私はカズキの部屋にいる。
カズキが戻ってくるのを待っていたのだが、暇なのでふとベッドの下を見た。
何か本があるが、どうせ『Hでキレイなお姉さん』あたりだろう。
この手の本なんて所詮は紙の束に過ぎない。
本に嫉妬するほど私は愚かじゃないし、見たければ見ればいい。
「THE巨乳」、「ボインボイン大特集」、「Hでキレイなお姉さん〜巨乳編〜」、「BIGおっぱい」・・・・
何だこれは!!巨乳物ばかりじゃないか!?
私はたしかに胸が大きいとはいいがたい。
というかむしろ同世代と比べても小さいのは間違いない。
それは水泳の授業や身体測定で他の女子と見比べただけでも明らかだった。
中にはまひろちゃんや桜花のような反則クラスの胸をした者もいる。
大体まひろちゃんなんか私よりも2年半も生まれるのが遅いのに何を食べたらあんなサイズになるんだ?
亡き母の体型を見る限り私の場合は明らかに遺伝もあるのだろうが、それ以上に成長期の最中に胸が大きくなって
も戦闘や訓練においては邪魔になるだけなのでと、さらしを巻いて胸を押さえつけたのも原因なのだろうか?
この本を見る限り、やはりカズキも巨乳の子が好みなのだろうか?
よし決めた!!カズキのために今日から胸が大きくなるように努力しよう。
今年の夏には19歳になるだけあって身長も1年に0.2cmしか伸びないし、成長期はほとんど終わっている。
どれだけ効果が出るかは未知数だが、よりカズキ好みの女性となるために挑戦しよう。
とりあえず自分の部屋に戻って千歳さんにメールで相談してみた。
この人もけっこう胸は大きいほうだから参考になる話が聞けるといいのだが。
10分後、千歳さんからメールが返ってきた。
『まずは大胸筋を鍛えなさい。腕立て伏せがかなり効果的よ。それとあとは牛乳やヨーグルトなどの乳製品を
摂取することも不可欠よ。あとは揉んでもらうのも効果的ね。武藤君にでもお願いしてみなさい。』
ふむふむ。やはり人生の先輩だけあってなかなか参考になる。
まずは腕立て伏せから挑戦するとしよう。
元錬金の戦士だった私には腕立て伏せ程度のトレーニングなど造作もない。
1・2・3・4・5・・・・99・100!!
少しレベルアップして左腕のみを使った腕立て伏せだ。
1・2・3・4・5・・・・99・100!!
さらにレベルアップして左手の指のみを地面につけて腕立て伏せだ。
1・2・3・4・5・・・・99・100!!
もっとレベルアップして今度は左手の人差し指のみで腕立て伏せをだ。
1・2・3・4・5・・・・99・100!!
よし!!腕立て伏せ終わり!!次はスクワットだ。
1・2・3・4・5・・・・36・37・38・・・・・?
ん?なんだか趣旨が違ってきているよな?
しまった!!ついつい戦士だった頃の癖でハードなトレーニングをしてしまった。
後半は大胸筋と言うより腕力を鍛える訓練じゃないか。
特に一番最後は大胸筋を鍛えるのが目的のはずなのに何故かスクワットなんかしているし・・・。
そうこうしているうちに時間はいつの間にか深夜0時を過ぎていた。
とりあえず今日のところはもう寝よう。
翌朝の6時に起床して私は腕立て伏せを始めた。
午前7時30分に腕立て伏せ2000回を終えて朝食を食べるために食堂へ向かった。
いつもの席に座るとカズキ達いつもの仲間が座っていた。
おはようと挨拶を済ませると朝食を食べ始めた。
いつも思うがトレーニングを終えた後の食事は本当に美味い。
ご飯とおかず、味噌汁と平らげると最後は200mlパックに入った牛乳だ。
そういえば千歳さんはバストアップには牛乳を飲むのがいいと言っていたな。
よし。牛乳をおかわりして飲めるだけ飲んでみよう。
まずは1つ目の自分のものを一気に飲み干す。
続いておかわりして2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ・・・
「と、斗貴子さん・・・牛乳が美味しいからって飲みすぎだよ。」
全くカズキのやつめ。君のためにこうやって牛乳を飲んでいるというのに。
「うへ〜。私牛乳嫌い。斗貴子さんよかったら私の牛乳も飲む?」
は!?まひろちゃんが牛乳が嫌い!?
ということはこの子は牛乳をほとんど飲まなくてもこの胸になったというのか!?
だとしたらこんなに牛乳を何本も飲む必要性はないのでは?
グギュルルルルルル!!
私のお腹が豪快な音を立て、同時に強烈な腹痛と便意が襲ってきた。
たまらず私はトイレに駆け込んだ。
全く・・・牛乳を飲みすぎてお腹を壊すなんて馬鹿か私は。
結局腹痛は午後まで治まらず、午前中はトイレにこもりっぱなし。
そのまま私は学校を欠席する破目になった。
夕方、学校へ行っていたみんなが戻ってくる頃には腹痛も治まって体調も回復していた。
「津村さんお腹の調子はもう大丈夫?」
学校から戻ってきたクラスメイト達は体調のことを心配してくれる。
正直理由が理由だけにすごく恥ずかしい。
部屋に戻って今度は腹筋5000回に挑戦する。
終わってからバストを計ってみるが、昨晩とサイズに変わりはなかった。
一朝一夕で効果が出るなんて思っていないが、本当にこんなので胸が大きくなるのだろうか?
気がついたら、ちょうど夕食の時間だった。
今後のバストアップ計画について考えながら夕食を食べ終えると、次はお風呂の時間。
自分の部屋で着替えとタオルを取ってきて、脱衣室で服を脱いで共同浴場の扉を開けた。
まずは髪を洗い、体を洗ってからゆっくりと30分ほど湯船に浸かるのがいつもの私の入浴パターンだ。
「あ〜斗貴子さんだ!!」
湯船でくつろいでいた私のところにやってきたのはまひろちゃん、ちーちん、さーちゃん、毒島華花の4人。
4人は湯船に入り、私の横に座った。
私の見る限り胸のサイズはまひろちゃん>ちーちん>自分>さーちゃん>毒島という順位だろうか。
ちなみに桜花はまひろちゃんよりも大きくて別格の1位だ。
だが私は成長期はほぼ終わった18歳、他の4人はまだ16歳。
数年後にはこの順位も変わって、さーちゃんあたりに抜かれている可能性が高いな。
激ロリ体型の毒島華花にはさすがに負けないとは思うが・・・。
それにしてもまひろちゃんのこの胸は同じ生女子高生のものとはとても思えないな。
やっぱり触ったらふっくらと軟らかいのだろうか?
本当にまひろちゃんは胸のサイズも申し分ないし、乳房の形も非常に良くうらやましい限りだ。
「あれ?津村先輩さっきからまっぴーの胸ばかり見てません?」
私の視線に気がついたさーちゃんがニヤニヤして言った。
「そうなの斗貴子さん!?そんな悪い子にはお仕置きね!!くらえおっぱいアターック!!」
そう叫ぶとまひろちゃんは自分の胸の谷間に私の顔を埋めた。
さらに腕で包み込むようにして両方の乳房に挟みこまれて圧迫される。
たしかカズキの持っていた漫画に登場する助平で格闘技に長けた仙人がパフパフと呼んでいた状態だ。
思ったとおりまひろちゃんくらいの胸のサイズになるとクッションのように柔らかい。
っていうか胸に押さえつけられて息ができない!!く・・・苦しい!!
「ちょっとまひろ!!やりすぎよ!!斗貴子先輩が苦しそうにしてるわよ!!」
ちーちんが止めに入ったのが聞こえたが、私はそのまま酸欠で意識が飛んだようだ。
「あ、気がついた。大丈夫斗貴子さん?お風呂でのぼせて気絶したんだって?」
まひろちゃんたちが運んでくれたのか、気がつくと私は自分の部屋のベッドの上にいた。
そしてベッドの横にはカズキが座っていた。
私は思い切ってカズキに聞いてみた。
「なあカズキ。やはり君も胸の大きい女の子が好みなのか?」
カズキは不思議そうな表情で私をしばらく見た後にニッコリ笑って答えた。
「前に言ったよね?何もかもひっくるめてまるごと全部斗貴子さんのコトが好きだから。」
それは12月のあの日、カズキが私に言った言葉だった。
公衆の面前で大声で言われた上に、まひろちゃんたちに大騒ぎされて恥ずかしかったのを覚えている。
「だから俺の一番は斗貴子さん。胸の大きさなんて全然関係ないよ。」
カズキの言葉に偽りが無いことをその笑顔が証明していた。
だがそれでもまだひとつ疑問が残っている。
「じゃあカズキのベッドの下にあった大量の巨乳物のエロスな本は何だったんだ?」
さっき私が質問した意図を理解したようで、カズキのにこやかな笑顔が苦笑いに変わった。
「あぁ。あれは全部岡倉のなんだよ。今週末に色々と用事があって、あいつの両親が寄宿舎に来るらしいんだけど、
親に見られたら恥ずかしいからその間俺に預かっていてほしいって頼まれたんだ。」
これで私の中の疑問も完全に解消された。
要するに私が勝手に勘違いして暴走しただけだったようだ。
「もしかして勘違いさせちゃった?だったらゴメン。でも俺自分のエロ本は今は全部処分したから。」
「別にエロスな本を見るくらい構わないぞ。そのくらい見たければ見てもいい。」
「いや、今は俺には斗貴子さんがいてくれさえすればあんな本は必要ないよ。」
そのまま私たちはお互いの愛を確かめ合うようにキスをした。
キスをしながらカズキは私の服に手を伸ばして器用に脱がしていく。
そして私たちは深夜まで愛し合ったのだった。
こうして私のバストアップ計画はたった1日で終わりを告げた。
結局たった1日では全く効果はなく、3年1学期の身体測定でも胸囲は2年3学期の身体測定そのままだった。
だが私はもう胸の大きさを気にすることは無い。
まひろちゃんや桜花と胸の大きさを比べる必要もない。
なぜならカズキは胸の大きさなど関係なく私のことを一番に愛してくれると確信したから。