「この女を…犯ス!」「ケケケケケ!面白そうだナ」
「な…何をふざけたことを!」
「ハン、顔が引きつってるゼ。いい気味だナ…なぁ?…」
ストロベリー戦士・とっきゅん 第五話 「逆転!そして新たなる力」
「ハァ、ハァ…ようやく追い詰めたぞ!ホムンクルス!」
校庭から逃げたホムンクルスを、カズキは必死に追いかけ、ついに袋小路に追い詰めた。
「…ゲ、ゲ、ゲ…」 「…!?お前は!?細じゃない!?」
ホムンクルスの姿を見て、カズキは驚愕する。てっきり細(に似たホムンクルス)だと
思ったのが違ったのである。もっとも、そのホムンクルスも以前戦ったことのある相手だった。
「お前は確か…猿渡」
そう、それはカズキが核鉄を手に入れた日。一度死んだ日。カズキの全てが変わった日、
戦った猿型のホムンクルスであった。
「…ギ、ギ、ギ…」 (…何だ、この違和感)
カズキは、目の前に猿渡に何か違和感を感じる。
「お前と戦うのは、二度目だな!」
その違和感を確かめる意味も込めて、カズキは猿渡に啖呵を切る。
「…ゲ、ゲ、ゲ…」
だが、猿渡は先ほどから奇妙な唸り声を上げるだけで、カズキの問いには答えない。
一連の連中なら、ここで自分の名前を訂正してくるはずだ。だがそれがない。
(言葉を喋らない…いや。人格が、ないのか?どういうことだ?)
カズキの中の違和感がさらに大きくなる。だが、今はそれを考えている時ではない。
「そうだ!早くお前を倒して、斗貴子さんを助けに行く!行くぞ!」
「…ギ、ギィ!」
カズキが構えを取ると同時に、猿渡は奇妙な唸り声を再び上げる。
ザザザザザザザザザザザ
『ギ、ギ、ギ!』『ゲェ、ゲェ!』
それに呼応するかのように、同じく猿型のホムンクルスが辺りに現れる。その数、約10体。
「…以前と同じ、か」
多勢に無勢ではあるが、カズキは退かない。以前戦った時は楽勝とはいかなかったが、
倒すことができた。今はその時より確実に強くなっている。負ける要素はない。
「速攻で片付ける!ゼリオ・ブレェェェェェド!」
カズキが剣を抜いた時、それが戦闘開始の合図と相成った…
「ケケ、で…犯すとは言ったものの、どうするヨ?」
「まぁ待ちナ。まずは変身を解除させるのが先ダ」
拘束された斗貴子の前で、大と小が不気味な笑みを浮かべながら相談をする。
「く…こんなことをして…タダですむと…」
口調は強気であるが、斗貴子も冷静ではいられるはずがない。冷や汗がにじむ。
「確かにただではすまねェよナァ。オ・マ・エ・ガ・ナ」
「そういうこった。ま、そろそろ…」
キュィィィィィィィィィン
大の呟きに呼応するかのように、斗貴子の変身が解け、斗貴子は元の姿に戻る。幸いなのは
大の影に隠れて校舎からは姿が見えないことか。もっとも、そんな事を考える余裕はないが。
「ケケケケ、ホントに解けやがった」
「ハン。データによればストロベリーパワー云々らしいからな」
そう。拘束されたことと、そして何よりカズキが傍にいないことで、ストロベリーパワーを
一気に消費してしまったのだ。変身形態を維持できるほどのパワーがなくなれば、こうなる。
「マ、所詮コイツは一人じゃ何もできネェってことヨ」
「一応この変身核鉄とやらを回収しておくカ?」
小の提案に、しかし大は頭を振って応える。
「いや、どうせコイツはもう変身できネェヨ。それとも何か?俺とお前のどちらかが使うか?」
それを俺に書けというのか。
「ナルホド。もう一匹の方が来なければコイツは変身できネェからな。放置しとくカ」
「ふざけるな!カズキはすぐにここに来る!カズキは強い!」
自身を勇気付ける意味も込めて、斗貴子は叫ぶ。だが、大小は不敵な笑みを絶やさない。
「それは難しいナ。奴には結構な数を当てたからナ」
「ま、miss creation−できそこない−とは言え、これくらいの役には立つダロ」
「それを言うなヨ。時間が経ちすぎたんダ」
斗貴子の叫びも虚しく、大小は不可解な会話を交わす。そして…
「さて…そろそろ始めるカ」 「ケケケケ。待ってたゼ」
遂に大が、斗貴子にその手を伸ばし始めた…
「ゼリオ・スパイラル!!」
ゴォォォォォ!
「ギギィ!?」
カズキがゼリオ・ブレードを軸に、大きく回転して、ホムンクルス達を蹴散らす。
「続けて!サンゼリオ・スラッシャー!」
さらに吹っ飛んだホムンクルスに対して、大きく切りつける。
『グギギィ!』
ホムンクルスは成す術もなく、倒れる。だが、すぐに立ち上がって再び襲い掛かってくる。
「く…こいつら、また…」
何度破壊しても、再生し、立ち上がり、再び襲ってくる。先ほどからこの繰り返しである。
『ギギギ!ギギィ!』
飛び掛る複数のホムンクルス。カズキは再び構えを取って、迎撃する。
「このままじゃ埒があかない…だったら!」
ジャキン!
何か考えが浮かんだようだ。カズキはゼリオ・ブレードを鞘に収め、そして
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
裂帛の気合と共に、空気が震え、カズキの拳にエネルギーが収束する。
「サンゼリオ・クエイカー!」
ゴォォォォォン!
咆哮と共にカズキが地面に拳を叩きつけると、衝撃波がホムンクルスを襲う。
『ギギギギギギィ!』
破壊をもたらすその衝撃波は、ホムンクルスを吹き飛ばし、完膚なきまでに破壊する。
「ハァ…ハァ…」
今の技はかなりの大技らしい。カズキは地面に膝をつき、肩で息をする。
だが、それでもホムンクルスは倒れない。バラバラになった体がすぐさま結合し、また立ち上がる。
「何で…何で倒れない…俺は、斗貴子さんを助けに行かなきゃいけないのに…」
カズキの顔に汗がにじむ。猿渡がここにいる以上、斗貴子は二対一で戦っているはずだ。
焦りが、カズキの胸を刺す。早く、早く行かなければ。
『ギギギギギギィ!』
しかし、ホムンクルスは倒れない。倒しても倒しても蘇って襲い掛かってくるのだ。
飛び掛るホムンクルス。カズキは未だ地面に膝をつき、起き上がることができない。
「く…一体どうすれば…」
襲い掛かるホムンクルスに、カズキは成す術がない。万事休すかと思われた、
その、瞬間。
ドゴォォォォォォォォォォォン!
『ギギィ!?』
突如として、ホムンクルスが爆発する。呆然とするカズキに、空から声が響く。
「だらしがないな、武藤!」
「蝶野!?」
それは大きな一羽の黒死の蝶。カズキのライバルでもあるホムンクルス。
常に高みを目指す男。パピヨンこと−蝶野攻爵。
「この程度の相手に苦戦して、正義の戦士気取りか。笑わせる」
「…見てなかったのか?こいつら、倒しても倒しても復活してくるんだ」
パピヨンの皮肉に、カズキは苦い顔で返す。苦戦しているのは事実だ。
「…頭を使え。ホムンクルスとはいえ、不死身というのはあり得ない」
「けど、事実こいつらは何度倒しても…ほら、また」
彼らが言葉を交わす間にも、ホムンクルスはまた復活する。これで幾度目だろうか。
「…よく見ろ。さっきまでの戦闘中、全く動いてなかった奴がいるはずだ」
「…!?」
言われてカズキは初めて気づく。先ほどの戦いの最中、猿渡は一歩も動かなかったことを。
「と、すると…」
「ここまで言えば貴様でもわかるか。そう、コイツらの大元はあの猿渡だ」
「なるほど。つまり、アイツさえ倒せば!」
カズキは叫び、そして構えを取る。だが、そのカズキを蝶野が静止する。
「そういうこと。さ、ここは俺に任せてお前は行くがいいさ」
続けてパピヨンが放った言葉に、カズキは驚愕する。
「…どういうことだ?俺を助けてお前に何の得がある?」
彼の疑問ももっともだ。彼らはライバル同士。そもそもカズキを助けることがおかしい。
「お約束なんだがな。貴様を倒すのは、この俺だ。さぁ、さっさとあの女のもとへ行け」
カズキは一瞬頷きそうになるが、ふと気づく。そうだ、第一この猿渡は…
「待て。このホムンクルス、元々はお前が作ったものはずだ。いいのか?」
彼の言うとおり猿渡は蝶野が作ったものなのだ。だがパピヨンは苦渋の表情を浮かべる。
「…だからだ。いいから、さっさと行け!」
パピヨンの表情を見て、信じるに値すると思ったのか、カズキは彼に任せることにする。
「事情はよくわからないが…恩に着るぞ、蝶野!」
言うやいなやカズキは学校に向けて走り出す。その背中にパピヨンは声をかける。
「礼など言う必要はない、貸しだ。俺が生まれて初めて作った、な」
そう言って、パピヨンはフッと不敵に笑う。
(それに、今あの女が死ねば武藤は絶望のあまり、武藤でなくなる。いずれはそうなるとして、
それは俺の役目だからな…)
声には出さず一人ごちて、パピヨンは猿渡の方に向き直る。
「よくも、こんな劣悪品を作ってくれたものだ。さて、この不快感、どうしてくれよう」
『ギ、ギィ!』
相手が自分を作った人間だと気づいていないのか、ホムンクルスは闘志を剥き出しにする。
「ま、創造主の務めだ…お前らは、俺の手で無に還してやる」
静かに呟いて、パピヨンは自分の周りに無数の蝶を発生させた。
「く…誰が、お前達などに…」
にじり寄る大と小に、斗貴子は精一杯の虚勢を張る。
「ヘ。気が強い女ってのも悪くネェナ」
「ケケケ、声が震えてるゼ」
(ええい、どうにかならないのか…カズキ!)
だが、そんな虚勢に何の意味もない。窮地に立たされた斗貴子の頭に浮かぶのは、一人の男。
彼女が人生を変えた男。彼女の人生を変えた男。今まで誰一人として侵入を許さなかった、
彼女の心にすんなり入って来た男。常に一人だった彼女が、初めて一緒にいたいと思った男。
(ふふふ…こんなことなら、さっさとキミに初めてを上げておけばよかったか…)
斗貴子の頭に浮かぶ諦念。迫り来る大と小。大の手が、斗貴子の服に手をかける。
『待てぃ!』
その瞬間、朗々とした声が辺りに響く。
「ナニィ!?どこダ!」「屋上ダ!」
声の主を探す大に、小が告げる。二人が目をやると、一人の男が立っていた。顔は逆光で見えない。
「人は…一人でも戦う力を持っている。だが、その力には限界があるだろう。人は、誰かと
支えあって初めて、無敵の力を持つ戦士となるのだ。例えどんな逆境であろうと、信じ、思い
助け合う心・・・・・・・・・・・・・・人、それを絆と言う」
「ハン、ふざけたことを!何者ダ!」
そこで初めて、逆光で見えなかったその男の顔が見える。その男とは、言うまでもない。カズキだ。
「お前たちに名乗る名前はない!」
一喝すると、カズキは先ほどと同じように、核鉄を宙に投げ、自身も宙に跳ぶ。
「太陽よ…我に力を与えたまえ…」
そのまま空中で核鉄をセットする。
「変身!」
カズキの思いが頂点に達すると、核鉄はそれに呼応して、超槍戦士へと形を変えるのである。
カズキは、超槍戦士に変身することにより、その力を数十倍に発揮することができるのだ!(cv 速水奨
「闇あるところ光あり…悪あるところ正義あり。太陽の使者、サンゼリオン参上!」
マフラーをたなびかせ、カズキは地面に着地し、そして豪快に名乗りを上げた。
「テメェは!?」「アレをもう突破してきたのか」
大と小は、予定よりずっと早く現れたカズキに、驚愕を隠せない。
「遅いぞ!バカ!」
安心したのだろう。斗貴子は思わずカズキに罵声を浴びせる。カズキは鷹揚に頷く。
「ゴメンよ斗貴子さん。今、助ける」
「ハ!させるかよ!」「ケケケ、やっちまえ、ヤロウども!」
『ギギギギギィ!』
一体どこに隠れていたのか、猿渡の取り巻きと同タイプのホムンクルスが現れる。その数、5。
「ゼリオール!」
ヒュィィィン!
カズキの叫びに呼応して、マフラーが形を変え、マントとなる。そのマントでカズキは
ホムンクルスを弾き散らして、斗貴子の元へ向かう。
「お前ら!斗貴子さんを離せ!サンゼリオ・クラッシャー!」
今度はマントがエネルギーとなり、そのままカズキの推進力となる。
「チ!」
その爆発的な突進力に、大は対応できず、斗貴子は、無事カズキの腕の中へと奪還される。
「大丈夫だった!?斗貴子さん」
「遅いぞ…も、うダメ、かと…バカぁ」
内心は相当恐怖を感じていたのだろう。斗貴子の声は途切れ途切れで、嗚咽が混じる。
「ゴメン、ゴメンよ…斗貴子さん」
子供の様にカズキの腕の中で嗚咽を漏らす斗貴子を、カズキは強く抱きしめる。
「もう、絶対に一人にしない…斗貴子さんは、俺が守る!」
「カズキ…」
キィィィィィィィィィィィン
その時、斗貴子の変身核鉄が強い光を放つ。ストロベリーパワーが溜まったようである。
「さ、斗貴子さん…一緒に戦おう。変身するんだ」
「わかった…」
本当はもう少しこうしていたかったが、そうも言っていられない。斗貴子は変身の構えを取る。
(…?何だ、いつもと違う?)
だが、斗貴子は核鉄に違和感を感じる。いつもと感じが違うのだ。
(…!?そうか、そういうことか。これが、本来の…)
シュルルルルル、ガチン!
斗貴子の中で、何らかの結論が出たようだ。斗貴子はカードをセットした。
「ストロベリーパワー満点…ストロベリー…メイク…アップ」
核鉄を胸の前でキュっと抱き、そのまま下に落とし、自身は例のポーズを取る。本来なら重力に
従って地面に落ちるはずのそれは、カードの目の前に来ると、そこに吸い込まれるようにはまった。
ピカァァァァァァァァ!
そして、今までに見たことのない程強烈な光が、斗貴子を覆う。その光が消えた時に
現れたのは、新たなる姿だった。
「ストロベリー戦士・とっきゅん…ミルクフォーーム!」
ズドォォォォォォン!
毎度の如く巻き起こる爆煙。斗貴子の姿は、少し何時もと違っていた。
スカート、リボン、ブローチは鮮やかな赤だったのが、明るい桃色になっている。
そして、左の手首にもブローチがついている。他にも要所が細かく変わっていた。
「斗貴子さん!?その姿は…」
傍にいたカズキも、驚愕に目を見張る。だが、続く句は斗貴子に静止される。
「とっきゅん。それに話は後。まずは雑魚どもを蹴散らすわ…」
静かに言い放って、斗貴子はホムンクルスの集団に、体を向ける。何をするのかと
カズキが見ていると、斗貴子は左腕を目の前にかざす。
「ストロベリー・オーラ!」
トキューーーーーーーーーーーン!
音と共に、斗貴子の左手首のブローチから、まばゆい光が放たれ、ホムンクルスに襲い掛かる。
そしてその光を浴びたホムンクルスは、一瞬で塵となった。
「す…すごい」
そのあまりの威力に、カズキはただただ、驚愕するのみである。
「…ふぅ。やっぱり、ちょっと疲れるわね」
「でも凄いよとっきゅん!一瞬で倒すなんて…大と小には効いてないみたいだけど…」
「今の技は、対動物型ホムンクルス技だからね…当然と言えば当然よ」
ストロベリー・オーラは、相手の内に眠るストロベリーな気持ちを揺り起こす技である。
闘争心しか持たない動物型ホムンクルスは、オーラによってその闘争心を削がれたとき、
自らの体を維持することができず、崩壊してしまったのだ (cv 中江真治)
「オイオイ、一気に形勢逆転してんジャネ?」
「ハン、雑魚が消えた所で変わりははしネェよ」
それだけの技を目の当たりにしても、大小は全く動じない。そんな彼らを見て、カズキは
ようやく怒りが込み上げて来たらしい。二人をキッと見据える
「お前ら…よくも『俺の』斗貴子さんにひど…」
「…ん?」「…」
「よくも『俺の』斗貴子さ…あの、斗貴子さん?」「何?」
「何で、いちいち『俺の』って、つけるの?」
勢いを削がれたカズキが、斗貴子に問うと斗貴子は顔を赤らめながら応える。
「だって…男なんだからそれくらいの事言ってくれても…」
「いや、あの…言うにしても別に今じゃなくても…」
「ふーんだ、どうせカズキなんか、あたしの事どうでもいいんだ…いいもーんだ」
しどろもどろのカズキに、斗貴子は突然すね始める。と、いうか微妙に口調が変わっている。
フォームチェンジすると、性格まで変わるのだろうか。
「そ、そんなこと言ってないじゃない!」
「いいもんいいもん。カズキなんかあの早坂桜花と、イチャついてればいいのよ」
「斗貴子さ〜ん」
「斗貴子なんて知らないもーん。だってあたしはとっきゅんだから」
「…なぁ、小?」「…何ダ?」
二人がストロベリってるのを見て気が抜けたのか、大が気だるそうに小に尋ねる。
「本当にコレに、銀城や陣外は負けたのか?」
「ケケケ。信じたくネェが、本当だろうヨ」
「さて…冗談はこれくらいにして」
「冗談だよね?本当に冗談だよね?」
問い掛けるカズキの顔は既に半泣きである。斗貴子はカズキに微笑み、そして大小に向き直る。
「さて…よくも散々人を弄んでくれたわねぇ…」
斗貴子は高圧的に呟いて、ニヤリと笑う。本当に性格が違う。むしろ怖い。
「ハン、やる気カヨ。俺たちに歯が立たなかったのを忘れたのカヨ」
確かに、必殺技すらも防がれ、簡単にやられてのはつい先ほどの話である。
「あら?もう負けないわよ。だって…」
だが、斗貴子の自信は揺るがない。そう、先程とは違うのだ。今は…
「今は…一人じゃないもの」「とっきゅん…」
そう、今は一人ではない。カズキがいる。カズキさえいれば、ストロベリー戦士は、負けない。
「さっさと片付けるわ…」
シャキィィィィン
斗貴子は呟くと、左手首のブローチから、刀を取り出した。日本刀である。
「ヘ!一人だろうと二人だろうと一緒なんだヨ!いくぞ小!」「おうヨ!」
大の叫びに小が答え、小の体が変わる。今度はグローブになり、大の右手に装着される。
「…ハン、死ね!」
ブゥゥゥン!
轟音を立てて、巨大な拳が斗貴子に襲い掛かる。斗貴子はその場を一歩も動かない。
ゴゥゥゥゥゥン!
そしてそのまま拳は、斗貴子に直撃した…かに見えた。
「ケッ!大口叩いた割には大したことネェなぁ。なぁ!チ…チー!?」
小に語りかけた大は、自らの拳に装着されている小が、真っ二つにされているのに気づく。
「名刀・いちごみるく…切れ味は、ちょっとよすぎるみたいね」
ズシャァァァァァァ!
何時の間にか大の後ろにいた、斗貴子がそう呟いた瞬間、小は大の右腕ごと真っ二つになる。
小は、断末魔の悲鳴を上げることなく死んでいった。
「グ、グァ!?」
大は、そこでようやく自分の腕も斬られていたことに気づく。とてつもない威力だ。
「…何て切れ味だ。俺の出る幕、ないかも…」
「ええい!こうなったら片腕だけでもキサマらを!」
ヤケになったのか、大は作戦も何もなく、斗貴子に襲い掛かる。だが、
そんな攻撃を食らうほど、斗貴子は甘くない。
「無駄よ…だって、今の貴方は一人だもの…苺真剣奥義…」
大が左腕を地面に叩きつけるも、斗貴子は既にそこにはいない。
「章姫(あきひめ)!」
斗貴子は、一瞬の内に大の左側を払い抜けていたのだ。
ズシャァァァァァァ!
今度は、大の左腕が切り裂かれる。これで大は両腕を失った。
「一気に決めるわよ、サンゼリオン!」
ここがチャンスとばかりに、斗貴子はカズキに呼びかける。
「わかってる、先に仕掛けるよ!とっきゅん!」
応えてカズキは、大に向かって突進する。
「てぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!苺真剣奥義!」
斗貴子が大に袈裟懸ける。カズキが払いぬけて、二人は大を挟む形となる。
「重ね栃乙女(とちおとめ)!」
そして、再び大を切り結ぶ!
「切捨て御免!」
「グァァァァァァァァァァァァァァァ!」
パチン!ドゴォォォォォォン!
二人が刃を収めた瞬間、ホムンクルス大は、爆煙と散った。
「ふぅ…今回は、ちょっと危なかったね」
変身を解いたカズキが、斗貴子に話し掛ける。
「全くだ。キミがあんな単純な罠にかかるから…」
「あはは、ホントゴメン」
「まぁ、おかげで絆が少し深まったと思えばいいか…」「…ん?」
斗貴子がポツリと本音を漏らす。カズキはしっかり聞いていなかったようだ。
「何?何か言った?斗貴子さん」
「何でもない。さ、バレないように校舎に戻るぞ」
そう言った斗貴子の顔は、少し赤かった。
「そうだね。戻ろうか…って・・・」
戻ろうと校舎の方を見た二人は、そこにある光景を見て絶句する。
『○○先輩!私ずっと先輩のことが好きでした!付き合ってください!』『ボクもだ!××さん!』
『なぁ、俺たちずっと喧嘩ばかりしてきたけど…これからは仲良くしないか?』『…うん』
『姉さん!姉さん姉さん姉さん姉さん姉さん!』『ペッ(゚д゚)、武藤クン武藤クン武藤クゥゥゥン!』
校舎には、何故かとてつもなく甘い空気が流れていた。それを見て斗貴子が唸る。
「あ〜…そっか」
何か心当たりがあるようだ。斗貴子はバツが悪そうに頭をかく。
「原因がわかるの?斗貴子さん」
「あー、何だ、その…さっきのオーラの余波だったり………………てへ☆」
「…それ、普段の斗貴子さんがやっても似合わないと思う…」
「…私も、そう思う」
おかげで、彼らは今回も正体がバレませんでしたとさ。
次回予告
辛くも学園を守った斗貴子達。だが、斗貴子達はその学園で気になる噂を聞く。
その噂とは、銀成学園の制服を着た二人組みの化け物が、街で悪さを働いている
というもの。今度は奴らの偽者かと思った矢先、当の早坂姉弟が不審な動きを見せる。
まさか…彼らが?不安をぬぐい切れずに、斗貴子達は先手を打って調査を開始する!
次回 ストロベリー戦士・とっきゅん 第六話 「激突!ヒーローバトルはお約束?」
あー、偽姉弟の名前どうしよう。全然考えてないや、けど→ 続く。