どこか猫めいた斗貴子さんの琥珀の瞳がふわりと細められ、オレのほうへゆっくり近づいてくる。  
斗貴子さん、スゴクかわいい。そう思ったとき唇にやわらかいものが触れた。  
唇と唇をあわせるだけの優しいキス。  
だけど、唇だけじゃなく斗貴子さんに触れている部分すべてから、甘い蜜がにじみ出るようで  
オレはその甘さに、芳香に、ほとんど陶然となった。  
まるで陶磁器のような、白くすべらかな頬に手を這わせ髪をかきあげる。  
斗貴子さんの体を抱きしめて、自分からふかく、ふかく口づける。  
 
「好きだ、斗貴子さん。愛してる」琥珀の中に蕩けた黄金をたたえた瞳を見つめて言う。  
「カズキ、カズキ・・・。私もキミのことを」言い終わらないうちにまた唇をあわせる。  
愛しくてたまらない。舌と舌がふれあい、唾液が絡まる。  
斗貴子さんの舌がオレの舌をすりあげ、下唇を歯で甘噛みされると頭の芯から  
背筋にかけてゾクゾクするような快感がはしった。  
「あぁ・・・・は、ああ・・・・・・・んぁ・・・」唇を離すと、オレと斗貴子さんの唇から唾液が蜘蛛の糸のように細い線をひいて  
消えていった。  
桃色に上気した頬、瞳のなかの蕩けた黄金。綺麗だ、本当に綺麗だ。  
オレは、斗貴子さんの腰に手をそえてゆっくりとベッドによこたえた。  
 
斗貴子さんは少し大きめのTシャツに、ショートパンツを身につけているだけだった。  
Tシャツをまくりあげると、なめらかなシルクのキャミソールごしに二つの丘がみえる。  
布のうえから愛撫し、首筋に舌を這わせると斗貴子さんの口から「はあ・・・・」と甘い吐息が漏れた。  
斗貴子さんの手が伸びてきてオレのシャツのボタンに手をかける。  
「ふく、ぬがせ、て」斗貴子さんがささやく。オレたちはすぐに生まれたままの姿になった。  
月明かりの中ベッドに横たわる斗貴子さんの裸身は、華奢で儚げで今にも消えてしまいそうな気がして・・・。  
 
ギュッと抱きしめて口づける。  
首筋から胸元へ唇を這わせ、すでに硬くとがった先端を口に含む。右手はわき腹から太ももをつたい、  
そして斗貴子さんの最も密やかな場所へと伸びる。「ん・・・・・」  
そこは、すでにいくらか湿り気を帯びていた。けど、まだ足りないように感じて更に奥へ斗貴子さんを求める。  
「ぁ、だめそこは」  
そっと中指を挿しいれてゆっくりかき混ぜると、とろりとろりと蜜があふれ出してきた。  
「くふ・・・あ、カズキっ・・・・・!」左手は丘にあてて優しくそれをもみしだく。  
口で桜色の先端を舐め、あるいは歯をあてて少し強く噛んでみる。  
はっ、はっ、と斗貴子さんの息が荒い。いや、これはオレの息遣いなのか?  
もうそんなことはどうでもいい、はやく斗貴子さんとひとつになりたい。「斗貴子さん・・・・・!」  
 
すでに十分に潤っている秘所にオレ自身をあてがう。ひあ、と斗貴子さんが嬌声を上げる。  
そして、オレをみつめて、  
「カズキ・・・きて」坩堝の中でドロドロに蕩けた黄金に魅せられるようにして、  
オレは斗貴子さんのなかへゆっくりと分け入った。  
「あ!あぁっ」斗貴子さんが大きく眼を見開き、涙があふれた。オレはその涙を唇で舐めとって、  
まぶたに唇を這わす。斗貴子さんのなかも、その涙も、熱く甘くたぎっている。  
あまりの快感にすぐさま果ててしまいそう。  
だけど。  
「斗貴子さん・・・。大丈夫?」  
「だいじょうぶ・・・だ。もうそんなに痛くない。動いてもいい、ぞ・・・」  
斗貴子さんは気丈にそう言ったけど、オレにはそうは思えなかった。だから、斗貴子さんの中に挿れたまま  
斗貴子さんの体にキスの雨を降らせ、必死に理性を保って彼女を愛撫した。  
「あ・・・・」斗貴子さんがせつなげに眉を寄せると、彼女のなかも震えるように締まり更に強い快感をオレに与えてくる。  
「く・・・・」もう、頂が見えてしまいそうな快感に思わず声が漏れる。  
「カズキ、我慢しなくていから、動いて・・・・」そう言うと斗貴子さんは自分から動いてきた。  
それと同時にかろうじて保っていた理性の糸が、ぷっつりと音を立てて切れる音を聴いたような気がした。  
 
激しく突き入れる。彼女の背に手を回し、やわらかな胸に倒れこんでオレは斗貴子さんを求め続けた。  
オレと斗貴子さんの声、胸の鼓動、性器のこすれあう淫靡な音。  
今ここにあるすべてが、お互いに共鳴し奇妙な音楽を奏でているよう。  
そしていつしか、その旋律のかなたから津波がおしよせて、ふたりを未知の世界へ押し流していった・・・。  
 
 
「錬金術の究極の目的とは何か知っているか?」甘く、けだるい、けれどとても幸福な空気のなかで  
とうとつに、斗貴子さんがきいてきた。  
あのあと、しっかりお互いの手を握り合って眠りについた。そしていま、シングルベットで寄り添って、  
夜明け前の紺青の空を眺めている。  
「究極の目的?・・・・なに、それ」  
「仮にも、錬金の戦士がそれを知らないなんて、戦士長はキミに何を教えてたんだ。  
やっぱり私もキミのトレーニングに加わるべきだった」  
やさしい、蕩けた黄金の残滓をのこした琥珀の眼でオレを睨んでから、斗貴子さんは説明してくれた。  
 
「<賢者の石>を求めること。それが錬金術の究極の目的」  
それから軽く瞑目し、暗記した文章を読み上げるようにこう言った。  
「万物の構成の基本である第一質料(プリマ・マテーリア)は、ヘルメスの世界たる卵の中で火に熱され、  
男性原理と女性原理の結婚を見て、原初の両性具有(アンドロギュヌス)へ、混沌へと還る。  
そこからさらに死と腐敗の黒色(ニヴレド)、復活の白色(アルベド)、虹のすべての色彩をへたのちに、  
輝ける赤(ルベド)に達し、凝結してもっとも高貴な真実の物質、第五の実体(クインタ・エセンティア)、<賢者の石>となる───」  
 
くすり、と笑い「なんのことか、さっぱりだろう?これを教えてくれた戦士長も  
きっとほんとは何もわかってないのだろうな。でも、私はわかったような気がする」  
「錬金術の究極の目的とは<賢者の石>を求めることじゃない。  
それは、術師自らがおのれを練成し、<賢者の石>になることにある。  
この言葉は、そのことを比喩的に述べているに過ぎないのだとおもう」  
「<石>は外部に求めるものじゃない。私たちの世界そのものが、きっと巨大な錬金術のフラスコなんだ。  
私たちは無垢なる本質、第一質料としてこの場所に生まれ、秘儀参入者として世の中を歩いていく。  
焼かれ、磨かれ、やがて探求者は自分自身が、世界原理と一体になることを知る。───・・・・そのときこそ、無窮の世界はわが身のうちにあり、  
術師に課せられた任務、<賢者の石>の探索、<大いなる作業>、マグナス・オプスは完成する・・・・」  
 
( ゚д゚)ポカーン・・・・・・・・・・・・・・・・え、ええっとオレってもしかしてとんでもない女の子を  
好きになった?  
斗貴子さんの言葉はちんぷんかんぷんだったけど、ひとつわかったことがある。  
「ヴィクター・・・、ヴィクターはきっと100年の間フラスコの中で、錬金の戦士への憎悪や  
癒されない飢えに焼かれて、失った体を錬・・練成したんだとおもう」  
「そうだな・・・そうかもしれない。あいつが私たちに向けた憎悪、裏切ったのは錬金の戦士のほうだという言葉。  
第三の存在はこの世に生きるものすべてにとっての敵だけれど、あいつが本当に悪なのか今の私には、わからない・・・・」  
斗貴子さんがオレのほうをひたと見つめ、  
「でも、私には一つの確信がある。キミはヴィクターのようにはならない。  
私が、皆が絶対にそうさせない」  
オレも見つめ返す。  
「うん。オレも確信してる。斗貴子さんが、皆がいる限り、オレはヴィクターと同じ過ちは繰り返さない。  
皆と、生きていく」  
 
 
 
かくして、現れる闇は、やがてのぼる朝日に駆逐されることが約束された。  
世界は閉じた円環ではなく、朝ごとに生まれ変わり、果てしなくまわりつづけ、のびてゆく螺旋だ。  
カズキと斗貴子は、互いの魂の半身とめぐり合った。───ふたりで一つの命。  
彼らは探求者として無窮の世界をあるいてゆく。そしていつの日か<賢者の石>を見出す  
はじめてのものたちになるのかもしれない。  
寄り添うふたりの眼前で朝日が昇り、世界はその色を変えていった。  
 
                                           ─END─  
 
 

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