「ん……」
カーテンの隙間から差し込む朝の日差しが目にしみて、まぶたを開く。
腕の中では、まだ斗貴子さんが寝息を立てていた。
その様子が余りにも穏やかだったから、思わず笑みが漏れた。
(……起すのは…可哀想かな?)
その代わりに、斗貴子さんをさっきより抱き寄せて、頬に軽く口付けをする。
心なしか斗貴子さんが微笑んでくれた様な気がして、無性に嬉しくなった。
ついでに斗貴子さんの髪を指で梳かしつつ、背中も撫でてあげると、
くすぐったそうに身をよじった。
「うぅん……」
腕の中で斗貴子さんがもぞもぞ動く度、肌と肌が擦れ合って気持ち良い。
何故『肌と肌が擦れ合う』のかといえば勿論、俺も斗貴子さんも裸だからだ。
「うぅぅん……」
斗貴子さんが一際大きくうめきを上げた。
それと同時に、目を擦りながらこちらを見詰めてきた。
どうも、斗貴子さんを起してしまった様だ。
「…おはよう、カズキィ……」
寝ぼけた声が斗貴子さんの口をついた。
「おはよう。ゴメンね、起すつもりじゃ無かったんだけど」
「…別にいい……どうせもう起きる時間だろう…」
斗貴子さんは枕もとの目覚まし時計を一瞥して、また俺の方を向いた。
「って言っても、今日は休みだよ?」
「だからって、ぐうたらな生活をして良い訳じゃないだろう」
「まぁそうだけど…もうちょっとゆっくりしてもいいんじゃない?」
「何を言う、もう八時過ぎてるじゃないか。十分ゆっくりしている」
真面目な顔で俺とそんな会話をしつつも、斗貴子さんはしっかりと抱きついてきた。
俺の体に腕を回し、さっきより密着しているぐらいだ。
ここのところ、目が覚めたときにそんな動作をするのが
斗貴子さんの癖になっていると知っているのは、当然俺だけだ。
斗貴子さん自身も気付いていなかったらしく、この間それを指摘すると真っ赤になっていた。
「でもさ斗貴子さん」
負けじと斗貴子さんを抱き寄せ、体の前面を殆どくっ付けながら、俺は話を続けた。
「今日は別に予定も無いんだし、もうちょっとこうしていたいんだ。……嫌?」
「嫌ではないが……」
ほんの少しだけ視線を落としてから斗貴子さんは、しょうがないなと言ってくれた。
「今日だけだぞ…」
「うん、ありがと」
お礼代わりに斗貴子さんの傷の端にキスすると、斗貴子さんはいつもの様に可愛く息を漏らした。
「ヨロコんでる?」
「……知らんッ!」
斗貴子さんは最早言い返す事も止めて、顔を俺の胸に押し当てて表情を隠してしまった。
でも、明らかに血行の良くなっている耳が髪の隙間から見えている。
俺は斗貴子さんの頭に手を置いて、出来るだけ優しく撫でてあげた。
こんな朝が、毎日来ればいいのにな。
あなたとの朝―――了