「き、きた……!!」  
爽やかな金曜祭日の昼。オレの気分も爽やか、ではなかった。  
パソコンを前に、オレは身体をわななかせた。  
オレがとあるサイトで立てたスレッドにとうとう念願のレスがついたのだ。  
ごくりと喉を鳴らす。  
(落ち着け、落ち着けぇ……)  
どきどきと高鳴る胸を抑えつけ、スレとレスを始めから読み返した。  
 
 
Title:【どもども】 Name:ズッキーニ  
 
僕は○○県に住む十七歳です。  
今まで女性とも付き合ったことがない童貞です。  
優しいお姉さん、僕の童貞もらってください!!  
 
【Re:どもども】 Name:トゥッキュン  
 
こんにちは。  
私も○○県に住んでるんですよ。偶然ですね!  
あ、歳は十八です。あなたより一歳しか年上じゃないけど、お姉さんに入りますか?  
あなたに少し興味あります。よければレスくださいね!  
 
 
(落ち着け、落ち着けぇ……)  
未だどきどきと高鳴る胸を抑えつけるのに必死だった。  
エロス岡倉から教えていただいたセフレ募集の超特秘サイト。  
そこにスレを立ててわずか二時間、早速ついたレスに困惑しつつ、喜びつつレスを返した。  
 
【全然OKです!】 Name:ズッキーニ  
 
トゥッキュンさんのこともっと知りたいのでよければ携帯でメールください。  
 
 
今度は携帯のメアドをつけてレスした。  
・  
・  
・  
三十分後、オレの携帯が着信音を立てて震えだした。  
すぐさま誰からのメールか確認する。  
知り合いの中で見たことがあるようなメアドだったが構わずメールを開いた。  
 
 
ズッキーニさん、初めまして、じゃないですね(^^;。トゥッキュンです。  
最近私の知り合いが突き合いが悪くて寂しい思いをしています。  
よければ明日にでも○○駅近辺でお会いしませんか?  
お互い慰めあいましょう!  
 
 
「…………岡倉、岡倉ぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」  
寄宿舎の廊下を奇声に近い絶叫をあげて駆け抜けた。  
「岡倉ぁぁッッ!!」  
岡倉の部屋のドアを開けて叫んだ。  
「お、どうしたカズキ?」  
「あんた、あんたオレの師匠だぁぁぁぁッッッ!!!!」  
エロス岡倉師匠に抱きつかずにはいられなかった。  
 
 
「……も、もう、後には引けないか」  
健やかな金曜祭日の昼。私の気分も健やか、ではなかった。  
携帯を手に、私は身体を強張らせた。  
エロス岡倉から巻き上げたエロスな本に載っていたエロスなサイトで偶然見つけたセフレ募集のBBS。  
本隊からいろいろ理由をでっち上げて支給してもらったパソコンが届き、魔が差した私はそこにアクセ 
スしてしまった。  
そこでこの近辺に住んでいるという人物のスレッドを見つけ、あろうことかレスをつけてしまった。  
(いや、これはカズキがいけないのだ。うん)  
近頃のホムンクルス退治で忙しかったことは認める。彼が疲れるのも無理はない。  
しかし、だからといって私との夜の慰みをおろそかにするのは、認めない。  
私はスレの主、ズッキーニにすぐにでも会いたい旨を伝えた。  
身体が疼いてしかたがないのだ。  
(それにスキルアップにもなるし。そして私のテクニックに驚くカズキ・・・・・・)  
そう。これは私がカズキを見返すためにするのだ。うんそうだ。そうに違いない。  
明日が楽しみだ。  
 
「そういえば……」  
ズッキーニのメールアドレス、どこかで見た気がしないでもない・・・・・・。  
 
――土曜正午。  
オレは駅前でトゥッキュンを待っていた。  
顔を知った奴に遭ってもばれないようにマトリックス風サングラスに帽子を身につけている。  
(そろそろ、来る時間だよな)  
期待と不安が胸中でどろどろと渦巻いている。  
一応目印としてうまい棒を手にしているけど、果たして見つけてくれるだろうか。  
 
「み、見つけた……」  
待ち合わせの駅前に、いかにもそれらしい人物の姿を確認した。うまい棒も持っている。  
私は短い髪を後ろで束ね、大きな絆創膏で鼻の傷を隠し、丸メガネという完璧な変装そしている。  
誰に見つかってもばれないようにだ。  
「よ、よし!」  
意を決し、彼の傍へ歩み寄った。  
 
「あのぉ……」  
横から話しかけられ、勢いよくそちらを振り向いた。  
「あ、ども……」  
一目見て彼女がトゥッキュンだと分かった。メールでやり取りしたとおりの風貌をしている。  
カズキスキャンがフル起動する。  
胸、貧乳。腰、くびれなし。尻、小さい。身長、小柄。体重、絶対軽い。顔、こればかりは隠している 
のかよく見えない。  
総合的に見て、これは、  
(斗貴子さんクラス……はっ!?)  
ここで斗貴子さんのことを思い出しちゃいけない。  
ただでさえ夜の相手を蔑ろにしてるんだ。ばれたりしたら殺される。  
だから、今だけは斗貴子さん、ごめん。忘れさせてくれ。  
オレは目の前の女の子、じゃなくて年上のはずの女性を舐め回すように見つめた。  
(まずは……いや、いきなり連れ込むか)  
彼女だってそのつもりで来たんだ。うん、そうしよう。  
「あー、えと、ですね。……行きましょっか」  
「は、はい」  
彼女と並んで歩く格好で、事前に調べておいた近くのラブホテルへ向けて足を進めた。  
――これがネットの力……。恐るべし。  
 
んでもってとうとうラブホテルの一室にやってきた。  
彼女の方はというと下を向いたままずっと大人しくしている。  
斗貴子さんとは違い、大分清楚な雰囲気のする女の人だ。  
(やべ、もう勃ってきた)  
触れれば壊れてしまいそうなほど華奢な女の人を犯す。  
そう思っただけでオレの我慢は限界に近づいてきている。  
(これは同意の上でのセックスこれは同意の上でのセックス同意の上同意の上)  
自分に言い聞かせる。そうだ、この娘だってそれを望んでいるんだ。  
(カズキ、イきまーすっっ!)  
 
「それじゃ、していいかな?」  
カズキは斗貴子さん(とは知らないが)に詰め寄った。が、斗貴子さんの答えは意外なものだった。  
「待って。書いたでしょ?私があなたの初めてをもらうのよ」  
「そ、それってどういう……」  
「私がリードするの」  
攻める気満々だったカズキを抑え、斗貴子さんから積極的に唇を求めていった。  
カズキは少なからず狼狽えた。大人しそうな女性だったから、まさか攻められるとは思っていなかった。  
しかし最初に交わした内容は確かに自分の童貞をもらってもらうというものだったから、これは仕方な 
いかもしれない。  
斗貴子さんに身を任せ、カズキは初めての時のようにされるがままだった。  
見た目とは裏腹に激しく、濃厚なキス。  
いや、彼女の今の容姿は本来の情欲を隠すためにしているのかもしれない。  
が、今は関係ない。カズキは斗貴子さんから与えられる感覚を甘受していた。  
斗貴子さんの手が下半身の怒張へと伸び、優しく撫で回す。  
性欲をもてあましていた斗貴子さんはすぐさまカズキの下半身を剥いた。  
すぐさま貪りつく。飢えた斗貴子さんにその棒は刺激的過ぎた。  
「んむっ、んん……」  
軽く咥え込んで唾液を絡ませるだけ。さっと口を放し、着ている服を脱ぎ始めた。  
カズキもつられて服を脱いだ。  
 
 
初めて出逢った、ということになっている男女がベットで妖しく絡み合う。  
触れ合う肌。濡れる四肢。擦れ合う胸と胸。卑猥な音を立てる性器。  
二人はさらにその様子がよく見えるようサングラスとメガネを取った。  
・  
・  
・  
・  
・  
・  
「それでカズキ。キミはここで何をしているのかな?んん?」  
カズキの上で腰を振りながら、斗貴子さんがねちっこい口調で問いただした。  
「はぁうッ!……せ、セックスですぅッ!」  
斗貴子さんの絶妙な腰遣いに翻弄されながらカズキは答えた。  
「ふむ。キミはあれか。私との夜の慰みに飽きたのか?」  
「あぁッ……」  
「まだブチ撒けるな!」  
斗貴子さんの一喝。それだけで絶頂間近だったモノが少しだけ萎縮した。  
「あ、飽きるなんてそんなことありませんッ!」  
絶頂を迎えられないジレンマに顔を歪ませながらもカズキは力強く答えた。  
「ならばなぜセフレの募集などしたのだ!この恥知らずめ!」  
自分もしてたじゃないか、と言い返す前に斗貴子さんの腰が円を描くような動きをした。  
カズキの口から堪らず呻きが漏れる。  
「さあ、私に懺悔しろ!裏切ってすみませんでしたと!!」  
激しい。今日の斗貴子さんはいつにも増して激しい。  
「す、すすすすみ」  
「言いなさい!もう私以外の女にはもう見とれませんと!!」  
「は、はいいぃぃッッ!!」  
どぴゅッ  
 
ベットの中で、オレと斗貴子さんは二人寄り添っていた。  
「ごめん」  
とにかく一言目はそれを言っておきたかった。  
「もういい。気にするな」  
斗貴子さんはさっきまでとは全然違う、穏やかな声だ。  
すっと斗貴子さんの頭がオレの肩に乗せてきた。  
「さっき言ったこと、忘れてくれるな」  
「うん……」  
もう、斗貴子さん以外の女の人とはいたしません。そう思いません。  
斗貴子さんの耳にそっと口を寄せて、  
「分かったから、もう一回しよ」  
「え?」  
「久々でまだまだやり足りないんだ!!」  
「ちょちょ、ちょっと待ちなさ……アァンッッ!!」  
オレ、そんなとっきゅんが大好きです。  
 

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