かつて蝶野攻爵と呼ばれた化物が今、蔵の外で殺戮の限りを尽くしている。
たくさんの命が理不尽に奪われていく…俺の力が至らないばっかりに!
命の恩人に課せられたタイムリミットも容赦無く迫る。
もうすぐ、奴はここに戻ってくる。
無力さに打ちひしがれる自分を嘲笑い、そしてとどめを刺すために。
こんなところでのんびり寝ている場合じゃない。
ここであいつを止めなければ。なんとしても。この命に代えても。
左胸に手を当て、もう一方の手の中にある核鉄を見つめる。
瀕死の身体の治癒にあてている、人智を超えた力。
その全てを賭けて、蝶野の歪んだ野望を阻止するんだ。
斗貴子さんの力を借りるよ。
少年は意を決し、最後の決戦の準備をすべく、
ズボンのベルトに手を掛けた。
「 W 武 装 錬 金 ! 」
まぶしい光に一瞬ひるみつつ蔵に踏み込んだパピヨンが目にしたのは、
Tシャツの上に学ランを羽織り、
両手に大振りの突撃槍を持つ傷だらけの少年の姿だった、
「!?」
そのズボンとトランクスは足元に脱ぎ捨てられ、
剥き出しの下半身の中心には、小振りの突撃槍が
力なくふるふると揺れていた。
うつむき加減で羞恥に頬を薄く染めた少年が、か細い声で呟いた。
「……バルキリースカートじゃ、ないンだね……」
場が、凍りついた。
超人の鼻孔から滴り落ちる二筋の鮮血が、
時までは凍りついていないことを示していた。
身じろぎもしない二人を木陰から見つめながら、
コートの合わせ目から突き出た己の男性自身をいそいそと引きずり出し
荒い息と共に握りしめる謎の人影。
「ブラボーだ、武藤カズキ・・・。」
そして、時計の針が0:00を刻んだ。
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蝶 サ イ コ ー─── ッ ッ !!
サイコ───… イコ──…… コ─………
深夜の銀成町に、歓喜の叫びがこだました。