「はぁ…」
私は寄宿舎の自分の部屋に帰るなりため息をつく。
けだるい体を引きずるようにベッドまでたどり着く。
「カズキ……」
呟いて、また、ため息。
何をしているんだ。私は。
何となく。そう、何となく、だ。私はカズキのことを考えてしまっている。
なんだろう。カズキを思うと顔が熱くなる。
動悸が激しくなったような気がして胸の当たりに手を添える。
するとやはり、鼓動は速くなっていた。
そのことを自覚してさらに顔が熱くなってしまう。
ああ、違う。
顔だけじゃない。体が熱くなる。
胸に添えたままの手を、少し力を加えながら動かす。
服の上からだから、そんなに強い刺激は起きない。
けれど、それでも確実に、快感は生み出される。
「ふ、ぅ……」
さっきまでのため息とは違う吐息が漏れる。
この手はカズキの手。
そう考えながら体中をなぜる。
服越しの感覚は焦らすようでいて、こすれる感覚が何とも言えない。
このままでは服がしわになってしまうため、さっさと脱いでしまう。
言い訳だ。
実際は、もっと、もっと快感が欲しいから。
服越しなんて中途半端なものではなく、もっと直接的な。
しかし、胸をこねる指はその頂きに振れることなく輪郭をなぞるばかり。
矛盾。
わかっている。焦らした方があとが気持ちいいから。
わかっていても、もっと快感が欲しくて、指は頂点を目指して進む。
そして、頂きに触れそうになると、また戻ってしまう。
「はぁん…」
快楽におぼれた声が聞こえる。
それが自分の声だとわかり、さらに高まってしまう。
空いている方の手の指を口に含む。
そう、これはカズキの舌。
今度はそう暗示をかけてそれを舐め回す。
ちゅくちゅくといやらしい水音か聞こえる。
その間も反対の手は休むことなく胸をなぞっている。
しばらく部屋には私の喘ぎと水音とがこだまする。
十分に唾液に濡れた指を口から離し、
顎を通り喉を通り、そして遂に胸のあたりまで到達する。
今まで焦らしたぶん、その唾液に濡れた指で一気に乳首を捻る。
「ひはぁっ」
喘ぎとも悲鳴ともつかない声が上がる。
濡れた手で乳首をいじめながら、今度は反対の手を口に含む。
再びくちゅくちゅと水音が奏でられる。
イきたい、でも、イきたくない。
だってまだ、肝心の部分には触れてもいないのだから。
べちゃべちゃに濡れた胸をこね回しながら、
片手を下腹部へとゆっくりと滑らせる。
へそを、脇腹を、そして大事な場所をとばして太股を。
まだ、まだあそこには触れない。
それなのに、あそこからは愛液があふれ出し、
いま触れている太股を、そして、お尻までもぐちゃぐちゃに濡れている。
「はぁ、あふぅ…あひぃ」
だんだん我慢できなくなってくる。
これ以上焦らすとおかしくなってしまう。
ゆっくりと指を秘部に進める。
最初はまわりをなぞるようになでる。
それだけで、あふれ出した愛液がぴちゃぴちゃと音を立てる。
少しずつ、強く、こするように力を加える。
自然、水音も大きくなる。
隣の部屋に聞こえないだろうか。
そう心配することすら、いまの快感を助長する。
秘部をなぞっていた指を一本、ゆっくりと挿入する。
「あはぁ、いぃぃ」
くちゅり、という音と共に喘ぎが漏れる。
もう、止まらない。止められない。
じゅぷじゅぷと指が前後左右に蠢く。
たまらない。
そう、これはカズキのモノ。
最後の暗示はそういったモノだった。
いやらしい音を立てている指を、2本、3本と増やしていく。
「カズキぃ、いいぃ、もっと、もっとぉ」
カズキの名を唱えながら喘ぎを漏らす。
胸をいじくっていたもう片手も、するすると下腹部をめざす。
秘部を通り越し、そして、たれてきた愛液てしどとに濡れる菊門へ。