男達だけで集まった途端に花が咲く話題、それはいつの時代だって猥談だ。  
しかし悲しいかな、性に対する接し方の違いというものは大きいわけで……。  
 
 
 
【好きな女優について】  
 
「AV女優なんかいっぱいいるけどよ、俺はやっぱり葵そらちゅあん! だな!」  
「岡倉くんはエロスだから、脱いでる人ならだれでもいいんじゃないの?」  
「なーんだと大浜ぁ!! じゃあお前は好きな女優っているのかよ!」  
「え、ぼぼぼ僕は…あー……お、大倉ありす…とか?」  
「ロリ系、だな。しかも引退済みの人を挙げるとは」  
「よく分かるなぁ六舛。俺、誰の事なのか全然分かんないよ」  
「カズキは、誰が好きとかないのか?」  
「う〜ん……名前とかあんまり気にしてないし、見てても覚えてないし……」  
「……なぁ皆」  
「どうしたの六舛くん?」  
「後ろに寮監のブラボーと英語の火渡先生がいるんだが、この話はまずくないか?」  
「うおわっ!! いつからそこに!?」  
「大浜が大倉ありすが好きだと行ったぐらいからだな」  
「オワッタ…ナニモカモ……」  
「ハハハ、いやまぁ、別に言い触らすつもりはないし、安心しろ」  
「ケッ、テメェらまだケツの青い十七才だろうが。サルみたいに盛ってんじゃねーよ!」  
「そういう火渡先生はどうなんですか?」  
「俺ァもう大人だからな。その手の事は雑誌やDVDに頼らなくても、現実で十分ってわけだ」  
「火渡お前…童貞じゃなかったのか!?」  
「防人……殺 す ぞ !?」  
「そうか、最近『Hでキレイなお姉さん』を借りにこないと思ったら…  
 そういう事なんだなカァーズキィィィ!! 現実で事足りてるって事なんだな!」  
「え? あ、いや、な、ナンノコトヤラ」  
 
 
 
【前戯について】  
 
「あのな、お前らが思ってるほど楽じゃねぇんだぞ、女相手ってのはな」  
「どういう事ですか、火渡先生」  
「面倒なんだよ色々とな。いきなり触れば嫌がるし、  
 ずっと触らなきゃ機嫌を悪くしやがるし、タイミングとかそうゆうのがよ」  
「そうかなぁ? 確かに急に触れば驚かれるし怒られたりもするけど、嫌がられた事は――」  
「テメーの話なんか聞いてねぇんだよクソガキ!  
 それにな、AVなんかじゃ蔑ろにされてるが、前戯とかも要るんだぞ?  
 勿論自分が気持ちよくなるんじゃネェ、どっちかっつーと女の為だ。  
 女の気がノッてくれねーと挿入もろくに出来やしねぇ。な、面倒だろ?」  
「全然面倒なんかじゃないと思うけど……相手が気持ちよさそうなのはスゴク嬉しいし可愛いし、  
 見てるだけでこっちも気持ちよくなってくるぞ?」  
「さっきからうるせぇんだよテメーは! そんな夢みてぇな話があるか!」  
「だって事実なんだからしょうがないだろ!?」  
「まぁまぁ落ち着け二人とも。  
 火渡は悪い面を挙げすぎだし、カズキはちょっと理想を追いすぎじゃあないか?」  
「だから理想って言われても、ホントにそうなんだからしょうがないよブラボー」  
「……カズキ君、こう言っちゃうのはなんだけど、その…」  
「多分、少数意見だと思うぞ。一番良い関係であることは認めるが」  
「ろ、六舛君、そこじゃなくて……斗貴子さん……」  
「…カズキ……お前は俺達より早く大人になっちまったんだな…」  
 
 
 
【事後について】  
 
「コトの最中も、自分だけ楽しもうなんて考えないこったな」  
「や、やっぱりお互いにってのが大事なんスね火渡センセぇ!」  
「何かこういう話題だと瞳の輝きが違うなお前…まぁいいけどな。  
 あと、事後も大切だぜ、事後も」  
「事後?」  
「ああ、一人先に寝たりなんかしてみろ。次の日は一日機嫌が悪いだろうな」  
「普通そんな事しないだろ。  
 自分の一番大事な人が腕の中で息切らしてるっていうのに、放っとけないよ」  
「横からグチャグチャと……じゃあテメェはどうしてるっていうんだ、あぁ?」  
「ん、俺? 俺は……別にこれといって気をつけてる事は無いけど……」  
「ほれ見ろ!」  
「…でも、斗貴――ええと、その、パートナーの子はいつも楽しんでくれてるよ?」  
「んなもん、演技だよ演技」  
「何で演技って事になるんだよ火渡」  
「女ってのはそういうフリだけはよくするんだよ、付き合う前も付き合ってからも」  
「でも、斗貴子さんは――」  
「違うって何で言えるんだ?」  
「それは……」  
「ほれ見ろ。怪しいもんじゃねーか」  
「……確かめてくる!!」  
「あ、ちょ、おいカズキィ!」  
「……出ていっちゃったね」  
「ケッ、よく動くだけが取柄だなアイツは」  
「……っていうか最後、斗貴子氏との関係を認めたな」  
(…………戦士――いや、もう戦士ではないな。  
 斗貴子、とうとうカズキとそんな関係になったか…。  
 このままカズキに幸せにしてもらえ。斗貴子を頼むぞカズキ…)  
「…? なにニヤついてんだよ防人」  
「いや、何でもない」  
 
 
 
【その後】  
 
「ねぇ斗貴子さん!」  
「キミはいつも急に入ってくるんだな。で、どうした?」  
「斗貴子さんって、いつも感じてるフリしてるの? 違うよね!?」  
「ハァ!? いや、ちょっと待て、な、何の話だ!」  
「だから、ベッドの上での事――ゲフゥ! は、肺が! 目がァァ!!」  
「いいいいいいきなり何を言い出してるんだキミは!!」  
「だってだって」  
「だってだってじゃない! 子供かキミは!?」  
「気になってさぁ……そんな事はないって分かってるけど、もしかしたら」  
「もしかしない! 私は嫌なものは嫌だと言う!」  
「じゃ、じゃあ!? ちゃんと楽しんでくれてるんだよね!?」  
「う…まぁ…」  
「あの恥ずかしそうな顔も抱き締めたらすぐ濡れちゃうのも  
 イキそうになったらずっと俺の名前を呼んでるのも嘘じゃないんだよね!?」  
「ええいうるさいぞ! 大体なんでいきなりそんな事を聞くんだ!」  
「え、岡倉とか火渡とかと話してて…」  
「………おい、ちょっと待て。まさか…したのか!? 私達の話を!?」  
「あ、いや、斗貴子さんの名前は出してないから大丈夫!」  
「でもキミは実体験を語ったんだろう…?」  
「うん、ちょっとだけ。でも大丈夫! 斗貴子さんだと分かる様な話はしてないから!」  
「……お願い……死なせて…」  
 
 
THE・猥談―――了  
 

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