い、今からやるんだ…!!
俺は大きく深呼吸をした。
「どうした、カズキ……?」
斗貴子さんの声は少し息切れしている風にも聞える。
既に露になった斗貴子さんの体は、ほんのり桜色に上気していて、とてもキレイだ。
何度見てもそう思う。
一番小さい明かりしかつけていないのに斗貴子さんの表情まで見えるのは、核鉄のお陰だろう。
「な、なんでもないよ斗貴子さん」
「そ……そうか? なんだか無理してる様に見えるんだが気のせいか?
嫌ならそんなことしなくても――」
「違うよ斗貴子さん、別に嫌なんかじゃないって!」
俺の気はやや急いている様で、斗貴子さんの声に被せて言ってしまった。
「……ならいいんだが…無理はするな」
斗貴子さんはそう言って、首から力を抜き頭を枕に預けた。
俺の目の前には、斗貴子さんの一番大事なところ。
剃ってるのか元からなのか、毛がないので鮮明に見えてしまうのが何ともいやらしい。
両手は斗貴子さんの敏感な太腿の上にある。軽く滑らせただけで斗貴子さんの体は震えるだろう。
いわゆるクンニリングス――であってたっけ?――の体勢だ。
別にクンニならしょっちゅうやってるんだけど、今日は少しいつもと違う目的がある。
斗貴子さんを――焦らす!!
事の発端は岡倉たちとの会話からだ。
猥談の拍子に、イク寸前に焦らす事がどうこうという話題になった。
「例えばよ、キレーなお姉さんにシゴかれて、イキそう! ってなったら手ぇ離されたりしてさ」
「男の人でもあるけど、女の人の場合でもあるよね。そういうの」
「あぁ、セットでよく淫語喋らせたりするな。『どこがイイのか言ってみろ』みたいな感じで」
やけに岡倉達は盛り上がってたけど、俺にはよく分からなかった。
「なぁ、あれって、どこがいいんだ?」
俺が自分の気持ちに正直にそう言うと、六舛が率直にこう返してきた。
「斗貴子氏で試してみたらいいじゃないか」
何で六舛が俺と斗貴子さんがもうそういう関係だって事を知ってたのかは疑問だけど、
物は試しと、六舛に従ってみる事にした。
でもよくよく考えてみると、『焦らし方』というのがよく分からない。
相手がイク直前で止めればいいんだろうか? AVとかじゃそんな感じだけど。
……でも、やっぱり可哀想だよなぁ……。
ちゃんと斗貴子さんをイカせてあげたい!! って気持ちがどうにも捨てきれない。
別に、わざわざ斗貴子さんに嫌がりそうな言葉を言わせたくもないし。
「……カ、カズキ…? なんだ、その、そんなところをジッと見詰められると……」
いつの間にか、斗貴子さんが上体を少しだけ起してまたこちらを見ていた。
「あ、ご、ごめん斗貴子さん!」
ぼうっと考え事をしてるあいだ、俺の目線は斗貴子さんのソコに集中していたようだ。
斗貴子さんもさぞ恥ずかしかっただろう。ごめんね斗貴子さん!
「す、すぐ始めるから!」
とりあえず、必要以上に湿っているそこに優しく口付けする。
「ひゃうっ」
斗貴子さんの体が一瞬こわばって、すぐに弛緩した。
逃げないようにしっかりと太腿を腕で固定して、割れ目に舌の先端をそわせる。
斗貴子さんの奥からたっぷり溢れる愛液が俺の舌に粘りついた。
「あっ、あ…ひゃっ…」
クリトリスまで到達すると、それを舌全体で押し潰したり舌先で刺激したりする。
斗貴子さんは両手で口を押さえて、喘ぎそうになるのを必死に我慢していた。
……我慢なんかしなくていいのになぁ。
好きなだけイッてくれても構わな――じゃなくて!
そう、今日は違うんだ。もう一度自分に言い聞かせてから、俺はクンニを再開した。
クリトリスへの愛撫もそこそこに、舌を膣の入り口に移動させる。
何と言っても、斗貴子さんは生粋の膣派。
まああれだけきついんだから感度抜群でもしょうがない。
まず、舌先でちょろちょろと膣口を舐め回す。
それからほんの少しだけ舌を挿入すると、斗貴子さんが目を見開いて体を震わせた。
「んはぁっ!! ……ぁ…ぅう」
……指の隙間から漏れている声を、もっと聞きたいな。
俺は更に舌を進入させて、唇を陰部全体に触れさせた。
「か、かず、やぁあ!!」
じゅるじゅるとわざと音を立てながら、斗貴子さんの天然ローションをすする。
歯をぶつけない様にするのは中々難しいけど、最近は慣れてきた。
唇も微妙に動かして割れ目全体を圧迫すると、もっと気持ち良くなってくれる事も知っている。
舌をピストン運動させて、どんどん蜜を掻き出すけど、費える様子は全く無い。
「カ……わた、もぅ……」
斗貴子さんが切羽詰った声で語りかけてきた時に、やっと俺は目的があった事を思い出した。
じ、焦らすつもりだったんじゃないかっ!
俺は名残惜しい気持ちをおして、一気に斗貴子さんの股から頭をあげた。
「ひゃあぁうっ!」
斗貴子さんの口から一際大きい声があがった。
……な、何だか、やっちゃいけない事をやってしまった気がする…。
斗貴子さんの胸は激しく上下しているけど――多分、イッてない。
何故かは分からないけど、斗貴子さんがイッたかどうかは感覚で大体分かるからだ。
…何か、申し訳ない気持ちで一杯になってきた。
じっと斗貴子さんの頭の方を見詰めていると、斗貴子さんがゆっくり頭を持ち上げた。
徐々に、徐々に浮き上がる斗貴子さんの表情は――
「……かずきぃ」
真っ赤になった頬と傷。流れ出しそうな程とろけた瞳。下がった眉尻。
眉間によった悩ましげなしわ。ひかえめに搾り出された声。
斗貴子さんの表情は、俺の予想とは違って、決して怒りでも失望でなかった。
ただただ淫靡なその顔は『おねだり』。
多分、斗貴子さん自身も全く意識なんてしてない『おねだり』だった。
もっと快感が欲しい、俺に甘えたいという願望が、斗貴子さんの顔全体に表れていた。
いつのまにか俺の胸は信じられないくらい高鳴っていて、血圧急上昇、ノックアウトしそうだ。
俺は急いで斗貴子さんの秘部に口をつけて、もう一度クンニを始めた。
こ、今度は絶対途中で止めたりしないからね、斗貴子さん!!
そして、その後。
無事斗貴子さんを気持ちよくさせて、一段落したベッドの上で、俺は斗貴子さんに謝った。
「…さっきはごめんね、斗貴子さん」
「……? なんの事だ?」
斗貴子さんはよく分からないという顔をしていた。
……なんの事だなんて言われても、説明が難しいんだけど…。
「別に謝られるような事をされた覚えはないぞ? だから謝るな」
斗貴子さんは軽くそう言って、軽く微笑んだ。
…どうも、別に気にしてないようだ。
「…斗貴子さんがそう言うならいいんだけどさ……」
何だか、釈然としない所が残るけど。
「そ、それよりカズキ……」
斗貴子さんが、言いにくそうに口を開いた。
「……つ………」
「…? つ…何?」
「つ……続き、早く…」
チラリと一瞬だけ俺の方に寄越した目線は、さっきとまるで同じだった。
「わ、分かった! 斗貴子さんがそう言うなら!!」
俺は素早く斗貴子さんを抱き寄せた。
私はカズキに抱き寄せられながら、ふと思い至った。
も、もしかしてカズキは、こういう風な表情というか、動きというか、に弱いのだろうか…?
でも……わ、私自身恥ずかしいし…いやでも、カズキが喜んでくれるなら…その方が良い…な。
が、がんばってみるか……ちょっとでもカズキを喜ばせたいし………。
かくして、カズキ君は焦らす事を忘れ、斗貴子さんは上手なおねだりの仕方を覚えましたとさ。
カズキの焦らし大作戦―――了