LXEとの決戦後、私たちは岡倉のバイクで寄宿舎へ戻ることにした。  
 
「キミは免許をもっているか?」  
「ううん、ないけど」  
「じゃあ、それをかぶって後に乗ってくれ」  
どういうわけかシートの下に入っていた2つめのヘルメットをカズキに渡した。  
 
「しっかりつかまってくれ」  
そう言ってからエンジンをかけた。おなかの前でカズキが両手が組んだ。  
「ひゃ!」  
「どうしたの?」  
おへそのあたりがくすぐったくてたまらない。  
カズキが手を少し動かすだけで声が出そうになる。  
「ひっ、いや、なんでもない。なんでもないから…その…手を動かさないでくれ」  
「?なんだかわからないけど、わかった」  
 
寄宿舎へ帰る途中も何度か声を上げそうになった。  
心配そうな顔をするカズキをごまかし、岡倉に鍵を返した後、自分の部屋に戻った。  
 
机に向って頭を抱えてしまう。  
(まずい、これは戦士の弱点だ…)  
動物型ホムンクルスの中に触手系と分類されるタイプがいる。  
かつて倒した花房がそれに近い。  
触手タイプの武装錬金を持つ敵もいるかもしれない。  
そんな触手に捕らわれ、おへそを攻められたら?私は一瞬で陥落してしまう。  
 
(鍛えたい…だが、どうやって?)  
(何度も触られれば慣れるか?)  
(戦士の弱点克服の特訓だ。カズキに頼むか?)  
(しかし、そこを鍛えるだけで済まない気がする)  
(済まなかったら、それはそれでうれしいのだが…)  
(イヤイヤ、そうではなくてだな…)  
果てしなく妄想が広がる。  
 
(こういうことを異性に頼むからまずいのだ)  
(例えば、そう、まひろに頼むのは?)  
『斗貴子さん、スベスベでいい気持ち〜〜』  
(ホムンクルスに操られてさえ、こんな台詞をはいたコだ)  
(自我ある時なら、やはり鍛えるだけで済まない気がする…別の意味で)  
 
結論が出ないままに日々が過ぎていく。  
 
3日後に戦士長から待機の指示を受けたり。  
 
精密検査とサンプル収集の指示を受けたカズキと  
サン・ジェルマン病院へ同行したり。  
 
衣替えになったので銀成学園の夏服を着てみたが、  
やっぱりバルキリースカートが使いづらいので、  
前の潜入先の夏服を引っ張り出してみたり。  
 
カズキのベッドの真ん中が私の特等席になったり。  
 
そんなこんなで一学期が終わった。そして…  
 
海豚海岸の近くの店。水着を着た自分を鏡に映す。  
いくつか試着してみたが、サイズが合うのは1着だけだった。  
カズキが好きそうな気がする…イヤ、それはともかく。  
おへそが出ている。これはまずい。まずいが、他の水着は胸がゆるい。  
(止むを得ない…か)  
 
まひろ達と浜に出てカズキ達と合流した時、カズキの視線に気づいた。  
「どーした?何か変か?」  
「あ、いや、変というか」  
何故か顔を赤くするカズキ。  
「斗貴子さん、おへそ丸出し」  
「現地調達だから仕方ないんだ!こーゆーのしかなかったんだ!」  
思わず、おへそを隠す。  
ただでさえ意識しているのに、どうしてそういうことを言うんだ?  
 
そして、知った顔のサーファーとすれ違った後、みんなと離れ海に入った。  
空を向いて波に体を預ける。真上に見える太陽がまぶしい。  
頭の中にさっきの男が浮かぶ。  
何故奴がここに?いったい、何のために?不安が心を占める。  
 
「斗貴子さ〜ん」  
突然聞こえた声に我に返った。近くにカズキの顔が見える。  
「どうした?」  
「そっちは遊泳禁止」  
言われてみると、赤い浮きがそばに見える。  
沖に流されないよう気をつけてはいたのだが、  
左右はあまり気にしていなかった。  
結果、遊泳区域の端まで来ていたようだ。  
「いったん、戻ろう?」  
「そうだな」  
 
カズキと並んで浜まで泳ぎ、海から上がった。  
まひろ達がいる場所とだいぶ離れているようだ。  
「一休みしてから、合流しよっか?」  
「わかった」  
奥まった岩場を見つけ、そこに並んで腰を降ろた。  
無言で空を眺める。照りつける太陽が気持ちいい。  
同じ太陽を見ているのにさっき感じた不安がまったくない。  
いろんなことがなんとかなりそうな気がする。  
そして…眠気が…襲う………  
 
「あひゃ!こら!」  
カズキがおなかのあたりをくすぐっていた。  
「だって、斗貴子さん、起きないから」  
「だからって。ひゃ、ひゃめろ!」  
「あはは、斗貴子さん、おへそ、弱いんだ」  
「ひゃめ、やめろ…あん」  
嬌声を上げてしまう。カズキの動きが止まった。  
「…あ、ごめん、やりすぎたね」  
突然、カズキが股間を押さえて後を向いた。  
「イヤ、これは、その…斗貴子さんが色っぽい声を出すから…つい…」  
その時、私は自分がカズキとどうしたいか、はっきりわかった。  
 
「…続きはいいのか?」  
「…斗貴子さん?」  
「…おへそ以外なら…私はかまわないぞ?」  
「…でも、その…」  
「以前言ったはずだ、私は何でもする、と」  
顔を下に向けるカズキ。  
「そういうのは気にしないでいいよ、斗貴子さんのせいじゃないし…むしろ…」  
「じゃあ言い方を変えよう」  
そういって言葉をつなげる。  
「私はキミにとってそういう対象じゃないと思っていた。  
 でも、もし、私がそういう対象なりうるなら…私はなりたい」  
「…斗貴子さん…」  
「私じゃイヤか?」  
「そういうわけじゃ…っていうか、とってもうれしい…斗貴子さん!」  
カズキが顔を上げて抱きついてきた。こちらも抱き返す。  
 
ひと月前に屋上で抱きついた時、ただ無我夢中だった。  
ひと月前に屋上で抱きかかえられた時、体重を支えられていただけだった。  
でも、今は違う。お互いを異性と意識して体を合わせている。  
 
唇を重ねる。そのまま互いに口を開けて舌を絡める。  
カズキの海パンを脱がそうとしたが、屹立しているモノが大きくて手間取った。  
その間に、自分は裸にされてしまった。  
そして、互いの唇が離れ、かわりにカズキの舌が胸から腰にむかって這っていく。  
舌先がおへそを過ぎる時、意識が飛んだ。  
気が付くと、今度は舌先が茂みを分けて侵入していた。また意識が飛びかける。  
「…私だけじゃなく…」  
そういって、反撃。体勢を入れ替えて、カズキのモノを口に含んて動く。  
初めて同士で、お互いの秘部を責め合える体位には気が及ばない。  
「…ごめん、オレ、もう…」  
「…なら、中に…」  
カズキを岩場に座らせた。  
そして、体を向かい合わせ腰を降ろしながら、自分の秘所へと屹立を導く。  
「んっ…ぐ…」  
カズキが心配そうな顔をしているのを見て、痛みをこらえて笑ってみる。  
「心配するな、私がこうしたいんだ」  
そのまま最後まで腰を降ろした。痛みとともに未経験の感覚が体を走った。  
「大丈夫?」  
「…ん、カズキ、動いていいぞ」  
「…うん、わかった」  
カズキが動く度に何かが体を突き抜ける。そして。  
「…斗貴子さん!」  
カズキが果てると同時に、私の意識も飛んだ。  
 
意識が戻った時も同じ格好だった。軽いキスをした後、体を離した。  
 
互いの息が整ってから、カズキが話し出した。  
「こども、できたりしないかな?」  
「戦士長から聞いていないのか?」  
「何を?」  
「…そうか、じゃあ、私が話そう。あー、ちょっとむこうを向いててくれないか?」  
カズキが後を向いたのを確認後、自分も反対を向いた。  
そして、水着を着ながら話をつづける。  
「核鉄は生存本能に働きかける力がある。これは前に言ったな?」  
「うん」  
「これは種族保存本能に直結する」  
「なるほど」  
「短期間なら所有者が核鉄を手放していても効果はさほど変わらない」  
「つまり?」  
「核鉄所有者は種族保存本能が高い。  
 その結果、核鉄所有者の性交に安全日は無いといっていい。  
 特に核鉄所有者同士が避妊しない場合の妊娠率は9割以上だ」  
「えーーー、じゃあ?」  
 
「まあ、最後まで話を聞け。それからこっちを向いてもいいぞ」  
水着を着終わったのでそう言ってみる。そして、自分もカズキの方を向いた。  
また軽く唇を合わせる。  
「かつては、男女の戦士が交際した場合、意図しない妊娠が頻発したという。  
 そこで現在は配偶者がいない全ての戦士に可逆的な避妊措置が施されている。  
 私もそうだ。キミも本隊に合流する時にそうなる。  
 あるいは、サン・ジェルマン病院での検査時に措置済みかもしれない」  
「そうなんだ…ホッ」  
「私に限れば、こんな機会はないだろうから不要な措置だと思っていたのだが、  
 こうなってみると、本隊の判断は正しかったわけだ」  
「あ、なんか、安心したら、また…」  
カズキが股間を押さえていた。  
 
その時、遠くから声が聞こえた。  
「お兄ちゃ〜ん、斗貴子さ〜ん」  
まひろの声。  
「次の機会にしよう。機会はいくらでもある」  
「そうだね、今はみんなと」  
「ああ、そうだな」  
 
カズキの股間が落ち着くの待って、いっしょに立ち上がった。  
こちらに向って走っているまひろに手を振り、  
ちょっと歩きづらいのを我慢して、カズキとともに歩を進める。  
 
「そういえば…」  
「なんだ?」  
「さっきみたいなことをした時の…その…核鉄は修復しちゃうの?」  
「あー、それはだな。  
 核鉄は所有者がキズやケガと思っていない箇所を修復しないんだ。  
 そして、もちろん、私はさっきの結果をキズだと思っていない」  
「あー、そーなんだ。じゃあ、次回は痛くないんだね?よかった」  
「そーゆーことになるな」  
「じゃあ」…カズキの視線が私の顔の中央を向き、すぐに逸らされた…「ごめん」  
「気にするな、これもそーゆーことだ」  
 
今は話す気になれないが、いつかカズキには話せそうな気がする。  
きっとそれほど先のことではない。そんな気がする。  
 
(おしまい)  

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