「これからキミは100年前のオレと同じ辛苦を味わうコトになる。
十分に覚悟しておけ……」
ヴィクターはそう言い残して飛び去った。
「追うな、カズキ…
これ以上…この激しいドレインが続けば、
みんな、後10分ともたない…
L・X・Eはほぼ壊滅できた。
霧も晴れてじきに救急車も来る。
後はこのまま…私達が退けば…みんな助かる!」
そんな斗貴子の声が聞こえないかのように。
「戦え、ヴィクター!」
そう叫んで、ヴィクターを追うカズキ。
「カズキ!」
斗貴子が飛びつくが届かない。
カズキは屋上の柵を乗り越え、空に体を投げ出した。
最初はゆっくり、そしてだんだんと速度を上げ、
ヴィクターと同じ方角へ飛び去っていった。
とある、ニュース番組。
『集団昏倒事件の続報です。
最初に埼玉県銀成市で確認された集団昏倒事件ですが、
同様の事件が世界各地に広がっています』
『現在までにNY・パリ・カイロ等現在までに確認されただけで国内外の94都市。
初期は昏倒だけでしたが、
最近は死者が出るケースも多く、死者の総数は20名を超えました。
当局は事件名の変更を検討しています』
『事件があった都市上空では一つないし二つの光が目撃されています。
今回、その映像の入手に成功しました。ごらんください』
『2つの光が衝突を繰り返しながら激しく動いているのが確認できます。
倍率を上げてみます…一見、人の形に見えますが、詳細は不明です。
アメリカ国防省では大きい光をV、小さい光をKと呼び、
詳細を調査中とのことです』
画像がだんだんとぶれた後、カメラが地面を向き、そこで映像が終わった。
『このビデオを撮影したカメラマンは、
撮影のために発光現象に接近、撮影中に衰弱し昏倒、
病院に運ばれましたが命を落としました。
このカメラマンの症状と目撃情報・被害地域の分布から、
発光現象近くでは被害の発生率が極めて高いと推測されています。
この現象を目撃したら、警察に連絡し、決して近づかないでください』
がばっ。
目が覚めた。夢に出てきたのは、
ありえたかもしれないもう一つの未来の姿。
隣を見る。小さな寝息を立てて眠っている斗貴子さん。
毎晩、隣にいてくれるようになったはいつの日からだろうか。
あの夢のようにならないで済んだのは彼女のおかげだ。
時計を見る。
寄宿舎の朝の点呼の時間には、全員が自分の部屋にいなくてはならない。
そろそろ起こさないと。
唇を付けるだけのキス。斗貴子さんがもぞもぞと体を動かしてから目を開けた。
「……ん?もう時間か?」
「おはよう。うん、そろそろ戻らないと」
そう言ってから、今度はちょっと長めのキス。
「それから……」そして、毎朝交わされる会話。「ありがとう」