宿舎の一室、部屋中央にテーブルを配置し、その上にはチョコレートやクッキー、そして4つの紅茶。それを囲むのは1年生の仲良し3人に、新たに転入生の毒島を加えた4人だった。  
 そんな中、毒島は耳を大きくしつつ、真っ赤な顔を俯けていた。  
 全員が同性といえど、女同士の会話というのは、こうもオープンなものなのか。と思いながら。  
「『アレ』・・・本当に凄いね。うん・・・」  
「・・・あたしも使ってみたけど・・・ちょっとだけど・・・凄いね・・・アレ」  
 ほんのり頬を染めながら話すちーちんとさーちゃんを見て、恥ずかしがっているのは自分だけではない事に安心する。  
 しかし、  
「ホント、すっごいよねー」  
 にこにこと笑って、率先してこの話題を持ち出したまひろには驚愕してしまう。驚愕で開いた口は紅茶を一口飲み込んで閉めなおす。ごっくん。  
 皆の赤らんだ顔など気付いていないかのようにまひろは続けた。  
「あれバイブじゃなくてディルドーっていうんだね。あとあれ、だいたい男の人の標準サイズなんだって。13センチ。太さはどうなのか忘れたけど」  
 相変わらず天使のデフォルト状態のような人の良い笑顔なのに、とんでもない言葉を発する。  
 話を追うと、まひろ、ちーちん、さーちんの3人は、毒島の転入以前に、いわゆる大人の玩具を買ってみたらしいのだ。  
ちーちんはまだちょっとしか使用した事がないらしいが、まひろとさーちゃんの2人は既にその玩具の実力を十分体験済みらしい。  
 話の内容は逃げ出したいくらいに恥ずかしかったが、毒島は逃げる事が出来なかった。  
実際には、興味があったから逃げようとしなかったのだ。逃げようと思えば『そういえば今日は用事があるんでした。すみません』とかなんとか言えばこの場から『さらばだ!』とばかりに逃走できるだろう。  
 しかし毒島は少しでも多くの卑猥な情報を知りたかった。  
現在絶賛(毒島自身が自分を絶賛)お付き合い中の愛しい火渡といつか卑猥な事をするために。  
 毒島の予想と偏見とを組み合わせると、火渡は多くの女性と交わった事があるはずだ。  
さらに嫌な予想を膨らませると、今現在火渡が付き合っているのは自分だけではないのではないか。  
偏見を膨らませると、火渡はとてもテクニシャンで、火渡に依存している女性がいて、毎夜毎晩求められているのではないか。  
 毒島は架空のいるかも知らないライバルに闘志を燃やしていた。いないかもしれないのに。  
 いや、いないかもしれないがいるかもしれない。敵には最大の装備で挑むべきだ。そして現在必要な装備は知識である。  
それも卑猥なら卑猥なほど強い武器となる、はずだ。たぶん。  
 色々総合すると、付き合っているけど片思いな気がして、毒島は焦りを感じていた。  
 英語教師火渡と毒島が付き合っているということを知ってか知らずか、まひろは毒島にも発言を促した。  
「華花ちゃんは? 使った事ある?」  
「い、いえ、まだ・・・」  
 言って、毒島はハッとした。言葉の間違いとはいえ、気付いてからは遅かった。  
 まひろは既にニンマリと笑っていた。  
「そっかぁ! 『まだ』かぁ!」  
 男性経験も既にある、まひろとさーちゃんからたんまりと口頭での技術指導。そしてちーちんも負けじとするかのように豊富な知識。  
そして「これで華花ちゃんもデビュー!」とハイテンションでまひろが差し出した未開封のディルドー。  
そしてさーちゃんとちーちんが「これもあげる」と女神のように微笑んで差し出した2冊の本。  
 それらを土産に、毒島は気付いたら自分の部屋にいた。未開封の玩具と2冊の本は鞄にしっかりと仕舞われていた。  
 皆、私と火渡様がお付き合いしている事、知っていたんだろうなぁ。  
 毒島は友人の心遣いに感謝して、一拍、やっぱり複雑な想いが駆け巡った後、  
皆あんなに清楚で可愛らしいのにとんでもないことをしているんだという事に少なからずショックを受けてしまい、放心した。  
 
   *  
 
 火渡は昼寝後のボケっとした頭を覚ますべく、タバコをふかす。紫煙は上るにつれて薄くなっていき、  
パタパタと忙しく台所で動き回る毒島の上にある換気口に、料理の匂いと交じって排出されていく。  
 毒島は可能な限り火渡の飯をわざわざ作りに来てくれる。しかもどんどん上達していっている。いつ火渡が嫁に貰っても良いくらいだ。  
 強制したわけではなくとも、材料持参で来てくれるので、火渡は休みの日など、いつにもまして何もしなくて良いのがありがたかった。  
既に毒島の存在は火渡の生活の面でも気持ちの面でも必要不可欠なものになっていた。  
 ロリコンと誰に笑顔で罵られようとも、相思相愛なら問題ないじゃないか。と開き直って煙をふかす。  
 元々毒島の好意には気付いていたが、憧れ的なものだと思い気にしていなかった。  
 だが、なんとなく毒島が火渡の食事をつくる習慣が根を張ってきた頃、  
今のようにほとんど寝ぼけた状態の火渡に食事を並べた毒島が発した「ひ、火渡様! その、あの・・・私! 火渡様がすす好きです付き合ってください! お願いします!」との言葉。  
 頭が冴えきっていないものだから、何故毒島の顔が真っ赤なのかもスルーし、  
つい「おー、別にいいぜ」と『嫌いじゃねぇし』くらいの思いで言ってしまった。あの時の火渡は本当に何も考えていなかった。  
年の差とか思春期特有の憧れから言ってしまった衝動的なものに対する思いやりとか、年上が持つべき配慮は出来たてホカホカの料理の上に落としてしまっていたのだ。  
 食べてから気付いた。自分はとんでもない事に了承してしまったのだと。  
 そして思った。何故あのタイミングで告白したんだ毒島。  
 さらに思った。会うたびそんなに世界中の誰より幸せですと言わんばかりに嬉しそうにされては『ちょっと考え直させてくれ』など言えない。  
 しかし思いなおす。別に嫌いじゃないし嫁として貰って悪い事など何もない。いじらしい程懸命に尽くす最高の女じゃないか。  
後悔し悩んでいる間に愛しさが募ったのも事実。  
 結果オーライだった。  
「うまい」  
 今日の料理もがっつきながら感想を漏らす。  
 火渡よりもはるかに少ない料理をつつく毒島は、照れて頬を染めながら「ありがとうございます」と少し俯きながら幸せそうな表情をした。  
 
 
 ・・・普通に結婚生活と言っても間違いじゃないんじゃねぇか?  
 火渡は映画に食い入っている毒島を見ながら思った。  
 油断するとソファから落ちるかもしれないくらい前に出ている毒島は子供っぽいが、パジャマの柄も子供っぽいが、体つきもまだまだ子供っぽいが、・・・子供だな。  
 それでも、風呂上りの昼間よりぺたんこな髪やらに色気がない事もない。むしろそそり立つ。  
 なるほど、ロリコンといわれるわけだ。思いつつ火渡はいつも通り開き直った。相思相愛を免罪符に。  
 しかし、子供と思うのは年齢差がひらいているからで、同年代の奴等からみたら毒島の無防備なところなど、十分過ぎる色気ではないのか。  
 斗貴子とカズキは、普段から燃やしたいくらいにイラつく愛し愛されっぷりを周囲に見せ付けている、ドツキ漫才にも見えるが・・・。  
あの2人の間に割って入ろう。ましてや略奪愛などはなからやる気が失せるというもの。  
 しかし、火渡と毒島の場合は、付き合っている事を知っていそうなのはあまりいない。  
毒島が友人に話しているとしたら数人が知っているだろう。大多数が噂で知ったとしたとしても、確証は得られない。学校では完全に教師と生徒だからだ。  
 とすれば、自分にもチャンスがあると勘違いした発情期の男から毒島が誰かから好意を受けているという事もあるかもしれない。  
火渡は毒島にまとわりつく男など考えただけで消し炭にしたいと常々思っている。  
 そんな発情期男が風呂上りの毒島(ガスマスクなし)を見てしまったらどうなるだろうか。  
 オレだったら犯す。  
 まだ毒島に接吻までしか手をだしていない火渡は思った。  
 そんなこんな火渡が考えた結果、休日だけでも火渡の部屋に毒島がお泊りというのは決定事項だった。  
おかげで火渡は栄養の偏っていない健康的な体をしている。  
 
   *  
 
 休日に付き合っている人のところでお泊り。  
 これが女の子をどれだけ緊張させて、尚且つ期待させるものなのか火渡様は分かっていない。そう毒島は思った。  
 手順1、キスをする。  
 ガスマスクなしで既に心臓が強張っているのかドキドキと脈打っているのか判別もつかない状態だけれど、  
勇気を出して欠伸をして眠そうな火渡の傍に寄る。そうすると、火渡は毒島の期待を大人の余裕と言わんばかりに意地悪く笑ってキスをする。  
 その満足そうで火渡らしい笑みに体中の血液が沸騰しそうなくらい体温が熱く上昇して、毒島はいつも終わると俯いてしまう。  
 手順2、一緒にベッドに行く。  
 いつもこれが実行されないし出来ない。1の後、火渡は当たり前のようにソファに身を投げ出して寝てしまう。  
お前はベッド使え、と言って。毒島が今一度勇気を奮い立たせている間に寝てしまう。  
 男らしいイビキも愛しい・・・。と思いながらも毒島はいつも不服だった。何故あの本の手順のようにならないのだろう、と。  
 ちーちんから毒島が頂いた本は、『女の子のお勉強』と題された、女性誌の付録らしい冊子だった。  
 初めて開いた時、前書きのように  
『男にばかりまかせるのではダメ! 女も彼氏のために知識をつけましょう。よりよいセックスは恋人との関係を深くします』  
と書かれていて、毒島は自分なりに考えていた事が正しかったと感動した。  
 自分も頑張るんだ! 火渡様に悦んでもらうために!   
 思うや否や、その本は読み終わっていた。『フェラチオ』や『イマラチオ』や『前立腺』等の性的快感を得るための行為や部位について、  
項目別に辞書のように書かれた本だった。口頭でだいたいを教えてもらった事もあり、毒島自身、短時間で飲み込めた自覚があった。  
 この冊子には、バリエーションの富んだ『雰囲気作り』も紹介されてあり、特別なものを用意しなくても、  
一番自然な流れで持ち込めるものを選び、ことさらよく覚えた。  
 しかしなかなか実行出来ないのだ。手順2へ踏み込めない。  
 毒島はさーちゃんから頂いた本も熟知し、学習面は完璧なのにも関わらずだ。  
 その本は、少女漫画だと思って読み進めていたらエロ漫画だった。毒島はすぐに悟った。これは男性の性欲を解消させるためだけのものではない。と。  
 漫画の主人公とヒロインは付き合っているが双方共にセックスが下手なので、一緒に気持ちよくなる方法を手探りで探していく。  
という名目でセックスをするという内容の漫画だった。しかしそのセックス描写は、未体験の毒島にとって、とにかく分かりやすいものだった。  
 『そうそう・・・歯は立てないでね。裏筋のところも気持ちいいんだ』『もっと、奥まで口に含んでくれると気持ちいいよ』という男の台詞や、  
『この亀頭の部分をひっかけるみたいにすると、凄く気持ちいいみたいね・・・』『喉の奥まで突っ込まれてるみたいで、ちょっと苦しい・・・けど、こうすると気持ちいいみたい』という女のモノローグ。  
絵と詳しい説明文で紹介しているみたいで、頭の中でのシュミュレーションがやりやすかった。  
 毒島がまひろに頂いたディルドーも、『こんな形なんだ・・・』という驚きがあったものの、火渡との行為に向けて覚悟も決まりやすかった。  
 実際にそのディルドーを火渡のものだと想って行き過ぎたシュミュレーションもして、本番に向けては完璧だ。  
 後から冷静に学習したことを考えると、顔から火が出るほど恥ずかしいと身悶えしたが、あと毒島に必要なのは本番になだれ込む事だけだった。  
そうだ、なだれ込め! 時には勢いも大切だと本にも書いてあった事を思い出し、毒島は『今週こそ! 今日こそ!』と火照る顔を振って決意した。  
 前よりずっと積極的になれた。前よりずっとずっと恥ずかしいなんて思わないで、自分に自身を持つことが出来るようになった。  
 
「ひ、火渡様!」  
 今その成長した自分を使わず、いつ使うのか。そう奮い立たせて、毒島は小さい声ながらも叫ぶように呼んだ。  
 一方、火渡は『さぁそろそろ寝ようか』等と考えていたようで、不意打ちにちょっと驚いたように毒島を見た。  
しかし、毒島の切なげな表情を汲み取ると、毒島の小さな顔を押さえて近づく。毒島はすぐにきゅっと目を閉じて、火渡の体温を敏感な唇で感じ取った。  
 受身でいる毒島。これではいつもの自分だ。毒島はそんな自分を断ち切ろうと、おそるおそる両手を火渡の首にまわした。  
手の支えを失ったソファとして活用していたベッドが軋む音がやけに大きく聞こえた。  
首というものは温かいものだが、毒島にはその熱さが自分の体温なのか判別できていない。火渡が離れないように強張った力を込める。  
 少しして、羞恥が臨界点を突破したのかもしれない。頭の熱が沈むように胸に落ちてくるのを感じて毒島はそう思った。  
 一番近くで恋人を感じる。それがどれだけ幸せか、今の毒島には分かった。  
 落ち着いて火渡の体温を感じれば、自分と同じような温度な事を確認できた。唇も思ったより柔らかくて驚いた。  
以前はそれを感じる余裕もないほど緊張していたけれど、それがどれだけ勿体無い事か。悔しくて、唇を小さくひらいて下唇をやわく食んだ。  
 ──ぬるりと感じた事のない感触。びっくりして目を開けると、火渡はいつもより意地悪い表情を浮かべて、抑えた毒島の顔を動かないようにし、舌で毒島の咥内を嬲る。  
「・・・んぅ・・・ぁ」  
 無理矢理開された唇に唾液が走った。毒島の動揺は何処で息をすればいいか一時忘れてしまうほどで、  
小さな喘ぎと一緒になって出てきた時には、完全に恥ずかしさを取り戻してしまっていた。  
 自ら火渡の唇を食んだ毒島はもういなく、何も出来ず、絡め取られた舌をいいように弄ばれて瞳を潤ませているだけだった。  
「ひぁ、」  
 ──あ。  
 下腹部が熱い。その感覚になった時の事を思い出し、その途端温度が一気に上がったみたいになって、毒島は一層恥ずかしさに顔を染めた。  
 淫らな想像をした時は決まって下腹部を中心に全身が温かくなる。そしていつも信じられないくらいに濡れているのだ。  
 毒島にはもう自分の性器がいやらしくも濡れている事に気がついてしまった。  
想像の中でも、火渡に見られて恥ずかしくて興奮してたまらなかったのに、本当に見られてしまったらどうなってしまうのだろう。  
 ようやく満足そうに目を細めて火渡は離れた。引いた糸に、毒島はぞくぞくと悦びを感じてしまう。  
 しかし、内心で湧き上がる興奮とは裏腹に、体は呆けたように動かない。  
『衣類を自分から脱ぎましょう』『むしろ脱がせましょう』というマニュアル文章を思い出したが、飲まれるように火渡に見惚れてしまう。  
 首に絡めた腕だけは解かないように気をつけた。  
 そんな毒島の意図に答えるように、火渡は子供の着るようなパジャマに手を掛ける。やっぱり面倒だと思ったのか、下着に手を突っ込んだ。  
「ひぁ!」  
 既にとろとろになっている部分を指で擦られる。その指には愛液が絡みつき、ぬるぬると撫ぜられながら、表皮で一番敏感な部分にも塗られる。  
 慰めていた時と同じような動きでも、火渡にされるとこんなにも違う。見透かされているような羞恥も重なり、毒島はより敏感になってしまう。  
「なんだ、濡れすぎだろ」  
「ですけど、火渡様が・・・」  
 責任転嫁。言ってすぐに後悔した。上司に責任を擦りつける部下とは何事か。  
 火渡様に愛される想像をして毎晩自分を慰めていました。ですから夢のような今、期待に溢れた末、淫乱でごめんなさい。  
 毒島はそう思い、申し訳ない気持ちと羞恥、いやらしい自身を隠したくて火渡の首元に顔をうずめた。  
 そんな毎晩の毒島の自慰など知らずに、火渡はやる事のない片腕を強く抱き寄せる事に使った。固定ともいう。  
「──ぁんん!」  
 毒島が抱擁にほっとしたのも束の間、ぐちゅりと指が侵入してきた。あくまで少しだけだが、確認には十分だったようだ。  
「・・・いれても大丈夫だな?」  
「・・・はい・・・」  
 きゅぅんと胸が締め付けられるような気持ちになった。毒島はこれを待ちわびていたのだ。  
 ソファ代わりに扱っていたベッドに倒れこみ、毒島はじぃっと火渡を見つめた。  
ズボンを脱いでぽいっと放り投げたのを見て、毒島も慌てて立ち上がりパジャマを脱ごうとしたが、  
「・・・・・・」  
 大きい。  
 
 ふと目に留まった火渡の男性器はまひろに頂いたディルドー(標準サイズ)とは一回りも二回りも・・・、突然の驚きに毒島は目を白黒させた。  
 そそり立つものは偽者を見たときの衝撃と比べ物にならなかった。  
 早く脱げよと言わんばかりの火渡の視線に気付き、はっとして勢いまかせに下だけ脱いだ。  
寝苦しくないように作られている少し大きめの上着のパジャマの裾を引っ張って、恥ずかしい事になってしまっている股だけは隠そうと試みる。  
 何故か火渡が小さく呆れたうような溜息をついた。全部脱がないのが不満なのだろうかと思ったが、火渡も同じ格好なのだからこれ以上恥ずかしい格好は勘弁願いたかった。  
「・・・・・・」  
 それにしても大きい。毒島は再度思った。心なしかさっき見た時より大きくなっている気がするのは気のせいだろうか。  
 毒島は自分を組み伏せるような体制をとろうとする火渡を一度止める。  
「あ、あの・・・それ・・・」  
「何だ? 触るか?」  
「・・・触ってみたいです・・・」  
 火渡は意外そうだったが、あぐらをかいて座りなおした。  
 毒島はおそるおそる手を伸ばし、触れる直前に火渡の表情を確認した。  
微妙な空気は火渡といえど気恥ずかしいようで、滅多に見れない複雑な表情をしていた。そのことに心脈を速めながら、ようやく本物の男性器に触れる。  
 柔らかいようで硬くて熱くて、多少は違えど冊子と漫画の絵とディルドー通りの形に感嘆した。  
「・・・骨ってあるんでしょうか?」  
「知るか。ねぇだろ」  
 疑問は解決したようで解決されなかった。  
骨がないのにこんなに硬いというのが分からなくて、余計混乱した。  
しかし順応力やや高めの毒島は即座に『これはこういうものなんだ』と納得する事にした。  
 次にすべき事は・・・と考え、『まず勃起させる』という文章を思い出すが、既にその状態である。  
しばし悩んだ結果、その過程を飛ばすのも変な気がして、ゆっくりと口を開けつつ、近づいた。  
 しかし進行は妨げられた。  
「いや、無理しねぇでいいぞ」  
「え、あ、はい、すみません。──いえ、無理してないですよ! 本当に!」  
 額を手の平で猫を扱うように押さえられながら、毒島はあわあわと両手をバタつかせる。まるで舐めたくないという風に解釈されているのではないかとさらに焦っる。火渡は初めての毒島に対して気遣いで言ってくれた言葉なのに、こんな失礼な気がして仕方がなかった。  
「違っ、好きです! 舐めるの好きです!」  
 これではただの淫乱女だ。  
「好きというわけでもありませんが! 本当に舐めなくないなんて事な──」  
「分かった、分かったから落ち着け」  
 落ち着きのない様子に呆れている火渡だったが、毒島は別の意味にとってしまう。  
 めんどくさいと思われている・・・!  
 毒島はさぁっと血の気が引くのを感じた。『処女は面倒だと思う男の人もいるので』云々とのマニュアル知識が頭をよぎる。  
そう思われてしまっては今まで何のために偽者を漫画の見よう見まねでしゃぶったのかもそれ以降もやってみたのかも分からない。  
 またも勢い任せに、毒島は額を押さえる手を振り払って、ぱくっとした。「うぉっ」と本当に小さな声が火渡から出た。  
「んんむぅ・・・ん」  
 よく分からない臭いに鼻をくすぐられ、眉根を寄せる。  
 ここまでやられておいてやめさせるのは・・・。と思いなおしたのか、火渡は毒島の頭に撫でるように手を置いた。  
それが毒島をくすぐったいみたいな気持ちにさせる。  
「ん・・・んぅ・・・」  
 片手で根元を掴み、頭を動かしながら手も運動させようとするがなかなか上手くいかない。  
「ひぅえいひまう」  
 失礼しますと言ったつもりだが、火渡は「は?」と疑問符を浮かべる。  
毒島が唾液を纏わりつかせて滑りを良くすると何か納得したようだった。  
 毒島は必死に様々な事に気遣いながら奉仕する。『唾液はべちょべちょになるくらいたっぷり』だとか『亀頭に唇を引っ掛けるように』だとか。  
唾液が根元を掴む手にまで侵食してくる。  
 小さい口いっぱいに含みながらの丁寧な口取り。それを火渡は無理矢理終わらせた。  
 
「ふぁ?」  
 頭を押しのけられて、そのまま後ろに倒れる。覆いかぶさるように目の前にいる火渡に、毒島は期待に胸を鳴らした。  
 先ほどの行為で毒島も十分に興奮したため、太腿に愛液が垂れるほどに濡れている。  
「ひわたりさま・・・」  
「すぐ終わらせる。我慢しろよ」  
 毒島は髪の根元を梳くように撫でられ、またくすぐったい幸せを感じ、小さく頷いて目を瞑った。  
 それを確認した火渡は猛る性器をあてがい、先にぬるりとした愛液を馴染ませ、挿入した。  
「んんっ」  
 毒島にも入ってきた感覚が分かり、なんとか落ち着くことですんなり入るようにと気遣う。  
 はぁ、と吐息した瞬間に、火渡は一気に貫いた。  
「あ、ひぁっっっんんっ!」  
 玩具よりも大きいものの侵入に、初めて玩具を膣内に入れた時のような気持ち悪い異物感が襲ってきた。  
しかし、入り混じる体温でそれらの不快感が抜けると、ぞくぞくっ、・・・駆け巡る体中の快感に毒島は惚悦する。馴染んで同じ温度になる感覚で卑猥感が増す。気持ちいいと感じる度に膣が呼応するように締まる。  
 毒島は悦ぶ自分を見られたくなくて、手のひらで顔を隠した。だから毒島は火渡のほんの少し表立った不機嫌に気がつかない。  
 火渡は毒島の肩を押さえつけた。同じ運動でも、それはより深い所を突く。  
「ひぅっっっ! あっ、あぁっっ、あっぁ・・・ぁん!」  
 身体は互いの快感を促すようにきゅぅと締まり、火渡の支配欲を感じた胸が焼けるように熱くなっているというのに、毒島はあたかも未知の感覚から逃れたいかのように首をふる。  
 その間も最奥を突く勢いは増していく。  
 突然粟立つように身体が震えた。それは跳ねるように高まり、  
「あっ・・・ひわっ──! や、ああぁぁぁ!」  
 逃れられない無理矢理の絶頂を迎えた。  
「ひぁっ、ぃや! まだっ──もっ──!」  
 火渡さまいやですまだするのですかもうだめです無理です。そんな長い言葉が呂律の回らない今の毒島の口で紡げるはずもなかった。  
 身体が敏感になる絶頂直後が一番気持ちよく一番辛いのに、  
「オレはまだイってねぇ」  
 火渡はすっぱり迷いなく断罪するように言い捨てて、毒島を押さえつける力を強めた。  
 尚も続く逃げ場のない体中を駆け巡る強い快感を耐えようとするが、身体の曲げられたつま先までもびくびくと震えて仕方がなかった。  
毒島は下腹部だけに留まっていた快感など、所詮幼稚な独り遊びであった事を思い知った。  
「あぁっ・・・はあぁっ! あぁっ、あっ・・・ふあぁっ──ああぁぁっっっっ!」  
 間隔短く次々と駆ける絶頂を繰り返した後、火渡が小さく呻いた。直後、何かが逆流してくるのを快楽に震える体で感じた。体内に注がれる精液に満たされる。  
 しかし、身体に無理をさせた代償なのか視界が暗転した。そんな中で、毒島が思い出したものは、コンドームの存在だった。  
 
   *  
 
 朝、毒島がいない代わりに、今の季節に丁度良い厚さの羽毛毛布がきっちり掛けられていた。  
 いつもより目覚めがいいのは昨夜のお陰だろう。火渡は思い出して、良い目覚めがどん底に堕ちたと同時に怒りもわいた。  
 毒島の幼児体系から、まさか非処女という事はありえないという先入観。そのまさかだったとは。  
意外ではあったが、ありえないこともないということで、火渡は自分を納得させた。『ヤりやがったのはどこのロリコンだ』と自分の事を棚に上げて思った。  
 その後すぐに二番底が火渡を待っていた。  
 中だしセックス。この世にこれほど男を歓喜させ絶望させるものはないだろう。  
メイドバナナやパンチラ萌えなど、数多の卑猥な用語を並べたとしても中出しは別次元にあるものとして考えられるという説があってもおかしくない。なぜなら責任問題という政治にしか使わなそうな語とも関連性があるからだ。  
 火渡は昨夜を再度思い出す。自身に異常はなかった。むしろ泊めておいて手を出さない今までの方が異常だったのだ。  
 毒島も同意していたと解釈しているので、やったこと事態に罪の意識はない。  
無理をさせたのは悪かったと反省をしているが。しかし、中出し。これには火渡といえど罪悪感と不安がのしかかっていた。毒島の生理について火渡は何も把握していない。  
しかし『あの小学生のような体型で生理はまだだろう、今なら中だしし放題』と思うような悪人ではない火渡は頭をかかえた。  
 当の毒島は、既にひわたりよりも早く起き、朝食を作っておいてくれ、『今日はもう宿舎に直帰します。お邪魔しました』とのメモを残していなくなっていた。  
 直帰されたら何も聞けない上に、今日は2食も出前じゃねぇか。  
不満と不安が交じりつつも、火渡は健康的な朝食をもそもそ箸をつけながら考える事にした。  
 
 毒島は休日に嫁のような事を十分やっている。掃除洗濯料理と。休日のみではあるが、嫁として何の不足もないだろう。  
火渡は焼き鮭をほぐす間に『じゃぁ結婚してしまえばいいのではないか』と考えた。  
 その前に年齢の事を忘れていた。もちろん火渡は既に結婚が許される年齢だ。肝心の毒島はどうか。  
現在どくしまは16歳にだったか。火渡はほぐした鮭を完食しながら「結婚できるな」と確認した。  
 婚姻届けに必要な、保証人について。火渡も毒島も知っている人間で、世話になった人がいいだろう。  
そう考え、『同期の奴等とかその辺の適当な奴かな』とだけ脳みその隅に置いておくことにした。昨日の晩にも出ていたほうれん草のごま和えをつついた。  
 仕事について、給料にそこそこ安定性がある。『まぁ大丈夫だろう』と火渡は楽観的に考え、温かいご飯をかっこんだ。  
 妊娠してしまったことを前提として、あとの問題は出産だ。  
毒島の休学は仕方ないとして、あの小さな体で人間1人を埋めるとは思えない。帝王切開というのは腹を切るが、術後痕が残るものなのだろうか。  
痕が残るとしても見るのは自分だけなのだから大きな問題ではない。毒島の体を想えばそれが妥当だ。もし見た奴がいたら灰にする。  
火渡は味噌汁を一気飲みして朝食を完食した。  
 
   〆  
 

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