ジーワ、ジーワと蝉の鳴く声が聞こえる。  
また、暑い夏がやってきた。  
 
年によっては冷夏などともいわれ、それほど平均気温が高くなかったこともある。  
それでも、いつの間にか梅雨が明け、肌に貼りつくような湿気もそのままに、  
今年もまた、暑い季節がやってきた。  
 
暑さこそ変わり映えはしないものの、この夏は去年までとは違う様相を呈していた。  
それは、生活環境の変化によるところが大きい。  
 
今年の春、私は銀成学園に入学し、寄宿舎に入った。  
それまで親元を離れたことがなかったから、両親、特に父はずいぶんと私のことを  
心配してくれた。  
 
新しい友達もできた。  
まひろと、沙織。  
そのことを話したときの母の声は、とても嬉しそうだった。  
それまで一人でいることが多く、両親に友達のことを話したことはほとんどなかった。  
 
女友達だけじゃない。  
男友達(といってもいいのかは未だに疑問だけど)もできた。  
まひろのお兄さんの、武藤カズキ先輩。  
その友達の岡倉英之先輩、六舛孝二先輩、大浜真史先輩。  
要らぬ心配をかけたくなかったので、男友達の件は両親には話さなかったけれども。  
 
武藤カズキ先輩。  
まひろとはよく似た兄妹だった。  
何故かしら人を引き付ける魅力を持つ人。  
私にはないモノを持つ人だった。  
 
「ねね、ちーちんも行くでしょ?」  
 
まひろと沙織がおしゃべりをしているところに顔を出す。  
期末テストも終わり、夏休みも近い。  
夏休みの予定の話でもしているに違いなかった。  
 
「行くって、どこへ?」  
「海!」  
 
右手をあげて元気に答えるまひろ。  
この子はいつもこうだ。  
 
「千葉の海豚海岸なんだってさ〜。  
 詳しくはまだ決まってないんだけど、一泊二日で行けたらいいなぁ、なんて」  
 
沙織が説明してくれる。  
 
「いいわね、夏らしくて。  
 うん、私も行く」  
「やったぁ!」  
「うんうん、そうこなくちゃね」  
「じゃぁ私、お兄ちゃんに話してくるね!」  
 
そういって教室を抜け、駆け出して行ってしまうまひろ。  
 
「…え?」  
「恋のバカンス、アバンチュール!!  
 ああ、今年の夏は何かが起きそう…!」  
 
…沙織は既にトリップしてしまっていた。  
 
 
…ああ、まさかこんなことになるなんて。  
 
泊りがけで、海。  
男の人と、一緒に。  
二人きりではないとはいえ、それは私にとって初めての経験といってよかった。  
 
中学の修学旅行にも行ったりはしたが、それとはワケが違う。  
学校行事なんて義務感によるものでしかないわけだし、何より今回はあの人…  
…カズキ先輩が一緒なのだから。  
 
やはり断ろうかとも思ったけど、満面の笑みでVサインまで携えて戻ってきた  
まひろには、とてもじゃないが言い出せなかった。  
 
「明後日、終業式の後に談話室で打ち合わせだって」  
「ふんふん、それじゃあ明日にでも新しい水着を買いに行くとしますか!」  
「さんせーい」  
 
盛り上がるまひろと沙織。  
 
「…あ、私はいい」  
「えーなんで?  
 まさか、学校指定のスクール水着なんていうマニアックな路線で攻めるつもりじゃ…」  
 
沙織がニヤニヤしながらきいてくる。  
 
「そんなワケないでしょ。  
 私だって、プライベートの水着くらい持ってる」  
「えーでもさー、高校生活初めての夏なんだし、新調しちゃおうよ」  
「去年買ったばかりだから」  
 
…全部嘘だった。  
 
プライベートな水着なんて、持っているわけがない。  
私には必要のないモノだった。  
…去年までは。  
 
カズキ先輩と、泊りがけで海。  
それだけでもドキドキものなのに。  
水着姿まで披露しなければいけないなんて。  
 
少し考えれば当たり前のことなんだけど、今の私にはそんな余裕はなかった。  
沙織と一緒に買いに行ったりなんかしたら、どんどんエスカレートして、どんな過激な水着を  
買わされるか分かったもんじゃない。  
かといって、スクール水着などは言語道断だ。  
 
新しい水着を手に入れる。  
しかも、極秘裏のうちに。  
カズキ先輩に、見てもらうための水着を…。  
 
顔が赤くなった。  
でも、惚けてる暇はなかった。  
 
 
そして運命の日。  
 
電車とバスに揺られ、目的の地へとたどり着く。  
海豚海岸。  
日差しがまぶしい。  
絶好の海水浴日和だった。  
 
淡く、落ち着いた色の水着。  
ヒモを首に回して止めるようになっている。  
少し背中が開きすぎているような気もしたけど、この水着が一番しっくりきた。  
 
紫外線よけにパーカーを羽織り、日焼け止めを携えて砂浜へと繰り出す。  
そこには、強い日差しを照りつける太陽。  
そして、あの人…カズキ先輩の姿があった。  
 
カズキ先輩の表情はいつもと変わらなかった。  
 
いつもと変わらぬ、優しく穏やかな表情。  
私の水着姿を見てもドキリとした素振りも見せなかったし、斗貴子さんへのまっすぐな視線も、  
普段と変わりはしなかった。  
 
津村斗貴子さん。  
四月の半ばに銀成学園に転入してきた女性。  
顔の真ん中に大きな傷がある女性。  
でも、優しさと強さを兼ね備えた女性。  
 
…そして、カズキ先輩の視線を一心に受ける女性だった。  
 
パーカーを脱いだほうがよかったかな、と思う。  
もっと過激な水着のほうがよかったかな、とも思う。  
 
…ううん、そんなことをしても無駄だということは分かっていた。  
 
カズキ先輩のために水着を選んでるときは、すごく楽しかった。  
昨夜は海水浴のことで頭がいっぱいで、なかなか寝付けなかった。  
さっきまでの私は、間違いなく恋する乙女だった。  
 
…でも。  
 
カズキ先輩には、斗貴子さんがいる。  
強い絆で結ばれている。  
それは、誰の目から見ても明らかだった。  
 
それでも、私は、カズキ先輩のことを…  
 
私は、持てるだけの勇気を振り絞って、行動を起こすことにした。  
 
「武藤先輩、ちょっといいですか?」  
 
カズキ先輩が一人になっているところを見計らって、声をかける。  
うっすらと空が夕闇に染まり始めた時間帯だった。  
 
「ん、何ちーちゃん?」  
 
いつもの笑顔で振り向いてくれるカズキ先輩。  
その笑顔が少し切なかった。  
 
「少し、お話がしたいのですが…」  
「うん? 急に改まってどうかしたの」  
「はい。あの、ここではなんなので、あちらの岩場の陰まで」  
 
そういって少し離れた岩場を指差す。  
あそこなら、他に誰もいそうになかった。  
 
カズキ先輩はうなずいてくれた。  
そして、二人連れ立ってその岩場の陰に向かった。  
 
「ここでいいですね」  
 
私はカズキ先輩のほうに向き直り、先輩の顔を真っ直ぐ見据える。  
 
パーカーは脱いでいた。歩いている間、カズキ先輩の視界に私の背中も  
入ってるはずだった。  
カズキ先輩は、私の背中を見て、少しでもドキドキしてくれただろうか?  
 
「で、話って?」  
「その前に、ひとつお願いがあります。  
 少しの間、私がいいというまで目をつぶっていてもらえませんか?」  
「? いいけど…」  
 
無防備に瞳を閉じるカズキ先輩。  
そんな素直なところが、とても可愛いと思う。  
このチャンスを逃す手はなかった。  
 
「んむっ」  
 
すかさず、カズキ先輩の唇を奪う。  
身長差があるため、飛びつくようなかたちになる。  
不意を突かれたカズキ先輩はバランスを崩し、後ろに倒れこんでしまう。  
全て計算どおりだった。  
 
「…っ」  
 
私は目を閉じ、唇だけに神経を集中させた。  
 
カズキ先輩の、くちびる…。  
…あたたかい…。  
今、間違いなく私達はキスをしていた。  
 
両手をカズキ先輩の肩まで伸ばし、精一杯抱きつく。  
 
その気になれば、私を払いのけることは簡単にできると思う。  
でも、それをしないのがカズキ先輩だ。  
 
ギュッと身体を押し付けているため、カズキ先輩の胸の鼓動も感じることができる。  
ドクン、ドクン、ドクン…!  
カズキ先輩の胸も、大きく高鳴っていた。  
 
そっと、カズキ先輩の下腹部に手を伸ばす。  
カズキ先輩のペニスは、既に固くなっていた。  
 
ああ、私を感じてくれている…。  
それはとても嬉しいことだった。  
 
私はいったん唇を離した。  
 
「ちーちゃん…」  
 
カズキ先輩が、驚いたような気まずいような複雑な表情で私を見る。  
 
「…急にこんなことしてごめんなさい」  
「いや、そんな、俺のほうこそ…」  
 
カズキ先輩がしどろもどろに答える。  
カズキ先輩はちっとも悪くない。  
私が勝手にカズキ先輩を襲っただけだ。  
それなのに、こんなふうに私に謝罪の言葉を投げかけてくれる…  
 
「…私、武藤先輩のことがずっと好きでした。  
 あの事件のとき、学校で私を助けてくれたときから…」  
「…そう、なんだ…」  
 
私はニコリと笑いながら続ける。  
 
「きっと、こんなことでもなければ一生気が付かなかったんでしょうね」  
「う…いや…ゴメン…」  
「いいんです、そういうニブチンなところも好きですから」  
「はは…」  
 
苦笑い、というよりはよく分かっていないような曖昧な笑顔。  
とてもカズキ先輩らしいと思った。  
 
「この水着、今日のために買ったんですよ」  
「え、そうなんだ?」  
「はい。でも、武藤先輩はお気に召さなかったみたいですね」  
「いや、そんなことは…」  
「おへそが出てたほうがよかったみたいですね」  
「え?」  
「だって、斗貴子さんのおへそに夢中だったみたいですから」  
 
意地悪くいってみる。  
 
「えッ!? い、いや、あれはそのあのその…!」  
「隠さなくてもいいんですよ、分かってますから…」  
 
ふと視線を落とし、言葉が途切れる。  
涙があふれそうになる。  
でも。  
 
「武藤先輩が、斗貴子さんのことを好きなのは」  
 
自分に言い聞かせるように、そうハッキリと言葉にする。  
 
「え、いや、あの、ち、違、そ、それはその…」  
「なら、私と付き合ってくれますか?  
 私を彼女にしてくれますか?」  
 
答えは分かっていた。  
でも、きかずにはいられなかった。  
 
「……。…ごめん、それはできないよ」  
「…はい。その言葉が聞けただけで私は満足です」  
 
私はにっこりと微笑んだ。  
多分、涙は流していなかったと思う。  
 
「…でも、ひとつだけお願いがあるんです」  
「お願い?」  
「はい。私を抱いてほしいんです。女として」  
「え…っ!!??」  
「それで、踏ん切りがつくんです。お願いします…」  
 
 
カズキ先輩のペニスをほおばる。  
それは、私が触れる前から固くなっていた。  
 
「んむっ…」  
 
右手を根元に添え、ゆっくりと喉の奥までそれを沈める。  
歯を立てず、唇で締め付けるように口をすぼめる。  
たっぷりと唾液をからめ、リズミカルに顔を上下させる。  
 
「うっあ、ちーちゃん…」  
 
カズキ先輩は、とても気持ちよさそうだった。  
 
ちゅぷっちゅぷっにゅぷん。  
ちゅっ、じゅぷん、ちゅぱちゅぷちゅぷっちゅっ。  
 
何度かのストロークの後、一回目の射精がある。  
 
ビュクッ、ビュクッ、どくん。  
 
口の中全体に、温かくねっとりとした精液の感触が広がる。  
 
「先輩の、とってもおいしい…」  
 
ひととおり味わった後、全部飲み干す。  
 
「うわ、ごめん、吐き出しちゃえばよかったのに…」  
 
カズキ先輩が申し訳なさそうにいう。  
 
「いいんです、もう二度と味わうことができないから…」  
「でも…」  
「それよりも私、まだ満足してませんから。  
 こっちも、先輩ので満たしてほしい…」  
 
下腹部のあたりを、自分でゆっくりなでる。  
そして、水着を脱ぎに掛かった。  
乳房、おへそ、そして茂みにおおわれたアソコ…  
どんどん私の身体が日の光にさらされていく。  
既に、準備は整っていた。  
自分でもハッキリ分かるほどに、私の秘部は湿り気を帯びていた。  
 
「いき、ます…」  
 
自らの秘部をカズキ先輩の秘部にあてがい、そのままゆっくり腰を下ろす。  
 
「んっあぁ!」  
 
思わず声がもれる。  
鈍い痛みを感じるが、構わず続ける。  
これが、破瓜の痛みというものなのだろうか?  
 
「あっ、うぁっ、んっ、ひあぁっ、カズキ先輩…!!」  
 
声がもれて、愛液が混ざり合う音と重なっていく。  
 
カズキ先輩と、ひとつになっている…  
例えそれが最初で最後の経験になろうとも、もう悔いはなかった。  
 
 
コトが済んだ後も、私達は手を握り合ってずっと夕陽を眺めていた。  
 
その夕陽も、今はもうその姿を水平線の下にほとんど沈めてしまっている。  
空も、水平線との境目にわずかにグラデーションを残すのみで、すっかり星の瞬く世界へと  
変貌してしまっていた。  
 
「…そろそろ戻らないといけませんね」  
「…ああ…」  
 
かげりを帯びた眼差しで私を見つめるカズキ先輩。  
 
「皆きっと心配してますよ、武藤先輩!」  
 
スッと手を離し、笑顔を作りながら立ち上がる。  
 
「…私、今日のこと一生忘れません」  
「ちーちゃん…」  
「私のこと思いやってくれるなら、斗貴子さんのこと幸せにしてあげてください。  
 悔しいけど、カズキ先輩には斗貴子さんしかいないんですから…」  
 
そうして、その夏の日は暮れていったのだった。  
 
 
 
-fin.-  
 

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