「カズキ、何だそのチョコは」
「ああ、バレンタインのチョコ。これがまひろから貰った分で、
こっちはクラスの女の子からもらった義理チョコ」
そうか、今日はバレンタインデーなのか。
ホムンクルスへの復讐を誓ったあの日から、
そういった世間一般の行事には疎くなっている・・・
そう感じる斗貴子だったが。
ふと見ると、カズキがどうにも落ち着かない表情をしている。
「私の分など無い」
「そ・・・そうなんだ」
「あからさまにショボくれるな。そういうのは苦手なんだ。
それじゃあ、また明日」
やはりカズキは期待していたのか。
今からでも、遅くはないかもな。
数時間後。
カズキの部屋を強襲する3バカの姿があった。
「カーズキィー!!斗貴子さんからどんなチョコを貰ったんだー!?」
「バレンタインデーはお菓子会社の陰謀という説が根強いが、
そのはじまり自体は社員の勘違いから」
「カズキくん!?なんで真っ白に燃え尽きてるの!?」
そこには、真っ白に燃え尽きたカズキの姿が。
「察するに、斗貴子氏からチョコを貰えなかったのだと」
「そうか。まあ気にするなカズキ!
俺だってまひろちゃんの分しかチョコを貰ってないさ!」
「でも、何で斗貴子さんはカズキくんにチョコくれなかったんだろう。
照れくさかったのかな」
コトン。廊下の方で、何かを置く音がかすかに響いた。
ピクリ!カズキの全神経が跳ね起きる。
ズダン!バタン!ドダダン!
慌てて廊下に転がり出る4人。
そこには、妙に大きくパッケージングされた箱がひとつ。
カードが一枚挟まっていて、『カズキへ』と斗貴子さんの字で書かれていた。
「ああ・・・俺、生きてて良かった」
「斗貴子氏もなかなか」
「これ、もしかしてチョコレートケーキじゃ」
「カズキ!いいから開けてみろ!」
「う・・・うん。開けるぞ」
!?
中にはハート型の超巨大チョコが入っていた。
ご丁寧にも、『義理』の文字がピンク色で描かれて。
「うっわぁ・・・」
「でっけぇ義理チョコ」
「これは、判断に苦しむね」
「落ち着け、カズキ。最初は義理でも仕方無い」
「ああ・・・俺、生きてて良かった」
「いや、お前、それでいいのかよ」