?」
「激萌え!!ふともも最高!!斗貴子サンタ蝶サイコー!!」
カズキは親指を立ててにこやかに言った。
「そうか・・・そういうものか。ナース、スクール水着、ブルマ・・・。男とはわからないものだ・・・。」
カズキはじ〜っと斗貴子のブーツとサンタのコスチュームの間のふとももを見つめている。
「ねぇ?斗貴子さん?ふともも少しさわっていい?」
「馬鹿な事言ってないで本題に入るぞカズキ!!」
二人はみんなにプレゼントを配るために寄宿舎内に入っていった。
ミニスカサンタ斗貴子と全身タイツトナカイのカズキは寄宿舎の廊下を歩く。
「まずはまひろからだね斗貴子さん。そういえば鍵の用意は?」
「抜かりは無い。一昨日戦士長の部屋からマスターキーを“盗み出して”合鍵を作った。」
「それ犯罪・・・。まあ悪意あってじゃないからいいか。」
二人は合鍵でまずまひろの部屋に入った。
まひろの部屋は女の子らしく飾られていた。
部屋の角にはまひろが好きなアイドル歌手「和月伸宏」と女優「黒崎薫」のポスターが貼られている。
当のまひろ本人は軟らかくぬくぬくした毛布に包まって熟睡している。
「んで?まひろの望むプレゼントは?」
男のプレゼントはカズキが、女のプレゼントは斗貴子がそれぞれさりげなく聞き出して用意している。
そのため二人とも異性側のプレゼントの内容はまだこの地点では知らなかった。
「やわらかくてすべすべしててかわいい義姉ちゃんと添い寝・・・・。なあ?この娘はレズなのか?」
「多分違うとは思うけど・・・。んで?添い寝するの?」
「いや、それはきびしいから代わりのものを用意した。」
斗貴子が取り出したのは斗貴子の姿をした30cmくらいでわりと大型の2頭身のぬいぐるみだ。
鼻の傷までしっかり再現されているが、口はへの字で目は黒い丸だけのデフォルメした顔だ。
ある意味では本物よりもかわいらしい姿だ。
おまけにやわらかくてすべすべという条件を満たす素材で作られている。
「これ斗貴子さんが作ったの?」
「カズキ。戦士たるもの裁縫ぐらい出来て当たり前だぞ。」
カズキはそれを言うなら戦士じゃなくて女の子ならだろうとツッコもうかと思ったがやめておいた。
ぬいぐるみの背中には3つのボタンが付いていた。
「斗貴子さん?これは?」
「ああ、ここを押したら音声が出るようになっているんだ。押してみろ。」
カズキは順番にボタンを押してみる。
「私の名は斗貴子、津村斗貴子だ。」「何にせよ、君に少し興味がわいた。」
「おぉ!!すげぇ!!」
カズキは驚いていたが、最後のボタンを押してさらに驚かされた。
最後のボタンを押した瞬間ぬいぐるみの目がピカァッと赤く光った。
「臓物を!!ぶちまけろ!!」
カズキは斗貴子がこれらの音声を録音する光景を想像してクスッと笑った。
「カズキカズキ、見てくれ。ちなみに着せ替えの衣装も作っておいた。」
斗貴子はけっこうノリノリだった。
付属のケースの中からは普段着、ジャージ、水着、制服銀成ver、和服などの着せ替え衣装が大量に入っている。
さらにケースの一番奥には銀色に輝くバルキリースカート(プラ製)が見える。
「さらにバルキリースカートも装着可能だ。ここのレバーを動かせば鎌が上下するんだ。」
カズキは斗貴子の作った無駄にハイスペックな作品に感心しながらまひろの枕元においた。
本音はまひろにあげるくらいなら自分が欲しかったが、本物の斗貴子が自分のものなのだから我慢した。
枕元に置いてしばらくすると、眠ったままぬいぐるみをつかんでしっかりと抱き、耳の部分をしゃぶり始めた。
「うぅ〜ん。斗貴子さんの耳たぶフニフニしてて気持ちいい〜グーグー・・・」
「何て寝言だ・・・。兄はへそ、妹は耳たぶか。」
「・・・・。まあいいじゃん。次行こう。」
続いて二人は千里の部屋に入る。
きれいに整頓されて無駄なものはあまり置いてないさっぱりとした部屋だ。
「斗貴子さん?ちーちんは何をご所望で?」
「新しいMDウォークマンだそうだ。今まで使っていたのが壊れたらしい。」
白い袋から斗貴子は丁寧に包装されたMDウォークマンを取り出した。
「定価25000円くらいの上等なのを選んでみた。」
「すげぇ〜。どこからそんな資金が?」
「カズキ、それは秘密だ。」
カズキは勝手に秘密の理由は「そのほうがかっこいいから」だと脳内補完した。
「行くぞカズキ。次はさーちゃんだ。」
沙織の部屋に入る二人。
部屋はまひろの数倍くらい女の子らしかった。
だが、その代わり整理整頓があまり出来ていないようで少し散らかっている。
「この娘はかわいいコートが欲しいようだ。」
「ああ、これね。」
カズキは袋から茶色の長いコートを取り出した。
大人の女性をイメージさせるデザインのおしゃれなコートだ。
斗貴子も以外に洒落た物を選ぶものだとカズキは少し感心した。
次は女の子組最後になる毒島華花の部屋だ。
部屋には火渡の写真や火渡のポスター(自作)がいくつも置いてあった。
「何故だろう?この火渡に見つめられるような不快感は?」
「これだけ火渡だらけなら無理もない気がするがな。」
「この娘は何が欲しいの?ガスマスクとか?」
「いや、新しい空気清浄機だ。」
「く・・・空気清浄機!?」
カズキが恐る恐る白い袋に手を入れると中からど〜んと新品の空気清浄機の入ったダンボールが出てきた。
「どうりでやけに袋は大きいし重いと思った・・・。」
カズキが包装された空気清浄機のダンボールを床に置いたとき華花は寝言をつぶやいた。
「うぅ〜ん・・・火渡様・・・。ステキです火渡さま・・・。」
華花の寝言を聞いて二人は微笑む。
「この娘はよっぽど火渡戦士長が好きなんだな。」
「火渡が聞いたらビックリしそうだね。」
そのころ錬金戦団日本本部・・・
「ハックション!!」
「ん?火渡君風邪ですか?風邪ならゆっくり睡眠をとって安静にしていなさい。」
「あ?誰かが俺の噂をしてるだけだろ。老頭児だからってガキ相手みたいに心配するんじゃねぇよ!!」
「HAHAHA!風邪のときは肛門に長ネギを挿れるといいらしいね。」
老頭児と言う言葉に怒った照星はどこからともなく長ネギを取り出していつもの笑い声で火渡を襲った。
「おい!!冗談だろ!!やめろよ・・・。やめてください!!ぎやぁああああああ!!」
瀬戸内海の海底の錬金戦団日本本部に火渡の悲鳴が響いた。
話は戻って寄宿舎。
ここからは男子組、最初は六舛だ。
整頓された彼の部屋の本棚には多くの本が並んでいる。
『吸血鬼の殺し方!!丸太必勝法!!』、『霊界VS魔界の戦争の真実』など意味不明なタイトルばかりだ。
「彼の部屋は本が多いな。しかも変なものばかりだ。」
「中学の頃からこうだったよ。それに希望するプレゼント自体『人体の壊し方』っていう本だし。」
白い袋から出てきたのは1000ページあまりの分厚い本だった。
枕元に置くと同時に六舛がつぶやく。
「クリスマスは本来はキリストの誕生を「神が人として産まれてきた」と祝うキリスト教の記念日だ。」
二人はビックリしたが、どうやら寝言だったように見えた。
「ビックリした。ばれるかと思った。」
「カズキ?彼は本当に何者なんだ?」
続いて岡倉の部屋に入る。
岡倉の部屋は散らかっており、エロ本、AVが溢れ返っている。
ゴミ箱はいっぱいになっており白い紙くずが多数を占めている。
ゴミ箱周辺からはシーフードの匂いが漂ってくる。
壁には水着のグラビアカレンダーがもうすぐお役御免の今年用ともうすぐ使う来年用が貼ってある。
まさにエロの巣窟とでもいうべき部屋だ。
「イカ臭いとはまさにこのことだな。このエロスめ。」
斗貴子は少し不快感を感じているようだ。
「まあ男子高校生なんてこんなもんだよ。」
カズキは割と平気そうにしている。
自分の知らない所でカズキも自慰に励んでいるのかと斗貴子は疑問に思うが、こんなこと本人には聞けない。
「で?こいつはどんなエロスなものが欲しいと?」
「斗貴子さんエロスと決め付けてるね。え〜っとたしかストロベリーなお相手だって。」
「つまり恋人が欲しいというわけか。」
「本人曰く『カズキ×斗貴子以上の激甘濃厚なストロベリー、例えるなら練乳イチゴ』だって。」
「私たちが基準か!!っていうかそんなものどうやって用意しろと?」
斗貴子は困惑した表情をしている。
「心配ご無用!!ストロベリーは無理だけどストロベリーの先にある体験をさせてあげるものを用意した。」
そういうとカズキは袋から大きな女性の人形のようなものを用意した。
「カズキ?これはマネキンか?」
「んにゃ違う。これはダッチワイフ。通販で仕入れた。」
「だ・・・ダッチ・・・」
斗貴子は顔を赤くした。
その様子から察するにこの女性型人形の仕様用途を斗貴子は知っているようだ。
こんな超高価なものを高校生がどうやって仕入れたのか気になったが、何だか怖くて聞けない。
「使用方法はここの擬似女性器に男性器を挿入して、その後・・・」
「そんな説明必要ない!!さっさとこれ置いたら行くぞ!!」
カズキは岡倉の隣にダッチワイフを寄り添うように寝かせた。
次は大浜だ。
大浜の部屋はわりときちんと整頓されたきれいな部屋に見えた。
「同じ高校生でも彼は岡倉のようにエロスではないな。」
「甘いよ斗貴子さん。」
そういうとカズキは大浜のたんすの上から3段目を開ける。
中から『スク水天国!』『ブルマ少女のエロエロ行為』などのエロ本が大量に出現した。
まさかこの男は水泳や体育の授業の自分達を見て性的興奮を覚えていたのではと斗貴子は少し不安になる。
「で、大浜の希望するプレゼントはスクール水着。」
カズキが袋から取り出したスクール水着には「5の2武藤まひろ」と名前が書いてあった。
「待て待て待て待て待て!!これをこいつにプレゼントさせる気か!?」
「そうだけど?まひろももう着れないだろうからいいかと思って。」
「いいわけあるか!!君の妹がこいつのおかずにされるぞ!!」
「ん〜。駄目か。じゃあ斗貴子さんのスクール水着を・・・」
無理もない話だが斗貴子はカズキに殺気を放っている。
「・・・・はやめて。仕方が無いから代替品にこれを・・・。」
袋の中から出てきたのは何故か生の春菊。
「何故この中に野菜が・・・。」
疑問に思う斗貴子を他所にカズキは枕元に春菊を置くと剛太の部屋に向かった。
剛太の部屋は今時の高校生っぽい部屋だった。
好きなアイドルのポスターが1枚張ってあり、部屋の角にはギターが置いてある。
楽譜が散らばっておりどうやら毎晩練習しているようだ。
机の上にヴィクター事件後に撮ったカズキ、斗貴子、剛太、パピヨン、ゴゼンの集合写真を飾っている。
「剛太は青緑のアロハシャツが欲しいらしいよ。」
「そういえば戦団にいた頃にも好んでアロハシャツを着ていたな。」
青緑にヤシの木のイラストが入ったアロハシャツを枕元に置いて最後の部屋を目指した。
最後の部屋は管理人室、ブラボーの部屋だ。
「しかしサンタがプレゼントを渡すのは子どもだろ?おっさんにまで渡しても良いのか?」
「え!?おっさんって斗貴子さん知らなかった?ブラボーまだ27歳だよ。」
「何!?そうなのか!?無精ひげを生やしているしてっきり30代半ばかと・・・・。」
本名不明のほうがかっこいいからと本名すら教えなかったブラボーだ。
もちろん年齢不詳のほうがかっこいいからと年齢を話したことは無かった。
カズキは先日の61番の核鉄回収事件の時に元照星部隊のメンバーの年齢を聞いていたらしい。
鍵を開けて入ると、寝相が悪いのかブラボーは真冬の室内温度は12℃布団なのに毛布を蹴り飛ばしている。
「風邪ひきますよ戦士長。」
斗貴子がやさしくブラボーに布団と毛布をかけてあげる。
「ブラボーはとてもブラボーな漫画が読みたいんだってさ。」
「ブラボーな漫画か。戦士長の性格だと熱血系のものが好きそうだな。巨人の星とか。」
「え!?俺はバトル漫画が好きと思って『るろうに剣心完全版全22巻』を用意したんだけど?」
「待て待てカズキ!!それまだ全巻出てないだろ!!」
「どうやって仕入れたかは秘密。そのほうがかっこいいから!!」
枕元にるろ剣完全版を置くと二人は部屋を出た。
全員にプレゼントを配り終えてカズキの部屋に戻った二人はカズキのベットの上に腰をおろした。
「やれやれ。それにしても岡倉と大浜のプレゼントにはまいったな。」
「まああいつらは健全な男子高校生だから。」
「あそこまで行くとものすごく不純な気がするが。」
カズキが言ったことに呆れるように斗貴子が返した。
「でも斗貴子さん裁縫の腕すごいんだね。あのぬいぐるみ驚いたよ。」
「何しろお母様直伝のものだからな。カズキの衣類も繕ってあげるから破れたら言いなさい。」
「いいの?破れたパンツまでお願いしちゃうよ?」
「君のものならば望むところだ。」
二人はニコリと笑った。
外は雪が降り積もり始めていた。
ホワイトクリスマスだ。
「これで全員に配ったね。」
「いや、まだ1人残ってる。はいカズキ。」
斗貴子が取り出したのは2つおそろいの十字架の形のネックレスだ。
ニュートンアップル女学院の制服に十字架が描かれているので斗貴子のイメージとどことなく合っていた。
裏返してみると「We are one in body and mind.」と言う文字が掘ってある。
日本語に約すと『私たちは一心同体だ。』という意味だ。
「こっちが私の、こっちがカズキのだ。」
さっそく首につけてみるカズキ。
普段こういった装飾品の類は身につけないカズキだが、これは一生大切にしようと心に決めていた。
二人でこれをつけていたら今まで以上に一心同体に感じられる気がした。
「ありがとう。でもやっぱり一心同体だけあって考えることは同じかな。」
今度はカズキが小さなケースを取り出した。
中には核鉄の形の飾りのついたペアリングが入っていた。
「斗貴子さんが核鉄がないと心細いって言っていたから特注で作ってもらった。」
「こっちの44番が私ので70番が君のか?」
「そう。残念ながらバルキリースカートは発動できないけど我慢して。」
さっそく指につけてみる斗貴子。
核鉄の形をしているからか、それともカズキの気持ちのおかげか、つけているととても気持ちが穏やかになった。
「ありがとう。実はな、私はもうひとつプレゼントを用意していたんだ。」
斗貴子は着ていたサンタのコスチュームを脱ぎ始めた。
服の下から裸体にリボンで自分の体をラッピングした斗貴子の体が見えてきた。
全裸にリボンでラッピングされた女性、頭にはサンタクロースの帽子。
その姿は萌えるなどと言うレベルははるかに超越していた。
それが愛しい人ならばなおさらだ。
「もうひとつのプレゼントは私だ。少し恥ずかしいが男はこういうのが好きだと聞いてやってみたんだが。」
「斗貴子さんものすごくかわいい。綺麗だよ。」
「どうだ?受け取ってくれるか?」
「喜んで!!」
二人は熱いキスを交わし、そのままベットに倒れこんだ。
斗貴子の甘い喘ぎ声は明け方まで聞こえたという。
翌朝、銀成市は雪は積雪5cmほどの雪に覆われていた。
「わ〜い!!すべすべの斗貴子さんのぬいぐるみだ〜!!このボタンは?」
「臓物をぶちまけろ!!」
「うわ〜。斗貴子さんの声だ〜!!サンタさんありがとう。今夜からいっしょに寝ようね〜♪」
まひろは斗貴子お手製のぬいぐるみにとてもご満悦で顔にスリスリしている。
「うわ〜。誰だろう?このMDウィークマン高いのに。まさか本当のサンタさんとか?」
さっそく箱を開けて聞き始める千里。
「きゃ〜!!このコートおしゃれでかわいい。」
沙織はさっそく試着して鏡に映る自分を眺めている。
華花は箱から出した空気清浄機のスイッチを入れて電源を入れた。
「すごく清浄な空気・・・。この空気清浄機のプレゼントってまさか火渡様?」
清浄な空気に華花はうっとりしている。
「ふんふん。人体急所を的確に破壊するにはまず相手の虚を狙い・・・」
六舛はプレゼントされた本を朝から読みふけっていた。
「それにしてもカズキと斗貴子氏は粋なことをするな。」
どうやら彼は寝たふりをしていて本当は起きていたようだ。
「サンタの野郎め!!どうせ俺はエロスだ畜生!!こうなったらこいつを試運転してやる!!」
エロスの本領を発揮して試運転を開始した岡倉だが、わずか2分で発射してしまった。
「・・・・。早漏かよコンチクショウ!!」
「春菊?何これ?」
突然枕元に置かれた春菊を不思議そうに大浜は見ていた。
春菊なんて鍋物以外ではあまり使わないし、第一寄宿舎では自炊はしない。
意味不明なプレゼントにただただ困惑していた。
「すげぇ!!このシャツかっこいい!!そうか斗貴子先輩が俺のために。一生大切に着よう。」
むしろ贈ったのは恋敵だったカズキだ。
世の中知らないほうが良いこともある。
「この漫画はブラボーだ。おお!!この技は俺の技に流用できそうだ!!」
ブラボーは正拳突きの練習を始めた。
「拳を立てて石に一撃加え、その刹那拳を折って二撃目の打撃を加える。超必殺ブラボー正拳“極”と名づけよう。」
ブラボーはまるでるろうに剣心のアニメ放送当時の子どものように一心不乱に二重の極みの練習に励んでいた。
だが超人的なこの男の場合は少し練習したら本当に出来てしまいそうだ・・・。
そのころそれらを贈った“女サンタクロース”と“トナカイ”は徹夜での行為を終えて眠っていた。
首にはおそろいのネックレス、指にはおそろいの指輪。
二人はとても幸せそうに眠っていた。