「〜♪〜♪」  
「ねねね、ちーちん。何か今日すんごいまっぴーの機嫌よくない?」  
「何か昨日、凄いいいことがあったって言ってたけど・・・」  
「いいこと?昨日は一日中寮にいたはずじゃぁ・・・」 「・・・なんだろうね」  
「えへへ、か〜こよかったなぁ。えっと、たしか・・・超槍戦士サンゼリオンさん☆と・・・」  
 
ストロベリー戦士・とっきゅん 第四話 「ニーハオ!謎の国からコンチニワ」  
 
「ふぁ〜あ。今日もいい天気だけど・・・眠い」  
「・・・・・・・そうだな」  
今日も今日とて、斗貴子とカズキは二人で一緒に登校する。道中、友人たちにからかわれ(ry  
「あれ?斗貴子さんも眠いの?珍しいね」  
「ん〜、まぁな。私もたまにはこういうこともある」  
確かに、いつもシャキっとしている斗貴子が眠いというのも珍しい。それだけに、カズキは  
ついついその理由を邪推してしまう。  
「夜遅くまで何かしてたとか・・・?」  
「まぁ・・・間違ってはいないな」  
斗貴子の歯切れの悪い返事に、思わずカズキはよからぬ事を想像する。  
「・・・・・・・・・・・」  
「コラ、何を赤くなっている」  
妄想ともいうか。  
「いや、えっと・・・あはは」  
「いつも言ってるだろう。エロスは程ほどにしておきなさい。・・・ふぁ」  
いつものセリフにも覇気がなく、そこでまたあくび一つ。  
「・・・ホントに眠いみたいだね。授業大丈夫?」  
「私を誰だと思っている?そんな不勉強な真似はしないふぁ・・・」  
「・・・心配だなぁ」  
などと話している内に、学校につく。予鈴がもうすぐ鳴る頃。ちょうどいい時間である。  
下駄箱に向かいながら、斗貴子は考えていた。  
(変身ポーズどうしよう・・・結局決まらなかった・・・)  
・・・寝不足の原因はそれですか。  
 
下駄箱につくと、また掲示板の前に人だかりができていた。きっとまた桜花が写真を掲示しているのだろう。  
「あいも変わらず凄い人だかりだね。みんなやっぱり興味あるのかなぁ」  
「まぁ・・・化け物が現れて・・・いるん、だからな・・・」  
答える斗貴子の言葉は途切れ途切れで、今にも寝そうである。  
「あら?武藤クンに津村さん。おはようございます」  
ちょうどそこへ、昨日と同じく、早坂桜花が現れる。また、斗貴子をからかうつもりなのだろうか。  
「あ、桜花先輩。おはようございます」  
「・・・・・・」  
笑顔で答えるカズキに対して、斗貴子はだんまりである。まぁ、単純に眠いだけかもしれない。  
「うふふ、昨日も『大活躍』だったみたいですね、つ・む・ら・さ・ん?」  
嫌味たっぷりに桜花が言う。思えば、潔く斗貴子にストロベリー戦士の座を渡したのも、こうして  
斗貴子をからかうためのような気がしないでもない。  
「・・・・行くぞ、カズキ」  
だが、昨日とはうってかわって、斗貴子は全く動じない。どうしたのだろうか。  
「あら?今日はツレないんですね」  
「眠くてキサマの相手をするのも面倒だ・・・じゃあな」  
激昂を予想というか期待というかしていた桜花は、拍子抜けするも、次の句を考えている間に  
斗貴子達はいってしまった。  
「あらあら」  
 
「おはよう、カズキクンに斗貴子さん」  
「オッハヨーサン。相変わらずストロベリーなことで」  
「おはよう。何か眠そうだな、二人とも」  
教室に入ってきた二人を見つけると、大浜、岡倉、六舛が声をかけてくる。  
「おっはよう。俺はそこまで眠くもないんだけど・・・斗貴子さんが、ちょっとね」  
「ふぁ・・・おはよう」  
挨拶をしながらあくびをまた一つ。さらに席につくなり突っ伏して寝てしまう。相当眠いようだ。  
「・・・すー、すー・・・」  
「・・・って、言ってる傍から寝ちゃったね」  
 
「斗貴子氏がここまで憔悴しきってるのも珍しいな。何かあったのか?」  
寝ている斗貴子を横目に、カズキはそこで声を潜めて喋る。  
「んー、ほら、昨日も例の化け物が出てさ・・・それで俺達が戦ったから・・・」  
「なるほど・・・それで斗貴子サンは疲れてる、ってわけね」  
一応、まだ周りに正体はバレていないので、岡倉も小声で話すことにする。  
「そういうこと。斗貴子さん、変身すると性格変わって張り切るからねぇ」  
「確かに、写真を見る限りでは斗貴子氏がメインで戦っているようだな」  
「・・・ちょっと、あれが斗貴子さんとは信じられないけど・・・」  
それももっともである。だがその事が、仲のいい友人以外に彼らの正体バレない事の、理由の  
一つであるだろう。まさか、あのフリフリの戦士が斗貴子などとは、誰も夢にも思うまい。  
「・・・カズキ・・・」「・・・ん?」  
 
自分の話をしているのに気づいて起きたのだろうか。斗貴子がカズキの名を呼ぶ。  
「・・・弁当、美味しいか・・・?」  
『・・・は?』  
斗貴子の何も脈絡のない言葉に、4人は目が点になる。どうやら寝言らしい。  
「斗貴子さんも寝言言うんだね。ちょっとビックリした」  
そう言って大浜が苦笑する。まぁ、普段の彼女のイメージからは少し考えにくいことではある。  
「そうか・・・美味しいか・・・よかった、作ってきた甲斐があった・・・」  
斗貴子の寝言は続く。内容から察するに・・・  
「・・・オマエの夢みたいだな。羨ましいねコンチクショー」  
「ははは。そう言うなって。世の中探せばきっと、岡倉を夢に見ている女の子がいるって」  
「そうかぁ?」  
軽いつもりで言ったのに、岡倉が少し本気にしかけているので、カズキは思わず続ける。  
「・・・エッチな岡倉に追いかけられてる夢をね」  
「おいおい、そりゃないだろ」  
『ははははははははは』  
4人は笑う。その笑い声にクラスの注目を少し集めるが、すぐにみんな視線を元に戻す。  
彼らが騒がしいのは、いつものことなのだ。  
 
「そう言えば・・・弁当で思い出したんだが」  
ひとしきり笑った後、六舛が少し真面目な顔で切り出す。  
「昨日、銀成市でちょっとした規模の食中毒があったらしい。20・・・いや、30人だったか」  
「あ、それ俺も今朝ニュースで見たぜ。成人男性ばかりが被害にあった、って奴だろ?」  
時期が時期だけに、他人事とは思えないらしい。岡倉もそのニュースは気になっていたようだ。  
「なになに?何かあったのか?食中毒って?」  
一方、疲れきっていたカズキは、朝ニュースを見る暇もなかったらしい。知らないようだ。  
「昨日ね、銀成市で食中毒事件があったんだよ。成人男性ばかりが被害にあったんだけど・・・」  
そこで大浜は言葉を切る。どう説明したらいいかわからなそうだ顔だ。岡倉が続ける。  
「なんかな、その男性達が共通して食べたものがわからないんだと。住んでる地区もバラバラ」  
「あまりの不可解さに、どこだったかの美人店員がいる弁当屋が、怪しいとか言われてたな」  
まぁ、確かに美人の店員がいれば、男は集まるだろうが・・・  
「はぁ〜、食中毒ねぇ。俺達も気をつけなきゃいけないなぁ。俺らコンビニ弁当ばっかだし」  
「そゆこと。斗貴子サンにも教えておいてやれよ」  
岡倉がそう言った時、チャイムが鳴ると同時に教師が入ってくる。生徒は自分の席に戻った。  
 
「出席取るぞ・・・岡倉!」「うーっす」「大浜!」「ハイ」  
教師が出席を取り始める。ちなみにこの学校の名簿は男子→女子の形である。(仮定。本設定でなし)  
「武藤!」「ふぁ〜い」「寝不足か、武藤。シャキっとせんか」  
思わずあくびをしてしまったカズキを、教師は注意する。カズキは素直に謝った。  
「六舛!」『OK牧場』「いや、いるのはわかったから、ガッツ石松の声マネはやめてくれ。笑える」  
ちなみに、昨日は安岡力也の声マネだった。出席を取る掛け声は続く。  
「津村!」「・・・・」「津村?いないのか?」  
斗貴子の名が呼ばれるが、返事がない。未だ寝ているようだ。  
「斗貴子さん!名前呼ばれてるよ!斗貴子さんてば!」  
カズキが揺り起こそうとするが、起きない。案外深く眠るタイプの人間らしい。  
「何だ、津村も寝不足か・・・ん?津村『も』?もう一人寝不足なのは・・・武藤?」  
 
カズキと斗貴子の関係は、生徒のみならず教師の耳にも届いている。その二人が同じく  
寝不足とあって、彼は訝しく思う。そして、職務半分、興味半分でカズキに尋ねる。  
「武藤、お前昨日何やってた?」  
「昨日?昨日はですね・・・斗貴子さんと・・・おっとっと。何でもないです」  
まさか自分達が化け物と戦ってたとは言えない。カズキは言葉を濁すが、それがまずかった。  
「・・・・武藤、お前まさか」  
冷静に考えれば、彼が今頭に思い浮かべているような事を、皆の前で言いそうになるわけもないのだが。  
「・・・だからカズキ、そこじゃない・・・あ、そんなに乱暴にするな」  
『・・・・・・・・・・・・・・』  
とんでもないタイミングで、斗貴子がとんでもない寝言を言う。これでは疑われても仕方ない。  
「・・・・・武藤、お前昼休みに津村と一緒に職員室に来ること」  
「そ、そんなぁ・・・・」  
そんなこんなで彼らのHRは終わる。  
「だから、普通核鉄はそんなとこにしまわないだろう。あ、そんなに乱暴に扱うんじゃない」  
未だ斗貴子は起きない。寝言を言い続けている。  
「ふむ、そうか。キミは〜が好きなのか・・・・考えておこう」  
結局、斗貴子はHRどころか、午前中の授業の間全て、幸せな夢を見続けていた。  
 
「はぁ〜、災難だった」  
昼休み。カズキと斗貴子は職員室での説教を終えて、屋上に来ていた。  
災難とは言ったが、さほど怒られたわけではない。誤解が解けるのが早かったからだ。  
ただ、何故か多くの教師が二人を暖かい目で見守ってはいたが。  
「すまなかったな。私が迷惑をかけたみたいで」  
実は斗貴子は説教が終わってカズキに事情を聞くまで、何故呼び出されたか知らなかったらしい。  
「いや、別にいいよ。俺の夢を見てくれるなんて嬉しかったし・・・」  
自分で言ってて恥ずかしくなったのか、カズキは赤面する。  
「いや、それはだな・・・その・・・実はきょ」  
「そういえばさ、斗貴子さん」  
恥ずかしさに耐え切れなくなったのか、斗貴子が何かを言うのを遮って、カズキが話を切り出す。  
 
「な、何だ?」  
何か言おうとした斗貴子だが、とりあえずはカズキの話を聞くことにしたらしい。  
「今日午前中ずっと寝てたけど、昨日ホントに何してたの?普通じゃないよ」  
「あー、その・・・何だ・・・」  
朝と同じだ。どうにも歯切れが悪い。カズキが心配そうに斗貴子を見る。  
「・・・・・てたんだ」「え?」  
「変身ポーズを・・・考えてたんだ」  
そう言うやいなや、斗貴子の顔は真っ赤になる。当初、カズキが嬉々として変身するのを  
呆れの目で見ていたのだ。それが自分もそうなるとは・・・と、いうことだろう。  
「え?ポーズならあるじゃない。ほら、LXEのアジトのとこでも見せたアレ」  
「い、いや。それは核鉄をセットした後の話だろう?その前の奴だ。ほら、キミの腕を回すような」  
しどろもどろに、斗貴子はカズキに説明をする。  
「なるほどねぇ・・・って、それで寝不足・・・斗貴子さんも可愛いことするんだねぇ」  
「かわ・・・!?ま、まぁ、それだけではないんだがな・・・」  
突然のカズキの褒め言葉に狼狽しつつも、斗貴子は何かをボソボソと呟く。それを聞いてカズキが  
訝しげな顔をするが、聞かれてはまずいことだったらしい。斗貴子は慌てて二の句を継ぐ。  
 
「い、いや。とにかく。それでキミに助言をもらおうかな、と思うんだが」  
「助言って、変身の?」 「うむ」  
カズキはうーん、と考え込んでから、ポンと手を打つ。  
「じゃあとりあえず、俺の変身ポーズ真似してみる?何かの参考になるかもしれないし」  
「ふむ、そうだな。そうしてみるか」  
「ハイ、じゃあコレ。俺のポーズ取るんなら、俺のモノ使いなよ」  
カズキはそう言って、自分のカードを核鉄を渡す。それを見て斗貴子は気づく。  
「あれ・・・このカード、私のと違うな。私のは正面から核鉄をはめるようになっているんだが…」  
カズキのものは、変身ポーズを見てもわかるように、横からスライドして入れる様式である。  
「ホントだ・・・何でだろ?・・・・・まぁ、ブラボーの趣味じゃない?」  
「・・・そういうことにしておくか。で、どうやるんだ?」  
深く考えるのはやめにしたらしい。カズキのポーズ指南が始まった・・・  
 
「・・・で、ここでキャッチして、腕をこう内側に回して、変身!」「ふむ・・・・」  
カズキは、一通りの事を斗貴子に教えた。  
「じゃ、通してやってみようか。あ、大丈夫。変身する気がなければ、変身しないから」  
「そうか、じゃあやってみるとしよう」  
斗貴子は頷き、足を少し開いて構える。そして、核鉄を上に投げ上げた。「太陽よ!」  
当然落ちてくる核鉄。それを斗貴子は右手でキャッチして・・・「私に力を!」  
そのまま右腕を内側に勢いよく回して核鉄をはめ込む!「へんし・・」  
 
はずだった。  
ガキィィン!  
しかし、核鉄がうまくはまらなかったまぁ、あのスピードで腕を振って、なおかつ  
核鉄一個分の隙間しかない所に、簡単に入る方がおかしいのだが。  
「むぅ・・・難しいな」  
「そう?俺はそうでもないんだけど・・・」  
斗貴子は何度か挑戦するが、何度やっても核鉄がうまくはまらない。仕方なく諦めたようだ。  
「ふぅ・・・やはり、自分で考えねばならんか」  
「そうだねぇ。その方が気合も入るってもんだよ・・・ところで」「何だ?」  
カズキが急に話を変える。  
「岡倉達、どうしたの?」  
「ああ、彼らならとっくに昼御飯を買いに行ったぞ」  
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」  
斗貴子の声にカズキが大袈裟な声をあげる。まぁ、その理由もわからないでもない。  
「だって俺、買ってきて欲しいもの頼んでないよ?」  
カズキは説教が終わるまで彼らが待っていてくれると思ったようだ。しかして昼休みは有限である。  
「いや、私がカズキの分はいらないと言っておいたからな」  
時間がないから先に買いに行ったと思ったら、どうやら斗貴子が促していたらしい。しかし、何故?  
「ちょ、ちょっと斗貴子さん!それじゃあ俺の昼御飯どうするの?」  
当然カズキの頭にも同じ疑問が浮かぶ。だが、斗貴子はカバンの中をいそいそと探り、  
「じ、実はだな・・・キミの分の弁当を、作ってきたんだ・・・」  
 
赤面しつつ、もじもじしつつ、カズキに可愛らしい包みの弁当箱を差し出す。  
「え!?斗貴子さんが!?」  
さすがのカズキもこれには驚く。だが、間違いなく嬉しそうだ。  
「ま、まぁ、昨日のがなかなか好評だったからな・・・」  
恥ずかしいのだろう。斗貴子は自分でフォローを入れる。  
「何であれ嬉しいよ、じゃあ早速・・・」  
そう言ってカズキは斗貴子の弁当を食べようとするが、それを斗貴子が静止する。  
「なに?斗貴子さん」  
「昨日と同じだ・・・私が食べさせてやろう・・・」  
 
 
「はい、カズキ・・・口を開けろ。あーん」  
「あーんは恥ずかしいけども・・・あーん・・・むぐむぐ」  
何だかんだでカズキは口にする。羨ましいなこの野郎。  
「美味いか?」  
「(ドクン!あれ?また核鉄が反応した。何だろう?)・・・うん、すっごく美味しいよ」  
「そうか、それはよかった・・・次はこれだ」  
そう言って、斗貴子は次のおかずに箸をつけて、カズキに食べさせる。  
「ふぅ。今日は何だか凄い混んでたね・・・」  
「ああ。だがカズキ達の時間に合わせるには、丁度いいくらいだろう」  
「ねねね、まっぴー。お兄さんの分買ってこなくて、ホントによかったの?」  
「ん〜、斗貴子さんがいいって言ってたそうだから、いいんじゃないの〜?」  
「斗貴子さんの分は買ったけどね・・・」  
「斗貴子さんが言うなら問題ないだろ。うーっす。買ってきたぞ・・・」  
どうやら岡倉達が来たらしい。ちなみに、最近はこのメンツで食事を取ることが多い。  
「・・・って、超ド級ストロベリィィィィィィィィィィ!?」  
ビカァァァァァァ!  
岡倉が咆哮と共に、目を光らせる。まぁ、彼らがこの有様ではしかたあるまい。  
 
「あ、岡倉達きたねー」「うむ。遅かったな」  
岡倉のそんな反応などどこ吹く風か。彼らはちらりと一瞥した後、食事を再開する。  
(お願いだから、羞恥心を持ってください)  
そんなツッコミが6人全員の頭に浮かぶ。だが口に出すのもバカバカしい。  
「なぁ、最近斗貴子サンとカズキのストロベリっぷりにターボかかかってねぇか?」  
「確かに。以前の斗貴子氏では考えられない積極性だな」  
「斗貴子さん・・・何があったんだろう・・・」  
岡倉、六舛、大浜の通称三馬鹿トリオが、口々に呆れのため息を漏らす。  
「あー!斗貴子さんの手作り弁当だー!」  
まひろが、カズキが食べているものを見て、大声をあげる。まひろはいつもこんな調子である。  
「斗貴子さん、もうすっかりお兄ちゃんのカノジョー!」  
確かに、もう二人は全校公認のカップルだ。いい加減、本人らの口からは交際宣言はないのだが。  
 
「・・・いや、私とカズキは・・・そんな間柄では・・・(///)」  
まだ言うか、このストロベリー娘め。  
「でも、カズキがいいと言うならいつでもいいと言うか、私は準備OKだとか、むしろ私の方から  
 言ってしまおうかなとか、でもやっぱりカズキの方から、ちゃんと言って欲しいなと思うし…」  
カズキに弁当を食べさせるのも忘れて、斗貴子は体をもじもじしながら、独り言を続ける。  
「あー、ダメだ。完全別世界。ほかっといて食べようぜ、もう」  
『さんせーい』  
岡倉の意見に異論を唱えるものは、皆無だった。  
 
「で、海の件なんだが・・・日程は終業式の次の日から一泊二日、ってとこだな」  
食事をしながら、岡倉がそう切り出す。夏休みに入った途端に海にいくつもりのようだ。  
「場所は千葉の海豚海岸辺りが穴場だ。宿は俺が手配しておこう」  
と、これは六舛。  
「じゃ、僕は電車の方を手配しておくよ」  
と、大浜。  
「俺は何をすればいいかな?」  
カズキがそう聞くが、三人は首を振った。  
 
「お前はいいよ。俺らに任せて斗貴子さんとストロベリってろ」  
口調は乱暴だが、その裏にある優しさに気づかないほどカズキも鈍感ではない。カズキは素直に感謝する。  
「だってさ、斗貴子さん」  
「大体今時の高校生なら交際なんて当たり前だし…もういっそ文字通り抜き差しならない関係に…」  
「・・・ダメだこりゃ。聞いてない」  
「ねね、まっぴー。ホントに私とちーちんも行っていいの?」  
さーちゃんがそう提案する。確かに、カズキの妹であるまひろはともかく、その友達のさーちゃん  
ちーちんは遠慮してしまうだろう。ちーちんも、コクコクと無言で頷く。  
「ん〜。全然問題ないでしょ。皆で行ったほうが楽しいに決まってるじゃない」  
「そういうこと。と、いうかただでさえ女っ気が少ない上に、一人はもうお手つきなんだ。是非来てよ」  
まひろの言葉を、岡倉がおどけた感じで続ける。ついでにカズキへの嫌味つきだ。  
「おいおい岡倉。勘弁してくれよ」  
カズキが苦笑する。ちなみに、弁当はかなりの量で、一向に減っていかない。  
 
(・・・・・・・・待てよ?)  
そこで六舛が何かに気づく。  
(謎の集団食中毒・・・現れない共通性・・・そして、昨日の苺戦士の戦闘方法は・・・まさか!)  
どうやら何がしかの結論が出たらしい。六舛はカズキの方に向き直り、  
「なぁカズキ。その弁当、一口くれないか?」  
と、提案する。カズキも特に断る理由もなく、了承する。  
「・・・・・・ゴクリ」  
何故か冷や汗をたらしつつ、六舛はおかずを一つ口に入れる。その瞬間。  
「・・・・&”#=”)”$IOPKASL+!*+>L!"#E"!W#+!」  
六舛が何やらわけのわからない悲鳴を上げる。普段の彼からは考えられない様子だ。  
「ど、どうしたの?六舛」  
カズキだけでなく、他の皆も心配そうに六舛を見つめる。  
「私も昔は花嫁というものに憧れたものだ…子供は何人欲しいか、とか妄想したりも・・・」  
訂正。斗貴子だけは未だに旅行中。ともあれ、皆が見つめる中、六舛の顔色が変わっていく。  
「六舛先輩!大丈夫ですか!?」  
ちーちんが声をかけるも、表情はさらに悪くなる。と、いうかこれは・・・・チアノーゼ?  
 
「だ、だ、だ、大丈夫だ・・・ちょちょちょっと、ほけ、ん、し、つ・・・に・・・・」  
途切れ途切れに言葉を発しつつ、六舛は立ち上がってフラフラと屋上の出口に向かう。  
「あ、私保健委員ですから、付き添います」  
そう言って、ちーちんが六舛に肩を貸し、二人は屋上を出て行った。  
「な、何だったんだ・・・」  
「六舛君があんなに取り乱すなんて・・・滅多なことじゃないよね」  
「ああん、もうカズキ。キミはがっつきすぎだ。エロスは程ほどにしておきなさい」  
「大丈夫かな〜、六舛先輩。原因は何だろう?お兄ちゃん、わかる?」  
「いや、わからないが・・・」  
口々に驚嘆を漏らす面々。約一名、違うようだが・・・  
「あ、でも〜、斗貴子さんのお弁当食べたあと、顔色が変わったような〜?」  
その時さーちゃんがポツリと漏らした言葉に全員はっとする。  
「た、たしかに・・・」「まさかこのお弁当が…」「・・・・毒物?」  
「でも、カズキ君、これ平気で食べてたよね?」  
「うん。っていうか、普通に美味しかったけど・・・・は!?まさか!」  
その時カズキは気づく。斗貴子の弁当を食べた時に起こった共通の現象を。  
「何かわかったの?お兄ちゃん」  
(ありがとう・・・・ありがとう俺の核鉄)  
まひろの問いには答えず、カズキは胸の奥でただ、涙した。  
「・・・・・・・・・・ふぅ。おや?六舛とちーちんがいないが、何かあったのか?」  
そんな最中、騒ぎの元凶とも言える斗貴子が、ようやく帰ってきた。  
 
そんなこんなでドタバタの食事も終わり・・・  
 
キーンコーンカーンコーン  
予鈴が鳴る。もうすぐ授業が始まるようだ。  
「あ、予鈴だね。そろそろ戻ろうか」  
「そうだな。ほら、カズキ、起きろ」  
岡倉がカズキを起こす。カズキは弁当を相当食べて疲れたのか、自分が食べたものから現実逃避  
しているのか、深い眠りについていた。しかも、贅沢に斗貴子の膝で。  
 
「・・・う〜ん」  
「ダメだこりゃ。起きねぇわ」  
「何だかんだでカズキも疲れているみたいだからな。ここは私に任せてキミ達は行きなさい」  
斗貴子が、カズキを見て微笑みながら、岡倉にそう告げる。  
「そりゃ構わないけど授業に遅れ・・・あー、次の授業なら問題ないか」  
次の授業は、どうやら教師が出席を取るタイプではないようだ。加えて斗貴子なら  
自主学習で簡単に追いつけるだろう。岡倉は笑ってその場を去った。  
「ほら、まっぴー。行くよ」  
「いいなぁ、お兄ちゃん。気持ち良さそう・・・」  
さーちゃんがまひろを引っ張って連れて行く。まひろは不満そうに引きずられていった。  
「まったく・・・まひろは相変わらずだな。さすがはキミの妹だ」  
斗貴子さんは寝ているカズキに語りかけるように、微笑む。  
「ふふふ・・・・可愛い顔をする」  
穏やかな昼下がり。まだ夏と呼ぶには早い。風も吹いていて、心地よい空気である。  
「今日は結局一つも授業を聞いてないな。まぁ、たまにはこういうのもいいか・・・」  
苦笑して、斗貴子はしばらくはこの空気に身を任せることにした。  
 
ザワザワザワザワザワ  
そうして暫くすると、学校中が急に騒がしくなった。屋上にいてもどよめきが聞こえてくる。  
「何か、あったのか・・・・・・・・!?あいつらは!?」  
何気なく校庭の方を見た斗貴子は、その原因を知る。そこは、以前にも戦ったことのある  
ホムンクルスがいた。屋上からでもわかる。何故ならそのホムンクルスは、外見からして  
超巨大な人間なのである。一目見て斗貴子は気づいた。  
「カズキ、起きろ!奴らだ!」  
「・・・・う、う〜ん・・・・何だって!?」  
揺り動かされて、カズキが目を覚ます。そして校庭に目をやるやいなや、屋上のフェンスに  
向かって走り出す。どうするのかと斗貴子が見ていると、何とカズキは核鉄を外に投げた。  
「太陽よ!」さらにそのまま屋上のフェンスを軽々と登り、外に飛び出す。  
「俺に力を!」そして見事に空中で核鉄をキャッチする。  
「変身!」重力に従って、頭から地面に落下しながらも、カズキは核鉄をセットする。  
 
カズキの姿が変わる。カズキは空中で幾度か回転して、そして膝をついて着地する。  
「出たな、化け物!この超槍戦士・サンゼリオンが相手だ!」  
続けて、ホムンクルスに指をビシィっと突きつける。その瞬間。  
ワァァァァァァァァァ!  
校舎から歓声が上がる。どうやら、桜花の嫌がらせが上手い具合に働いたらしい。  
「全く・・・派手に登場しすぎだ」  
斗貴子は呆れながらも自身も核鉄を取り出す。ストロベリーパワーは先ほどの時間で、  
これでもかというくらい溜まっている。斗貴子は核鉄を胸の前でギュっと抱く。  
「ストロベリーパワー満点☆ストロベリー、メイク、アップ!」  
斗貴子が核鉄をセットすると斗貴子の体は光に包まれた・・・・  
 
「お前・・・確か太とか言ったか」  
カズキが目の前に立つ巨大なホムンクルスに、隙を見せないように問い掛ける。  
「お約束なんだがナ。俺は太じゃねェ。俺のナは大よ!」  
そのホムンクルス−大(ダイ)−はふてぶてしく言い放つ。  
「名前なんてどうでもいい。お前の目的は何だ?」  
「目的?決まってるだろうガ。ここの連中を食い尽くすことだヨ」  
「お待ちなさい!」  
その時、どこからか朗々とした声が響く。  
「何!?どこだ!」「ここよ!」  
そこは時計台−校舎のど真ん中にある−の上だった。戦士に変身した斗貴子が、叫ぶ。  
「学園の皆の平和を脅かす悪党!例え世界が許しても、月と私は許さない!」  
斗貴子が堂々と口上を述べる。階下では生徒たちのざわめく声が聞こえる。  
「貴方を討つは愛の力。愛の力は苺の力。ストロベリー戦士・とっきゅん!ここに見参!」  
名を名乗ると同時に、斗貴子は跳び、空中で何度も回転したあと、大の前に着地する。そして  
「貴方のハートをブチ撒けチャウゾ☆」  
ズドーーーン!  
毎度起こる爆発と爆煙。断言できる。間違いなく斗貴子の登場の方が派手だ。  
 
オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!  
その瞬間、カズキの時の数倍の歓声が校舎から上がる。  
『とっきゅん!とっきゅん!とっきゅん!とっきゅん!』  
『サンゼリオン!サンゼリオン!』  
コールまで起こる始末である。彼らの人気はかなりのもののようだ。  
「ハン。やかましい奴らだ」「僻むなヨ、ケケケケケケケ」  
大が鬱陶しそうに口を開くと、もう一人の声がした。だが姿は見えない。  
「どこだ!隠れてないで出て来い!」  
「ケケケケケ。俺は隠れてるつもりはないんだがナ」  
 
ガサガサガサ  
もう一つの声がすると同時に、傍の茂みで何かが動く。そしてその何かは塀を乗り越えて、  
外に出て行った。カズキはそれを追いかける。  
「斗貴子さん!俺はアイツを追う!こっちは任せたよ!」  
「とっきゅん!それはともかく待って!罠かも知れないわ!」  
斗貴子の静止も虚しく、カズキはそれを追って、外に行ってしまった。  
「ケケケケ、さすがは戦士。罠だと気づくなんて鋭いナ」  
「だがよォ。お仲間の方はちょっぴりオツムが弱かったみたいだなァ」  
 
やはり罠だったようだ。未だ姿を見せないホムンクルスの声がする。  
「やはり罠だったのね・・・とにかく!姿を見せなさい!」  
「ケケケケケケ、しょうがねェナ」  
声がそう言うと大の後ろから何かが飛び降りた。本当に小さな何かが、だ。  
「ケケケケケケ。俺の名は小(チー)、一応このでくのぼうとコンビをやってるゼ」  
「誰がでくのぼうだ!誰が!」  
その何かは、人型だった。と、いっても身長が60cmくらいしかない。間違いなくホムンクルスだ。  
「・・・・・・・なるほど、それで大と小ね・・・」  
「気づいても遅ェヨ。お仲間はどっか遠ク。2対1だ」  
「ケケケケケケケケケ」  
確かに、形勢は少し不利である。だが、嘆くわけにもいかない。  
 
「そうね。だからさっさと片付ける事にするわ!行くわよ!」  
叫んで斗貴子は空中高く舞い上がる。いきなり大技を放つ気だ。空中で宙返りをする。  
「ストロベリィィィィィィ!月光(ムーンライト)!キィィィィィィィック!」  
ゴォォォォォォ!  
轟音を立て、斗貴子は一筋の矢となって、大に迫る。だが、大は動じない。  
「小!」「おうヨ!」  
大が叫ぶと、小は大の腕に取り付く。そして驚くべきことに、そのまま大きな盾になった。  
「何ですって!?」  
ガキィィィィィィィィン!  
その盾の強度は凄まじく、斗貴子のキックを防いでしまう。さらに、  
「ケケケケケケケケケ」  
小が再び変形して、斗貴子の体にまとわりつく。斗貴子はそのまま拘束されてしまった。  
「く・・・・放しなさい!」  
「へっへっへ、あっけねェなぁ、苺戦士。一人だとこんなもんかヨ」  
身動きが取れずにもがく斗貴子に、大が嫌らしい笑みを浮かべる。  
「で、大、どうするヨ?」「決まってんだロ・・・」  
そこで大はさらに嫌らしい笑みを深くし、恐ろしい一言を言い放った。  
「この女を・・・・犯す」  
 
 
 
次回予告  
 
捕まってしまった斗貴子!命よりもまずは貞操が危ない!急げカズキ!斗貴子を救え!  
敵の罠にはまってしまった斗貴子とカズキ!この最大のピンチを乗り越えた時、斗貴子は変わる!  
 
次回、ストロベリー戦士・とっきゅん 第五話 「逆転!そして新たなる力」  
 
ヒロイン拘束って特撮モノのお約束だよね、と思いつつ→                続く。  
 

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