「ああ、来てくれたんだお兄ちゃん。随分遅いから、逃げちゃったのかなって勘違いしちゃった」
くすりと、笑う。
言うべき言葉、戦う意志を忘却させるほど、まひろの笑みは”別人”すぎた。
「―――まひろ。斗貴子さんは、何処に」
馬鹿な質問をする。
まひろを取り戻す言葉を忘れて、しなくてもいい質問、分かりきった疑問を口にする。
「え……お義姉ちゃん?」
困惑する声は、俺の質問に対してじゃない。
まひろは、まるで―――そんな事も判らないのか、と哀れんでいるようだ。
「そうだ。俺より先に斗貴子さんが来た筈だ。斗貴子さんは何処にいった」
「……」
……まひろの足元。
黒く染まっていた地面には、黄色い、スカーフのような布きれが転がっている。
―――斗貴子さんの気配がない。
―――斗貴子さんの身体がない。
―――斗貴子さんの血痕すらない。
「まひろ、おまえ」
「うん、お兄ちゃんの思ってる通りだよ。お義姉ちゃんは、もうこの世の何処にもいないよ
だって―――さっき、わたしが食べちゃったんだもん」
「あ、もちろん食べ残しなんてないよ?体も心も、残さずキレイに食べました。こんな体になっても、
お行儀はよくしなきゃ」
「だけどお義姉ちゃんは死んでないよ?今もこうやって、わたしのなかで苦しんでるの。
……くす。お義姉ちゃん、初めてだったんだね。わたしがホムンクルスになる前にされたことを
一から体験させてあげてるんだけど、一日目で泣き崩れてる」
「ほら、聞こえる?助けてって、ごめんなさいって、狂ったみたいに叫んでる。
あ……かわいいなぁ。そんなコトまで口にしちゃって。お願いだからココから出しなさい、だって。
馬鹿なお義姉ちゃん。そんなコト言われたら、もっとたのしみたくなるのに」
「ふふ、美味しすぎて我を忘れちゃいそう。ごちそうさまお兄ちゃん。お兄ちゃんが連れてきてくれた
食材は、最高のご馳走だったよ?」
「まひろ、おまえ、は―――」
「やめて、そんな目でわたしを見ないで。…だいたいお兄ちゃんがいけないんだよ?
蝶々仮面さんなんて助けたりするから、最後の最後でお義姉ちゃんはわたしを殺しそこなったんだし。
蝶々仮面さんの助けがなかったら、殺されてたのはわたしの方だったのに」
「―――」
「―――お兄ちゃんも一緒に取り込んであげるね。さあ、お兄ちゃん、お義姉ちゃんが待ってるよ?」
「お義姉ちゃんったら、さっきからお兄ちゃんに助けを求めてばっかりなんだもん。すぐそばにいって
手でも握ってあげてね」
BADEND
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