「火渡様…」
「そんなにくっつくな。暑ィじゃねえか」
「いいえ…こうしていないと…火渡様が…どこかに行ってしまいそうで」
「どこにも行きゃあシネエっつの! あんまフザケたこと言ってっと殺すぞ!」
そんな二人を睨んでいた、目つきの極悪な美少女が呆れ顔で両親に向かって言う。
「なあ、父ちゃん。母ちゃん。なんかもう、いい加減にしてくんねーか」
ひと睨みで十人は視殺できそうなくらいの凶悪な目つき。
それなのに、顔全体はそれはもう輝くような麗しさ。
両親の特徴を部分的に受け継いだ火渡と華花の娘は
結婚10年になるのにいまだにアツアツラブラブストロベリィな両親に向かって何百回目かの苦言を呈した。
「まあ、お父様もお母様も、仲がよろしくて結構じゃないですか」
と、こちらは男っぽい顔の輪郭なのに優しい目をした美少年が姉を説得する。
この双子のきょうだいはどこから見てもお互い似ていないが、それでも間違いなくこの両親の息子と娘だった。
「オラ、子供たちが見てんじゃねえか。離れろって」
「…イヤです……火渡様が、わたしを殺したいのなら、どうぞお好きになさってください…」
そう言いながらいまだに十代に間違えられる発育不良気味な美少女妻は、愛しい男の胸に顔を埋めていた。
「ね、お母様がこうなったら梃子でも離れないんですから。それより姉さん。
今日は斗貴子さんとカズキさんがお子さんを連れていらっしゃるんですから、歓迎の準備をしたほうがよくはないですか?」
「あー、斗貴子おば…お姉ちゃんちのカズトちゃんかー! また稽古つけてやっか!」
斗貴子が近くにいないのにもかかわらず言い直すのはなにか恐ろしい目にでもあったのだろうか。
「姉さんは加減てものを知らないんですから…カズトちゃんが泣いたら降参してあげるんですよ?
カズちゃんは誰に似たのか、すごく負けず嫌いなんですから」
そんな大人びた双子の息子と娘をほっといて、新婚10年目のバカップルはダイニングテーブルで
ストロベリィタイムを続けていたりする。
「火渡様…」
「子供らの見てる前で…そ、そんなことすんじゃねえ」
「イヤです。 私の唇も、身体も、すべて火渡様のものなんですから…」