旅館三浦屋の一室。
「カズキは?」
「カズキ君ならさっき出ってたよ。こんな時間にどうしたんだろうね?」
「さあ。まあ大体想像はつくけど」
別の一室。
「あれ?斗貴子さんは?」
「さっき出かけたみたい」
「花火してる時にまっぴーのお兄さんと何か話してから、きっといっしょだよ」
そして、浜辺。
「キミたち兄妹は揃ってへそを見ているな」
「あはは、そうかも」
夜の花火が終わって宿に戻った後、カズキと示し合わせて再び砂浜に出てみた。
特に目的があるでもなく、今日あったとりとめもない話をしながら、並んで歩く。
聞こえるのは波と2人の足音。2人を照らすは、三日月と浜辺沿いの道の灯り。
残っている花火の燃えカスに気をつけながら、ゆっくり歩く。
交わす話題が尽きた後、いつしか、昼間の岩場へ足が向いていた。
岩場につくと、無言のまま互いの腰に手を回し、唇を重ねた。
心のどこかで、またこうなることを期待してたような気がする。
「悩殺カズキキッスは怒るけど、これはいいんだ」
私と唾液の糸でつながったままのカズキの唇がそんなことを言う。
その糸を手で切って飲み込みながら、無言の笑顔で応えた。
『しまった、巻き込んだ!!』
あの時、カズキを巻き込んだのは今でも痛恨事だ。
『キミに少し興味が湧いた』
だが、持ち合わせていた核鉄で命を救えたこと、
そして、それが出会いになったことは感謝している。
あれが黒い核鉄でさえなければ──
そんな思いを忘れるために、また唇を重ね、カズキを貪る。
何度目からわからないキスの後、
軽く上唇を噛まれたので、お返しに、舌を吸い出し噛んでやった。
いったん、顔を離し、笑顔を交わす。
カズキが私のおなかあたりに手を伸ばしたので、釘を刺しておく。
「おへそはほどほどにな」
「うん、じゃあ─」
カズキはそう言って手を引っ込めた。
そして、一段下の岩に降りて膝立ちになり、立ったままの私の太股に顔を埋め、
脚に舌を這わせた。
「…斗貴子さん、脚、キレイ…」
「…ん…」
感じるものはあるけれど、なんとなく、主導権をとりたくて、声をこらえてみる。
「…ここ…なんか感じが違うね」
「…ちょうど、装着箇所だな…」
バルキースカートのアームが付く場所だ。筋肉の付き方が少し違うのかもしれない。
太股の後も、右脚と左脚を交互にカズキの舌が降り続ける。
膝、ふくらはぎ。場所が変わる度に、新しい感触を知る。
だんだんと体の力が抜け、自力で立つのが辛くなり、カズキの頭の上に両手を置いた。
これでは、声をこらえても同じかもしれない。
そして、片足ずつ持ち上げられて、靴とソックスを脱がされた。
足の指の隙間を這うカズキの舌が気持ちよくてたまらない。
「斗貴子さん、うしろ、向いてくれる?」
言われたとおりに後を向くと、近くに腰より少し低いくらいの高さの岩を見つけ、
そこに手を置いた。カズキにお尻を突き出す格好だ。
少ししてから、カズキから見た自分の様子が頭に浮かび、顔が赤くなった。
あわてて、カズキの方に体を向けようとしたが、
カズキの舌が足首の裏側を登ってきて、力が抜けてしまった。
そして、さっきと逆の順番でカズキが脚の裏側を登ってくる。
ふくらはぎ、膝裏、そして、太股に。
スカートをまくって脚の付け根まで達したカズキは、
私のショーツに両手をかけて、足首あたりまで降ろした。
そして、あらわになった茂みをかき分け、既に濡れている中へと舌を侵入させてきた。
始めは入り口付近で丹念に動き、その後、だんだんと奥へと入ってくる。
それから、いったん舌を抜き、入口あたりを軽く噛んだ。
「ひ!あん!」
ずっと我慢していた声が出てしまい、理性も飛んだ。
右足首をショーツから抜き、カズキを受け入れやすいように、両足の幅を少し広げた。
それを合図にしたかのように立ち上がったカズキは、私の茂みに屹立を押し当てた。
右手を股間に伸ばし、微妙に位置がずれているカズキの先端を自分に導いてみる。
間をおかずカズキが私の中に入ってきた。痛みはほとんどなく、悦びは昼間以上。
私の中で動き始めたカズキがたまらなくいとおしかった。
帰り道、どちらともなく手を繋いで歩いた。
宿が見えてから手を離したが、名残惜しさを感じた。
宿の玄関でカズキと別れた。
この後、深夜に人と会う約束があるのはカズキには黙ったまま。
電気が消えている部屋に戻ったとたん、まひろの声がして驚いた。
「…ん─お義姉ちゃん、お兄ちゃん、お幸せに──」
よく見ると寝言。他の3人は寝ていた。
さっきまでカズキとしてきたことを思い出して、顔が火照る。
部屋の入り口に近い空いている布団に体を横たえ、時間が来るのを待った。