「知ってるぞ」
戦闘が始まる直前、鷲尾がカズキと斗貴子に向けて語りかけた。
「何?」
「カズキ、化け物の言うことに耳を貸すな」
鷲尾の言うことに気を殺がれそうになったカズキに対し、斗貴子がきつく言い放った。
「う、うん。分かった」
「そう言わずにしばし聞け」
武装錬金を構え臨戦態勢に入った二人に、尚も鷲尾は余裕を持った態度で接する。
「貴様達が白昼に二人ででぇとをしていたことを」
その言葉に二人の顔が瞬時に真っ赤になった。
「な、な、な、なっ?!」
「何を言っている!この化け物が!!」
狼狽するカズキに対し、斗貴子は強気に鷲尾と対峙する。
「しかも一度のみならず二度三度とでぇとをしていたことを」
回数まで告げられ、流石の斗貴子もたじろいだ。
(そんな……。カズキとの秘密のデートが覗かれていたなんて)
ホムンクルスに覗かれていたということ、それに気がつかなかった自分が許せなかった。
鷲尾はそんな斗貴子に追い討ちをかける。
「知ってるぞ。その後二人で雑木林に入り、熱い接吻を交わしたことを」
そこまで言われ、カズキはがっくりと地面に倒れ込んだ。
見られていたという羞恥に耐えかね、とうとう戦闘意欲も殺がれた。
「カズキ!!」
カズキの肩に手を掛けて、なんとか復活させようと話しかける。
「知ってるぞ。女子の方から積極的に男子を求めていたことを」
「それ以上その汚らわしい口を開くな!臓物をブチ撒けるぞっっ!!」
しかし鷲尾は口を閉じずにさらに斗貴子に言葉攻めを行う。
「知ってるぞ。女子が服をはだけ、男子に絡みついたこと」
「くぅぅっ……」
恥ずかしさに負けたのか、斗貴子は頭を抱えて座り込んでしまった。
「さらに女子が男子のズボンのチャックを慣れた手つきで下ろし、曝け出した物を咥え込んだ」
鷲尾が淡々とその時の状況を緻密に口で説明していく。
「知ってるぞ。あれは確か“クンニリングス”というモノ――」
「違う、フェラチオだ!!」
鷲尾の間違った知識を正してくれたのはカズキだった。
「そうか。訂正に感謝する」
こんな時でも武人としての礼儀を忘れないとは、流石鷲尾。
「続けるぞ。快楽に負けた男子が情けなく果ててしまった姿が印象的だった」
「それも違う!少なくとも五分はもってたぞ」
涙ながらに抗弁したのはカズキ。そんなに持久力に自信があるのか?
「何を言っている!?すぐに私の口の中にブチ撒けたではないか!」
カズキに怒鳴りつけるのは斗貴子。そんなにお口に自信があるのか?
だが二人に構うことなく、淡々と鷲尾は続ける。
「まだいくぞ。果てた男子は女子を悦ばせるべく、その平坦な胸に手を」
「あ」
漏らしたのはカズキだった。恐る恐る斗貴子の方を見ると、辺りの空気が歪むほどの闘気が満ちていた。
「もう許せんっっ!!貴様の肢体、切り裂いてやるっっっ!!」
バルキリースカートの刃を煌かせ、斗貴子は鷲尾へと飛び掛った。