カズキが私の肩を掴んだ。  
「まだ少し、勇気が足りない」  
「そうか…それなら、足りない分は私から補え」  
「ウン」  
カズキの背に腕を回す。  
「いつかの夜に言った通り…キミが死ぬ時が私が死ぬ時」  
(キミと私は…一心同体だ―――…)  
軽く口を開いたまま唇を重ね、目を閉じた。  
周囲の音が消え、世界に2人だけになった。  
初めてのキスではないけれど、勇気を渡す初めてのキス。  
勇気でもそれ以外でも、私から補えるモノは全部与えたい。  
いつでも、いくらでも、必要なら永遠に。心からそう思う。  
1秒なのか1日なのかわからない時間が過ぎ、カズキの唇が離れていった。  
名残惜しさを感じながら、目を開く。  
何かを補ってもらったのは私の方かもしれない。  
カズキが赤い顔をして頭を掻いている。私の顔も同じように赤いんだろうと思う。  
 
いったん体を離して、周りを見下ろしてみる。  
何人かの人影があるが、こちらを注視している様子はない。  
そして、人が自分より上に視線を向けるには理由が要る。  
偶然、見上げたりしないものだ。  
そういう意味でしばらくは安全だと判断した私は、  
再度、カズキの背中に両手を回して、体を預けた。  
カズキも私を抱きしめてくれた。  
 
少しして、背中からカズキの手が離れた。  
不思議に思って、カズキの顔を見上げる。さっきよりも赤い顔をしている。  
すると、カズキの両手がスカートに入った。  
「!?」  
更に下着の中に入った手がおしりを直に触った。  
「ん──こ…ここでか?」  
笑顔で頷くカズキ。  
そういうつもりじゃなかったんだが。  
「約束、したよね?」  
海豚海岸で交わした言葉を思い出す。  
『今度、ゆっくりできる時に』  
白い核鉄が出来上がるまで、できることはない。  
唯一、出来上がった核鉄を使う相手を決めるだけ。  
そして、カズキが決断した以上、私たちは待つだけなのだ。  
「…そうだったな」  
そう言いながらもさすがに迷って、再度、周りを見下ろす。  
視界内の人影はさっきまでと変わらない様子を見せている。  
たぶん、安全だろうとは思う…が、しかし──  
 
吹き上げる風がセーラーの襟を立たせた。スカートの中が妙に涼しい。  
気がつくと、足首あたりで所在なさげに風に揺れるショーツが目に入った。  
気が早いカズキが脱がしたようだ。  
「寒いじゃないか!」  
動転して、見当ハズレのことを言ってしまう。  
「あ!ごめん、斗貴子さん」  
カズキの両手が私のおしりをしっかりと包み込んだ。  
見当ハズレのことを言ったら、見当ハズレに対処されてしまったわけだ。  
だが、温くて、気持ちがいい。  
そして、ナチュラルタッチなのか意識してかはわからないが、  
カズキの指先が伸びて、私の秘所に触った。  
「ぁあん」  
声が出てしまう。  
この際、見られる危険はいったん忘れることにした。  
カズキと共に居ることが重要なのだと思うことにした。  
 
真っ赤なカズキの顔を見ながら、手を股間に伸ばした。  
制服の上からでも膨らみがはっきりわかる。  
ジッパーを降ろしただけで、弾けるように飛び出してきた。  
一方のカズキは、指先を更に伸ばして、私の入り口あたりを探りまわしている。  
「あっ…ん」  
そんな声を上げながらも、負けじとカズキのモノを弄り回すと、  
いきり立って大きくなっていく。  
このまま触り合いを続けたい気持ちもあったが、  
周りから見られる危険性を考慮して、先を急ぐことにした。  
手をカズキの股間から離し、ショーツから片足を抜いた。  
それを見たカズキが私のおしりに手を当てたまま、抱き上げる。  
私は、カズキの背中で腕を組んで、脚を広げた。  
カズキが私の股間に先端をあてがい、両手で私のおしりを引き寄せて、  
ゆっくりと入れていく。  
「ん…あ…あぁっ…ん………ひゃぁん!…んぁ」」  
体を貫かれる錯覚を感じたところで、挿入が終わった。  
 
自分の体重がカズキの両手とつながった股間で支えられている。  
そんな初めての体位なせいで、どうしていいかわからない。  
バルキリースカートを展開すれば、それだけで体を支えて動けるのだが、  
雰囲気がぶち壊れそうな気がしてやめおく。  
とりあえず、カズキにしがみついて身を任せた。  
「…カズキ…いいぞ」「ん…斗貴子さん」  
カズキも最初は不安定な動きをしていたが、だんだんとリズミカルに動き始めた。  
あまり濡れていないせいか最初は少し痛かったが、  
深部を掻き回される度に痛みが快感に代わっていく。  
そして、更なる快感を求めて試行錯誤するうちに、コツがわかってきた。  
カズキが腰を突き上げおしりを引き寄せるタイミングに合わせて、  
しがみつく手足の力を強くすると、子宮に届く程にカズキが奥まで入ってくる。  
「斗貴子さん…それ、すごく、気持ちいい──」  
カズキにも好評なようだ。そう、私たちは一心同体なのだ。  
互いに果てるまでそれほど時間はかからなかった。  
 
体を離して一息ついた。  
そして、周りを見下ろす。注目されている様子はない。大丈夫だったようだ。  
ふと、キスをする前の話の内容を思い出した。  
「そういえば、あそこでキミが私を守ろうとしてくれた後、  
 ここでキミの心臓の替りに核鉄を入れたんだ」  
そして、それが黒い核鉄だった。  
「そっか、ここで新しい命をくれたんだね。ありがとう、斗貴子さん」  
「だが、そのせいでキミは──」  
「うん、そのおかげで、みんなを、この街を守れたんだ」  
「…まったく、キミは…そろそろ、戻るか?」  
「うん」  
 
手をつないで屋上の入り口に戻る途中に、疑問が頭をよぎった。  
「確かに、約束はしたが…  
 他にいくらでも『ゆっくりできる』場所があったんじゃないか?」  
「あ、そうかも」  
「…まったく、キミは…まあいい」  
私の大好きな空に近い空間。そこで大好きなカズキと共に過ごしたのだ。  
「斗貴子さん…なんか、嬉しそう」  
「ん?そうかもな」  
今日のことはいい思い出になるだろう。  
そして、これを最後の思い出にしないために、共に足掻こうと思う。  
 

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