『TE ・ A ・ MI Ver.2』 
 
「じゃあ斗貴子さん、また明日!」  
「待ちたまえ、カズキ。・・・キミに渡したいものがある。」  
「渡したい・・・もの?」  
「今日はクリスマスだろう。なんというか、プレゼント・・・というヤツだ。」  
 
クリスマスプレゼント──!  
密かに期待していなかったわけではない。しかし本当に、斗貴子さんが、俺に・・・!  
手渡されたのは、飾りっ気のない小さな紙袋だ。そのそっけなさが、斗貴子さんらしい。  
「妹さんに訊いて、まあ・・・そのなんだ、手編みというモノを、やってみた」  
「て、手編み!?斗貴子さんが!俺のために!・・・」  
「中身にあまり期待されても困るぞ。なにせ、初めてのことだからな」  
少しはにかんだようすを見せる。こんなかわいらしい斗貴子さんは、初めてだ。  
いや、いつもがかわいくないというワケじゃないけど─。  
 
「あ・・開けてもいい?」 思わず声が上ずる。  
「目の前で見られるのというのは照れるが・・・構わんよ」  
「ありがとう!俺一生大事にするよ、この────この────」  
カズキの様子が明らかに変わった。嬉々とした表情から一転し、  
アワワワとうろたえた顔を見せている。  
(コレハ──コノカタチハ──ヒョットシテ──。)  
 
異変に気づき、斗貴子さんが訝しげな目でカズキを見る。  
「どうした?気に入らないか?」  
「そんな!気に入ったよ!これ・・・えっと・・・」  
「近頃は朝晩めっきり寒くなってきたからな。・・・自主練も大変だろう?」  
「ああ!そう!冷えちゃイケないよね!冷えちゃ!」  
あわててそう言いながらも、武装錬金を使いこなすため一人隠れて特訓に励んでいることを  
彼女が知っていたことに、ちょっとした感動を覚えた。  
 
「で、これ・・・2つあるのは、あの・・・一体・・・」  
「? こういうのは普通、2つで1組だろう?」  
「普通?──普通!そう!普通そうだよね!小さいときと大きいときあるし、その時々で使い分けると・・・」  
( 使い分ける?大きさが不揃いだと言いたいのか? ) 「形は・・・変ではないか?」  
「お、おかしくないよ!ちゃんと形になってる!」 頬を紅潮させ答えるカズキ。  
「先の方のこの部分など、ひょっとしたら小さ過ぎるかとは思ったのだが・・・」  
「いや、ソコはどちらかというとむしろ大きいような・・・」  
 
「全体的に大き過ぎたか?特にこちらの方など・・・」  
「!!あ、いや!大丈夫!問題ないよ!大きくなればちゃんと大きくなくなる・・  
いや・・正直ここまで大きくなるか自信ないけど・・・いや頑張ればなんとか・・。」  
「大きくなる・・と言っても、おいそれと大きくなれるものでもなかろうに」  
「大丈夫!!すぐ大きくなるよ!俺、頑張るから!これが使えるように、俺、頑張るから!」  
「・・・無理に頑張ってくれなくてもよいが・・・実際に使ってもらえると嬉しい。なにせ、初めてだからな。」  
「ハ ヂ メ テ ・・・! これを、使うって・・・ハヂメテで・・・その・・・ととと斗貴子さんに?」  
「何を言ってるんだ。使うのはキミだろうに。」  
「いや、使うのは俺だけど、使われるのは俺じゃないというか・・・  
そ、それと・・編目があるから、あの、あまりというか、その・・効果ないかも」  
「多少編目が粗くなってしまったのはカンベンして欲しい。ただ、役に立たないほどのことはないと思うが」  
「しかし、こういうのは念には念を入れた方が」  
「意外と神経質なんだな。私はあまり気にならないが。」  
「いや、俺がというよりは相手のことが気になるからであって・・ま、まあ、かなり厚手だし、  
粘り気があるモノだからそうそう漏れるようなことはない、ということもあるかもしれないけど・・・」  
 
時に意味不明の発言と煮え切らない態度に、いささかムッとした表情を見せる斗貴子さん。  
「気に入らないのなら、いっそハッキリ言ってくれ。私が使うから。」  
(ヂ ブ ン デ ツ カ ウ ・・・ ? いかん、鼻血出そう・・・)  
「そんな・・・そんなことないよ!とっても素敵だと思うし、・・・それに俺、  
斗貴子さんが俺のためにコレを編んでくれたってだけでも心の底から嬉しいんだ。  
絶対使うよ!コレを斗貴子さんだと思って、一生、毎日使うから!」  
「カズキ・・・」  
「斗貴子さん・・・」  
一瞬、『瞳を見つめ合い、唇を重ねる二人』・・というシチュエーションを期待したカズキであったが、  
フッ・・・と、微笑とも苦笑ともつかない表情を見せ、歩き出す斗貴子さん。  
「行こう。もう夜も遅い。妹さんも心配しているだろう。キミの帰りを待っているのではないかな」  
「まひろ!そうだ・・・今夜パーティーやろうって、言ってた・・・急いで帰らないと!」  
駆け出す二人。背中越しに斗貴子さんの声が聞こえた。  
「どうでもいいが、毎日使うと蒸れるぞ。夏場などにそんな厚手の靴下を履いたら・・・」  
  
      「靴下!」 
 
ヒザからガックリと力が抜けるのがわかった。安堵と恥ずかしさとで、気が遠くなる。  
どうした?カズキ!という心配そうな声がかすかに聞こえる。  
言えない・・・てっきり、チン●に装着するモノかと思ってたなんて、絶対に言えない・・・。  
こうして、イヴの夜は更けていくのであった・・・。  
 
 
 
(蛇足) 
 
「まひろ!斗貴子さんにこんなのもらっちゃった!」  
「いやあああああああ〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!」  
 

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