真夜中に目が覚めた。  
隣では、ハダカの背中をこちらに向けた斗貴子さんが、静かな寝息を立てている。  
 
寝直そうと目を閉じかけたが、ちょっとしたいたずらを思いついた。  
後から斗貴子さんに抱きついて胸を揉みしだいてみる。  
 
少しして斗貴子さんが声を出し始めた。  
「…あん、ん…カズキ、悪いが寝かせくれ…あっ…」  
「うん、わかった。寝てていいよ」…と言いつつ、胸を揉み続ける。  
「ん…ばか…それで眠れるかっ…んあ…」  
「斗貴子さんの胸、キレイだよ、大好き!」  
経験上、大きさの話はしない方がいい。まあ、実際、キレイだと思うし。  
「…う…私も…ギュっとされると…ん…好きだが…あ─」  
そんなやりとりをしばらくした後、  
突然、斗貴子さんがオレの手を払いのけてこちらを向いた。  
何故か真剣な面持ちだ。  
 
「こんなつきあいになるずっと前から、キミは私の胸に何度も触っているな?」  
「そうだっけ?」  
「猿渡との戦闘後、キミに肩を貸した時」  
「覚えていないけど」  
「鷲尾に上空に運ばれて、キミの武装錬金で着地した時」  
「…そうだったかな─」  
「それから、連携して鷲尾に臨んだ後、出血を調べるためとはいえ、  
 私の胸に手を当てたろう?」  
「イヤ、それは─」  
「屋上でヴィクターに突き飛ばされた時、胸に手があたった」  
「それ、オレじゃないし」  
「それから──」  
そんなこんなで延々と、実例を挙げられた。  
 
「いままでは偶然の事故とばかり思っていた─  
 あるいは、呼吸と同じ生態なのかと─  
 だから、いちいち指摘しなかったんだが─」  
 
(そんな生態の人、いないって!)…心の中でツッコむ。  
でも、ヴィクターのエネルギードレインだって普通じゃありえない生態だしな─  
そういえば、オレのヴィクター化、ちゃんと直るのかな?  
 
などと別のことを考えていると、  
いつのまにか斗貴子さんの手に核鉄が握られていていた。  
 
「さっきのキミの言葉を聞いて、事故と思えなくなった。どうなんだ!」  
今にも『武装錬金!』と叫びそうな勢いだ。  
ハダカにバルキリースカートは萌えるかもしれない─  
…って、それよりも、オレの生命が危ない!  
本隊の指示にそむいて、黒い核鉄で対抗すべきかも?  
 
「わざとじゃないって!だいたい、あの時のオレはそんな余裕はなかったし─」  
「私にも余裕はなかった。だからこそ、狙ったんじゃないのか?」  
「そんなことないって!信じてよ!」  
そう言いながら、さりげなく自分の心臓に手を伸ばし、発動に備えた。  
 
斗貴子さんはオレをしばらく睨んだ後、優しい笑顔を見せた。  
「まあ、いい。こうして2人でいるときはともかく、他ではほどほどにな」  
「…他はわざとじゃないんだけど─」  
「そのことはもういい…気にするな」…斗貴子さんはそう言って、オレの唇を塞いだ。  
 
釈然としない思いを残しつつ、夜は過ぎていく──  
 

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