私が銀成学園に入学してからしばらく経ちました。  
あんなに綺麗に咲いていた桜の花も今はもう全部散ってしまって  
夏の雰囲気を感じられる時季になってます。  
寮の生活にも大分慣れてきて、友達もできました。  
ただ……あの人には未だに振り回されっぱなしだけど…  
 
キーンコーン  
 
5時限目の授業終了のチャイムが鳴る。今日も一日平和に学習できました  
…と言えないのが今の私なわけで。  
 
「まひろー!迎えにきたぞ〜!」  
無駄にテンションの高い声が私のクラスに響きました。  
もう何度繰り返されてきたことだろう。事情を知っている  
クラスメイトは私と声の主をず〜っとなにかを期待するような  
目で見てます。  
「ほら!帰るぞ〜!兄が迎えにきたぞ〜!!」  
私は必死に無視しました。顔が真っ赤になっているのはわかってる。  
それでもここは反応してはいけないのだ。  
黙々と帰り支度をしてお兄ちゃんを見ないように見ないように。  
「…ねえ、まひろ。返事しちゃったら?」  
「そうそう、まっぴ〜もこれ以上恥ずかしい思いをしなくて済むよ?」  
それはわかってる。でもね、ここで返事しちゃったら明日がもっとひどくなるんです。  
教室がザワザワしてきて皆の視線が体中に刺さる。  
うう、やっぱりこれだけは慣れないなぁ…  
「まったくしょうがないなぁまひろは。でも可愛い妹のためだ!」  
ズカズカと私のほうへ近づいてくる気配がしました。  
もうダメ…逃げなきゃ  
 
ガシ!  
 
お兄ちゃんのほうが早かったわけで…  
「ほら、なにしてるんだ?かえるぞ!」  
ああもうそんな自信満々、笑顔満点で言わないでよ。  
ちょっとここで抵抗しないと…  
「もう!なんでいつもここまでくるの!?一人で帰れるよ!!」  
おお…と周りから声が聞こえて来ました。  
 
 今日は一筋縄ではいかないな  
 新たな展開だねぇ  
 武藤(妹)がタッグ決別宣言したぞ!  
 
コソコソ言ってるつもりなんだろうけど全部聞こえてます。うう恥ずかしい…  
でも決まったと思う。これで少しは大人しくなってほしいんだけど…。  
「玄関入るまでが学校だからな。この頃失踪事件も多いしなにかと物騒だ。  
 それまでは俺がガッチリガードするからな!」  
お兄ちゃんの歯がキラリと光ったような気がした。  
「あ〜も〜全然聞(効)いてな〜い!!!」  
 
私は今日も平和に下校できなかったことに少し涙が出てきそうでした。  
 
「あきらめなさ〜い」  
「いやぁー今日も武藤家は元気だったねぇ」  
 
聞こえてるよおおお…  
 
 
「お兄ちゃんはちょっと過保護すぎるよ…ブツブツ」  
「いいじゃない。大事にされてる証拠だって」  
「でも…」  
その日の夜、寮の部屋でクラスメイトに愚痴をこぼしていました。  
確かに大事にされてるのかな?って思える時はあります。別にそこには  
文句はないんだけど、度が過ぎる時があるから困りもので。  
「まぁおかげさまでこんな清き乙女ちゃんが出来上がったわけだし」  
クラスメイトは私を見ながらニヤニヤ笑ってます。なんかその言い方  
馬鹿にされてるっぽいなぁ。  
「なにそれ?」  
「いや、だからお兄さんの鉄壁のガードのおかげで天然記念物みたいな女の子がここに…」  
「ちょっと!天然記念物ってどういう意味?」  
これは馬鹿にされてるってことで決定だ。  
「あ〜も〜怒ってる顔もものすごくイイわぁ」  
「まっぴ〜は可愛いねぇ」  
…なんか起こる気が無くなりました。でもこの高く振り上げたクッションを  
どうしたらいいんだろ?  
とりあえずまた抱え込んでみました。…微妙に恥ずかしい。  
 
「そういえば、まひろ」  
「?」  
「あんた…男と付き合ったことないでしょ?」  
「えっ?」  
な、なぜ判るの?そんなに判り易い顔していただろうか?  
う〜んお兄ちゃんが判り易いから私もそうなんだろうか??  
私が返答に苦しんでいると続けざまに  
「あ〜そうか!今までお兄ちゃん一筋だったもんねぇ〜」  
「なっ!?」  
なんでそうなるの!?確かにお兄ちゃん以外の男の人っていったら  
お父さんとお兄ちゃんの友達くらいしか知らないし、でもだからといって  
そんな…  
「あ〜そうなんだ?じゃあまひろの大きな胸も形のいいおしりもお兄さんのものかぁ」  
サワサワ  
「!?ち、ちょっと変なとこ触らないでよ!」  
「もんどけもんどけ。お兄さん色に染まる前に!」  
「おっけ〜」  
と言うと二人は私に近づいてきて、私を押さえつけました。  
そして手が伸びてきて…ってそこ足の裏。…そこは脇腹。  
「う?い、や、やめてキャハハハハハハ!」  
この二人からも振り回されてました。どうも私は受け身になる時が多いなぁ。  
…単にいじりやすいからだったらちょっとショック。  
 
くすぐられている中、私はお兄ちゃんのことを考えてました。  
今までお兄ちゃんをそんな風に見てた覚えはないし、そしてこれからもないと…思う。  
確かに優しいし、面白いし、たまに呆れるくらい子供っぽい。  
そんなお兄ちゃんを好きになっているのだろうか?  
私も理想の男性像なんて考えたことはないけれど、ただ…これだけは言えるかもしれない。  
 
私が素直になれるのは今の所お兄ちゃんの前だけだということを。  
 
 二人は自室に帰り、私は明日の予習をしていました。  
ちょっと辞書で調べものをしようとして本棚を見て、そこで気づきました。  
「あ…そういえばお兄ちゃんに貸していたんだ」  
これは辞書を使わないとわからないし、かといってここで終わらせるのも  
なんだか中途半端で嫌。私は返してもらおうと部屋へ向かいました。  
二人の話を聞いた後にお兄ちゃんの部屋にいくのは妙に緊張するけど…  
「もう…二人共好き放題言うんだから…」  
ブツブツ言っているといつの間にかお兄ちゃんの部屋が目の前に。  
もうドアがあるところまで来てしまったみたい。こっちの覚悟は決まっていないのに…  
ただ辞書を返してもらいたいだけ、普通になにげなく聞くだけ。それだけのことだ!  
心を決め、ドアをノックしました。  
 
コンコン  
 
「お兄ちゃん、いる?」  
……返事がありませんでした。誰もいないみたい。  
そういえば、この頃夜中にどこかへ行ってるような気がする。  
もしそうなら無茶していなきゃいいけど…  
でも今いないのは好都合かな。正直、今の気持ちでお兄ちゃんと会ったら  
変に意識してしまうかもしれないから。  
私は誰も居ない部屋に入り、辞書を探そうとしました。  
「おじゃましま〜す」  
あ、ベッドの脇に散らかしたものを退けてる。中途半端に綺麗にするのが  
お兄ちゃんの悪い癖だ。まったく…全然そういうところは直らないんだから。  
 
 私は辞書を探すのも忘れ散らかっているものを片付け始めました。  
あ、Tシャツ脱ぎっぱなし。963のTシャツ、お気に入りとか言ってなかったっけ?  
うわ!なにこれ?…落書き??トンボ切り2003??え???  
なんかわけがわからないものも多いなぁ。  
色々でてくる奇妙なちらかしものにワクワクしながら黙々と続けていると  
一番下に雑誌が置かれているのをみつけました。  
 
『Hでキレイなお姉さん』  
 
…え〜と、これはいわゆる『エッチな本』ってことでいいのかな?  
ちょっと興味が湧いてきたのでベッドに座り、その本のページをめくり  
中身を見てみました。中身はスタイルのいいモデルさん(女優さん?)が  
着るのも恥ずかしい水着を着て、そしてなぜか胸を強調している写真ばっかりでした。  
「お兄ちゃんってこんな女性が好きなんだ…」  
いままで一緒に生活してた(あたりまえだ!)けど初めて知った事実。  
まぁ家族になんて自分の好きなタイプの女性のことなんて教えないか…。  
 
そのままパラパラとページをめくって  
「!!!!!!」  
頭がボンッ!と爆発したような衝撃を受けました。  
顔がみるみる赤くなっていくのもわかります。  
「うわぁ…」  
実はこの本、後半のページが…は、裸の女性の写真でした。  
なんていうか、衣類がなくなった分、余計に胸やおしりが強調されているような…  
うわ!これすごい!  
しばらく辞書も片付けも忘れて見入ってました。  
 
私は本を閉じ、元の場所に返しました。  
「お兄ちゃんって…」  
結構意外っていうのが私の感想。やっぱりお兄ちゃんも男の人だから  
女の人の体には興味あるのかな…。その後自分の胸をみてみました。  
邪魔なだけなんだけどなぁ、肩はこるし、うつぶせになると苦しいし。  
私にとってはいいことは無いんだけどなぁ。  
と、自分の手で胸を触ってみると…  
 
!!!?  
 
え?いつもはなんにも感じないんだけど、なんかピリッっというかなんというか  
奇妙な違和感を感じる…  
でもあんまり不快じゃない。むしろ  
気持ちいい…  
 
だんだん鼓動が早くなっていくのを感じて息も少し荒くなってきました。  
いくら深呼吸しても息苦しくて体が鼓動で上下に揺れてるような感覚も…  
私は座っているのがキツくなってそのままベッドに寝転びました。  
バフ!と勢いよく転んだせいか、布団からお兄ちゃんの匂いが少しして…  
でもその匂いは不快じゃなくて、しかも唯一知ってる男の人の匂いでもあって。  
なんとなく…安心できる。  
頭の中がポーっとしてるのに私の手はゆっくりだけど止まらない。  
寝転がって楽になったせいか、より胸に感じる刺激が強くなって…  
お兄ちゃんは居ないのに、私を私だけを見てくれているようで…  
 
「なん、か…私、おかしい…」  
 
 今、私は絶対におかしい。お兄ちゃんの部屋で自分の胸を触って  
気持ちよくなっているなんて。もしお兄ちゃんが来たらどう言い訳するのだろう。  
こんな所見られたら死んでしまいたくなるくらい恥ずかしいのに…。  
でも…止まらない、止まらないよ!  
「あ…」  
自分の胸がこんなに弾力があって、触られるとこんなに刺激があるものだと  
初めて知りました。服越しからでも息が上がったり、ドキドキしたり、体が  
ポーッと熱くなる…  
服越し?今服の上からでこれなんだから、もし…もし直接触ったら…  
私は右手を服の下から潜りこませ、胸までなぞるように這わせました。  
ん、これだけでも結構…  
そして私の指がブラの下のほうにあたり、肌とブラの隙間に進入します。  
その指がそのまま狭い隙間を進み、やがて5本の指全部が左の胸を直接鷲掴みに  
するような形になりました。体温が直に伝わり、心臓がドキドキしているのが判ります。  
ちょうど人差し指と中指の間に感じる固いものは多分、乳首かな…  
「んぁ…あ…」  
ピリッとした刺激がより強く感じます。左手はシーツを強く掴み、足は落ち着かなく伸ばしたり  
曲げたりの繰り返し、駄目…本当に気持ちがいい…  
 
 その後私は自分の乳首をつまんだり転がしてみたり、強弱をつけて撫でたり…  
全ての行為が私の身体に刺激と快感を与え、ベッドで丸くなる私はまるでなにか  
もぞもぞした変な生き物に見えていたかもしれません。  
「っ!あぁ!」  
部屋の中に私の声だけが響きます。自分の声が、まるで他人のものの様に聞こえ  
しかもその声はいやらしい女性の声にも聞こえました。お兄ちゃんが聞いたら  
絶対に弁解はできない。お兄ちゃん?そういえばお兄ちゃんの部屋だったんだ。  
忘れるくらい気持ちよかったのかな…。  
思い出したかのようにシーツに顔を埋めて目をつぶると  
お兄ちゃんのにおいがまたしてきました。安心できる、そして心地のいいにおい…  
男の人のにおい…  
と思った時、まるで自分の指がお兄ちゃんの指に思えて。  
「んぁ!」  
ピリッじゃなくてビリッとした刺激が首から背中にかけて強く感じ、ちょっと腰が浮きました。  
ついその刺激に酔ってしまって、口をだらんと開けて、溜まっていただ液が糸を引きながらシーツに  
落ちました。暫くそのままの状態で動けず、落ち着くまで固まっていました。  
「ハァ……はぁ…」  
一旦手を止め、その場で丸くなっていました。なんだったんだろう今のは…  
今まで感じた刺激の中で一番強く感じた。とても…  
 
 呼吸を整えて、ムクッと上半身を起こし、触っているうちにはだけてしまった服を見ました。  
はだけた服の向こう側に2つの胸があります。自分は邪魔でしょうがなかった胸なのに…  
「服…着ようかな…」  
服を着直そうとちょっと動きました。  
…なんか股がちょっと湿っぽいなぁ。ちょっと確かめようかな?誰も居ないし…  
 
手をスカートの中に入れ、その箇所を触ってみました。  
…おもらししてるみたいでした…  
 
手を戻し指を見ると、なんだろう?コレ?  
透明でぬるぬるしてなんか糸が引いてる…  
 
「コレが…」  
その…えっちしてるときに出るものなのかな?男のひとのが出たり入ったりする時に…  
なんかヌラヌラと光沢があって…  
「ちょっと気持ち悪いな…」  
それに濡れているのが気持ち悪かったので全部拭き取ろうかとも思いました。  
誰も見ていないからいいかな?  
そのまま手を直接中にいれて濡れてる場所、つまり…私の…  
 
「!?…い!やぁぁ!!?」  
ものすごく驚きました。つい前かがみになって、足を閉じ、つま先立ちで座っている  
格好になりました。  
もうなにも考えられませんでした。なぞっただけで足がガクガクして  
口が全然閉じれなくて、体の震えが止まりません。  
ぬちゃぬちゃした感触が指から身体中に駆け巡って私を責めたてているようでした。  
「あッ…!あぁっ…やぁ…ぁぁ…っ!」  
もう駄目…  
頭の中が真っ白に…  
 
「はぁっ…あっ…お兄…」  
 
ガチャ  
 
「ふ〜今日もつかれたぁ〜」  
ボーっとした思考の中でドアの開く音が聞こえたような気がしました  
そこに立っていたのは私のよく知っている人で…  
私は焦点の合わない目とだらしなく開けた口でその人をみて…  
その人は私のはだけている胸を見て…  
 
『え?』  
 
 
 その後はというと、私とお兄ちゃんは大声(悲鳴?)をあげて  
私は胸を隠しながらわき目もふらず部屋から逃げました。  
その時お兄ちゃんがなにか言ってたような気もするけど、私は  
死んでしまいたい恥ずかしさでいっぱいで部屋に篭ってからは  
明日学校なんて無くなってお兄ちゃんと会えないようになれ!とか  
思っていました。もちろんその日は寝不足で辞書なんて私のなかから  
完全に忘れ去られてました。  
「明日…どうしよ〜〜〜」  
 
次の日、お兄ちゃんの姿を避けるように行動してしました。  
朝は一人で7:00くらいに登校して、昼食はいつも屋上なんだけど  
その日は教室で友達と。放課後は鐘が鳴ったらすぐ仕度をして  
友達の2人を強引に誘って遠回りに下校しています。  
なんか犯罪者みたいで嫌だなぁ…  
しかも自分で会わないようにしてるのに全然しっくりこない…  
 
「はぁ…」  
「…ねぇまひろ、あんたとお兄さんに何があったかしらないけどさ」  
「私達くらいには話してみたら?少しはすっきりするよ?」  
言えません…私がお兄ちゃんの部屋で一人でエッチなことして  
それを見られたなんて。  
「みんな言わないけど結構心配してるんだよ?」  
たしかにあまりお兄ちゃんについての冷やかしがなかったなぁ  
それはありがたいんですけど…事情が事情ですから…  
「はぁ…」  
「まったく、この子は〜」  
もうどうしようかなぁ…私どうしたらいいのか…  
「まひろ!!」  
聞きなれた声がしました。いつも優しくて、いつも笑っていて  
ちょっと子供っぽいあの人の声…  
「探したぞ、まひろ」  
「お、お兄ちゃん…」  
久しぶりに見た、と思いました。でもまともに顔を見れません。  
友達の2人は下がってなりゆきを見守ってます。  
「ちょっと話がある。ついてきてほしい」  
お兄ちゃんは今まで見たこともない様な真剣な顔で私を見ていました。  
「…うん」  
何を言われるんだろう…怖いよお…  
 
 そこは公園でした。学校からは少し離れている小さな公園。  
夕暮れ時だから子供達は皆帰っていて、今公園に居るのは私たちだけ。  
私はお兄ちゃんにベンチに座るよう言われ、近くにあったベンチに座りました。  
お兄ちゃんの顔を見ようとしたけど、夕陽を背にしているからどんな顔をしているのか  
よくわからない。何を言われるんだろう?  
お前みたいな卑猥な妹なんていらない!とか  
兄妹の縁を切れ!とか  
このエロ妹!とか…うう、やだぁ…  
 
「まひろ」  
「はい!」  
ほかに返事の仕方がないのか馬鹿!ムチャクチャ緊張してるのバレバレじゃない!  
「昨日、俺の部屋にいたよな」  
「…うん」  
もう本題??ちょっと心の…  
 
「ごめん!!!」  
 
「…え?」  
 
いきなり手を合わせて私に謝りました…。どうして?  
「まさか俺の部屋で着替えてるなんて!」  
「…へ?」  
ピンと張りつめていた糸がグニャグニャと曲がったように思えました。  
お兄ちゃん、アレをどうみたら着替えに見えるんでしょうか?  
まぁ…でもそのまま勘違いしてくれている方が私には助かるかな。ちょっとホッとしました。  
「ごめん!ホントごめん!!」  
「え?いいよ、そんなに気にしなくても」  
「それでもごめん!お詫びに今日夕食おごるから…」  
お兄ちゃんって一度言い出すと止まらないしなぁ…誤解してくれてるならそれで十分なんだけど。  
「ホント気にしてないから。ね?もう寮に帰ろうよ」  
「でも…」  
お兄ちゃんが困った顔をしてる。様子を伺う怒られた子犬みたいだ。  
う、可愛い…  
「じゃあまひろに聞くけど寮の夕食と俺のおごり、どっちがいいんだ?」  
「そりゃあお兄ちゃんのおごりのほうが嬉しいけど…」  
と言うと、お兄ちゃんはニコっと笑い。  
「じゃあ決まりだ。今日は俺がお前に夕食をおごりたい」  
「?」  
「今日はまひろと2人で夕食を食べたいんだよ」  
お兄ちゃんはそう言うと私に手を差し伸べました。ああ、やっぱりお兄ちゃんの笑顔が好きなんだなぁ…  
昨日今日と色々あったけど、もうどうでもいいかな?  
「ほら、まひろ。いくぞ!」  
「うん!」  
私が手を取ると、お兄ちゃんは歩き出しました。  
私より歩幅の広いお兄ちゃんは、私が後ろから引っ張られながら小走りに  
なっているのに気づいてゆっくり歩いてくれました。ついでに手も離しちゃったけど…ちぇ  
 
 私は考えました。確かに私はお兄ちゃんの部屋でいやらしいことをしてました。  
今の自分ではそう思えないけど、多分相手をお兄ちゃんだとイメージして…  
それがただの気の迷いなのか勘違いなのか、それとも…本気なのかは  
判りません。というかまだ結論はつけたくありません。  
今は、恋だの愛だのは考えず…  
ただ…お兄ちゃんの側にいれるだけで十分です。  
 
答えはまだ…  
 
 
〜エピローグ〜  
人のいなくなった公園でガサガサと風で揺れているわけではない音がする。  
ちょうどさっきまひろがいた場所の後ろの草むらのあたりだ。  
草むらの中で兄妹が離れていったのを確認し、2人は姿を現した。  
「まったく…そんな些細な事で」  
制服に付いた草を鬱陶しそうに払う。  
ちょっと蚊に刺されているみたいだ。腕が痒い。  
「まっぴ〜も人騒がせだねぇ」  
髪を束ねた部分に葉が綺麗に刺さり、髪飾りのようになっている。  
当の本人は満更でもなさそうだ。  
「しかもみてみてよアレ。はたから見たら恋人同士にしか見えないし」  
「うわ!まっぴ〜嬉しそう」  
「まひろも結構な兄バカじゃない…」  
「じゃあ私達は寂しく寮の夕食でも食べよ」  
「…そうしますか」  
ヤレヤレと腰を上げる。今日は確か天ぷらだったっけ?  
まぁあのお兄さんのことだ、どうせラーメンかなんかだろうな。  
 
 
 
みそラーメンだったらしい  
 
END  
 

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